緋扇邸のオオカミくん   作:アニアス

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第53話 合コン

「ふっふふ~ん 」

 

茜を先頭に秋宗、コガラシ、浩介、兵藤の5人は名古屋の街中を歩いていた。

男4人を騙し合コンへ参加させることに成功した茜はご機嫌で途中ではスキップを加えていた。

 

「すまねぇお前ら、ウチのもんが迷惑を・・・」

「・・・もういい。過ぎたもんは仕方ねぇ」

「まさか合コンに強制参加されるなんてね・・・」

 

騙された秋宗たちの足取りは重く乗り気ではないが仕方なく茜の後について行っていた。

但し、約1名を除いて。

 

「なぁなぁ茜ちゃん!他の女の子たちってやっぱ可愛いの!?」

「もっちろ~ん!さとるんのストライクゾーンに嵌まるの間違いなしの自信があるよ!」

「うぉぉぉ!なんか盛り上がって来たぁ!」

「何でアイツら意気投合してんだ・・・?」

「さ、さぁ・・・?」

 

いつの間にか前方で茜と兵藤が仲良く話をしており、他の3人は呆然となるしかなかった。

女子との交流が少ない兵藤にとって合コンはビックイベントそのものなのであろう。

 

しばらく茜の後ろをついて行くと、いつの間にか街中から人通りが少ない路地裏を歩いていた。

 

「おい茜、一体どこに行こうとしてんだ?」

「そんなの合コンする場所に決まってんじゃん」

「こんなところにあんのか?」

 

建物の影で辺りが薄暗くなりどこからともなく悪霊が飛び出して来そうなところに合コンができる場所などあるのかと疑問に思ってしまう。

そして茜が急にある建物の前で立ち止まり見上げた。

 

「さぁみんな!着いたよ!」

「えっ?着いたよって・・・」

 

全員の視線の先にあったのは、何の変哲のない雑居ビルだった。

壁の塗装が所々剥げており、ベランダの鉄格子も錆びれ長年建ち続けていることを物語っており、人を寄せ付けない雰囲気を漂わせていた。

 

「ここ、ただのビルだぞ?」

「こんなとこで合コンすんの?」

「百聞は一見に如かずだよ。とにかく入って」

 

そう言って茜は秋宗たちを連れてビルの中へ入って行った。

5人を迎えたのはエントランス。

しかし床一面は埃やらゴミなどで散らり階段に至っては手摺が壊れとても上れる様子ではなく明らかに老朽化が進んでいる様子だった。

 

「・・・なんか俺、帰りたくなったんだが」

「安心しろ。俺たちも同じだ」

 

とうとう兵藤も秋宗たちと同じように帰りたい気持ちが強くなり気分が盛り下がってしまった。

 

「大丈夫だよみんな。さ、乗って乗って」

 

しかし茜はお構い無しに階段の隣にあったエレベーターのスイッチを押した。

すると電気が通っているのか、エレベーターの扉が開き5人は中へと入った。

 

「茜、ここに何があるってんだよ?」

「まぁまぁアッキー。それはお楽しみってことで」

 

いい加減にしないとブチキレそうな秋宗を宥めて茜は階の番号のボタンを適当に押した。

すると扉が閉まりエレベーターは下へ降りていった。

 

「えっ!?これって、もしかして下がってる!?」

「ビルの地下か・・・!?」

「けどよ、このエレベーター、地下行きのボタンなんてねぇぞ!?」

「おい茜!何なんだ一体!?」

 

一体エレベーターはどこへ向かっているのだろうと秋宗たちは少し焦ってしまう。

しばらくするとエレベーターが止まり扉が開くと、そこは奥へ伸びる一本の廊下だった。

そしてその奥には大きな扉が立っていた。

 

茜を先頭に秋宗たちは廊下を歩き扉の前へたどり着いた。

茜は扉に手を掛け、秋宗たちの方を向き、

 

「さぁさぁお待ちかね!ここが今回の合コンの会場だよ!」

 

そして勢いよく扉を開いた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「な、何だこれは・・・!?」

 

唖然となっている秋宗たちの眼前に広がっていたのは、大勢の人々で溢れている巨大な施設だった。

まるで東京ドーム3個分くらいの広大な広さで上の雑居ビルとは正反対の輝かしい場所。

そして人々の大半が、角が生えてたり翼を拡げてたり頭が獣になってたりと異形の者たちばかりであった。

 

 

 

「ようこそ!巨大地下娯楽施設!パラダイスへ!」

 

 

 

呆然となっている秋宗たちに茜はこの施設の紹介をした。

 

「きょ、巨大地下、娯楽施設・・・!?」

「名古屋の地下に、こんな場所が・・・!?」

 

パラダイスなど今まで聞いたことがない施設の名前に秋宗たちは再び辺りを見渡した。

まるでラスベガスのカジノのような場所でこの施設を利用している人々は凄く楽しそうにしていた。

 

「ここはね妖怪も人間も関係なくみんなが仲良く楽しく遊ぶためにある施設でね、誅魔忍の情報網にすら引っ掛からないところなんだ。簡単に言えば『睨み合ってる東軍と西軍なんて無視して遊ぼうぜ!』っていう人たちの集まりなんだよねぇ~」

 

東軍と西軍が一触即発だろうが関係なく全員が遊ぶために誕生したのが、このパラダイスという施設であった。

 

「まさかこんな場所があったなんて・・・!」

「なんかスゲェ場所に来ちまったな」

「俺だけ、スゲェ浮いてる気が・・・」

「でも見た限りだと兵藤くんみたいに霊力が少ない人たちもちらほらいるよ」

「よし!じゃあそろそろ合流しよっか!着いてきて」

 

そして茜は再び歩き出し秋宗たちは慌ててその背中を追うのだった。

しばらく辺りを見渡しながら歩いていると、無数に並ぶテーブルに人々が座り食事をしているレストランのような場所に着いた。

 

「ここはレストランゾーン。読んで字の如く、食事をするための場所だよ。え~っと、何処かな~?あっ!いたいた!おーいお待た~!」

 

茜がキョロキョロしていると一席のテーブルへと向かって行くと、既にテーブルには3人の女子が座っていた。

 

「・・・遅い。待ち合わせしておいて5分遅刻するなんて、一体どういう了見なの?」

 

1人目は黒を基調としたフリルつきのゴスロリの服を着こなし黒のロングヘアーの上にミニハットを乗せていた。

ゴスロリの女子は手に持っていた分厚く大きな本をパタンと閉じ遅刻した茜を鋭い目で睨んだ。

 

「お、落ち着いて黒羽ちゃん・・・!きっと茜ちゃんは悪気があった訳じゃないんだよ・・・!」

 

2人目は白のトップスに青のスカートを着こなし藍色のボブカットヘアーだが、その女子の顔には2つあるべき目が1つしかなく人間でないことを示していた。

一つ目の女子はオドオドしながらも少しイライラしているゴスロリの女子を落ち着かせていた。

 

「そうでござる。遅刻をしたとは云えちゃんと来たのでござるからな」

 

3人目は黄緑の胴着を着こなし濃い緑の長い髪を一本に纏め、背中に刀を背負っていた。

侍口調の女子は一つ目の女子と同じようにゴスロリの女子を落ち着かせた。

 

3人とも見るからに個性が強そうだが幽奈や千紗希たちに負けず劣らずの美少女であった。

 

「流石は茜、合コンの面子集めでも抜け目ないな」

「でしょでしょ~?もっと褒めて~」

「けど、冗談抜きで全員可愛いね」

「まぁ、そう言われてみりゃな・・・」

「マジで可愛い子ばっかじゃん!俺的にはあの目が1個の子とかガチのストライクゾーンだぜ!」

 

集まっている女子の面子に秋宗たちがそれぞれ意見を口に出しているとゴスロリの女子が立ち上がり茜の前へ歩いた。

 

「・・・茜、何で私がこんなに怒っているか分かる?」

「な、何でって、ウチらが遅刻したから・・・!?」

「違うわ」

「ちゃ、ちゃんとアッキーも連れて来たじゃん!アッキーに会いたいって言ったのクロロンでしょ!?」

「確かに会ってみたいとは言ったわ。でもね・・・」

 

言いかけたと同時にゴスロリの女子は茜の頬を両サイドから思いっきり引っ張った。

 

「誰が合コンとしてセッティングしろって言ったのよ・・・!?」

「いひゃいいひゃいいひゃい!にひゃいふぇ!ほぉんひぃふにひゃいふぇ!」(訳:痛い痛い痛い!2回目!本日2回目!

 

どうやら合コンと聞かされてなかったのは秋宗たちだけではないようで彼女たちもまた被害者なのだと悟った。

 

「・・・まぁいいわ。さっさと終わらせ帰ることにするわ」

 

しかし観念したのかゴスロリの女子は手を離して再び椅子に座った。

 

「いったぁ~。ま、まぁ気を取り直して、アッキーたちも座って座って~」

「おう」

 

そして秋宗たちも女子たちと向かい合うように座りいよいよ合コンが始まろうとした。

 

「それじゃあまず、全員の自己紹介からやろっか!」

 

幹事を取り仕切っている茜が司会をこなし自己紹介を行おうとした。

 

「どーもー!狢の半妖JK!光明院茜ちゃんでーす!」

 

茜は昨日と同じようにVサインでウインクをしながら自己紹介をした。

 

「・・・闇本黒羽(やみもと くろは)。呪術師よ。よろしく」

 

ゴスロリの女子、黒羽はどこか面倒そうに自己紹介をした。

 

「い、一橋瞳(いちはし ひとみ)です。一つ目族です。今日はよろしくお願いします」

 

一つ目の女子、瞳は緊張してオドオドしながらも自己紹介をした。

 

「拙者、宮原薫(みやはら かおる)と申す者。見ての通り侍を目指しておるでござる」

 

侍の女子、薫はハキハキとものを口にしながら自己紹介をした。

 

そして今度は秋宗たちの番へ移った。

 

「西条秋宗だ。まぁ知ってると思うが、オオカミ人間だ」

「俺は冬空コガラシ。八咫鋼だ」

「初めまして、平賀浩介です。発明家です」

「俺、兵藤聡!ただいま彼女募集中でーす!」

 

秋宗たちも流れるように自己紹介を済ませて全員名乗り終えた。

 

「じゃあ次は飲み物頼もっか。みんな何飲む?」

 

すると今度はメニューを開いて飲み物を注文をすることになった。

みんながメニューを見ながら何を飲むか選んでいる中、浩介は再び周囲を見渡した。

 

(まさか名古屋の地下にこんなところがあったなんて。でもここにいる人たちは妖怪とか人間とか関係なく楽しそうにしてる・・・)

 

今の現状として、妖怪と人間の溝は深まったままである。

妖怪は自分たちより格下の人間を見下し、人間もまた自分たちと異なる存在の妖怪を軽蔑している中、このパラダイスの人たちは溝など関係なく交流を深めており、妖怪と人間の架け橋となっている。

もしかしたら近い将来、妖怪も人間は互いに共存できるかもしれないと思った。

 

(現に僕たちだってゆらぎ荘を通じて仲良く出来てる。今回の合コンも、きっと全員の交流が深まる筈。何事もトラブルがな・・く・・・)

 

その時だった。

浩介の視界にある団体が写り込んだ。

位置は今座っているテーブル席から3席挟んだ遠くのテーブル席に座っている団体。

各々が眼鏡やら帽子などを被り周囲を気にしている様子だった。

そしてその団体を見て浩介は目が点になってしまう。

 

何故なら・・・

 

 

 

 

 

「おのれ茜めぇ!コガラシ殿を連れて合コンとは何を考えておるのじゃ!」

「では、悪霊の話は嘘だったのですね!」

「合コンに強制参加させるなんて許せないよ!」

「よせ雲雀、ここで騒ぎを起こせばどうなるか分からんぞ」

「冬空くん・・・!」

「秋宗兄さん・・・!」

 

 

 

 

 

(・・・前言撤回。この合コン、絶対修羅場になる!!)




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