緋扇邸のオオカミくん   作:アニアス

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第45話 秋宗絶体絶命

秋宗「ハァ、ハァ、ハァ・・・」

 

龍三姉妹との激闘の末、秋宗は勝利し心底安心して人間へ戻っていった。

長女の炎焔は蹴り飛ばされ、次女の風は仰向けで動けず、三女の雷は氷で壁に張り付けにされ、3人とも動ける様子ではなかった。

 

秋宗「ホントに、ギリギリだった・・・!」

 

秋宗は息を整えながら龍三姉妹の実力に感心していた。

炎焔を始め風も雷も相当手強く、ここまでの強敵と闘ったのはコガラシ以来だった。

もし満月が出ていなかったら確実に負けていただろう。

 

秋宗「さて、どうしたもんか・・・」

 

このままのボロボロの状態で帰ったらかるらたちに質問攻めされるのは目に見えているためどうにかして誤魔化せる言い訳を考えていると、

 

炎焔「ヤッテクレタネ」

秋宗「!?」

 

後ろから声が聞こえ咄嗟に振り向くと、そこには倒れていた筈の炎焔が立っていた。

蹴られたせいか、服が少しボロボロで髪も乱れていた。

そして自分をここまで追い込んだ秋宗を静かに鋭く睨んでいた。

 

炎焔「マサカココマデノ実力ヲ隠シテタナンテ、甘ク見スギテタヨ・・・」

秋宗「チッ、まだやれんのかよ・・・!?」

 

霊力をかなり消費してしまっているはイラつきを露にしながらも身構えた。

 

炎焔「・・・風、雷、動ケル?」

 

炎焔は妹の風と雷に声を掛けると、

 

風「ナントカ、大丈夫ダゼ・・・!」

雷「ごめんなさい炎焔姉さん、動けない・・・」

 

ダメージが回復した風はフラフラになりながらもなんとか立ち上がるも、氷で張り付けにされている雷は動けそうになかった。

 

炎焔「・・・2人トモ、少シ待テテネ。オ姉チャンガナントカスルカラ」

 

風は雷と違い動けるが万全に動くにはもう少し休ませた方がいいと炎焔は判断し、2人にじっとしておくように言い聞かせた。

風は何か言いたそうだったが、ここは素直に炎焔の言うことを聞くことにした。

 

炎焔「・・・マズ謝トクヨ、私タチハ完全ニキミノコトヲ嘗メテタヨ」

 

秋宗は油断せず炎焔と対峙しながら風と雷も警戒していた。

もしかしたら回復し終えた風が攻撃を仕掛けてくるかもしれないと。

 

炎焔「ダカラ、オ遊ビハモウ終ワリ。ココカラハ、本気デヤラセテモラウヨ・・・!!」

秋宗「ッ!!」

 

声のトーンが急に下がり尋常じゃない程の霊力が溢れ出している炎焔を見て秋宗は額から汗を流してしまう。

 

秋宗「こうなりゃ、もうやるしかねぇ!!」(グググッ!

 

秋宗はもう一踏ん張りと言わんばかりに狂暴性50倍の姿になり氷河獣王を発動させた。

既にボロボロだがそれは炎焔も同じこと。

このまま一気に攻めれば勝てると思った。

 

炎焔「・・・モウ手段ハ選バナイヨ。徹底的ニ追イ詰メテ殺シテアゲルヨ」

 

そう言って炎焔は左手で拳をつくり、

 

炎焔「フンッ!」(ブンッ

 

ガァン!!

 

後ろに建っている柱を思い切り叩いた。

 

秋宗は何をやっているんだ?と疑問に思うと、炎焔が叩いた柱に赤いスイッチが設置されていた。

 

そして次の瞬間、

 

 

 

プシャァァァァァァァァァァッ!!!!

 

 

 

秋宗「!?」

 

なんと天井から大量の水がシャワーのように降り注いできて、秋宗を始め炎焔、風、雷を濡らしていった。

突然のことに秋宗は咄嗟に上を向くと天井に取り付けられている無数の鉄パイプから水が噴き出していた。

 

つまりこれは、

 

秋宗「スプリンクラー・・・!?」

 

そう、今炎焔は押したのはスプリンクラーの作動スイッチだったのだ。

 

秋宗「・・・けど、こんなことして一体?」

 

スプリンクラーを作動させて辺り一面を濡らす炎焔の狙いが秋宗にはまったく理解できなかった。

 

考え込んでいたその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドクンッ・・・

 

 

 

 

 

秋宗「ッ!?グアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!??」

 

 

 

突然秋宗が苦痛の悲鳴を上げてその場で転げ回ったのだ。

秋宗はまるで全身を鞭で叩かれいるような、または熱湯を浴びているかのような、そんな言葉では表せられない激痛が身体中に走っていた。

 

秋宗「ガァァァッ!?ウグァァァァッ!?」

 

激痛で考える暇もない秋宗は無意識に人間の姿へと戻ってしまい氷河獣王も解除されていた。

更に辺り一面に張っていた氷も徐々に溶けていき、

 

雷「ふぅ、これでようやく動ける・・・」

 

雷の氷も溶けて身動きが取れるようになってしまった。

 

秋宗「アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!???」

 

その後も秋宗の苦痛の叫びは続くもスプリンクラーの音でかき消されてしまった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

5分後、

 

ポタッ、ポタッ・・・

 

秋宗「ッハァ・・・!ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」

 

スプリンクラーがようやく停止し排水口から雫が静かに垂れ落ちていた。

秋宗はスプリンクラーが止まったことに安心するが、身体中には火傷でも負ったかのように至るところが赤くなっており見るに堪えがたいものだった。

 

秋宗「な、何だよコレ・・・!?」

 

秋宗はなんとか立ち上がろうとするが、身体中に激痛が残っており、どういう訳か力も入らず四つん這いになるのがやっとだった。

 

炎焔「・・・噂通リ、効果適面ネ」

風「マサカ、ココマデ苦シムナンテナ」

雷「少し驚き」

 

一方同じくスプリンクラーを浴びていた龍三姉妹は濡れているにも関わらず平然としていた。

 

炎焔「苦労シテ聖水ヲ手ニ入レタ甲斐ハアッタネ」

秋宗「せ、聖水・・・!?」

 

炎焔の口から出た聖水という言葉に秋宗はオウム返しをしてしまう。

つまりあのスプリンクラーの水は聖水ということになるが、それがどういうことなのかまったく分からなかった。

 

炎焔「ン?モシカシテ、知ラナイノ?」

 

秋宗の様子を見て炎焔は聖水について何も知らないことに少し驚いてしまう。

そこで風と雷は秋宗に聖水について説明を始めた。

 

風「聖水ッテノハナ、西洋ヤ欧米ノ妖怪ニトッテハ天敵ナンダゼ!」

雷「効果はダメージを与える他にも、弱体化させることもできる」

 

風と雷の説明を聞いて秋宗はあることを思い出した。

 

秋宗(そういや、前に母さんがなんか言ってたな!)

 

 

 

マーレ『聖水ナンテ浴ビタラダメヨ!ホントにアレ痛インダカラ!!』

 

 

 

と、前にマーレが言っていたことを思い出し、まさか聖水がここまで効くなんて秋宗にとって想定外だった。

 

その時、

 

ズドォンッ!!

 

秋宗「グフッ!?」

 

突然間合いを詰めてきた風が秋宗の腹にボディブローをかました。

その拍子に秋宗は立ち上がることができたが、口から血が霧のように吹き出した。

 

風「サッキノオ返シヲサセテモラウゼ!」

 

風は両腕に突風を纏わせて秋宗に殴り掛かってきた。

 

秋宗「クッ!?」

 

咄嗟に秋宗は風の攻撃を身を翻し紙一重でかわしたが、

 

ザシュッ!!

 

秋宗「ガァッ!?」

 

なんと回避した筈なのに秋宗の胸に爪で引っ掻かれたかのような大きな切り傷ができた。

 

風「ドーヨ!?回避不可能ノ技『旋風迅』ハ!?」

 

風が両腕に纏っている突風には無数のかまいたちが発生しており、拳を回避できたとしてもかまいたちの射程範囲から逃れることができず斬撃まで回避することはできない。

秘術を応用した風だけにしかできない技である。

 

秋宗「くっ・・・!ぅあぁ・・・!」

 

人間の姿でマトモに斬撃を受けてしまい更に聖水の影響で秋宗は窮地に追い込まれてしまった。

 

雷「抜け駆けしないで風姉さん、私も彼にやり返したいから」

 

そこへ追い討ちを掛けるように雷が前に出た。

秋宗はフラフラになりながらも攻撃を回避するために身構えた。

 

雷は威鳴の鞭を出し振り上げると、

 

雷「乱武!雷速・壱段(らいそく・いちのだん)!!」

 

フッ

 

なんと突如、雷の両腕が消えてしまった。

 

秋宗「!?消え・・・」

 

スパパパパパパパパパパァン!!

 

秋宗「ブヘァッ!?」

 

それと同時に突然秋宗の身体中に叩かれたかのような痛みと雷の痺れが襲い掛かってきた。

 

そして消えた筈の雷の腕もいつの間にか戻っていた。

 

雷「私の『雷速』に追いつける人なんていないわ」

 

雷は目に止まらぬ速さで鞭を振るい攻撃を当てていったのだった。

その速さはまさに雷の如し。

 

風「マ、アタシラガ本気出セバテメェナンザコノ程度ッテ訳ダ」

雷「例え聖水で弱体化していなかったとしても、あなたは本気の私たちには敵わない」

 

風と雷は秋宗を大したことないと嘲笑い形成逆転の状況を楽しんでいる様子だった。

 

秋宗「クソッたれがぁ・・・!!」

 

秋宗は歯を食い縛りながら風と雷を睨み付けているが身体は当に限界を越えており立っているのも奇跡だった。

もうこうなったら最後の力を振り絞りイチかバチかの攻撃をするしかなかった。

氷河獣王を発動させて両腕を前に出すと、

 

ビュォォォォォォォッ!!

 

そこに冷却を発している1メートル程の氷塊が出現した。

それを風と雷に向けて構え、そして、

 

秋宗「フリーズ・バースト!!」

 

ドビュゥゥゥゥゥン!!

 

氷塊が両手から大砲のように発射された。

氷塊は勢いが強くなったまま風と雷へ向かっていきそして、

 

 

 

ボジュゥゥゥゥゥゥゥ・・・

 

 

 

秋宗「なっ!?」

炎焔「残念ダッタネ~」

 

攻撃は届くことなく前に出た炎焔の獄炎花により氷塊は一気に昇華してしまった。

 

炎焔「コレデ詰ミダネ」

 

今の攻撃が秋宗の最後の一撃と読んだ炎焔はこの闘いにケリをつけようと青龍刀に炎を纏わせて突っ込んでいき、

 

炎焔「コレニテ終幕!獄落爆蔡!!」

 

 

 

ザシュ!!

ドカァァァァァァァァン!!

 

 

 

秋宗を斬ったと同時にとてつもない爆風が起き廃倉庫の窓がすべて割れてしまった。

 

そして、煙が晴れていくとそこには・・・

 

秋宗「う・・・ぅあ、ぁぁ・・・」

 

壁に寄りかかり座り込んでいる秋宗がいた。

頭から血を流し身体中のあちこちに傷や痣ができ、そして炎焔の攻撃で出来た大きな切り傷が右肩から左腰にかけて斜めに伸びていた。

秋宗も何が起きたか分からず呼吸しているのも苦痛の状態だった。

 

目線を前へ向けると龍三姉妹が平然と立っていた。

 

炎焔「ソコガ、キミノ限界ネ。ココデ終ワラセテアゲルヨ」

風「エ~!?炎姉ズリィ!アタシガトドメ差シタイ!」

炎焔「ダ~メ。ココハオ姉チャンニ譲リナサイ」

 

本気モードからお遊びモードに戻っている龍三姉妹たちは誰がトドメを差すのか盛り上がっており、その結果炎焔がトドメを差すことが決定した。

秋宗は立ち上がろうとするが力が入らず動けずにいた。

 

炎焔「ジャアイクヨ~」

 

炎焔がトドメを差そうと近づこうとした時だった。

 

雷「・・・待って炎焔姉さん」

 

雷が声を掛けて炎焔の歩みを止めた。

 

炎焔「ンン?ドシタノ雷?」

雷「彼ほどの実力の持ち主、殺すには惜しくない?どうせなら私たちで有効活用しよう」

風「ンア?ドウイウコトダ?」

 

炎焔と風が揃って首を傾げているのを他所に雷は秋宗に歩みよりしゃがんで目線を合わせた。

一体何をするつもりなのかと秋宗は雷を黙って睨んでいると雷が唐突に切り出した。

 

雷「ねぇ、私たちの仲間にならない?」

秋宗「・・・はぁ?」

 

突然のスカウトに秋宗は拍子抜けな声を出してしまう。

 

炎焔「エッ!?チョト雷!?」

風「何言ッテンダオ前!?」

雷「落ち着いて姉さんたち」

 

勝手に秋宗をスカウトした雷に炎焔と風は驚いてしまうも、雷は落ち着かせた。

 

雷「私たち、まぁお尋ね者になっているのは炎焔姉さんだけだけど、これから多分私たちを捕らえるために中国に限らず世界中の霊能力者たちが追いかけてくると思う。いくら私たちでもそれが続いたらいつか捕まってしまう」

炎焔「マァ、ソウダネ~・・・」

雷「だけどもし、私たちに強い味方がいたら?」

風「・・・ナルホド、ソイウコトカ」

 

炎焔と風は雷が秋宗をスカウトしたがる理由を理解し出した。

指名手配されている自分たちを守る仲間が欲しいから秋宗をボディガードにする気なのだと。

 

雷「もし仲間になってくれるなら、貴方を殺さないことを約束してあげる。どう?悪い話じゃないでしょ?」

 

仲間になれば命を助けると交渉を持ちかけてきた雷に秋宗は、

 

秋宗「・・・誰が仲間になるかよバーカ」

雷「・・・・・」

 

雷のスカウトを蹴ってこう続けた。

 

秋宗「テメェらの仲間になるくらいなら死んだ方がマシだ・・・それに、俺は今の仲間を裏切らねぇって決めてんだよ」

 

かるらとマトラを裏切らない秋宗は龍三姉妹の仲間に死んでもならないと示した。

 

雷「・・・そう」

 

誘いを断られた雷は秋宗の耳元に近づき、

 

雷「バカな人」

 

と囁いて立ち上がり秋宗に背中を向けて離れた。

 

雷「炎焔姉さん、もう好きにしていいよ」

炎焔「残念ダッタネェ、スカウト失敗シチャテサ」

 

雷と入れ替わるように炎焔は歩み寄り秋宗の前に立った。

 

チャキッ

 

そして青龍刀を頭の上へ振り上げ、

 

炎焔「久シブリニ本気デ闘エテ楽シカタヨ。トイウ訳デ、バイバイ!!」(ブォン

 

狂気の笑みを浮かべながら秋宗に青龍刀を振り下ろした。

 

秋宗(くそっ・・・ここまでかよ・・・)

 

秋宗は青龍刀が迫ってくる状況でいろんなことを思い出していた。

 

かるらとマトラの2人と出会ってからいろんな思い出があった。

2人で一緒に遊んだり、遊園地へ出掛けたり、くだらないことで喧嘩したり、かるらの買い物に付き合ったり、マトラの特訓の相手をしたりと語りきれない思い出が頭の中を過っていった。

そして、小さい頃3人で約束したことを思い出した。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

かるら『マトラ!秋宗!私たちずっと一緒にいようね!』

秋宗『うん!』

マトラ『当たり前だろ!』

かるら『じゃあ約束!私たちは何があってもずっと一緒!絶対に3人一緒だからね!』

マトラ『あぁ!約束だ!』

秋宗『オレも約束する!』

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

秋宗(ワリィお嬢、姐さん・・・)

 

3人ずっと一緒にいると約束したにも関わらずそれが破られてしまうことに秋宗は心の中でかるらとマトラに謝った。

 

そして青龍刀が目と鼻の先まで来ており秋宗は覚悟を決めて目を瞑った・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギュラッ

 

 

 

炎焔「ン?」

 

 

 

ズドォォォォォォン!!

 

ガシャァァァァァン!!

 

 

 

秋宗「!?」

 

刹那、突然衝撃音が聞こえ思わず秋宗は瞼を開けると、なんと炎焔が奥の瓦礫の上で仰向けに倒れていた。

 

風「炎姉!?」

雷「炎焔姉さん!?」

 

突然の出来事に風も雷も何が起きたかまったく理解できず慌てていると、

 

 

 

ブオォォォォォォォォォッ!!

 

 

 

風「ウワッ!?」

雷「キャァッ!?」

 

ガシャァァァァァン!!

 

今度は竜巻が発生し風と雷は炎焔と同じ瓦礫へ吹き飛ばされてしまった。

 

秋宗「あっ・・・」

 

一瞬秋宗も何が起きたか分からなかったが、目の前を見て何が起きたか理解した。

 

それは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かるら「貴様ら!!」

 

マトラ「秋宗に何してんだ!!」

 

 

秋宗「お嬢!?姐さん!?」

 

 

 

幼なじみのかるらとマトラが秋宗を守るかのように立っていたのだった。




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