~京都 緋扇邸~
その一室にコガラシの拉致に成功したかるらの姿があった。
他にも、かるらと同行したマトラ、白衣を着た老人、三人の黒服の姿もある。
部屋には巨大なモニターがあり、コガラシのデータが表示されていた。
老人「なんと、この霊波紋は確かに、かの八咫鋼に間違いありませぬ。よもやこうも容易くあの恐ろしい八咫鋼を捕らえて連れてくるとは、流石はかるら様ですな」
かるら「ふ・・・」
老人はコガラシのデータを見ながら、彼を捕らえることに成功したかるらを褒めていた。
黒服1「あの八咫鋼をこない簡単に捕まえられるとは、こりゃ笑いが止まりまへんわ!所詮八咫鋼なんかマヌケちゅうことですわな!」
黒服の一人がコガラシを愚弄するように言葉を発した。
だが、かるらはそれを聞き逃さなかった。
かるら「マヌケじゃと!?敵とはいえ御三家の一角!侮辱は許さぬぞ!」
かるらの眼光が急に鋭くなり、黒服の一人は慌てて謝罪した。
黒服1「す、すんません!」
黒服2「仇にも礼を尽くすとは、かるら様もご成長なされましたな」
黒服3「とにかくもう邪魔立てするものもおりませぬ、ようやく東軍との決着が着くというもの」
東軍とは、御三家の1つ『天狐』を大将とする東の妖怪の軍のことであり、かるらたちは『宵ノ坂』を大将とする西軍に所属している。
この2つの軍はかつて、天下分け目の合戦を行った因縁の仲である。
そこで西軍の緋扇は、より協力な戦力を手に入れるために御三家の1つ『八咫鋼』を探していたのだ。
そして。コガラシがここに連れて来られたのである。
マトラ「それにしても肩透かしだったなぁ、せっかく宵ノ坂の力を確かめられると思ったのによ」
黒服2「なっ!?まさか宵ノ坂に喧嘩を!?」
マトラ「大丈夫だって、例の宵ノ坂とは縁が切れてるからよ」
ここで老人が咳払いをして話し始めた。
老人「問題は八咫鋼の扱いについてですが、地底深くに強固な結界を張り巡らせて置くのがよいかと。ところでかるら様、今八咫鋼はどこに?調べてから、かるら様が連れて行ってしまわれましたが」
黒服1「そういや、さっきから西条はんの姿も見えまへんな。また部屋でゲームでもしとるのですかの?」
二人の問いにかるらはこう答えた。
かるら「秋宗には八咫鋼を見張るように言いつけておる。まぁ、あやつ一人でも問題なかろうと思ってな。」
黒服2「左様でしたか」
黒服3「それで、八咫鋼は今どこに?」
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秋宗「何でよりによって俺の部屋なのかね?」(カチカチ
秋宗は自室で相変わらずと言ってもいいほどテレビゲームをしていた。
ただ、部屋の状況を見てみるともう一人秋宗の部屋にいた。
そう、冬空コガラシである。
コガラシは今、椅子に鎖で縛りつけられている状況であるが、その鎖にかかっている術のせいか力が入らない状態である。
ちなみにコガラシの服装は黒のジャージ姿である。
コガラシ「くっそ~、全然外れねぇ。どうやっても解ける気がしねぇなこれ!」(ガタガタ!
秋宗「無理に外さない方がいいと思うぞ。それよりも、さっきは悪かったな、つい思いっきりやってしまって」
秋宗は無理に鎖を外そうとするコガラシに忠告するが、視線はテレビ画面に集中している。
コガラシ「お前ら許さなねぇからな、ゆらぎ荘の皆をひどい目にあわせやがって」
秋宗「安心しろ、全員無事だ。まぁ、何人かは少し重症みたいだかな。諦めろよ、お前はもうお嬢のものになるからな。どうあがいても無駄だ」
コガラシ「・・・なぁ、俺もオオカミ人間については詳しくは分からねぇけど、プライドが高いんじゃねぇのか?何で大天狗たちと一緒にいるんだよ?」
秋宗「・・・・・まぁ、休憩には丁度いいか」
コガラシの言葉に秋宗は手を止めて、ゲームを中断した。
そして、コントローラーを置いてコガラシの方を振り向いた。
秋宗「実は、オレとお嬢、そして姐さんは、幼なじみなんだ」
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10年前 緋扇邸にて
ある部屋の一室に当時の幼いかるらとマトラ、そしてかるらの父にして緋扇学園理事長の緋扇我流駄がいた。
2人とも、我流駄に呼び出されてソファに座っていた。
かるら『パパ、お話って何?』
我流駄『実は、この家にアメリカから新しい子が来ることになったんだ。かるらとマトラと同い年の子だ』
かるら『新しい、子?』
マトラ『それってどんな子?』
かるらとマトラは揃って首をかしげた。
我流駄『私とその子の両親とは古い付き合いなんだ。何でも仕事が忙しくて自分の子供と遊ぶ時間すらつくれず、その子自身も友達がいないそうなんだ。それで、私のところに連絡をしてきて、かるらたちと仲良くさせてほしいとのことだったんだ。突然こんな話をして分からないとは思うが、2人ともいいかい?』
かるら『・・・私はいいよ。その子と仲良くなりたい』
マトラ『アタシも別にいいよ』
かるらとマトラもこころよく引き受けてくれた。
すると、
コンコンコン
部屋の扉がノックされて、黒服の1人が入って来た。
黒服2『お館様、例の子供が到着いたしました』
我流駄『そうか、入ってきなさい』
すると、今度は子供が入って来た。
子供は灰色の髪が特徴的で、黒をベースとした服を着ており、背中にはリュックを背負っていた。
この子こそ、当時の幼かった西条秋宗であった。
秋宗『・・・西条秋宗です。オオカミ人間です。今日からよろしくお願いします』
緊張しているのだろうか、秋宗はぎこちなく部屋にいた3人に挨拶をした。
我流駄は秋宗の前にしゃがみこみ笑顔を向けた。
我流駄『はじめまして秋宗くん。君のことはお父さんとお母さんから聞いてるよ。私は緋扇我流駄、これからよろしく。』
そして、かるらとマトラも秋宗のところまで来て自己紹介を始めた。
かるら『私は緋扇かるら。これからよろしくね、秋宗』
マトラ『アタシは巳虎神マトラ!よろしくな秋宗!』
秋宗『・・・う、うん。よろしく』
・・・・・・・・・・・・・・・・
秋宗が緋扇邸に来てから一週間が経とうとしていた。
秋宗は緋扇邸の人たちから距離をとって過ごしていた。
かるらとマトラが遊びに誘っても、遠慮して森の方に行ってしまって、日が暮れるまで外にいることが頻繁であった。
一緒にいる時は、せいぜい食事程度であった。
なぜ距離を取るかと言うと、幼い頃から両親が仕事詰めで1人でいる時間が多く、友達も出来なかった。
その為、ついつい遠慮がちな行動になってしまったのだ。
秋宗『・・・・・』
そしてこの日も、秋宗は1人、森の中の木の上に座っていた。
いつも、こうやってボーッとしているのだ。
マトラ『あ!おひいさん!あそこにいた!』
かるら『ホントだ!おーい!秋宗ー!』
秋宗『?』
秋宗が声のする方を向くと、かるらとマトラが空を飛んでこっちに向かって来ていた。
2人が秋宗の元に着くと、彼の両隣に座った。
秋宗『・・・えっと、どう、したの?』
かるら『秋宗を探してたんだよ。いつもどこに行ってるのかな、って思ってさ』
マトラ『アタシらが誘ってもどっか行くからよ』
かるらもマトラも秋宗のことが気にはしていて、ここまで探しに来ていたのだ。
そこで、マトラは率直に聞いてみた。
マトラ『・・・あのさ、秋宗ってアタシらのこと嫌いなのか?』
秋宗『えっ、いや、嫌いじゃないよ』
かるら『じゃあどうして一緒に遊んでくれないの?』
かるらの質問に秋宗はうつむいて答えた。
秋宗『・・・分からないんだ。父さんも母さんも仕事で帰りが遅いし、友達も作れなかったから、同い年の子とどうやって接したらいいのか、分からないんだ。だからついつい、遠慮してしまって』
マトラ『ふ~ん』
その場が少し重い空気になってしまった。
すると、かるらが突然立ち上がって、
かるら『・・・情けないのぉ秋宗。それでも主は男か?』
秋宗『え・・・?』
口調を変えて秋宗にしゃべり出したのだ。
突然かるらの口調が変わったことに秋宗は戸惑ってしまう。
かるら『そんな情けない輩は男でもないわ。もっと自信を持ったらどうじゃ?』
秋宗『・・・・・くくっ』
秋宗は耐えきれず笑ってしまった。
かるら『な、なんでそこで笑うの!?』
秋宗『ご、ごめん、つい』
マトラ『そういや、秋宗が笑ったの初めて見たな』
少しその場の空気が和んだ。
かるら『・・・秋宗、人と接するには、まず笑顔だよ。笑顔さえ作っとけば、友達なんてすぐに出来るよ』
マトラ『おひいさんの言う通りだな』
秋宗『かるらさん、マトラさん・・・』
かるらなりに自分を励ましてくれたことに秋宗は嬉しくなった。
そして秋宗はかるらとマトラ顔を見て、
秋宗『あのさ、2人とも、オレと、その、友達になってくれないか?』
笑顔で友達になってほしいとお願いした。
かるら『・・・今さら何言ってるの?』
マトラ『アタシらもう友達だろ?』
2人は笑顔で返してくれた。
秋宗『・・・これからもよろしくな!お嬢!姐さん!』
かるら『お、お嬢?なんだかいい響きだね!よろしく秋宗!』
マトラ『姐さん、か。まぁ別にいいか。』
これを機に、秋宗はまるで別人のように変わって、よく笑うようになり、かるらとマトラとも頻繁に遊ぶようになった。
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