緋扇邸のオオカミくん   作:アニアス

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第34話 朧の涙

 

 

~数ヶ月前~

 

ここは緋扇邸が管理している書物室。

中には古い書物が保管されており、その殆どが様々な地方に伝わる秘術が記されいる。

 

 

 

秋宗「・・・・・」(ペラッ ペラッ

 

 

 

その部屋の中で秋宗は書物を読み漁っていた。

いつも書物室は綺麗に整理整頓されているが、机の上には倒れそうな程に本が積まれていた。

秋宗がどのくらいの時間、この書物を読み漁っていたのかが伝わってきそうだった。

 

 

 

ガチャ

 

 

 

スズツキ『入るぞ』

 

 

 

すると書物室の扉が開いてスズツキが入ってきた。

 

 

 

秋宗『・・・あぁ、おっさんか』

 

 

 

秋宗は一瞬スズツキに目がいったものの即座に書物に視線を移した。

まるですべて暗記をするかのような凄まじい集中力だった。

 

 

 

スズツキ『西条、一体どうしたというのだ?』

 

 

 

スズツキは真剣に書物を読んでいる秋宗に恐る恐る質問をした。

三羽鴉の黒服たちから秋宗が書物室に籠って勉強をしていると聞いた時、スズツキは少しだけ驚いてしまった。

秋宗は今まで術に関してはまったく興味がなくかるらとマトラのように他心通を習得しなかったため、そんな秋宗が書物室で勉強をしているとは、スズツキもこの目で確認するまでは信じられなかった。

 

 

 

秋宗『いや、俺でも体得出来そうな秘術はないかな、って思ってさ・・・』

 

 

スズツキ『・・・今さら何故術を習得しようと思うたのだ?』

 

 

 

スズツキに言われて秋宗は書物から視線を外して天井を見上げてポツリと話した。

 

 

 

秋宗『俺、今まで俺自身の力を過信してからよ、簡単に負ける訳がねぇって思ってたんだ・・・。でも、コガラシに負けて、このままじゃ駄目だ、もっと強くなってお嬢や姐さん、おっさんやお館さん、この緋扇邸の人たちの今まで以上に役に立ちたいって思ったんだ・・・』

 

 

 

身体を鍛えることはもちろんだが、かるらのように術を体得することも大事だと思い書物を読むことにした。

しかしどうにも自分に合う術が見つからないため悩んでいた。

 

 

 

スズツキ『西条・・・!そこまで我輩たちのことを想っていたのか・・・!』

 

 

 

スズツキは秋宗の話を聞いて感激してしまった。

そうと分かれば自分も協力してやらねばと思い本棚の中から一冊の本を取り出して机の上に置いた。

 

 

 

秋宗『これは・・・?』

 

 

スズツキ『ここに記されておるのは、カナダに伝わりし秘術、氷河獣王《グレイシャー・ライオンキング》と呼ばれるものでのう・・・』

 

 

 

氷河獣王《グレイシャー・ライオンキング》

カナダに伝わる秘術の1つ。

ありとあらゆるものを凍てつさせ敵を蹂躙し、その術の使用者の姿はまさに百獣の王と言われている。

 

 

 

秋宗『ライオンって、俺オオカミなんだけど・・・』

 

 

スズツキ『そこはあまり気にするでない。まぁこの秘術なら西条と相性が良いかもしれぬ。だがこの秘術は使い方次第によっては大陸を凍てつかせることも可能じゃからのう、気をつけるのじゃぞ』

 

 

秋宗『・・・分かった、ありがとうおっさん』

 

 

 

秋宗は氷河獣王の書物を開いて読み始めた。

 

ちなみに書物室の扉の向こうでは、

 

 

 

黒服1『西条はん~!』

 

 

黒服2『我々のことをあそこまで想っていたとは!』

 

 

黒服3『誠にご立派です!』

 

 

 

三羽鴉の黒服たちが秋宗の話を扉越しで聞いて感動して泣いていた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

そして現在、秋宗は玄士郎に対して氷河獣王を発動させて右腕を斬り落として凍らせていた。

 

 

 

秋宗「・・・・・」(ギュッ ギュッ

 

 

 

秋宗は自分の氷に覆われている両手を見て手を開いたり閉じたりして異常がないか確認した。

 

 

 

秋宗(実戦で氷河獣王を使うのは初めてだが、なんとか腕を凍らせることはできた。まだまだ修練が必要だが今はそんなこと言ってる場合じゃねぇしな)

 

 

 

朧「西条・・・!お前・・・!」

 

 

 

朧は秋宗が玄士郎に倒されてしまうだろうと思っていたが、秋宗が秘術を使って玄士郎の右手を凍らせたため目を見開いてしまった。

 

 

 

玄士郎「・・・余の防御結界を容易く破るだけでなく、余の右腕をも凍てつかせるその秘術・・・なんとも恐ろしいものよのぉ」

 

 

 

玄士郎は凍っている右腕を見ながら冷静に秋宗の秘術を分析した。

身体を液状化させる極龍如水にとってあらゆるものを凍らせる氷河獣王はまさに天敵だろう。

 

 

 

秋宗「覚悟しろよ、黒龍神玄士郎!テメェを完全に凍らせてやる!」

 

 

 

秋宗は身構えて玄士郎を倒すと宣言した。

 

 

 

 

玄士郎「だが、恐るべしとは言うものの、貴様のその腕さえ警戒しておれば大したことはない」

 

 

 

しかし玄士郎は片腕を失いつつも堂々とした振る舞いで秋宗と対峙した。

玄士郎の言うとおり、秋宗の手が右腕を捉えたことで凍らせられたものの、そこさえ警戒していれば二度と凍ることはないだろう。

 

 

 

秋宗「確かに、俺はまだ完全にこの秘術を使いこなせていない。長時間発動し続けるのも無理だ。だから・・・」

 

 

 

秋宗は右手で拳を作り振り上げて、

 

 

 

秋宗「今はまだこういう風に攻撃することしかできねぇんだよ!鎖傘氷柱《さかさつらら》!!」(ズドォン!!

 

 

 

拳を思いっきり地面に目掛けて振り下ろした。

 

すると、

 

 

 

バキィン!!

 

 

 

拳から氷が玄士郎に目掛けて地面に走り、1メートル手前で氷柱が地面から飛び出して玄士郎へと伸びていった。

玄士郎は咄嗟に避けたものの、氷柱が左頬をかすり切り傷のように氷が張られた。

 

 

 

玄士郎「・・・ふっ」

 

 

 

玄士郎はかすったものの攻撃を受けたことに頭に血が上らず、寧ろ頬が上がっていた。

 

 

 

玄士郎「ふははははは!いいぞいいぞ!余が身を挺して習得した極龍如水をこうも容易く破るとは!気に入ったぞ異国の獣!久々に血が滾ってきたぞ!!」

 

 

 

玄士郎は左手を龍の爪へと変化させて秋宗に対して好戦的な笑みを浮かべて身構えた。

 

 

 

秋宗「奇遇だな!俺もこの秘術を思う存分発揮してみてぇって思ってたところだ!」

 

 

 

秋宗もオオカミ人間としての血が騒ぎ出して玄士郎と同じ顔になっており早く闘いたくなりウズウズしてきていた。

互いに戦闘好きな顔になっておりどちらが勝っても可笑しくない雰囲気が漂っていた。

 

両者が睨み合う中、

 

 

 

秋宗「行くぞぉ!!」

 

 

玄士郎「来ぉいぃ!!」

 

 

 

ついに神に類する龍と誇り高き獣の闘いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

一方、秋宗たちがいる球体の外では、

 

 

 

雲雀「何なの秋宗くんのあの秘術!?」

 

 

幽奈「玄士郎さんの右腕を凍らせるなんて!」

 

 

夜々「うぅ、寒そう・・・」

 

 

 

一緒に飛ばされた幽奈たちが球体に映し出されている秋宗と玄士郎の闘いの様子を見ていた。

朧から待っておくように言われたもののいても経ってもいられずコガラシの元へ行こうとしたものの、蜘蛛の巣の罠に掛かってしまい身動きが取れない状況になっていた。

コガラシがやられてどうなるかと思っていたが、秋宗が氷河獣王を発動して玄士郎の右腕を凍らせたため、幽奈と雲雀は唖然となってしまい、夜々は冷気を感じるかのように身震いしてしまう。

 

 

 

秋宗・玄士郎『うおぉぉぉぉ!!!!』(ギィンギィンギィンギィン!!

 

 

 

秋宗と玄士郎はインファイトを繰り出すボクサーのように激しい戦闘を繰り広げていた。

玄士郎は片腕にもかかわらず秋宗の手が自分の身体に触れないように肘辺りに攻撃を当てて反らし、その隙を狙って攻撃をした。

秋宗も攻撃が当たらずも玄士郎に休憩する暇を与えず連続して攻撃を繰り出し続けた。

 

 

 

幽奈「どちらも一歩も引かない激しい闘いですぅ!」

 

 

雲雀「コガラシくんも凄いけど、秋宗くんも凄すぎ!」

 

 

夜々「・・・なんか、秋宗の方が押してきてる?」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

ギィン!!ギィン!!

 

 

 

秋宗と激闘が繰り広げられる中、ついに均衡が崩れ出した。

 

 

 

玄士郎「ぬぅっ・・・!?」

 

 

 

玄士郎が少しずつではあるが、秋宗に押されて来て防戦一方の状況に追い込まれつつあった。

力量では黒龍神の玄士郎が明らかに上なのだが、片腕だけでは流石に攻撃を裁ききれず左腕も徐々に氷が張ってきている。

コガラシのように腕を気化させようものなら隙ができてしまうためそれができずにいた。

 

 

 

秋宗(黒龍神の左腕が凍ってきてる!それに勢いも弱くなってきてる!このまま押しきってやる!)

 

 

 

チャンスと見るや秋宗は最後の力を振り絞りラッシュのスピードを上げた。

 

 

 

玄士郎「嘗めるな!」(バッ

 

 

 

玄士郎は体制を低くして秋宗のラッシュ攻撃をかわし、

 

 

 

ズバァン!!

 

 

 

秋宗「うおっ!?」

 

 

 

両手を蹴り上げて腹ががら空きになり大きな隙を作らせた。

玄士郎にとっては千載一遇のチャンス。

左腕を秋宗の腹部に狙いを定めて貫こうとした。

オオカミ人間の毛皮が厚いとはいえど、黒龍神の攻撃を受け止めて切れるかは定かではない。

 

 

 

秋宗「ヤバッ!」

 

 

 

脅威を察した秋宗は蹴られた反動で上体をイナバウアーのように仰け反らして左腕を紙一重でかわした。

 

 

 

玄士郎「ちぃっ!おのれぇ!」(ブォン!

 

 

 

玄士郎は攻撃をかわされたことにイラつきながらもそのまま左腕を振り下ろしたが、

 

 

 

バッ! ゴロゴロッ!

 

 

 

秋宗は咄嗟に飛び退けて転がりながら玄士郎と距離を取った。

両者が激しい戦闘を繰り広げ装飾は壊れ辺りも氷が所々張っている。

このまま行けば秋宗が玄士郎を凍らせるのも可能になるだろう。

 

しかし、

 

 

 

ピキッ!

 

 

 

秋宗「ッ!やっぱ使うにはまだ早かったか!」

 

 

 

秋宗の両腕を覆っていた氷の籠手に大きなヒビが入ってきていた。

氷河獣王を秋宗は完全に習得出来ていないため、次で決めなければ玄士郎に対抗する手段がなくなってしまう。

 

 

 

玄士郎「ふははは!どうした異国の獣!?貴様の秘術はもうここまでか!?だが極龍如水と渡り合えたことに敬意を評し手厚く終わらせてやろう!」

 

 

 

玄士郎は秋宗のヒビが入った氷の籠手を見て秘術が限界目前だと判断して一気に終わらせようとした。

左手を手刀へと変化させて秋宗へと駆け出した。

観ていた朧もここまでかと諦めたが、秋宗の目は諦めてなかった。

秋宗は即座に身をかがめて手を地面に置いた。

 

 

 

玄士郎「また氷塊で攻撃する気か!?だが先程の貴様の攻撃は見切っておる!何度やろうと」

 

 

秋宗「いや、もう終わりだ。あんたは俺が作った結界の中に入っちまったんだからな」

 

 

玄士郎「何・・・?」

 

 

 

秋宗の言っていることを玄士郎理解出来なかった。

その直後、玄士郎はハッと表情に出して辺りを見渡した。

 

辺りには激しい戦闘により発生した氷が所々に張っている。

しかしそれをよく見てみると、氷に霊力のオーラが漂っていた。

 

玄士郎は危機を察してそこから離れようとするが、もう手遅れだった。

 

 

 

 

 

秋宗「樹氷結界《スノーライムフィールド》!!」

 

 

 

 

 

ドシュッザシュッグサッ!!

 

 

 

 

 

玄士郎「がぁっ!!」

 

 

 

 

 

張っていたすべての氷から鋭利に尖った氷塊が玄士郎に目掛けて飛び出して身体を貫いた。

極龍如水でダメージはないものの、パキパキと玄士郎の身体を貫いた箇所から凍っていった。

秋宗は闘いながら辺りに氷を張って最初からこれを狙っていたのだ。

 

そして玄士郎は完全に凍りついてしまい身動きが取れなくなってしまった。

秋宗と玄士郎の闘いの終わりを知らせるかのように、

 

 

 

バキィーン!!

 

 

 

氷の籠手が粉々に砕け散った。

霊力を使いすぎた秋宗はハァハァと息切れしながらも人間へと姿を戻し玄士郎を倒せたことに安堵した。

 

 

 

秋宗「ハァ~。結構ギリギリだったがなんとか倒せたな」

 

 

朧「・・・西条」

 

 

 

朧は表情には出していないものの目は心配な眼差しをしていた。

 

 

 

秋宗「大丈夫だ。時間が経てば黒龍神の氷も溶ける。しばらくここに放置しておけばいい」

 

 

 

秋宗は心配してくれている朧をよそに凍りついている玄士郎を注意深く見ていた。

 

しかし朧の内心はとても複雑な思いが漂っている。

主である玄士郎が倒されたにも関わらず自分はどうして焦っていないのだろう?どうして秋宗のことを心配しているのだろう?と頭で考えても答えが出なかった。

 

 

 

秋宗「それより朧、転送門で幽奈たち含めてここから出してくれ。コガラシを手当てしねぇと」

 

 

 

内臓を破壊されて倒れて気を失っているコガラシを見て秋宗は朧に転送門を開くように指示を出した。

朧も「・・・あぁ」と内心が晴れないまま転送門を開こうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドンッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

秋宗「グフゥッ!?」

 

 

 

秋宗の身体から衝撃音が響いて口から血を吐き出してしまった。

 

 

 

朧「西条!?」

 

 

朧は突然口から血を吐き出した秋宗を見て驚いてしまう。

 

秋宗も何が起こったのかまったく分からなかった。

まるで体の中に仕掛けられていた爆弾が爆発したかのような感覚だった。

 

 

 

秋宗(これは・・・!?さっきコガラシが攻撃を食らった時と同じ・・・!?まさか!?)

 

 

 

秋宗はバッと振り返り凍りついている玄士郎を見た。

 

数秒後、

 

 

 

パキ、パキパキ・・・

 

 

 

と、小さな音を立てながら玄士郎の身体にヒビが走っていった。

 

やがてそれは身体全体を覆い尽くしそして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パリィーン!!

 

 

 

 

 

玄士郎「油断したのぉ異国の獣」

 

 

 

 

 

張っていた氷が割れて中から何事もなかったかのように玄士郎が現れた。

玄士郎は身体のどこにも異常はないかと左肩を動かしたり上半身を捻ったりした。

 

 

 

秋宗「馬鹿な・・・!?どうして・・・!?」

 

 

 

氷河獣王で完全に凍らせたはずの玄士郎がこうも簡単に氷を破ったことを秋宗は信じられなかった。

 

 

 

玄士郎「何故こうも容易く術を破れたかという顔よのぉ?それはこういうことだ」

 

 

 

焦りを見せている秋宗に玄士郎はニヤリと笑い答えを教えようとした。

すると秋宗の身体から黒い煙が吹き出し、それが玄士郎の切断された右肩へと集まり右腕へと変化した。

 

 

 

秋宗「なんで右腕が!?右腕は凍らせたはず!」

 

 

玄士郎「左様、確かに余の右腕は凍てついてしもうた。だがそれは表面だけに過ぎなかったのだ。それは余の身体も同様。貴様はまだ完全に秘術を使いこなせておらん。其故にこのような結果となったのだ」

 

 

 

秋宗との戦闘の中、自分の右腕が完全に凍っていないことに気がついた玄士郎は少しずつ個体から気体へと昇華させて秋宗の体内へ侵入させていたのだ。

 

 

 

秋宗「クソッ・・・!」

 

 

 

霊力をほとんど使ってしまった上に体内からのダメージを負ってしまった秋宗はもう玄士郎と闘う術がない。

完全に形勢逆転されてしまった。

ダメージが大きすぎるため、その場に手と膝をついてしまう。

 

 

 

玄士郎「だが、流石に先程の攻撃は肝を冷やしたぞ。もし貴様が秘術を完全に我が物としていれば負けていたのは余の方だ。褒めてやろう」

 

 

 

玄士郎は額に汗をかきながらゆっくりと秋宗へと歩みを進めてトドメを差そうとした。

秋宗はここまでかと諦めかけたその時、

 

 

 

朧「玄士郎様!」(ザッ

 

 

 

朧が秋宗を庇うように玄士郎の前に立ち塞がった。

 

 

 

朧「もう決着は着きました!お願いいたします!私は・・・ゆらぎ荘を退きます故!即刻!冬空と西条!そして彼女たちの解放を!」

 

 

 

これ以上を犠牲を出したくない朧は玄士郎の言うことに従いゆらぎ荘から出て行こうとした。

 

元は自分が龍雅家の誇りを守るために嘘をついてしまったことが原因だ。

そのせいで周りの人たちを危険な目に逢わせてしまった。

ならば自分が責任を取るしかない。

自分だけが犠牲になればいい。

そもそも自分は黒龍神の守り刀。

ゆらぎ荘にいるのも龍雅家のため。

 

朧は何度も自分に言い聞かせた。

 

そんな朧を見て玄士郎はやはりそうかと言わんばかりの顔になっていた。

 

 

 

玄士郎「本当に変わってしまったな、朧よ」

 

 

朧「・・・何も変わってなどおりません。私がゆらぎ荘にいたのはすべて・・・すべては龍雅家のためを思えばこそ・・・!」

 

 

 

ズドン!!!!

 

 

 

秋宗「ふざけんな!!」

 

 

 

突然大きな衝撃音と怒鳴り声が響き朧が振り向くと、這いつくばっている秋宗が朧を睨み付けていた。

右手は拳を作り地面に叩きつけて大きなヒビが入っていた。

 

 

 

秋宗「朧!!素直にそんなやつの言いなりになりやがって!!テメェそれでもお嬢のライバルか!?テメェの気持ちはどうなんだよ!?本当にこれでいいと思ってんのかよ!?」

 

 

 

まるでロボットのように玄士郎の命令に従い自分の気持ちをまったく主張しない朧に秋宗は玄士郎以上に怒りが込み上げてきていた。

 

 

 

朧「いいんだこれで・・・。それにお前と冬空は重症だ。一刻も早く治療を受けなければ死んでしまう。ここは玄士郎様の言うことに従うことが最善だ。それに言っただろう?私がゆらぎ荘にいたのは龍雅家の・・・」

 

 

秋宗「だったら!!だったらテメェの流してるそれは何だよ!?」

 

 

 

秋宗に言われて朧は自分の顔に触れると、左目の眼帯から一筋の涙を流していた。

朧は何故自分が涙を流しているのか分からなかった。

 

 

 

朧「これは・・・?」

 

 

秋宗「それがテメェの本心ってことだろ!?本当はゆらぎ荘を離れたくねぇんだろ!?自分の心に嘘ついてんじゃねぇよ!!」

 

 

 

秋宗の心からの叫びの振動が朧の頬に流れている涙へと伝わり、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ポチャンッ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と音を立てて地面へと落ちた。

 

それを目覚ましの合図とするように、

 

 

 

コガラシ「そうだぞ朧・・・あんなヤツの命令に従う必要なんかねぇよ」

 

 

 

今まで気を失って倒れていたコガラシがヨロヨロと立ち上がった。

朧と秋宗、そして玄士郎も思わず目を見開いてしまう。

そして朧の前まで歩き玄士郎と向き合い、

 

 

 

コガラシ「どうしても出られないってんなら、こんな場所・・・俺がぶっ壊す!!」

 

 

 

拳を構えて玄士郎から朧を解放すると宣言した。

 

 

 

秋宗「・・・ったく!今まで気を失ってたヤツがでしゃばりやがって!」

 

 

 

いい所を持って行こうとしているコガラシに秋宗は怒りが込み上げてくるものの、なんとか立ち上がりコガラシの隣に並んだ。

 

 

 

秋宗「乗り掛かった船だ!!俺たち2人でこの身勝手野郎をぶっ飛ばして朧の心を救うぞ!!」

 

 

コガラシ「おう!!」

 

 

 

重症を負いながらも、秋宗とコガラシは朧を助けるために玄士郎に立ち向かおうとした。

 

 

 




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