~ゆらぎ荘~ 午後7時
『いただきまーす!!』
コガラシたちは大広間で夕食を取っていた。
料理はサラダや冷奴、そしてこの日のために練習したかるらが作った肉じゃがだった。
大広間にはコガラシたちゆらぎ荘の入居者と千紗希と紫音、浩介と七海もいた。
浩介は狭霧に、七海はこゆずに、紫音は夜々に誘われて来ていた。
みんなは真っ先に肉じゃがに箸を伸ばし口へ運んだ。
呑子「おいし~!」
浩介「流石ッスね!」
狭霧「くっ!悔しいが認めざるを得ない・・・!」
みんなはかるらが作った肉じゃがを大絶賛していた。
しかし、かるらはそんなことなどまったく耳に入っておらず愛しのコガラシの感想だけを聞こうとしていた。
かるら「コ、コガラシ殿!///その、味の方はどうじゃ・・・!?///」
コガラシ「あぁ!スゲェ旨いぜ緋扇!」
かるら「さ、さようか!///」
コガラシから褒められ更に笑顔まで見ることができたかるらはとても嬉しく顔が真っ赤になっていた。
寝る間も惜しんで特訓した甲斐があったと心の中で実感した。
かるら「で、では妾が自ら食べさせて」
雲雀「ダメ!コガラシくんにアーンさせるのは雲雀がするんだから!」
かるら「黙れ雲雀!コガラシ殿のアーンは妾がするのじゃ!」
幽奈「いえ!かるらさんはお料理を作ってお疲れですならここは私が!」
朧「抜け駆けは許さんぞ湯ノ花!」
誰がコガラシにアーンさせるのか本人の前でかるらたち4人が言い争い、その見慣れた光景にみんなはやれやれと笑ってしまう。
七海「相変わらずモテモテね、やっさん」
仲居さん「ふふっ、そうですね」
マトラ「にしても秋宗のヤツ、予定かなんか知んねぇけどアタシらになんも言わずに食べに行くなんてなぁ」
マトラは秋宗がいない席を見ながらポツリと呟いた。
かるら「・・・放って置け、あんなアホのことなど」
千紗希がかるらが秋宗に頼んだお菓子を持って来た時、かるらはどうしたのだろうと疑問に思ってしまうも千紗希から秋宗が西軍の知り合いとご飯を食べに行ったと聞いた途端、かるらは顔を真っ赤にして怒ってしまった。
自分が肉じゃがを作っているにも関わらず食べに行った秋宗に怒りしかなかったからだ。
こゆず「ねぇねぇ千紗希ちゃん、秋宗くんに会いに来た人ってどんな人だったの?」
夜々「気になるの」
紫音「もしかして、女性の人ッスか・・・!?」
千紗希「えっ!?」
約1名気になる発言をしたものの、こゆずたちからその人物に聞かれた千紗希は内心焦ってしまう。
千紗希(どど、どうしよう・・・!?)
秋宗から口止めされている千紗希は中国から来た超極悪人などと言える訳もなく必死に言い訳を考え、そして、
千紗希「ち・・・」
こゆず「ち?」
千紗希「ち・・・チャラい人だったよ!」
夜々・紫音『・・・チャラい人?』
千紗希「うん・・・!チャラい人!」
中国と言いそうになったものの適当にチャラい人と言って誤魔化した。
チャラい人と言われてこゆずたちは首を傾げてしまう。
マトラ「・・・おひいさん、もしかして茜のことじゃねぇか?」
かるら「確かにアヤツしかおらんのう・・・アヤツめ、とうとうここまで来よったか・・・!」
千紗希の話を聞いていたマトラは茜という人物の名前を挙げるとかるらの眉間にシワが寄りイライラし出していた。
呑子「かるらちゃんたちの知ってる子?」
マトラ「まーな、アタシとおひいさんと秋宗以外にもう1人緋扇軍にいるヤツがいてな。中学からの付き合いなんだけどよ、やたらおひいさんにちょっかい出すんだよなぁ~」
かるら「あんなヤツ大ッ嫌いじゃ!妾のケーキを勝手に食べるわ!昼寝をしていたら顔に落書きされるわ!コガラシ殿の湯上がりシーンの写真を燃やすで嫌がらせしかしとらんのじゃぞ!」
狭霧「待て!最後のはおかしいだろ!」
浩介「少なくとも最後のはその人が正しいと思うよ!」
偶然にも適当に言ったチャラい人がかるらたちの知り合いらしく千紗希はホッとするのだった。
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一方、町から離れた廃倉庫では、
ズドォォォォォン!!
秋宗「チィッ・・・!」
炎焔「オォット!!」
秋宗と炎焔が激闘を繰り広げていた。
夜になり秋宗は狂暴性10倍の姿で身体能力が上がっているも、炎焔の素早い動きや青龍刀からの灼熱の斬擊で翻弄し互いに五分五分の状況である。
廃工場は煙の臭いで充満し、あちこちで火がついていたり氷が張ってあったりと2人の激しい闘いを物語っていた。
炎焔「流石ネ~!アメノサギリヤヒラガコウスケトハ大違イノ実力デ嬉シーヨー!」
炎焔は秋宗の中々の実力に喜ぶが、その表情は狂気が混ざった恐ろしい笑みだった。
秋宗「クソッ・・・!余裕ぶっこぎやがって・・・!」
炎焔の余裕の様子に秋宗は苛立ちしか込み上げて来なかった。
しかし実際、炎焔の実力は筋金入りで霊界新聞の記者の京太郎の情報通り御三家と同等と言える程だった。
その証拠に刃物や弾丸を防ぐ毛皮にも切り傷があちこちにできており毛が黒く染まっている。
秋宗(けど、だいたいヤツの秘術、獄炎花だったか?それの攻撃も大方掴めてきた・・・)
平静を装いながら、秋宗は炎焔の秘術を理解しかけていた。
炎焔の秘術、獄炎花の特徴は術者の持っている武器に炎を纏わせることができ、その影響で切れ味が増したり攻撃範囲を拡げたり斬擊を飛ばすことができる。
更に術者の周囲に炎を一気に放出することもでき一対多数にかなり有利な攻撃もできる。
炎焔と激闘を繰り広げた末、秋宗は炎焔の攻撃範囲やパターンを予測し次の攻撃で一気にカタをつけようと決心していた。
その時だった。
炎焔「攻撃パターンモ分カタカラ次デ決メテヤル!テ思テルデショ?」
秋宗「ッ!!」
炎焔はまるで秋宗の頭の中を読んだかのような発言をした。
これには秋宗も驚いてしまう。
炎焔「マァ当然ト言エバ当然ネ。闘エバ大体ノ人ハ攻撃パターンヲ掴ムヨ・・・デーモー、コノ程度ノコトデヤラレルヨウダッタラ、私ハトック二ヤラレテルヨ」
秋宗「?・・・」
攻撃パターンを予測されているにも関わらず余裕の炎焔を見て秋宗は警戒してしまう。
まだ何か奥の手でもあるのかとそう思った時だった。
炎焔「セイッ!!」
ボォゥッ!!
秋宗「クッ!!」
炎焔が炎の斬擊を秋宗目掛けて飛ばし、咄嗟のことに反応が遅れた秋宗は腕をクロスさせてなんとか防ぐことができた。
それと同時に炎焔へ視線を戻すと、いつの間にか炎焔が秋宗との間合いを詰めて青龍刀を持っている右手を振り下ろそうとしていた。
もう避けることもできず食らってしまうと思った時、
秋宗(もうここしかねぇ!!)
秋宗はこれを逆にチャンスと思い炎焔に爪で斬りかかろうとした。
狙うはカウンター、もうこれしかない。
相討ち覚悟で互いの攻撃が届きそうになったその時だった。
ビュオォォォォォォッ!!
秋宗「何ッ!?」
突然炎焔が翳した左手から突風が発生し秋宗は吹き飛ばされてしまい、
ガァンッ!!
秋宗「グゥッ!?」
そのまま背中から壁へ激突してしまった。
秋宗には理解出来なかった。
炎系統の秘術を使っていた相手がいきなり風を起こすなどありえないと。
炎焔「アッハハハハハ!!」
苦痛の表情の秋宗を見て炎焔は腹を抱えて大笑いをしていた。
炎焔「油断シチャッタネ!ネェネェドウドウ?私ノモヒトツノ秘術『烈風覇』ノ威力ハサ!?」
どうやら炎焔は炎系統の秘術の他にも風系統の秘術も使えるらしく思い通りに引っかかった秋宗にもう笑うしかなかった。
秋宗「んなのアリかよ・・・!?」
秋宗は壁に手を掛けながら立ち上がり炎焔と向き合った。
まさか風系統の秘術を使うなど夢にも思わず、完全に見誤った自分を悔いてしまう。
炎焔「ホラホラドンドン行クヨ!」(ビュォンビュォン!!
休む暇も与えず炎焔は左手から突風の塊を連続で秋宗へ飛ばしていった。
秋宗「チィッ!!」(シュルルルッ
今の姿では恰好の的になってしまうため、秋宗は一旦人の姿へと戻り向かってくる突風の塊をかわしていった。
氷の壁を作って防ぐ手もあるがなるべく霊力を消費しないために攻撃を掻い潜る手段を選んだのだった。
そして攻撃をかわし続けた秋宗は重機の陰へ身を隠すことにした。
秋宗「はぁ、はぁ・・・!まさか、秘術を2つも持ってるとはな・・・!」
息を整えながら炎焔の炎系統の秘術だけでなく風系統の秘術も間合いやパターンを見抜かなければと思った。
その時だった。
バチバチ・・・
秋宗「?」
何やら変な音が聞こえてきたため秋宗が耳を傾けると、
バリバリバリバリィィィィッ!!!!
秋宗「!!?」
突然大きな音へ変わり秋宗の横を何か白い光のようなものが走った。
その箇所を見ると獄炎花とは違い黒い焦げた線が伸び煙が上っていた。
秋宗はまさか!?と思い重機から飛び出し炎焔を見ると、なんと今度は炎焔の左手から白い光を発している鞭のようなものが出ていた。
そしてその鞭はバチバチと音を立てて電気を帯びていた。
炎焔「ゴッメ~ン!実ハ私モヒトツ『威鳴』テイウ秘術持テルンダッタ~!」
ニヤニヤと口元を歪ませながら炎焔はもう1つ秘術を持っていたことを心なしに謝った。
秋宗「今度は雷系統かよ・・・!?」
コイツは一体いくつ秘術を使えるのかと秋宗の頭は少しパニック状態になっていた。
もしかしたら今まで見た3つの秘術の他にもまだ隠しているかもしれないと思ったからだ。
炎焔「サァ~テト、ココカラガ本番ヨ!!」(ブォン!
そう言って炎焔は左手の雷の鞭を振るった。
秋宗「ウォッ!?」
鞭はまるで生き物のように秋宗に目掛けていくが身体を捻ったり反らしたりで中々捉えられずにいた。
しかし徐々に秋宗に疲れが見え出し、そして、
バチィィン!!
秋宗「アガッ!?」
ドォォォン!!
とうとう鞭が秋宗の身体を捉えて電気を帯びてしまいそのまま壁へと吹き飛ばされてしまった。
秋宗「コイツ・・・!マジで強すぎる・・・!」
痺れる身体に鞭を打ち秋宗はフラフラになりながら立ち上がると、
ビュォンビュォン!!
秋宗「!!」(バッ
バキィィィンッ!!
風の音が聞こえまた突風が来たと思い咄嗟に氷の壁を作って攻撃を防ぐも、
ボォゥッ!!
氷の壁が斜めに斬られその向こうから炎を纏った青龍刀を持った炎焔が突っ込んで来ていた。
秋宗「オラァッ!」
ドカッ!!
炎焔「オォッ!?」
このままやられっぱなしはゴメンの秋宗は炎焔の腹に蹴りを入れて後ろへ吹き飛ばすも、咄嗟に受け身を取っていた炎焔はまるで空中パフォーマンスのようにスタッと着地をした。
炎焔「中々ヤルネ~」
蹴られた箇所を軽く払いながらも炎焔にはまだ余裕が見受けられている。
秋宗「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
一方秋宗はまだ霊力は残っているものの、今までのダメージが蓄積しており疲労がズッシリと身体にのし掛かっていた。
秋宗(ヤベェ・・・こりゃなんとか打開策を見つけねぇとやられちまう!何かないか!?ヤツの弱点!?)
炎を武器に纏わせる『獄炎花』
突風の塊を飛ばす『烈風覇』
雷の鞭を振るう『威鳴』
この3つの秘術に何か弱点がないかと必死に考えるも炎焔が使いこなしているせいか全く思いつかなかった。
何かないかと頭を捻っていると、ふと疑問に思うことがあった。
秋宗(そういや、俺が最後に蹴り入れた時、何で風系統の秘術を使わなかったんだ・・・?)
蹴りを入れた時、炎焔は烈風覇を使わず敢えて攻撃を受けたことに秋宗は疑問を持った。
初めて自分に秘術を見せた時のようにカウンターの隙をついて突風を飛ばすこともできた筈。
にも関わらず炎焔は攻撃を受けた。
普通なら使う暇もなかったから仕方なく防御の体制を取ったと考えるが秋宗にはどうしてもそこが引っ掛かっていた。
秋宗(まてよ・・・!?そういえばコイツ・・・!)
その時、秋宗の頭にある仮説が過った。
炎焔の3つの秘術。
カウンターで風系統の秘術を使わなかった。
秘術を使うタイミング。
今までのバラバラに散っていたピースが当てはまっていき、そして、
秋宗「・・・・・そうか分かったぞ!お前の秘密!」
感想の程、よろしくお願いいたします。