緋扇邸のオオカミくん   作:アニアス

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第54話 遊戯

~ゆらぎ荘~ 一時間前

 

ゆらぎ荘の大広間では幽奈と狭霧、雲雀と千紗希、そして紫音の5人が女子トークをしていた。

 

「今年の流行ってこういうのらしいよ!」

「可愛いお洋服ですね~」

「紫音ちゃんこういうの似合うんじゃない?」

「そ、そうッスかね…?」

「………」

 

ファッション雑誌を広げながらどんな服を買おうか盛り上がっている中、狭霧だけは何かを真剣に考えている様子だった。

 

「狭霧ちゃん?どうしたの?」

「ん?あぁいや、昨日光明院茜が見せたネットニュースのことで気になることがあってな」

「気になること?」

「あんなに大きな傷害事件が起こっているなら間違いなく誅魔忍の情報網に掛かる筈なのだが、まったくそんな情報が入って来ていないんだ。そもそもあんな大きな事件が起きていたらニュースで毎日報道される筈」

「い、言われてみれば…」

「そんなニュース、見たことないッスね…」

 

10人以上も被害者が出ている大事件なら間違いなくニュースで報道される筈。

だがしかし、そんなニュースなど一度も見かけこともなくどういうことなのだろうと疑問に思ってしまう。

 

すると、突如神速通が開き中からかるらが飛び出して来た。

 

「なんじゃお主ら、難しそうな顔つきをしよって」

「あ、かるらさん!」

「まぁその、少し気になることがあって…」

「?…ところで、コガラシ殿はおるか?」

「コガラシくんなら秋宗くんたちと一緒に茜さんって人と名古屋に行ったけど…」

「…何じゃとぉ!!?」

 

雲雀から茜の名が出てコガラシたちを連れて行ったことを知ったかるらは目を見開き詰め寄った。

 

「ど、どうしたんスか!?」

「何故茜はコガラシ殿を連れて行ったのじゃ!?」

「えぇっと、悪霊退治の手伝いをしてほしいってことだったんだけど…」

「それは絶対ありえん!アヤツが率先して悪霊退治などする訳がない!」

 

茜の面倒くさがりな性格を理解しているかるらは彼女が自ら進んで悪霊退治なんて行く筈がないと断言した。

それにより幽奈たちもハッとなり不審な点がいくつも思い出てきた。

 

「よく考えてみればあんな大事件が誅魔忍軍の情報網に掛からない訳がない!」

「それに悪霊退治なら秋宗兄さんだけで十分な筈なのに聡兄さんまで連れて行ったのもおかしいッスよ!」

「そういえば幽奈ちゃんが行こうとした時必死になって止めてたけど…!」

「兎に角茜を探すぞ!確か名古屋じゃったな!」

 

そしてかるらは天通眼で名古屋にいる茜たちを必死に探し出した。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

そして現在。

 

『かんぱーい!!』

 

名古屋の巨大地下娯楽施設パラダイスのレストランゾーンにて、茜が幹事を努める合コンの席では全員がグラスを合わせて乾杯をしていた。

その光景をかるら、幽奈、狭霧、雲雀、千紗希、紫音の5人は変装をして遠くの席から見ていた。

 

「あんのアホ狢ぁ!普段やる気を出さんくせにこんな時だけ用意周到に準備をしおって!」

「緋扇さん堪えて!冬空くんたちに気づかれる!」

「そんな、コガラシさんが合コンに…!」

「秋宗兄さんたちを騙して合コンに参加させるなんて!やっぱあの人嫌いッス!」

「…気持ちは分かるが邪魔をする行為はよくないぞ」

「じゃあ何で狭霧ちゃん来たの?」

「そ、それは!こんな場所が存在することなど誅魔忍でも知りえなかったのだぞ!調査だ!」

 

誅魔忍として正体不明のこの巨大施設の調査の為に同行しただけに過ぎないと狭霧は言いきった。

 

(そ、そうだ!これは調査!この施設の調査ついでに同行しただけだ…!しかし何故だ!?何故もやもやするのだ!?…ん?)

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「………」

 

一方合コンチームの席は盛り上がっており、それぞれの趣味やら何やらを話したり注文した料理を食べたりしていた。

そんな中、唯一幽奈たちがパラダイスに来ていることを知ってしまった浩介はチラチラと向こうの席を見ていると同行していた狭霧と目が合ってしまった。

このまま無視出来ない浩介は前髪と耳たぶを弄った。

 

「(何やってんの雨野さん?)」

 

それに対し狭霧は指を2本指したり顔を触ったりした。

 

「(緋扇かるらに昨日のことを話したらそんな訳がないと言いきってな。貴様らを探してここに来たのだ)」

 

今2人がやっているのは誅魔忍のサインで口を閉じながら意思疏通ができ浩介も自然に覚えたのである。

 

「(それよりも平賀浩介。何とかして合コンを壊せ)」

「(無理だよ!こんな楽しそうな空気壊せないよ!)」

「(こっちはギスギスして空気が重いんだ!)」

「(そんなに言うなら雨野さんが壊してよ!)」

「ねぇすっちー。さっきから何してんの?」

「えっ…!?」

 

狭霧とサインを取り合っていることに夢中になっていた浩介がハッとなるといつの間にか全員がこちらを注目していた。

髪を弄ったり指を立てたりしている浩介に思わず全員注目してしまった。

 

「え、ええっと…!合コンなんて初めてだったから、緊張しちゃって…!」

「なんだぁ、そゆことか~」

「あっ!そういえば薫さんって鳥好きなの?鶯のキーホルダーつけてるけど」

 

何とか誤魔化せた浩介は意識を反らそうと薫に鳥が好きなのかと質問をした。

浩介の言った通り、薫の背負っている刀の柄の先端に鶯のキーホルダーがぶらさがっていた。

 

「うむ。拙者は幼き頃から鳥が好きな故、今ではバードウォッチングを趣味としているのでござる」

「さ、侍なのにバードウォッチングが趣味って…」

 

侍らしさ全開の薫の口から横文字が出てきたことに兵藤は少し驚いてしまう。

 

「人の趣味にどうこう言うつもりはないけど、わざわざ私たちまでバードウォッチングに連れて行くのは勘弁してほしいわね」

「なにを言うか黒羽殿よ。自然の中で鳥の鳴き声を聞くと癒されるであろうに」

「だからって朝6時から叩き起こさないで。呪われたいの?」

「く、黒羽ちゃん…!薫ちゃんも、喧嘩はやめて…!」

 

朝早くからバードウォッチングに付き合わせようとする薫に黒羽は鬱憤が溜まっており喧嘩になりそうだったが瞳が仲裁に入り場が治まった。

 

「なぁ闇本、呪術師って普段どんなことしてんだ?」

 

少しギスギスしてしまった空気を変えようとコガラシは呪術師の黒羽に質問をした。

 

「…そうね、呪術師は依頼を受けてターゲットを呪って報酬を貰うって感じね」

「仕事は誅魔忍と少し似てるね」

「ちなみにどんな呪いをかけれんだ?」

「流石に殺生関連の呪いは無理よ。主に使う呪いは一晩中下痢が止まらないとかどんなものを食べても味を薄く感じるとか全ての歯が歯周病になるとかよ」

「地味そうでキツい呪いだな」

 

思っていた呪いと違ったものの効果として地味にキツそうな呪いを聞いて秋宗は少し身震いしてしまう。

流石は呪術師というだけあり呪いのレパートリーも豊富だろうと思っていると茜がカバーをした。

 

「確かにクロロンは呪術師だけど、医者でもあるから怖がらなくていいよ」

「い、医者?」

「何よ?呪術師が医者じゃダメなの?」

「ううん!ちょっとビックリしただけだよ…!」

「…呪いは病気と似てるの。人によっては効きやすい体質、効きにくい体質とあってね、免疫力のように呪いの効果が薄いこともあるわ。それで呪術について色々研究してたら医療関係の方も研究してしまってね、気がついたら医者になってたって訳」

 

呪いと病気は紙一重で似てる。

それを熱心に研究した結果、医者になっていた黒羽の話を聞き秋宗たち一同は納得した。

 

「凄いよクロロンは。なんと言っても全国模試5位なんだから」

「全国模試5位!?」

「それ言うの止めてって言ってるわよね?呪うわよ?」

 

医者を目指すにしても頭が良すぎると秋宗たちは驚くも、あまり自慢してほしくないのか黒羽はカミングアウトした茜を睨んだ。

 

「でも本当に凄いよ黒羽ちゃん。薫ちゃんと茜ちゃんもそうだけど、3人と比べたら私なんて普通だし…」

 

すると瞳が少し自虐的になり視線を下の方へ落としてしまった。

 

「え~っと、一橋は半妖か?それとも純血?」

「純血です。でも目が1つしかないことが唯一の取り柄でして、他は全て普通なんです…」

 

狢の茜や呪術師の黒羽に侍の薫と比べたら自分は目が1つしかない一つ目族。

特殊な能力もなく身体能力も普通だから他の3人と比べてしまい落ち込んでいるとコガラシがフォローを入れた。

 

「いいじゃねぇか普通でも」

「えっ?」

「人にはそれぞれ個性の良さってもんがあるんだからよ、お前にもきっと良さがあるさ」

「冬空さん…!ありがとうございます!」

 

例え普通だったもしても良さは存在する。

今はそれが見つかってないだけでさがせば必ず見つかる。

それを教えられた瞳は笑顔になりコガラシにお礼を言った。

それと同時に秋宗たちは同じことを思った。

 

(いや、コガラシ…スゲェいい話なんだけどよ…)

(人っていうか…)

(その子は妖怪だよ…)

 

人それぞれとはいえ瞳は妖怪なのではと心の中でつっこむも口には出さなかった。

 

「あの男はまた女をたぶらかして…!」

「違いますよ狭霧さん!コガラシさんはあの方を励まそうとしただけですよ!」

「けどあの子までコガラシくんに惚れたらまたライバルが増えちゃう!」

「これ以上増えてたまるか!」

「大丈夫ッスよ千紗希姐さん!自分は千紗希姐さんの味方ッスから!」

「う、うん、ありがとう…」

 

一方幽奈たちの方はコガラシが瞳を励ましたことに対し嫉妬が込み上げていた。

そんなことなど知るよしもなく合コンは進んでいった。

 

「西条くん災難だったわね。霊界新聞見たけど凄まじかったらしいじゃない」

「更にあの龍・炎焔が三つ子だったとは驚きの連続でござったな」

「まぁな、あの時はお嬢たちが来なかったら確実に負けてたしな…」

 

話題は秋宗と炎焔の激闘の話で黒羽たちが興味津々に質問をぶつけていた。

当時のことを思いだしながらかるらを泣かせてしまったことを後悔した。

 

「でも最後の最後で大勝利を収めるなんて流石はウチのアッキーだね~!」

「誰がお前のものだ」

 

その話にまるで自分のことのように胸を張る茜に思わず秋宗はつっこんでしまう。

 

「茜ちゃんホントに西条にぞっこんだな。どこに惚れたの?」

 

そんな2人を見て兵藤は思いきって質問をした。

昨日の茜の行動から見て完全に秋宗のことを好きなのは明白。

一体何処に惚れたのだろうと疑問に思ってしまう。

 

「え~?さとるんそれウチに言わせるの~?そうだねぇ、まずはこのカッコいい男前の顔でしょ。それに凄く強いし~、あとは~…友達を誰よりも大切にしてくれるところかな~」

 

ニッと笑い秋宗をじっと見つめる姿は正に恋する乙女の眼差しであった。

そしていろんなところを褒められた秋宗は思わず目を反らしてしまう。

 

「………」

「紫音ちゃん…」

 

それを聞いていた紫音は思わず顔を伏せてしまう。

自分は彼のことが確かに好きだ。

しかし彼女は長い付き合いのため彼のことをよく理解できている。

果たして自分は彼に相応しい人間なのかと。

 

「そんなに言うなら少しはお嬢の手伝いとかしたらどうだ?」

「ちゃんと手伝ってるよ~。この前もかるかるの服を洗濯したし~。あぁでも一緒に洗ったかるかるお気に入りのパンツ縮んじゃって、バレる前に捨てたけど」

「…茜ちゃん、バレる前に謝った方がいいんじゃ?」

「いいのいいの!だってかるかるのパンツなんて需要ないしね~」

 

かるらのお気に入りの下着を勝手に捨てた話を聞いた浩介は汗をかきながらチラリと幽奈たちの方を見ると、

 

「ぐぬぬぬぬぅぅぅ~!!」

「かるらさん落ち着いて下さい!」

「コガラシくんたちにバレちゃうから!」

「気持ちは分かるけど抑えて!」

「その手に持ってるフォークとナイフで何をするつもりッスか!?」

「早まるな緋扇かるら!」

 

真実を知り目がつり上がっているかるらが両手にフォークとナイフを持って今にもこちらへ襲って来そうな勢いであり、そんな彼女をみんなが必死になって抑えていた。

あんなに騒いでいてもパラダイスの人混みで掻き消され秋宗たちには聞こえていない様子である。

 

これ以上かるらの血圧を上げるのはマズイと思った浩介は話題を切り替えることにした。

 

「………そういえばさ、茜さんたちってよくここに来るの?」

「うん!ウチら4人で集まって遊んでるんだ~!」

「ここ色々揃ってるからまず退屈はしないわ」

「うむ、折角の機会でござる。ここは皆で1つ遊んでみるのはどうでござろうか」

「賛成!」

「俺も!」

 

そして8人が立ち上がり茜を先頭にして何処かへ歩き出したと同時に幽奈たちも後をつけるのであった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

プレイゾーン

パラダイスの施設の1つでそこは巨大なゲームセンターとなっている。

更にはボウリング場にダーツ、しかもサバイバルゲーム場もあり幅広く多くの人たちが利用している。

 

「よっと!」

 

そして秋宗たちが遊んでいるのはビリヤード。

秋宗はがキューを使いボールを突くと気持ちいい音がなり突かれたボールは他のボールに当たり穴へと落ちていった。

 

「うしっ」

「やったぁ!流石はアッキー!」

 

ボールが入ったことに小さくガッツポーズを取ると茜が抱きついて一緒に喜んだ。

秋宗・浩介・茜・瞳チームとコガラシ・兵藤・黒羽・薫チームに分かれて対戦しており皆で楽しくプレイしていた。

 

ちなみに幽奈たちはビリヤード場の隣のダーツ場で遊びながら秋宗たちの様子を伺っている。

 

「上手いね秋宗くん、ビリヤードやってたの?」

「まぁな、母さんが色々と教えてくれて」

 

アメリカでマーレから遊びで教わったことがここで役に立つとは思わず秋宗は頬を掻きながら答えた。

 

「コガラシ殿も中々の腕でござるな」

「あぁ、ハスラーの霊に取りつかれたことがあってな」

 

しかしコガラシも秋宗に負けず劣らずハスラーの霊に取りつかれた時の感覚を思い出しながらプレイをしており楽しそうに遊んでいる。

 

「アッキーもコガッチもプロ級の腕だね~」

「それに比べて素人の俺らミスばっかだしな」

「でも結構面白いねビリヤード」

「…言っておくけと、その俺らの括りに私は入ってないから」

 

するといつの間にか黒羽がキューを構えており、軽くボールを突くと突かれたボールはまるで意思を持っているかのようにボール2つを穴へと落とした。

 

「おぉ…!ミラクルショット…!」

「お見事でござる」

「ここに通っているせいで技が身に染み込んだだけよ」

 

周りから褒められても興味なさそうに軽く流し当たり前のようにさらりと答えた。

 

「ほらほら、次はひとみんの番だよ~」

「う、うん…」

 

茜に言われて瞳はヒューを持ちテーブルの前に立つもどこか浮かない様子だった。

先程からキューに玉を上手く当てられずかするだけのためこれ以上ミスを見せるのが恥ずかしくなっていたのだった。

 

「…腕だけに力を入れすぎなんだよ。肩も使って突いてみろ」

「!は、はい…!」

 

そんな彼女を見かねて秋宗が後ろからアドバイスをした。

瞳は腕だけに力を入れず肘から肩まで最大限に動かし始めた。

 

「ひとみんファイトー!」

「毎日通ってるんだから、せめて1つくらい入れなさいよね」

「気楽にいくでござるよ」

 

更に茜たちからも応援され瞳はふぅと一息ついて集中した。

 

(腕だけに力を入れずに、肩まで動かして………)「えいっ!!」

 

そしてヒューを突き出すと見事にボールにヒットして気持ちいい音が鳴った。

 

だが狙いが少しずれたのかボールはテーブルから離れてそのまま一直線へ飛んでいき、

 

「ぐはぁっ!?」

 

見事に兵藤の頭に直撃しそのまま後ろへ倒れてしまった。

 

『……………』

 

「…ねぇアッキー、これってミラクルショット?それともクリティカルショット?」

「…ある意味ではミラクルショットだな」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「すみませんすみませんすみません………!!」

 

場所は戻りレストランゾーン。

あの後気絶してしまった兵藤は医務室へと運ばれ元の席へと戻ったのだが、瞳は先程のことを手で顔を覆いながらずっと謝っていた。

 

「気にすんなって…」

「そうそう、アイツは常日頃から酷い目にあってるからこの程度慣れてるさ」

「秋宗くん、酷いこと言ってるね…」

 

そんな彼女を秋宗たちは優しく宥めていた。

 

「まぁまぁ、気を取り直して合コンの続きしよ」

「けど男1人減ったからバランス取れないわよ?」

「大丈夫大丈夫!今からやる定番のゲームで盛り上がればそんなの忘れるって!」

「ほう、定番のゲーム?」

 

茜の言う合コン定番のゲーム、それは………

 

「今から王様ゲームを始めまぁーす!!」

 

王様ゲーム

複数人がくじを引き王様を引いた人は他の人たちにどんな命令でも下せるゲーム。

まさにベタ中のベタ。

 

茜はあらかじめ用意していたのか、筒状の箱に棒が何本も入っている者を取り出した。

 

「さぁさぁ皆さん、お好きな棒をお取り下さ~い」

「王様ゲームか、お嬢がいたら間違いなく天通眼でイカサマしてきそうだな」

「確かにそうだな…」

 

そう言いながら全員は棒を手に取り、

 

『王様だーれだ!?』

 

掛け声と共に棒を一斉に引っこ抜いた。

 

「…む?拙者でござるか」

 

まず最初の王様になったのは薫。

証拠を示すために彼女はみんなに王様の棒を見せた。

因みに命令を下す時は他の人たちが手に取った番号で言わなければならないため誰が何番を引いているのか分からないのも王様ゲームの醍醐味である。

 

「いざ命令を下すとなると難しいでござるな…では、2番の方は4番の方の頭を撫でるでござる」

 

薫は色々考えパッと思いついた命令を下した。

 

「俺2番だ…」

「…4番は私よ」

 

コガラシは2番、黒羽は4番の棒をみんなに見せて自分たちが選ばれたことを自己申告した。

 

「ほら、さっさとやって」

「お、おう…」

 

相変わらず塩対応の黒羽はコガラシに頭を差し出した。

それに対しコガラシは恐る恐る手を伸ばし黒羽の頭を撫でた。

 

「…今日会ったばかりの女の子の頭撫でるってどんな気分?」

「仕方ねぇだろゲームなんだから」

 

やはり会ったばかりの男に頭を撫でられるのが嫌なのか不満そうな様子だった。

 

「雲雀まだコガラシくんに頭を撫でられてないのにぃ!」

「羨ましいですぅ~!」

 

一方それを見ていた幽奈たちの方は不満という名の空気で充満しており狭霧はとても気まずい状況に置かれてしまった。

 

一通り頭を撫でたコガラシは黒羽の頭から手を離し2回戦が始まろうとしていた。

 

『せーのっ!王様だーれだ!?』

 

再び掛け声と共に一斉に棒を引っこ抜いた。

 

「あっ、私です…」

 

次の王様となったのは瞳。

いざ王様となるとどんな命令がいいのか悩んでしまう。

 

「ひとみん、何でもいいんだよ。今のひとみんは王様なんだから」

「えぇっと…じゃあ、5番の人は1番の人にリンゴを食べさせる」

 

茜に促され瞳はテーブルに置かれている切られたリンゴを見ながら命令を下した。

 

「今度は俺か…」

「ということは拙者が秋宗殿に食べさせるのであるか」

 

選ばれたのは1番の秋宗と5番の薫。

薫は即座に爪楊枝でリンゴを刺して秋宗の目の前まで運んだ。

 

「秋宗殿、口を開けられぃ。命令でござる」

「わ、わかった…」

「くぅ~!かおるんめ!出来れば変わりたいけど王様命令だし!」

 

悔しそうにしている茜を余所に秋宗が口を開けると薫がそのままリンゴを口の中へと入れた。

 

(シャクシャクシャク)「………これでいいのか?」

「うむ、命令通りでござる」

 

音を立ててリンゴを食べながら2人は瞳の命令をこなした。

 

「うぅ~…!」

 

それを見ていた紫音も羨ましく思うも動くことができず傍観するしかなかった。

 

『せーのっ!王様だーれだ!?』

 

いのまにか3回戦が始まり再び棒を引っこ抜いた。

 

「…あ、次僕だ」

 

そして王様を引いたのは浩介。

チラリと幽奈たちの席を見るとギスギスした空気がこちらにも伝わってきていた。

 

「(分かっているだろうな平賀浩介!これ以上幽奈たちの機嫌が悪くなるのはマズイ!変な命令を出すんじゃないぞ!)」

「(大丈夫だよ、任せて)」

 

狭霧とサインを取り合いながらどんな命令を下すか考えいいことを思いついた。

 

「えっとじゃあ…6番の人、隠していることを暴露してください」

 

2人指名ではなく1人だけ指名すればコガラシが当たったとしても幽奈たちの不満が溜まる筈がないと推測した。

 

「(よしっ、それでいい!それなら問題はない!)」

「(やっぱりそう思うよね!?これなら絶対大丈夫な筈!)」

 

しかしこの命令は逆効果になってしまった。

 

「えっとね~…実はこの前かるかるがこっそり買ったお高いケーキ食べちゃった~!」

 

6番の茜がかるらに関する暴露をしてしまったのであった。

 

「アヤツめぇぇ~!!」

「緋扇さんやめて!」

((何でこうなるんだ………!?))

 

茜の暴露を聞いたかるらは皿を手に取り投げようとするも再びみんなに阻止された。

火に油を注がないように注意を払っていたが油どこかガソリンを投入してしまい、何をしても裏目に出てしまうことに狭霧と浩介は揃って頭を抱えてしまう。

 

しかしそれでも王様ゲームは止まらず4回戦。

 

『せーのっ!王様だーれだ!?』

 

みんなが棒を一斉に引っこ抜き次の王様となったのは、

 

「やったー!ウチが王様ー!」

 

今回の合コンをセッティングした茜だった。

ようやく念願の王様を引けたため思わずガッツポーズを取ってしまう。

 

「ん~どうしよっかな~?」

 

顎に手を置いてどんな命令にするか考えているとパッと閃き命令を下した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「決めたっ!5番の人は王様とキスをするー!」

 

 

 

 

 

「………はっ?」

 

 

 

茜の命令に秋宗は目が点になり自分の番号を改めて見ると、そこには5番と書かれていた。

つまり今から王様である茜とキスをしなければならないということ。

 

「おっ!もしかしてアッキー!?やっぱウチらって赤い糸で結ばれてる運命なんだね~!」

「ふざけんなお前!絶対イカサマしたろ!?」

「イカサマだなんて人聞きの悪い…でも、王様の命令は絶対だもんねぇ~!」

「断る!いくら王様命令とはいえ!」

 

イカサマをしなければキスなんて命令をする訳がないと断言するもその証拠がないため不正を暴くことができない。

それでもキスだけは回避しようと必死に抗議すると、

 

「クロロン!」

「…了解王様」

 

茜が黒羽に指示を出すと、彼女は持っていた本を開きボソッと何かを呟いた。

すると突然秋宗の足元から黒い茨のようなものが何本も現れ巻きついて拘束をした。

 

「うぉっ…!?何しやがる!?」

「西条くん、王様の命令は絶対でしょ?だったら素直に命令は受けないと、ねぇ」

 

茜に加担した黒羽の相手を見下し面白そうにしている表情は七海によく似ていた。

 

「くっ!?コガラシ!浩介!見てないで助けろ!」

 

拘束され動けない秋宗はコガラシと浩介に助けを求めようと2人の方を見ると、いつの間にか2人の姿がなく代わりにタヌキの置物が置かれていた。

 

「すみません西条さん!お2人は黒羽ちゃんの変化のお札でこんな姿に!」

「なんだとぉ!?」

 

つまりこのタヌキの置物はコガラシと浩介ということ。

涙目になっている瞳には秋宗に謝ることしかできない。

 

「秋宗殿、男なら覚悟を決められぃ!」

「お前もかぁ!?」

 

そして薫も秋宗の後ろへ立ち顔を反らさないようにガシッと頭を掴んで動かないようにした。

今この場に秋宗の味方は誰もいない状況へと変わってしまった。

 

「さぁ~て下準備は万全だね、じゃあいくよアッキー」

「待て茜!///ホントに待ってくれ!///頼む!///」

 

何とか逃げ出そうとするも動けずジリジリと茜の顔が近づいてきた。

10㎝、5㎝、3㎝と互いの息が当たるまで近づいていった。

 

「アッキー///私のファーストキス、受け取って///」

 

そしてそのまま2人の唇が重なろうとした。

 

最早ここまでかと秋宗は諦めて目を瞑った………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダメッスーーーーーーーーーー!!!!」

 

 

 

『!!??』

 

 

 

その時だった。

聞き覚えのある声が聞こえたかと思いきや、秋宗と茜の間に入り込むように誰かがテーブルへとスライディングをした。

茜は思わず秋宗から顔を離してしまい、黒羽も思わず術を解除してしまった。

 

「ったぁ!」

「やっと戻れた~!」

 

それによりコガラシと浩介はタヌキと置物からようやく解放された。

 

突然のことに理解が追いつかない全員はスライディングしてきた人物へ視線を集めるとそこにいたのは、

 

「いったたた~………」

「紫音!?」

 

なんと紫音だった。

紫音はテーブルの上に座りながら頭をさすっていた。

秋宗が茜とキスをすることに耐えきれず思わず飛び出してしまったのであった。

 

「あっ………ど、どうもッス秋宗兄さん………!」

「お前何でここにいんだよ!?」

 

何故紫音がパラダイスにいるのか秋宗には理解できなかった。

 

「あっ!?まさかアソコにいるのって幽奈か!?」

「はぅっ!?見つかってしまいました!」

「アヤツ何1人で飛び出しておるのじゃ!?」

「げぇっ!?かるかるもいる!」

 

そしてついに幽奈たちもコガラシたちに見つかってしまった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

あの後、少し周りから注目を集めてしまったもののそれも無くなり今は幽奈たちと合流して同じテーブルに座っている。

 

「あーあ、折角合コン組んだのにかるかるにバレちゃった………」

「ふん!貴様には何度も欺かれるからのう!これからはそう簡単には騙せると思うでないぞ!それよりもコガラシを合コンに連れて行きおって!」

 

合コンが台無しになってしまいブツブツと文句を言っている茜にかるらは隠していたことを説教していた。

 

「誅魔忍は普段どのような鍛練をしているのでござるか?」

「えぇ~っと、手裏剣で的に当てたり模擬戦をしたりって感じかな」

「貴女地縛霊なのに長距離まで行けるの?」

「そうなんですよ~」

「まさか幽奈まで来るとはな」

「それよりも紫音まで来たことに驚いたけどな」

「…ねぇ、千紗希ちゃんって呼んでいいかな?」

「うん、私も瞳ちゃんって呼ぶね」

 

「…なんだかんだで、みんな仲良くなっちゃったね」

「そうだな…」

 

話している内にいつの間にか全員が仲良くなってしまいその光景に浩介は苦笑いしてしまう。

 

「………」

 

そんな中、気まずそうにしているのは紫音。

先程の茜が秋宗に対する想いを聞いてしまってから浮かない様子であった。

キスしようとした時は咄嗟に妨害してしまったが本当は2人はお似合いなのではないのかと。

そんな彼女に隣に座っていた茜がこっそりと話しかけた。

 

「………ねぇねぇ、アッキーのこと好きなの?」

「なぁっ………!?///」

 

突然話しかけられ好きだと見破られた紫音は思わず顔を赤くしてしまう。

 

「そ、それは………!///」

「いいのいいの…確かにで分かるよ、アッキー男前でカッコいいもんねぇ~」

 

そう言いながら茜はチラリと秋宗の方を見てそれにつられて紫音も視線を向けた。

 

「心から好きならあんなことする訳ないし、アッキーが欲しいなら手に入れちゃいなよ~」

「!?」

 

その言葉に紫音は目を見開いてしまう。

自分が彼女の想い人を奪うかもしれないのに恋の応援をしてくれることに驚いたからだ。

 

「けど、アッキーは渡さないよ~。油断してると貰っちゃうから…覚悟してね、シオシオ」

「………絶対負けないッスからね、茜姐さん」

 

そして互いに宣戦布告をするもどちらも笑顔であだ名と姐さん付けで呼んだ。

 

「ねぇ千紗希ちゃん、あの子ってもしかして………」

「………そうだよ、紫音ちゃんは西条くんのことが好きなんだ」

 

それを見ていた千紗希と瞳は2人の仲が良くなったことに思わず笑顔になってしまう。

 

ここに仲のいい恋のライバルが誕生した瞬間だった。

 

「………あれ?」

「どうした?」

「いや、なんか忘れてるような………」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「………みんな、俺が医務室に運ばれたこと、忘れてるだろうな…」

 




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