緋扇邸のオオカミくん   作:アニアス

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第47話 神速VS雷速、姑息VS外道

秋宗「オラァ!」(ブンッ

炎焔「チィッ!」(ガキンッ

 

秋宗が殴り掛かるのを炎焔は咄嗟に青龍刀を盾にして防いだ。

しかしその重みは今までより重く踏ん張ることで精一杯だった。

一体何処にここまでの力を隠していたのだろうと。

 

マトラ「そらよっ!」

 

ドスッ

 

炎焔「グハッ!?」

 

そこへマトラの渾身のボディブローが炸裂し炎焔はモロに受けてしまい後ろへ吹き飛ばされるも何とか体制を立て直した。

 

ビュン!

 

炎焔「ッ!!」(スタッ

 

ズドン!

 

更に上から突風が向かってきたため炎焔は咄嗟にバックステップでかわした。

見上げると羽を生やし飛んでいるかるらが扇を構えていた。

 

かるら「どうした?秋宗に痛め付けられて限界か?」

 

一向に攻撃をしてこない炎焔をかるらは嘲笑いながら挑発した。

 

炎焔「・・・ドイツモコイツモ!人ノ神経逆撫デシテクレルネ~!」

 

ただでさえイラついている炎焔はかるらの挑発で更にイライラが増してきていた。

 

するとマトラがあることに気がついた。

 

マトラ「秋宗、変身しねぇのか?」

 

今の秋宗は人間の姿のままで氷河獣王も使っていないため疑問に思った。

 

秋宗「変身はしねぇ、霊力を消費しちまうからな。霊力はアイツを倒すとっておきの技で使う」

マトラ「とっておき・・・!?」

かるら「それで倒せるのか?」

秋宗「・・・多分な」

 

なるべく霊力を温存しておきたい秋宗は最後の一撃に賭けるために敢えて変身や秘術を使わずに闘おうと決めた。

 

炎焔「何ゴチャゴチャ話シテンノ!?」(ボォゥゥゥッ!!

 

再び放置されて会話している秋宗たちに炎焔は獄炎花を発動させて炎を青龍刀に纏わせた。

 

マトラ「んじゃアタシとおひいさんで隙つくってやっから、絶対決めろよ」

かるら「失敗は許されんからのう」

秋宗「・・・あぁ、分かってる」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

キィン!キィンキィン!!

 

朧「フンッ!」

雷「ハァッ!」

 

一方、雷と闘っている朧は神足を使い雷の雷速と渡り合っていた。

端から見たら2人が消えては現れて、また消えては現れてと目にも止まらぬ速さで繰り広げられていた。

 

雷「驚いた、まさか雷速の参ノ段に追いつけるなんて」

朧「たかが雷程度、私に追いつけないことなどない」

 

雷は朧の神足の速さに感心するも、朧は当然だと言わんばかりの表情をしていた。

実際雷の速さと渡り合えることができるのは朧しかいないであろう。

 

雷(でもいくら速くても私の威鳴の電撃は間違いなく刀身で捌いた時に伝ってダメージが行く筈なのに・・・って思ってたけど、刀身に防御結界を纏わせているわね)

 

電撃で堪えている様子がまったくないことに疑問を持っていた雷だが、目を凝らしてよく見てみると朧の両手の刀身に霊力が纏っておりあれが防御結界なのだと理解した。

初見で即座に電撃対策を行った朧に少し驚いてしまう。

 

雷「その様子だと、もう少しスピード上げても大丈夫かも」

朧「!・・・」

 

雷の言葉を聞いて朧は神足の体制を取った。

これから敵が更に速くなるため本番はここからかもしれないと。

 

雷「じゃあ肆ノ段行くわよ・・・」

 

雷が体制を低くし鞭を大きく掲げると、

 

雷「と見せかけて!」(ブォン!!

 

なんと咄嗟に後ろを向き後方へ鞭を振るった。

一体何をしているのだろうと思われてしまうかもしれないが、鞭の先には、

 

夜々「う!?」

 

猫神の力を借り獣のような霊装結界を纏っている夜々がいた。

夜々は猫神の力で気配を消し朧に気を取られている雷を倒そうとしていたのだった。

 

雷「気配を消したつもりみたいだけど私は耳が凄くいいの!その気になれば目隠しして世界中の何の硬貨が落ちたか聞き分けることもできる!」

 

雷は朧と闘っている最中、後ろから呼吸の音や心音が聞こえたため、不意討ちを狙っていると確信していた。

だから敢えて気づかないフリをしてギリギリまで近づけさせたのだった。

 

夜々はまさか気づかれるとは思っておらず咄嗟に反応できず鞭が迫ってくるのを呆然として見ることしかできなかった。

 

バチィン!!

 

雷「!?」

呑子「ダメじゃな~い、そんなことしたら~」

 

しかし、いつの間にか夜々の前に呑子が立ち塞がり素手で鞭を掴んだのだった。

更に電撃に堪えている様子もまったく無く防御結界が桁違いだと理解できた。

雷は振りほどき咄嗟に鞭を自分の元へ戻した。

 

呑子「夜々ちゃん大丈夫~?」

夜々「・・・ありがと」

 

呑子は相変わらずのほのぼのとした様子で夜々に怪我がないか確認をした。

 

呑子「と言うワケで、私たちもやっちゃうけど別にいいわよね~?」

朧「あぁ、私としては別に一対一に拘るワケではないからな」

夜々「頑張るの!」

 

呑子と夜々も秋宗を痛めつけた炎焔たちに一泡吹かせたいらしく朧と協力して雷と闘おうとするのだった。

 

雷「好きにすれば?おばさん」

呑子「おばっ・・・!?お~ば~さ~ん~!?」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

風「オラオラオラオラァ!!」(ビュンビュンビュンビュン!!

狭霧「くっ!」

 

更に此方では、風と対峙している狭霧たちだったが苦戦を強いられていた。

三対一という有利な状況でありながらも風の旋風迅でクナイや手裏剣、弾丸などの飛び道具の軌道を反らされて当たらず、近づこうものなら接近戦で今度は風が有利になってしまい防戦一方へ追い込まれていた。

そして風の旋風迅を正面から受けている狭霧はクナイで何とかガード出来ているものの、反撃の隙も与えられず霊装結界も所々破けていた。

 

風「チィッ!シャラクセェ!!」(ブォン!

 

ガキィン!!

 

狭霧「しまった・・・!」

 

一向に致命的なダメージを与えられないことにイラついた風はアッパーでクナイを宙高く吹き飛ばした。

これにより狭霧はがら空きになってしまった。

 

風「モラッタゼ!」

雲雀「狭霧ちゃん!」(シュンシュン!

浩介「雨野さん!」(ズドンズドン!

 

風が殴り掛かろうとしたその時、背後から雲雀が手裏剣、浩介がショットガンで援護するも、

 

風「ウゼェンダヨ!」(ガキンガキン!!

 

裏拳で手裏剣と弾丸をすべて叩き落とされてしまった。

しかしその隙に狭霧は風から距離を取ることができたものの、状況は相変わらず変わらずにいた。

流石は百戦錬磨の武闘家というだけあり多対一の闘いにも慣れている実力を兼ね備えている。

 

風「テメェラ如キガアタシニ勝テルト思テンノカ!?」

狭霧「なんという強さだ・・・!」

雲雀「で、でも雲雀たちでコイツを倒さないと!」

 

風の実力に狭霧と雲雀は焦燥の顔になってしまうが諦めずにそれぞれクナイと手裏剣を構えた。

しかし、この後浩介がとんでもないことを言い出した。

 

 

 

浩介「勝てると思ってんのかって?そんなの、思ってる訳ないでしょうが!!」

 

 

 

『・・・・・・』

 

 

 

狭霧・雲雀((思って!?))

風(ナイ!?)

 

 

 

浩介のとんでもない発言に狭霧と雲雀はおろか、風でさえ動揺してしまった。

まさかこの状況で弱気なことをこんな堂々と言えるなど一体誰が予測できたであろうか。

 

そんな浩介に狭霧と雲雀は慌てて詰め寄った。

 

狭霧「平賀浩介!貴様一体何を言っているのか分かっているのか!?」

雲雀「何堂々と弱気なこと言ってるの!?」

浩介「だって考えてみてよ。秋宗くんを窮地に追い込んだ相手に真っ正面から勝てる訳ないじゃん」

雲雀「いやそうだけどさ!」

 

確かにマトラとほぼ互角の秋宗を苦戦させた敵に勝つことなど極めて困難である。

しかしそんなことを率直に言ってしまった浩介に狭霧は怒りが込み上げてきていた。

 

グィッ

 

狭霧「見損なったぞ平賀浩介!貴様は他の男とは違うと思っていたというのに!」

 

狭霧は胸ぐらを掴み浩介を叱責するも、浩介はいつも通りの様子で相手を宥めた。

 

浩介「落ち着いて雨野さん。僕は、"真っ正面から勝てる訳がない" って言っただけだよ」

狭霧「何・・・?」

雲雀「えっ・・・?」

 

そう言って浩介は狭霧の手をほどきショットガンの銃口を風へ向けた。

 

風「ハン!何度ヤッテモ同ジコトダゼ!」

 

また弾丸を弾いてやろうと風は旋風迅を構えた。

飛び道具はまったく効果がないということを十分理解している筈だというのに懲りない馬鹿だと風は心の中で嘲笑った。

 

一方、銃口を向けたままの浩介は只々冷静だった。

その表情は真剣とも言えず、無心とも言えない様子だった。

それも狭霧と雲雀が不気味に思う程に。

 

浩介「・・・真っ正面から勝てないんだったら、姑息に卑怯に勝つだけさ」

 

ジャキンッ ズドンズドンッ!!

 

そして銃口を風から天井へ向けて弾丸を数発放った。

一体何をしているのだと狭霧と雲雀、そして風も疑問に思ってしまう。

 

すると、

 

ギギ、ギギギィ~・・・

 

風「ン?何ノ音ダ?」

 

何やら金属が擦れるような音が聞こえ風が辺りを見渡すと音は天井から聞こえており上を向いた。

その先には天井を支える鉄骨が何本も組まれているが長い年月で錆が目立っていた。

そしてそれを繋ぐ接続部には最近できたような穴が数ヶ所できており風は段々顔を青ざめていった。

 

雲雀「さ、狭霧ちゃん、なんだかイヤな予感がするんだけど、雲雀の気のせいかな・・・!?」

狭霧「・・・平賀浩介、この後のこと考えているんだろうな?」

 

狭霧と雲雀もこの後起こることを予測してしまい、その原因を作った浩介に恐る恐る声を掛けると、

 

浩介「・・・ゴメン、考えてなかった!」

 

ガゴォン!!

 

それを合図にするかのように浩介たちの頭上に組まれていた数本の鉄骨が落ちてきた。

 

風「コイツ正気ナノカ!?」

雲雀「浩介くんのバカーーー!!」

 

ガシャァァァン!! ガランガラァン!!

 

浩介のとんでもない行動に呆気に取られた直後、鉄骨の雨が降り注ぎ巻き込まれてしまった。

そして徐々に煙が晴れていき、辺りは降ってきた鉄骨で埋めつくされていた。

 

狭霧「ぶ、無事か雲雀・・・!?」

雲雀「し、死ぬかと思った・・・!」

 

かろうじて鉄骨を避けることができた狭霧と雲雀だったが、雲雀は少し涙目になっていた。

 

浩介「いや~ホントに危なかったね~」

 

一方浩介は奇跡的に鉄骨が当たらず何もなかったかのように平然としていた。

そんな浩介を狭霧と雲雀は睨み今にも殴り掛かりそうな形相になっていた。

 

狭霧「貴様!こういうのは前もって私たちに教えろ!」

雲雀「そうだよ!さりげなく雲雀たちを巻き込まないでよ!」

浩介「でもさ、こう言うじゃん。"敵を欺くならまず味方から"って。欺かれるいい経験になったでしょ?」

狭霧「ならば八つ裂きにされる経験を味会わせてやろうか!?」

雲雀「浩介くんってたまに変なところで度胸があるよね」

 

敵を倒すために自分たちを巻き込んだ浩介に叱責するも軽くあしらわれてしまい頭を抱えていると、

 

ガシャァァァン!!

ビュュュュュ!!

 

『!!?』

 

風「テメェラァ!!死ヌ覚悟デキテンダロウナ!?」

 

突然鉄骨が吹き飛び、そこから突風を纏い怒り狂った風が飛び出し宙に浮いていた。

どうやら風もかろうじて避けることが出来た様子だった。

そして突風は風の周りをバリアのように覆い球体状になっていた。

 

雲雀「余計に怒らせただけじゃん!」

狭霧「まずいぞ!あれではヤツに近づけん!」

 

突風のバリアに覆われている風に飛び道具どころか接近戦も出来ないと狭霧たちが再び焦るも、

 

浩介「・・・いや、多分勝てるかも」

狭霧・雲雀『!?』

 

ポロッと浩介が溢した言葉に狭霧たちは目を丸くしてしまう。

 

狭霧「本当か!?」

雲雀「またさっきみたいに雲雀たちを巻き込むつもりじゃないよね!?」

浩介「いや、もうさっきの手は使えない、今度は雨野さんたちの協力が必要だ。作戦は・・・」

 

風を警戒しながら狭霧と雲雀は浩介の作戦に耳を傾けた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

雷「よっと!」(スタタタッ

呑子「コラーー!待ちなさーーい!」(ギュンギュン!

 

戻って此方では激しい闘いが繰り広げられている筈が、雷と呑子が鬼ごっこを繰り広げていた。

呑子が酒呑童子の技の一つ、鬼火砲を連発し、それを雷がバックステップやジャンプで軽々と避けていた。

ちなみに何故これ程までに呑子がムキになっているのかというと、

 

雷「そんなに怒ってばかりだと肌荒れちゃうよ、おばさん」

呑子「また言ったわねぇ!?これで4回目よぉ!それに私はまだピチピチの20代よ!!」

 

先程雷におばさんと言われたことに対し頭に来て鬼火砲を撃つも避けられて更に立て続けにおばさんと何度も言われたためこのようなことになってしまったのである。

しかし昼間から酒ばかり呑んでいる20代もいかがなものかと思うが。

 

雷「軽い挑発のつもりだったんだけど、まさかここまで簡単に引っかかるなんてねっ!」(ビュンッ

 

キィン!

 

朧「・・・そう簡単にはいかないか」

 

御三家ともあろう者がここまで簡単な挑発乗ってしまうことに少し呆れながらも雷は威鳴を後ろへ振るうといつの間にか朧がおり咄嗟に威鳴でガードした。

呑子の攻撃は一見荒っぽく見えるが朧の元へ誘導していたのだった。

しかしあっさりと見抜かれてしまい朧は落胆の表情を浮かべてしまう。

その隙に雷は2人から距離を取った。

 

呑子「ぐぬぬぬぅ~!あの子に一発お仕置きしないと気が収まらないわ~!」

朧「荒覇吐、気持ちは分かるが抑えろ」

 

何度もおばさんと言われ今にも飛び掛かっていきそうな呑子を朧は落ち着かせた。

しかし雷の素早さは朧並み。

御三家である呑子の攻撃を意図も簡単に避けてしまう相手となると攻撃を当てるのは至難であろう。

いかにして雷の動きを制限させるか朧が考えていると、

 

夜々「任せるの!」

 

なんと夜々が前に出て雷へ駆け出した。

咄嗟のことに朧と呑子は唖然となってしまう。

 

雷「はぁ、また性懲りもなく・・・」

 

気配を消す攻撃は自分に通用しないと分かっている筈だというのに無策に攻撃を仕掛けてくる夜々に雷は呆れてしまう。

 

雷「この程度の相手、雷速を使うまでもない」

 

威鳴を夜々に目掛けて振るおうとしたその時、

 

ズルッ

 

雷「え・・・?」

 

突然足元が滑ってしまい雷は体制を崩してしまった。

雷は何が起きたか分からず反応が遅れてしまい、

 

シュッ!

 

雷「くっ!?」

 

避けられる筈だった夜々の引っ掻きを受けてしまった。

引っ掻かれた肩の服は破け頬にも傷ができていた。

体制を立て直した雷は足元を滑らせた場所を見ると、そこには大きな水溜まりが出来ていた。

 

雷「もしかして、聖水・・・?」

 

おそらくスプリンクラーの聖水で出来たであろう水溜まりで足を滑られたのかと理解できた。

しかしこんなことでダメージを受けてしまうなんて運がないなと思ってしまう。

 

雷「・・・面倒だし、一気にカタつけよ」

 

足を滑らせてしまった憂さ晴らしを夜々たちにぶつけようと雷は手に霊力を集中させると、

 

バリバリバリバリィィッ!!!!

 

夜々「う!?」

呑子「ウソ!?」

朧「これは・・・!」

 

なんと今まで両手から一本ずつしか伸びていなかった威鳴の鞭が全ての指から伸び計10本へと増えていった。

 

雷「奥義!鳳凰の翼!」

 

ズババババババッ!!

 

雷はこの10本の鞭を今まで以上に高速で振るった。

鞭が増えた影響により射程範囲も驚異的に広がり資材や鉄骨なども次々に破壊していき周りを気にしない、正に無差別攻撃というものだった。

 

バチィィン!

 

夜々「ヴっ!?」

 

かろうじて避けていた夜々もとうとう当たってしまい電撃を食らってしまった。

 

雷「そこぉっ!!」

 

その隙を容易く見逃す訳がない雷は鞭を夜々へと集中させてトドメを刺そうとした。

もはや絶対絶命と思ったその時、

 

ズルッ

 

雷「なっ!?」

 

またしても足を滑らせてしまい体制を崩したと同時に鞭が夜々から反れていった。

足元を見ると先程と同じように聖水の水溜まりが出来ていた。

 

雷(また聖水!?立て続けにこんな!?)

 

まさかもう一度水溜まりで滑るなんて夢にも思っていなかった雷には信じられなかった。

まるで自分には運がないような・・・

 

雷(運が・・ない・・・まさか!?)

 

雷は体制を崩しながらあるところへ視線を向けると、

 

こゆず「わっ!?こっち見てるよ!」

仲居さん「気づかれたようですね!」

 

コガラシの後ろにいる仲居さんが雷に手を向けていたのだった。

そして雷は同時に理解した。

自分が水溜まりで滑ったのは偶然ではなかったのだと。

 

座敷わらしである仲居さんは運勢操作という能力を持っており、人の幸運と不運を人為的に操ることができる。

つまり仲居さんは気づかれないように雷の運勢を不運にしていたのだった。

 

雷「まさか、こんなことが・・・!」

 

明らかに戦闘向きではない能力だったため仲居さんたちを完全に軽視していた雷は運勢操作を体感して驚嘆してしまう。

 

呑子「スキあり!」(ギュン!

雷「!?」

 

ズドォォォン!!

 

仲居さんへ気が反れた雷に呑子は渾身の鬼火砲をぶつけた。

散々おばさんと言われた怨みが篭った鬼火砲の威力は凄まじいものだった。

 

雷「ぅあ・・・!くぅっ・・・!」

 

煙が晴れると雷は完全にボロボロとなり服も破け立っていられるのがやっとの様子だった。

 

呑子「よーし!あともう一息!」

朧「待て」

 

呑子がトドメの鬼火砲を打とうとした時、朧が止めに入り前に出た。

応戦しようとしていた夜々も朧の行動に思わず足を止めてしまった。

 

雷「はぁ、はぁ・・・何の、つもり・・・?」

朧「・・・来い、貴様の雷速と私の神速、どちらが上か白黒つけようではないか」

雷「・・・は?」

 

朧の提案に雷は目を丸くしてしまう。

朧は雷の雷速に内心ではとても感心していた。

自分の速さと互角に渡り合える相手と出会ったことがなかった朧にとっては雷は天敵。

だからこそ、自分の神速と雷の雷速のどちらが速いか確かめたくなったのだった。

 

雷「・・・ふん、いいよ。全力で貴女を叩き潰してあげる」

 

朧の心情を察したのか、雷は身体に鞭を打ち体制を低くした。

2人の空気が張り詰めて誰もが固唾を呑み込み・・・

 

 

 

雷「雷速・伍ノ段!」

朧「!!」

 

 

 

フッ!

 

 

 

2人が一瞬きえたかと思いきや、2人の立ち位置が入れ替わり互いに背を向けていた。

 

朧・雷『・・・・・』

 

互いに動かず語らず、時間だけが過ぎていきそして、

 

 

 

雷「・・・流石ね」(フラッ

 

 

 

バタリ・・・

 

 

 

口角を上げ、雷はうつ伏せに倒れていった。

それは同時に朧の神速が勝ったことを示すことでもあった。

 

朧「・・・貴様の雷速、中々のものだったぞ」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

雲雀「えぇ!?そんな作戦で大丈夫なの!?」

浩介「アイツを倒すにはもうこれしかないよ」

狭霧「しかし理にかなってはいる、いけるかもしれん」

 

浩介の作戦を聞いた狭霧と雲雀はそう上手くいくのかと疑問に思うが風を倒す方法はもうこれしかないと思い作戦に乗るのだった。

 

風「何ゴチャゴチャ話シテンダ!?」(ビュンビュン!!

 

ほったらかしにされシビレを切らした風は鎌鼬を連発し狭霧たちは咄嗟にかわした。

 

浩介「じゃあ手筈通りに!」

狭霧「分かった!」

雲雀「うん!」

 

作戦を実行へ移すために3人は散らばり風を撹乱し始めた。

 

狭霧「はぁっ!」(シュンシュン!

雲雀「えいっ!」(シュンシュン!

浩介「それっ!」(ズドンズドン!

 

それぞれがクナイや手裏剣、ショットガンを風に目掛けて放つも突風のバリアで軌道が反れ明後日の方向へ行ってしまう。

 

風「ハッ!今サランナモン効クカヨ!」(ビュンビュン!!

 

飛び道具を使ってくる3人に呆れながら風は鎌鼬を飛ばした。

 

ビリビリィィ!!

 

狭霧「くっ!?」

雲雀「きゃぁ!?」

 

モロに鎌鼬を受けてしまった狭霧と雲雀の霊装結界が大きく破けてしまいこれ以上受けてしまえば間違いなく大怪我を負ってしまう状況に追い込まれてしまった。

 

風「ハッハァ!ソロソロ終ワラセテヤルゼ!」

 

風がトドメを刺そうとしている最中、浩介がこっそり風の背後に回っていたのだった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

浩介『あの突風のバリア、あれは多分即興技だと思う』

狭霧『何故そう言える?』

浩介『よく見たらさ、所々に隙間が出来てるんだよ』

雲雀『あ、ホントだ!』

狭霧『ではあの隙間を掻い潜れば攻撃が届くというワケか』

浩介『でもいきなり狙ったら気づかれてしまう可能性もあるから、アイツを油断させてからがいいと思う』

雲雀『・・・雲雀たちが囮になれってこと?』

浩介『うん、申し訳ないけど・・・ここは大きく派手な攻撃じゃなくて、小さく鋭い攻撃でいくしかない』

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

浩介「よしっ」

 

ここまで作戦通りに事が進み浩介は懐からあるものを取り出した。

 

それは偶々試作で作った、44マグナム型の発明品だった。

一見ショットガンよりも劣るかもしれないが威力はショットガンよりも高く自分でもかなりの高性能の仕上がりだと思っている。

 

浩介「フゥ・・・」(チャキッ

 

額に汗を掻き手に汗握りながら浩介は右手に持ったマグナムを風に合わせた。

外せば作戦は台無し、責任重大である。

 

そして引き金に指をかけ、

 

ドンドンドン!!

 

風目掛けて弾丸を数発放った。

 

隙間を掻い潜れば直撃は必須、勝負ありと思った。

 

 

 

ヒュンヒュンヒュン!!

 

 

 

浩介「え!!?」

 

 

 

しかし、そう簡単にはいかなかった。

なんと突然隙間が塞がり弾丸は明後日の方へ飛んで行ってしまった。

 

風「・・・バレテネェトデモ思タカァ?」

 

ニヤリと笑いながら風は浩介の方を振り向いた。

 

浩介「な、なんで・・・!?」

風「バレバレナンダヨテメェラノ作戦ゴトキ!確かにアタシノバリアハ即興技ダ!ダカラ敢エテ誘ッタンダヨバーカ!!」

 

作戦を見破っていた風は敢えてその作戦に乗せられたフリをしていたのだった。

つまり誘われていたのは浩介たちの方だった。

 

浩介「そ、そんな・・・」

 

浩介は作戦を見破った風を見て絶望に染まった表情になってしまう。

 

風「残念ダッタナァ!作戦見破ラレテヨォ!!ハッハッハッハッハッ!!」

 

そんな浩介を見て風は高笑いをしてしまう。

今まで相手を血に染めてきた外道にとってはこれ以上ない嬉しさなのだろう。

 

浩介「ま、まさか・・・こんな・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんなに思い通りに作戦が進むなんてね!!」

 

 

 

風「・・・ハ?」

 

 

 

ドンドンドン!!

 

 

 

風「ガァッ!!?」

 

 

 

さっきまで絶望に染まっていた顔が一気に明るくなり、唖然となっている風の身体に突如痛みが走った。

痛みが走った場所は右肩と左太もも、そして脇腹の3ヶ所だった。

突然のことに風は何が起きたか理解できなかった。

 

風「ナ、何ガ・・・!?」

浩介「さっき僕が打った弾丸だよ」

風「何!?」

 

浩介が放った弾丸はバリアで反れて何処かへ間違いなく飛んでいった。

戻ってくるなど絶対に有り得ない。

弾丸に意思でもない限り不可能だと風は思った。

 

浩介「周りを見てみなよ」

 

しかし、浩介に促され周囲を見てみると、

 

ヒュンヒュンヒュンヒュンッ

 

風の周囲を取り囲むかのように数十枚の手裏剣が宙に浮いていた。

 

風「コ、コレハ!?」

雲雀「よ、よかったぁ!なんとか当たって!」

 

そう、この手裏剣は雲雀が霊力で浮かしていたのだった。

当の雲雀は心底ホッとしている様子だった。

 

風「ハッ!?マ、マサカ!?」

 

それと同時に風はあることを理解した。

 

浩介の作戦はこうだった。

まず狭霧と雲雀が撹乱しながら浩介から注意を退かせ囮になる。

次にわざと風の攻撃を受けて油断させる。

そして浩介がマグナムでバリアの隙間を狙う、フリをして弾丸を放つ。

弾丸がバリアに当たれば当然軌道は反れてしまう。

それを利用して雲雀が手裏剣で弾丸を跳ね返して軌道を修正しバリアの隙間を掻い潜る。

 

これが作戦の全貌だった。

 

浩介「言ったじゃん、真っ正直から勝てないなら、姑息に卑怯に勝つだけだって」

 

秋宗やコガラシのように霊力が高くない浩介は仲間と協力しサポートに周りながらも確実に勝てる算段を立てる。

これが浩介の闘い方である。

 

風「クソガァ・・・!」

 

弾丸のダメージを受けてしまった風は思わずバリアを解除してしまう。

それにより無防備になってしまった。

 

風(マ、マダダ・・・!マダヤレル・・・!セメテヤツダケデモ!)

 

風は最後の力を振り絞り浩介だけでも始末しようと霊力を集中させた。

 

だが、

 

浩介「けど、今回の僕は囮。本命はそっち」

 

そう言って浩介は風の後ろを指差した。

浩介に言われて風は肝心なことを思い出した。

誅魔忍がもう一人いたことを。

 

咄嗟に振り向くとそこには、

 

 

 

狭霧「ハァァァァァッ!!」(ギュアアアアアッ!!

 

 

 

狭霧が攻撃の準備を整えていた。

頭上には槍のような螺旋状の霊力の塊が出来ており、まるで装填準備を整えた大砲のようだった。

 

浩介「頼んだよ雨野さん!」

雲雀「やっちゃえ狭霧ちゃーん!」

 

狭霧「雨野流誅魔忍術奥義!雨蛟龍!!」

 

ドォン!!

 

2人の声援を受け狭霧は自身の最高の技を風に目掛けて放った。

 

 

 

風「コ、コンナ!コンナヤツラニィィィィィィ!!」

 

 

 

ズドォォォォォン!!

 

 

 

雨蛟龍は風の身体を突き抜け大きな爆発を起こした。

そのまま風は気を失いながら背中から落ちていった。

 

狭霧「ふぅ、手強いヤツだった・・・!」

雲雀「勝ったぁ!雲雀たち勝ったよぉ!!」

 

風をなんとか倒せたことに狭霧は安堵し雲雀は嬉しさのあまり跳び跳ねてしまう。

 

浩介「・・・ねぇ、2人とも」

 

そんな2人の元へ浩介が複雑そうな表情を浮かばせながら歩いてきた。

狭霧と雲雀は何だろうと思っていると、

 

浩介「その・・・ゴメン!!」(バッ

 

なんと浩介は勢いよく頭を下げて2人に謝った。

 

浩介「いくら勝つためとはいえ、2人を囮に使っちゃって・・・!ホントにゴメン!」

 

どうやら作戦を立てた時に罪悪感を感じていたようで囮役にしてしまったことに必死に謝っていた。

 

しかし、

 

狭霧「・・・気にするな、貴様の作戦がなかったら私たちは確実に負けていた。寧ろあの状況で咄嗟によくあんな作戦を思い付けたな」

雲雀「そうだよ!まぁ鉄骨落としたのはやり過ぎだと思うけど、雲雀たちだけだったらどうなっていたか分かんなかったし!」

 

そんな浩介を責めることなく感謝の言葉を送った。

それを聞いて浩介は頭を上げて2人がまったく怒ってないと理解した。

 

浩介「・・・ありがとう、2人とも」

狭霧「それは私たちのセリフだ」

雲雀「こちらこそありがとね!浩介くん!」

 

コンッ

 

そして3人は拳を合わせ互いに笑い合った。

 

浩介「あ~それとさ・・・///」

狭霧・雲雀『?』

浩介「前、隠しといた方がいいかも・・・///」

狭霧「なっ!?///み、見るな貴様ァ!!///」

雲雀「きゃぁぁぁ!?///霊装結界ボロボロなの忘れてたぁ!///」

浩介「痛い痛い痛い痛い!腕折れる!腕折れるって雨野さん!大丈夫そんなに見てないからぁ!!」

狭霧「そんなに見てないということは少し見たということだろう!?///」

雲雀「浩介くんのバカバカァーーー!!///」

浩介「ギャー!雲雀さん何でエビ反り使えるの!?やめてぇ!死んじゃうぅ!!」

 

こうして2頭の龍を倒した狭霧と朧たち。

残す龍は、あと1頭。




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