玄士郎「おおう、もう立ち上がるとは!流石は御三家の一角といったところか・・・そして異国の獣も大したものよのぉ・・・」
玄士郎は重症を負いながらも闘おうとする秋宗とコガラシを見て感心して思わず頬が上がってしまう。
朧「冬空!西条!傷は大丈夫なのか!?」
コガラシ「おう、気合い入れりゃあ破裂した肺くらいすぐ治る」
秋宗「もはやなんでもアリだなお前・・・」
チートすぎる八咫鋼の能力に秋宗は呆れた顔になってしまう。
ちなみに秋宗は僅かな霊力で体内の出血している箇所に氷を張り応急処置を施している。
氷河獣王を完全に体得していないとはいえ、氷の籠手を着けなければ秘術を発動出来ないわけではないためこのような芸当は可能である。
しかし、
秋宗・コガラシ『はぁ、はぁ、はぁ・・・』
ダメージが回復していない2人は呼吸が乱れてフラフラで立っているのがやっとの状態である。
朧「冬空!西条!」
限界が近い2人を朧は心配するがコガラシは手で静止した。
コガラシ「大丈夫だ、もうさっきみたいな不意打ちは喰らわねぇ。息止めてりゃいいだけだからな・・・」
秋宗「ま、取り敢えず・・・」(スッ
秋宗がコガラシの頬に手を翳すと、
パキィン!
コガラシ「!?」
コガラシの口元に氷が張られた。
氷はマスクのように鼻を口を覆い呼吸が出来ない形状になっていた。
秋宗「これでもう体内からの攻撃はできなくなるぞ」(パキィン!
そう言いながら秋宗も口元に氷のマスクを張った。
幼稚な方法だが、呼吸をしなければ玄士郎は体内へ手を侵入できないため効果は抜群である。
声には出せないが、コガラシはコクリと頷いて秋宗に礼を表した。
ガッ!!
秋宗・コガラシ『ッ!!・・・』
秋宗とコガラシの戦闘準備が整ったと見るや、玄士郎は2人に殴りかかってきた。
氷のマスクには当たらなかったが、拳が2人の頬をかすりそこから血が吹き出した。
玄士郎「ふははは!防御結界が薄くなっているぞ八咫鋼に異国の獣よ!?立ち上がったところで結局満身創痍ではないか!確かに呼吸をせねば体内への侵入は防げよう!だが!重症の貴様らにいつまで耐えられるかな!?」(ガガガガガガガッ!!
玄士郎は秋宗と闘った時のように連撃を繰り出した。
秋宗とコガラシは攻撃をすべて受けてしまい今にでも倒れそうなくらいフラフラの状態だった。
そして玄士郎は重い一撃を繰り出そうとしたその時、
キンッ!!
朧が秋宗とコガラシの前に立ち玄士郎の腕を弾き返した。
玄士郎「・・・なんの真似だ、朧!?」
邪魔をする朧に玄士郎は怒りを含ませて睨み付けた。
主の邪魔をしている朧は、
朧「・・・分かりません」
分からないと一言、そう答えた。
朧「ただ、冬空と西条が私のために傷つけられているが耐えられず・・・!」
声を震わせながら秋宗とコガラシのために玄士郎と闘おうとした。
玄士郎「邪魔をするならば貴様とて容赦せぬぞ朧!」
玄士郎は右手を巨大な刃へと変化させて朧へ切りかかった。
朧も両腕を刀身へと変化させて玄士郎と向かって行った。
ガキィン!ガキィン!
互いの刀を打ち合いながら朧の内心は混乱していた。
朧(分からない・・・何なのだこれは!?)
自分は龍雅家のためだけに生きてきた。
そう育てられ先代の黒龍神からもそう望まれた筈。
コガラシとの間に子供を授かるのも龍雅家のための筈。
それなのに何故、玄士郎の守り刀である自分はその玄士郎と闘っているのだろう?
そして何故自分は先程涙を流していたのだろう?
一体自分に何が起こっているのだろうと朧自身にも分からなかった。
玄士郎「おのれ朧!余の敵を庇い立てするとは!よもや龍雅の神刀ともあろう者が!人間如きに本気で情が湧いたとでも!?」
玄士郎に言われて朧はハッとなり目を見開いて秋宗がさっき言っていた言葉を思い出した。
秋宗『それがテメェの本心ってことだろ!?本当はゆらぎ荘を離れたくねぇんだろ!?自分の心に嘘ついてんじゃねぇよ!!』
朧(・・・あぁ、そうか。私は・・・)
朧は心に温もりを感じ思わず涙を溢してしまう。
玄士郎「もはや許さぬ!八咫鋼と異国の獣と共に消えるがいい!朧ォォォォ!!」
玄士郎は右手の刀を龍の手へと変化させて秋宗とコガラシもろとも朧を仕留めようとした。
玄士郎の怒りの一撃が朧に届きそうになったその時、
ズドンッ!!
秋宗が玄士郎の前に飛び出して拳を打ち込んだ。
そして打ち込んだ箇所からパキパキと氷が張ってきた。
しかし、
玄士郎「忘れたか異国の獣!?貴様の秘術は表面だけしか凍てつかせられないと!それに先刻と比べ氷が薄くなっているぞ!」
霊力を消費仕切っている秋宗の秘術は先程と比べ、氷の張るスピードが遅く氷の層も薄くなっていた。
だが秋宗はこれで十分だった。
一瞬でも玄士郎の動きを止めるだけで十分だった。
バッ
秋宗が拳を離して右へ跳ぶと、
ゴォォッ!!!!
玄士郎・朧『!?』
玄士郎の前から巨大な拳が迫ってきており直撃した。
巨大な拳の後ろにはコガラシが拳を突き出していた。
玄士郎(一体何が起きているのだ!?液化、いや気化して逃れ・・・!!)
しかし、玄士郎の身体は秋宗の氷河獣王で一部が凍っているためすぐに気化させることができなかった。
そのため逃れることができず拳に呑まれてしまい、
ズドゴォォォン!!!!
そのままドームを破壊して空間に大きな穴が開いた。
コガラシ「・・・っはぁ!」(パリン!
秋宗「やっと終わったぁ!」(パリン!
秋宗とコガラシは氷のマスクを拳で壊してようやく呼吸をすることができた。
2人ともドッと疲れがのし掛かりその場に座り込んでしまう。
朧「冬空、今のは八咫鋼の奥義か何かか?」
コガラシ「いや、ただの拳圧だ。拳に気合い溜めてる間はガードが薄くなっちまうのが難点だな」
朧「拳圧・・・!?」
秋宗「ダメだ・・・やっぱコイツに勝つイメージがまったく湧かねぇ・・・」
コガラシの攻撃の説明を聞いた朧は拳圧だけであれほどの破壊力があるのかと驚き、秋宗は上を向いて弱音を吐いてしまう。
コガラシ「だからさっきは助かったぜ朧!」
秋宗「まぁ俺も拳に霊力を集中させてたから隙だらけだったしな、守ってくれてサンキュー朧」
コガラシと秋宗は自分を守ってくれた朧に笑顔で礼を言った。
朧は少し戸惑ってしまうも口を開いた。
朧「いや、巻き込んですまなかった。それとな冬空、西条・・・私はその・・・」
玄士郎「ふははは!甘い!甘いぞ八咫鋼!そして異国の獣よ!」
朧の言葉を遮るように玄士郎の声が聞こえたため3人が咄嗟に振り向くと、
玄士郎「余は未だ健在なり!!」
そこにはなんと小さな玄士郎が立っていた。
先程の貫禄は綺麗さっぱり消えて3頭身のフィギュアのようになっており少しばかり可愛さも伺えた。
コガラシ「・・・えらくかわいくなったもんだな」
秋宗「黒龍神がLサイズからSSサイズになってやがる・・・」
朧「ご無事でしたか玄士郎さま!」
玄士郎「ギリギリ逃れた分がこれしかなかったのだ!残りの身体は八咫鋼の拳圧と共に空の彼方よ!」
玄士郎の現状の姿に秋宗たちは少し動揺してしまう。
間違って踏み潰さないように注意しながら玄士郎と向かいあった。
玄士郎「今の闘いは家臣たちも観ておった。これで奴らもよく分かったことだろう、まだまだ余では御三家に敵わぬと・・・」
秋宗「・・・ん?」
玄士郎の発言に秋宗は疑問に思った。
まるで最初からコガラシに倒させる前提で勝負を仕掛けたように聞こえたからである。
玄士郎「もはや余にはどうにもできぬわ!今後は貴様の好きに生きよ!朧!」
続けて放った玄士郎の言葉に朧はキョトンとなってしまう。
玄士郎の話によると、極龍如水を会得し龍雅城へ帰還すると家臣たちが盛大に喜びコガラシに1年前の復讐をと言っていた。
最初は玄士郎もその気だったが、朧の事情を知っていた衛兵たちからコガラシの人柄の良さや朧の楽しげな様子を知って気が変わった。
そこで朧の籠落作戦続行を家臣たちに認めさせるために玄士郎自ら一芝居打ったという訳らしい。
コガラシ「お前それ、俺が負けてたらどうするつもりだったんだ?」
玄士郎「その時は龍雅家当主として家臣たちの意を汲むのみよ。その程度の男ならば朧が籠落する価値はないのでなぁ」
コガラシ「お前ってホント偉そうだな」
秋宗「コガラシ、この人実際偉いから。一応は神に類する人だからな」
玄士郎の傲慢な態度にコガラシは呆れてしまうが秋宗は冷静に突っ込んだ。
玄士郎「だがな・・・」
玄士郎はフッと笑い、
玄士郎「そんなにか弱いわけがなかろう!貴様は余の姉が認めた男だぞ?冬空コガラシよ!」
朧のことを弟として大切に思っている言葉をコガラシに向けた。
聞いていた朧も感極まって泣き出してしまいそうだった。
秋宗(・・・この人、最初から朧のことを大切に思ってたんだなぁ)
秋宗は玄士郎の心情を読めなかった自分をまだまだだなと批評した。
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~ゆらぎ荘~ 午後7時
雲雀「ってことがあってさ~!散々だったよも~!」
食事をしながら雲雀は朝の出来事を仲居さんたちに話していた。
あの後、玄士郎は幽奈たちに謝り朧が転送門でコガラシたちを学校まで送っていったが、秋宗は治療を受けなければならなかったため緋扇邸へ送りスズツキに治癒の術を受けてから学校へ行ったため遅刻してしまった。
狭霧は自分がいない間にとんでもない自大になっていたことに表情が険しくなっていた。
仲居さん「それで、当の朧さんは?」
幽奈「色々後始末があると言ってましたけど・・・」
朧「それは無事に済んだ」
大広間に転送門が現れて中から朧が出てきた。
朧「家臣たちの説得に成功し今まで同様、私による冬空籠落作戦の続行が決まった。龍雅家のため、玄士郎さまのため、私は必ず成功させてみせる!」
そう言うものの、朧は神速で動いているため誰の耳にも入らなかった。
服をはだけさせてコガラシの上着を脱がして腕を前に出させてその上に座りお姫様抱っこさせられている状況をつくった。
朧「私は今日気づいたんだ、この速さで言っても聞き取れんだろうが・・・おそらくもう///私は貴様に惚れてしまっているぞ///」
頬を赤くしながらコガラシの耳元で好きだと呟いた。
コガラシ「・・・ハッ!?///」
コガラシは今自分が置かれている状況に気付き固まってしまった。
幽奈「朧さん!?///」
狭霧「朧!///貴様また・・・!///」
雲雀「も~!///何も変わってないじゃん!///」
幽奈たちは朧の相変わらずの行動に呆れて顔を赤くしてしまう。
呑子「あらおかえりぃ~」
夜々「おかえり朧」
呑子と夜々からおかえりと言われた朧は、
朧「あぁ・・・ただいま」
笑顔でただいまと返事をした。
『・・・・・』
朧「どうした・・・?」
ポカンとなっている幽奈たちに朧は疑問を浮かべてしまう。
こゆず「朧ちゃんが笑った~!」
幽奈「もう一回!もう一回笑ってみてせて下さい~!」
今まで朧が笑ったところを見たことがない幽奈たちにとって朧の笑顔はすごくレアなため盛り上がってしまう。
秋宗「・・・・・」
狭霧「どうした西条秋宗?ボォーっとして?」
秋宗「え?あぁいや、なんでもねぇ・・・」
みんなが盛り上がっている中、ずっと黙り込んでいる秋宗を見て狭霧はどうかしたのかと聞くが本人はなんでもないと言い切った。
なんでもないと言っていたが、秋宗は朧が転送門で緋扇邸に行く前に玄士郎が話したことを思い出していた。
玄士郎『よく聞くがよい異国の獣。貴様のその秘術は確かに強力だ。だが強力すぎる故に危険でもある。使い方を誤れば貴様の周りにいる者たちをも巻き込んでしまうぞ。だからこそ、1日でも早く完全に会得するのだぞ』
玄士郎から秘術の警告を受けて秋宗は自分が会得しようとしている氷河獣王がいかに危険な代物なのかと実感してしまった。
だからこそ、かるらとマトラの役に立つために氷河獣王を完全に我が物としなければと思った。
夜々「あ、氷が無くなった。秋宗、氷出して」
秋宗「夜々、俺は氷製造機じゃねぇぞ?」
グラスの氷が無くなってしまった夜々は秋宗に氷河獣王で氷を出すようにお願いするが一々そんなことで秘術を使うことが面倒な秋宗は冷静に突っ込んだ。
雲雀「それにしても秋宗くんのあの秘術凄かったよね~!」
呑子「夏とか便利そうねぇ~」
こゆず「一回見てみたいな~!」
朧「せっかくの機会だ秋宗、みんなに見せたらどうだ?」
秋宗「だからそんなことで一々秘術を使う訳には・・・ん?」
氷河獣王の話題で盛り上がっている中、秋宗はあることに気がつき朧の方を見た。
秋宗「朧、今俺のこと名前で呼んだか・・・?」
今まで名字で呼んでいた朧が名前で呼んだため秋宗は少し驚いてしまう。
朧「何だ秋宗?名前で呼んだらダメか?」
秋宗「いや、別にいいけどよ・・・」
朧「なら良かった。それとだな・・・」
朧は神速を使い秋宗の膝の上に乗った。
秋宗「・・・うおっ!?」
朧「お前にも感謝しているぞ、私のためにあそこまで怒ってくれたのだからな・・・」
秋宗はいきなり目の前に現れた朧に驚いてしまう。
一体何をする気なのだろうとみんなが注目していると、
チュッ・・・
秋宗「・・・へ?」
なんと秋宗の首の後ろに手を回して頬にキスをしてきたのである。
そして周りのみんなもポカンとなってしまう。
秋宗「お!?///おまっ・・・!?///」
朧「米国では感謝の気持ちを表す時はこうするのだろう?」
顔を赤くして戸惑っている秋宗を見て、朧は思わず笑ってしまう。
秋宗もまさか朧が自分にこんなことをするとは予想外で少しパニックになってしまう。
幽奈「何をやっているのですか朧さん!?///」
こゆず「朧ちゃんもしかして秋宗くんも狙ってるの!?」
雲雀「欲張りすぎるよぉ!///」
朧「いや、私はただ感謝の気持ちをだな・・・」
コガラシだけが狙いだと思っていた朧がまさか秋宗の頬にキスをするとは思わなかったためどういうことなのだと問い詰めようとした。
勿論朧はコガラシだけが狙いのためそんなつもりは毛頭なかった。
一方秋宗は、
秋宗「///・・・・・・・」
仲居さん「あのぉ~?秋宗くん?」
呑子「完全に思考停止してるわねぇ」
顔を赤くしたままフリーズしてしまい、復活するのに翌朝までかかってしまった。
感想の程、よろしくお願いいたします