緋扇邸のオオカミくん   作:アニアス

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第38話 暗躍する影

~ゆらぎ荘~ 午前7時

 

 

 

秋宗「ふわぁ~」

 

 

 

朝日が昇り眠気を堪えながらもアクビを漏らして秋宗は廊下を歩いていた。

顔を洗うために洗面所へ向かっているとコガラシたちが集まっていることに気がついた。

 

 

 

秋宗「何やってんだお前ら?」

 

 

幽奈「あ、秋宗さん、おはようございます・・・」

 

 

 

挨拶をした幽奈の表情は少し複雑で周りにいるコガラシたちの空気も少ししんみりしている。

そう感じた秋宗は絶対に何かあったのかと察した。

 

 

 

秋宗「仲居さん、何があったんすか?」

 

 

仲居さん「そ、それが・・・雲雀さんが、誅魔の里に帰ってしまったんですよ」

 

 

秋宗「・・・はぁ!?」

 

 

 

突然の朗報に秋宗は驚いて眠気も吹き飛んでしまった。

 

話によると厨房に雲雀が書いたであろう書置きが置かれており突然のことに仲居さんたちも驚いていた。

 

 

 

秋宗「アイツ俺らに何も言わないで出てったのかよ・・・!?」

 

 

 

雲雀は子供のように無邪気な所もあるが、突然理由も言わずこのこような行動を取るなど絶対にしない筈。

そう考えた秋宗は何か訳があると推測すると、

 

 

 

ガラララッ

 

 

 

浩介「おはようございまーす」

 

 

 

玄関の扉が開き浩介が挨拶をしてきた。

突然の朝からの訪問に秋宗たちは少し驚いてしまう。

 

 

 

秋宗「どうした浩介?こんな朝っぱらから?」

 

 

浩介「あのさ秋宗くん・・・雲雀さんいる?」

 

 

 

浩介は気まずそうな表情になりながら雲雀がいるかを聞いてきた。

秋宗たちはどうして雲雀のことを聞くのだろうと疑問に思ってしまう。

 

 

 

狭霧「・・・雲雀なら、誅魔の里に帰ったぞ」

 

 

秋宗の代わりに狭霧が雲雀のことを言うと、

 

 

 

浩介「・・・やっぱりか」

 

 

 

浩介は答えを分かっていたかのようにポツリと口から言葉を溢した。

 

 

 

こゆず「やっぱりって?」

 

 

浩介「へ・・・?あぁいや!いないならいいんだよ!朝早くにごめんね!じゃっ!」

 

 

 

まるで逃げるかのように浩介は慌てて扉を閉めてゆらぎ荘の階段を降りていった。

 

 

 

夜々「・・・怪しいの」

 

 

秋宗「やっぱそう思うか」

 

 

 

いつもと様子が違うことに気がついた夜々は目を細くして浩介が立っていたところを見た。

秋宗も浩介が雲雀のことを聞いてきたことに違和感を感じて雲雀が出ていったことに何か関係があるのではないかと推測した。

 

すると幽奈があることに気がついた。

 

 

 

幽奈「そ、そういえば!コガラシさんと狭霧さんと雲雀さんって昨夜一緒に任務行ってましたよね!?その時に浩介さんと何かあったのでは!?」

 

 

 

確かにコガラシたちは昨夜遅くまで妖怪退治の任務に行っていたためその時に何かあったのではないかと思ったが、

 

 

 

狭霧「い、いや、私も心辺りがまったくないんだ。それに、平賀浩介は昨夜の任務には動向していなかったんだ」

 

 

 

狭霧は即座に否定して浩介は関係ないだろうと主張した。

みんながどうしたものかと悩んでいると、

 

 

 

秋宗「・・・仕方ねーな」

 

 

 

秋宗が靴棚から自身の靴を取り履き出した。

 

 

 

幽奈「秋宗さん、どちらへ?」

 

 

秋宗「浩介に聞いてくる、アイツ絶対なんか知ってる筈だ」

 

 

 

爪先をトントンと踏んで玄関の扉を開き浩介を追いかけに行った。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

一方、ゆらぎ荘の近くにある公園では、

 

 

 

浩介「はぁ~・・・」

 

 

 

浩介が1人ベンチに座りため息をついていた。

その表情は後悔と悩みが入り交じっている表情だった。

 

 

 

浩介「雲雀さん、本当に帰るなんて・・・」

 

 

秋宗「やっぱりなんか隠してたな」

 

 

浩介「!?」

 

 

 

慌てて浩介が顔を上げると目の前に秋宗が立っていた。

 

 

 

浩介「あ、秋宗くん・・・!」

 

 

 

浩介の顔からは一気に汗が流れ引きつった表情になっていった。

それを見て秋宗は少し笑ってしまう。

 

 

 

秋宗「大丈夫だ、別に隠してたことを怒るつもりはねぇよ」

 

 

 

秋宗はそう言って浩介の隣に座った。

 

 

 

秋宗「なぁ浩介、雲雀に何があったんだよ?」

 

 

浩介「・・・・・」

 

 

 

最後の最後まで話すか話さないか悩んだ末、浩介は観念して昨日何があったか話すことにした。

 

 

 

浩介「実はさ、昨夜雲雀さんに会ったんだけど・・・」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

時間が遡ること昨夜の午後10時。

 

 

 

浩介『うわ~、夜ってこんなに暗かったっけ?』

 

 

 

暗い夜道を浩介が1人歩いていた。

 

本来なら今日は狭霧たちと一緒に任務に行く筈だったのだが、学校に提出する課題を明日までに提出しなければならないためそれを優先することにして同行しなかった。

そして課題を終わらせた浩介はジュースを買うためにコンビニに行った帰りで夜中の町を歩いている。

 

 

 

浩介『悪霊が出る前に早く帰んないと・・・ん?』

 

 

 

歩いていると向こうのバス停の前に誰かが立っているのが見えた。

一体誰だろうと目を凝らしてよく見てみると、

 

 

 

浩介『雲雀さん・・・?』

 

 

 

そこに立っていたのは雲雀だった。

今日の任務が終わってその帰りなのかと思い浩介は雲雀に声をかけた。

 

 

 

浩介『こんばんは雲雀さん』

 

 

雲雀『ッ!平賀、くん・・・』

 

 

 

声を掛けられた雲雀は肩をビクッと震わすも浩介と分かり少しホッとした表情になった。

 

 

 

浩介『任務の帰り?ごめんね今日来れなくて・・・』

 

 

雲雀『う、ううん!大丈夫だったよ!』

 

 

 

雲雀は申し訳ない表情になっている浩介に笑顔で気にしないでと言った。

 

 

 

浩介『にしてもこんなとこで何やってんの?それにその荷物・・・』

 

 

 

浩介は雲雀が背負っている大きめのリュックに視線を移した。

こんな時間に大きな荷物を背負い、オマケにバス停前に立っているのだから何ごとなのだろうと疑問に思ってしまう。

聞かれた雲雀は顔を伏せたまま声を震わせてこう答えた。

 

 

 

雲雀『・・・雲雀ね、誅魔の里に帰るんだ』

 

 

浩介『え?・・・あぁ帰省ね。今週戻るんだ』

 

 

雲雀『ううん、帰省じゃなくて・・・もう、この町には戻って来ないんだよ』

 

 

浩介『へぇ~そうなんだ~・・・えぇっ!?』

 

 

 

突然のカミングアウトに浩介は驚いて声を上げてしまう。

何の予告もなしにいきなり帰ると言われれば浩介でなくとも驚いてしまう。

 

 

 

浩介『な、何で急に!?秋宗くんたちは知ってたの!?』

 

 

雲雀『言ってないよ、さっき決めたから』

 

 

浩介『さっき!?』

 

 

 

トントン拍子にとんでもない事態へ進んでいることに浩介は頭の整理が追いつかなかった。

 

 

 

浩介『ちょっと待って雲雀さん!せめて何かあったかだけでも説明してよ!』

 

 

 

理由もなく雲雀がこんな行動を取ることに理解できない浩介は納得がいく理由を説明してほしかった。

 

そして雲雀は何があったかを言うことにした。

 

 

 

雲雀『・・・雲雀ね・・・コガラシくんに、告白したの・・・!』

 

 

浩介『・・・はい!?』

 

 

 

2つ目のカミングアウトに浩介は再び声を上げてしまう。

 

雲雀の話によると、任務の終わりに雲雀はコガラシと2人きりになり思いきって告白をした。

ずっと自分だけを見ていてほしいと気持ちを伝えたまでは良かったのだが、なんとコガラシはフッてしまったのだった。

フラれた雲雀は咄嗟にコガラシから逃げるように逃げてしまいこのまま一緒に居てもとても複雑な気持ちになってしまうため誅魔の里へ帰ることにしたのだった。

 

 

 

浩介『そんなことがあったんだ・・・』

 

 

 

雲雀の顔をよく見てみると目の周りが赤くなっており先程まで泣いていたのが理解できた。

 

 

 

雲雀『でもいいんだ!もう終わったことだから!』

 

 

 

雲雀が見せる笑顔は浩介から見れば悲しさを無理やり隠すための笑顔にしか見えなかった。

 

 

 

浩介『・・・あのさ雲雀さん、僕から雲雀さんの事情をとやかく言う筋合いはないけどさ・・・逃げるのは駄目なんじゃないかな?』

 

 

雲雀『・・・え?』

 

 

 

浩介の発言に雲雀は目を丸くしてしまう。

 

 

 

浩介『確かに好きな人からフラれるってのは凄く辛いことだと思うよ。けどさ、そこから逃げるだけじゃ何も解決しないと思うよ』

 

 

雲雀『・・・・・・』

 

 

 

任務の仲間として、友人として、浩介は雲雀が誅魔の里へ帰らないように説得をした。

人生は辛いことが必ず待ち受けている。

だからこそ、それと向き合っていかねばならない。

 

 

 

浩介『つまりさ、たかが1回フラれたくらいで諦めるんじゃなくて、何度も積極的に冬空くんにアピールすれば・・・』

 

 

雲雀『1回、フラれたくらい・・・?』

 

 

浩介『ひ、雲雀さん・・・?』

 

 

 

顔を伏せていた雲雀が突然肩をプルプルを震わせてギリギリと握り拳を作ったため、浩介はどうしたのかと疑問に思った。

そして次の瞬間、雲雀はバッ!と顔を上げて、

 

 

 

雲雀『平賀くんに何が分かるの!?知ったかぶりで好き勝手言わないででよ!!それにたかが1回フラれたくらい!?フラれたこともないくせによくそんなこと言えたね!!雲雀にとっては凄く悲しいことなんだよ!!もう雲雀のことなんかほっといてよ!!』

 

 

 

まるで鬱憤を晴らすかのように大声で浩介に怒鳴った。

フラれた辛さを体験していない浩介に涙を流しながら心の中で思ったことを洗いざらいぶつけた。

今までこんなに怒った雲雀を見たことない浩介は何も言い返すことができなかった。

 

 

 

ブロロロ・・・ プシュー

 

 

 

そこへ2人を仲裁するかのようにバスが到着してドアが開いた。

 

 

 

雲雀『・・・じゃあね!』

 

 

 

一刻も早くこの場を立ち去りたいが為か、逃げるかのように雲雀はバスへと乗り込んだと同時にドアが閉まり走り出した。

 

 

 

浩介『・・・・・雲雀さん』

 

 

 

浩介は茫然としたまま雲雀を乗せたバスを見送ることしかできなかった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

秋宗「なるほど・・・」

 

 

 

時は戻り現在、浩介から事情を聞いた秋宗は腕を組んで険しい顔になっていた。

事情は把握したものの事態はとても深刻なものとなっているためどうしたものかと悩んでしまう。

 

 

 

浩介「あ~もう!僕があんなこと言わなければ!何で僕は女の子のデリカシーを考えなかったんだろう!」

 

 

 

頭を抱えて後悔を口に出して浩介はひどく落ち込んでしまう。

もしあの時違う言葉をかけていれば雲雀を留めることができたかもしれないのにどうしてあんなことを言ってしまったのだろうと後悔の気持ちが強くなっていた。

 

 

 

秋宗「元気出せって。浩介は何も悪くねぇよ」

 

 

 

しかし秋宗は浩介を責めることもなく励ました。

浩介は別に悪気がなかったことを理解している秋宗は責めるようなことはしなかった。

 

 

 

秋宗「悪いのはそこに隠れてる女のデリカシーのデの字も知らないやつだ」

 

浩介「え?」

 

 

秋宗が数メートル先の木に言葉を投げ掛けると、

 

 

 

コガラシ「・・・・・」

 

 

狭霧「・・・・・」

 

 

 

なんと木の後ろからコガラシと狭霧が出てきた。

浩介の様子がおかしいことが気になった2人はこっそり秋宗の後を追っていたのだが秋宗の嗅覚で見つかってしまった。

 

 

 

浩介「冬空くん、雨野さんまで・・・」

 

 

 

当事者のコガラシが来たことにより、その場の空気が一気に重くなってしまう。

 

 

 

狭霧「平賀浩介、今の話は本当なのか・・・!?」

 

 

浩介「いや冬空くんに聞けばいいじゃん」

 

 

秋宗「で、どうなんだコガラシ?」

 

 

コガラシ「・・・全部本当だ」

 

 

 

問い詰められたコガラシは隠すこともなくあっさり答えた。

 

 

 

浩介「ちなみに聞くけど、何でフッたの?」

 

 

 

浩介から見て雲雀にフラれる要素がまったく分からない浩介は何故雲雀をフッたのかコガラシに恐る恐る聞いた。

 

 

 

コガラシ「・・・雲雀はいいヤツだし好きだけど、これが恋なのかどうなのか、はっきり言えねぇ。そんなあやふやな気持ちで付き合うってのは違うって気がしたんだ・・・」

 

 

狭霧「・・・そうか」

 

 

浩介「それは、確かにそうかもしれないけど・・・」

 

 

 

コガラシの言うとおり、相手のことを心から愛してるのか否か分からない状況で付き合うのは相手にとっても失礼だと狭霧と浩介は納得してしまう。

しかし秋宗は「はぁ~」とわざとらしく大きなため息をついた。

 

 

 

秋宗「だとしてもだ。返事をすぐに出さなくても『考えさせてほしい』って言って雲雀のことをどう思ってんのか深く考えてから答えを出しても良かったんじゃねぇのか?」

 

 

コガラシ「それでも、答えは同じだったと思う。それに、答えはすぐに出しとかねぇと、雲雀に失礼だろ」

 

 

 

秋宗の言うことも一理あるが返事を先延ばしにするのはかえって逆効果になってしまうかもしれない。

だからコガラシはすぐに返事を出したのである。

 

 

 

浩介「秋宗くん、これからどうしよう・・・?」

 

 

 

浩介は秋宗に雲雀のことをどうするか聞いてみた。

 

 

 

秋宗「放っておくしかねぇよ。これはコガラシと雲雀の問題なんだ。蚊帳の外の俺らが口出ししたところで意味ねぇさ」

 

 

狭霧「・・・そうだな、雲雀はしばらくそっとしておこう」

 

 

浩介「う、うん・・・」

 

 

コガラシ「・・・・」

 

 

 

昨夜みたいに励ましの言葉をかければかえって逆効果になってしまうため秋宗たちは口出ししないことにした。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

一方、誅魔の里の雨野家の一室では、

 

 

 

雲雀「・・・・・」

 

 

 

部屋の隅で雲雀が体育座りをして顔を伏せていた。

昨夜のコガラシにフラれたこともかなりのダメージを受けており、起きてからずっとこの調子である。

 

 

 

雲雀「はぁ・・・雲雀、平賀くんに、ひどいこと言っちやった・・・」

 

 

 

今思えば浩介は自分を励まそうとしてしただけなのに、冷静さを失って好き勝手浩介に言ってしまったと深く落ち込んでいた。

浩介を誅魔忍軍に率いれる任務を全うしているというのに自分のせいで浩介が身を引いてしまうと責任も感じていた。

 

 

 

雲雀「・・・このままじゃダメだ!」

 

 

 

雲雀は立ち上がり両手で頬をパン!と叩いて気持ちを切り替えた。

今さら思ったところで後の祭り。

コガラシのことは綺麗さっぱり忘れていかなければと決心した。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

~湯煙温泉郷~ 午後4時

 

空が赤くなっている時間帯、温泉郷の神社では骨董市が行われていた。

骨董市というだけあって、いかにも高そうな壺や皿、掛け軸などが売られていた。

 

その中を狭霧と浩介は一緒に歩いていた。

今日の任務は異常がないかの見回りで至極簡単な任務をこなしている。

 

 

 

うらら『2人とも、状況はどうや?』

 

 

浩介「今のところ、異常はないよ・・・」

 

 

狭霧「こっちは大丈夫だ・・・」

 

 

 

霊視通信でうららから連絡が入り浩介と狭霧は異常なしと答えるも雲雀のことが気になっているせいかいつもより元気がなかった。

 

 

 

浩介「・・・ねぇ雨野さん」

 

 

狭霧「何だ・・・?」

 

 

浩介「雨野さんってさ、雲雀さんのことどう思ってるの?」

 

 

 

浩介の突然の質問に狭霧は首を傾げてしまう。

 

 

 

狭霧「どうとは?」

 

 

浩介「いや、なんて言うか、心配してないのかなー?って思ったからさ」

 

 

狭霧「・・・確かに雲雀のことは心配だ。しかし西条秋宗も言ってただろ?私たちが口出ししたところでどうにもならん、今はそっとしておくのが1番だ」

 

 

 

従姉妹として雲雀のことは心配だが今さらどうこうできる訳もないため狭霧は事が治まるまで待つことにした。

 

 

 

浩介「・・・そういえばさ、雨野さんと雲雀さんって、冬空くんと結婚する任務があるって浦方さんから聞いたんだけど」

 

 

狭霧「ッ!?話したのかうらら!?」

 

 

うらら『ス、スマンな!つい口が滑ってしもうて!』

 

 

 

霊視通信越しにうららは慌てて狭霧に謝った。

ちなみに浩介を誅魔忍軍に率いれる任務は喋っていないため浩介にはまだバレていない。

 

 

 

浩介「けどさ、雲雀さんは任務とか関係なしに、本当に心から冬空くんのことが好きだったんだと思うよ」

 

 

 

もし任務だったらあそこまで泣く訳がないと思った浩介は雲雀が本当にコガラシのことを好きだったのだと理解していた。

狭霧もそこは薄々感じていたが任務の時間を無駄にする訳にもいかないため、

 

 

 

狭霧「この話は終わりだ。任務を続けるぞ」

 

 

 

見回りを再開しようとしたその時だった。

 

 

 

「うわぁーーーー!!」

 

 

「きゃーーーー!!」

 

 

狭霧・浩介『!?』

 

 

 

突如悲鳴が聞こえてきたため狭霧と浩介が悲鳴の方を見ると、なんとそこには江戸時代に使われていそうな大きな鋏が浮いており握る箇所には黒い火が灯っていてまるで目がついているかのようだった。

大きな鋏はブンブンと動いて辺り構わず暴れていた。

 

 

 

狭霧「妖怪だと!?うらら!」

 

 

うらら『分かっとる!今解析中や!』

 

 

 

鋏の妖怪の正体を知るためにうららは急いで情報を集めていた。

そんなことなどお構い無しに妖怪は骨董品を次々に壊している。

 

 

 

コンッ・・・

 

 

 

「!」

 

 

 

すると妖怪に何かが当たり何が当たったか確認すると地面に石がコロコロと転がっていた。

この石を誰かが自分にぶつけたと理解した妖怪は辺りを見渡すと前方に何かを投げた後の体制になっている男を見つけた。

 

その男とは浩介だった。

 

 

 

浩介「こっちだ!」

 

 

 

人に被害が及ぶ前に妖怪をなるべく遠くへ引き付けようと浩介は森の中へと走っていき、妖怪も追いかけるように森へと入っていった。

 

 

 

狭霧「平賀浩介!なんという無茶を!」

 

 

 

浩介を助けるために狭霧も森の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

浩介「ハッ!ハッ!ハッ!」

 

 

 

暗い森の中を浩介は必死になって走っていた。

後ろを見ると黒い炎が見えてちゃんと妖怪が自分を追いかけていると理解した。

自分でも馬鹿なことをしたと少し後悔するものの周囲の人たちから注意を反らせたと少し安心した。

 

しばらくすると木が生えていない広い場所へ着き浩介は立ち止まり振り向いた。

奥から浩介に追い付いた妖怪が飛び出してきた。

 

 

 

浩介「ここまで来れば大丈夫な筈・・・!」

 

 

 

浩介は持っていたアタッシュケースを開けてあるものを取り出したその時、

 

 

 

シュンッ! スタッ

 

 

 

狭霧「1人で無茶をするな平賀浩介!」

 

 

 

木から狭霧が飛び出してクナイを構えて浩介の隣へ降り立った。

しかし狭霧の姿はさっきとうってかわって私服から黒い全身タイツを身に纏っていた。

 

狭霧が身に纏っているタイツは霊装結界。

肉体的なダメージや呪いなどを防ぐことができる代物でダメージを受けると痛みは来ないが代わりにランダムで何処かが破けてしまうものである。

身体のラインが露になっており、浩介は初見でかなり慌てふためいてしまったものの何度も狭霧と任務を同行したおかげで今ではすっかり慣れていた。

 

 

 

浩介「ごめん雨野さん・・・!」

 

 

狭霧「分かってるなら構わな・・・貴様一体何を持っているのだ?」

 

 

 

狭霧は浩介が持っているものを見て思わずゾッとしてしまった。

何故ならそれはショットガンだったからだ。

 

 

 

浩介「大丈夫。これは対妖怪・悪霊用に作った発明品だから」

 

 

 

いつも使っている霊砲バズーカは威力は高いものの霊力の消費の効率が悪いため試作としてショットガン形状のものを作ったのである。

使用者の霊力を消費しないがデメリットとして霊力がこもった弾を込めなければならない。

 

 

 

狭霧「それならハンドガンとかの方が効率がいいだろ」

 

 

浩介「だって僕ターミネーター好きなんだもん」

 

 

狭霧「ターミネーターが好きだという理由でショットガンにしたのか!?」

 

 

浩介「いいじゃん別に、ッ!危ない!」(ドンッ!

 

 

 

2人によるコントに痺れを切らした妖怪が突っ込んできたことに気づいた浩介は咄嗟に狭霧を突き飛ばした。

おかげで妖怪は2人の間を通り過ぎただけで空振りに終わってしまった。

 

 

 

狭霧「す、すまん!助かった!」

 

 

浩介「浦方さん!何の妖怪か分かった!?」

 

 

うらら『まだ解析中やけど切られると何かしらの呪いを受けるみたいや!』

 

 

 

うららはまだ特定出来ていないものの判明した限りの情報を狭霧と浩介に説明をした。

 

 

 

狭霧「下がっていろ平賀浩介!生身の貴様では攻撃を受けてしまえば確実に呪いを受けてしまう!」

 

 

浩介「分かった!じゃあ僕は後方支援ってことで!」

 

 

 

狭霧が前に出て近距離で攻撃を与え浩介はショットガンで援護をするコンビネーションがいい役割で妖怪を倒すことにした。

 

まず狭霧が飛び出して妖怪に目掛けてクナイを振り下ろした。

キィィィン!と金属がぶつかる音が響き妖怪は諸に攻撃を受けてしまう。

お返しと言わんばかりに妖怪も狭霧に攻撃をかまそうとするものの、

 

 

 

ズドォン!!

 

 

 

ショットガンを構えた浩介が妖怪に弾を打ち込みその反動でよろめいてしまう。

 

まだ数分も経っていないにも関わらず妖怪はヨロヨロとふらついており明らかに限界が近い状態になっていた。

 

 

 

浩介「なんとかいけそうだね!」

 

 

狭霧「あぁ!だが油断するな!」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

???「フ~ン?アレがアメノサギリとヒラガコウスケ・・・」

 

 

 

狭霧と浩介が妖怪を倒している光景を離れたところから見ている人物がいた。

森の影で容姿までは見えないがカタトコの日本語口調で喋っている。

 

 

 

???「サワギが起コテタから来テミタラ、アノ2人がイタから少シ驚キネ・・・ソレニシテモ2人トモ中々強クテイイ連携ネ」

 

 

 

狭霧と浩介の戦いぶりをその人物は評価していた。

妖怪もあと一歩で倒せる状況になっていた。

 

 

 

???「デモコノママ終ワテモツマラナイネ。ワタシが少シ面白クシテアゲルヨ」

 

 

 

そう言ってその人物は人差し指と中指を立ててボソボソと何かを呟いた。

 

 

 




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