緋扇邸のオオカミくん   作:アニアス

57 / 58
第56話 霊能力者の姫沙羅様

『ここが今日の討伐対象の妖怪の住みかや!大して強い妖怪ちゃうんやけど、男おらんと出らんヤツでな~、よろしく頼むでコガラシくんに西条くん!』

「おう!」

「頑張ろうねコガラシくん!」

「ってオイ、俺は無視かよ」

 

空が暗くなった夜、町の外れに佇む廃墟を見上げる秋宗とコガラシ、そして雲雀。

うららが霊視通信で連絡を取っている。

3人は誅魔忍の任務でとある妖怪の討伐に来ており、コガラシと秋宗はその手伝いで同行している。

ちなみに狭霧と浩介は別の任務へ赴いているため一緒にはいない。

 

(今日はチャンス!早く任務を終わらせて2人きりに…!)

 

内心で雲雀は早く任務を終わらせようと少し浮かれていた。

そんなメンバーの中、いざ廃墟へ入ろうとした時だった。

 

「今回の舞台は20年前に倒産し廃墟となったこのホテル。何故か最近怪しげな女の霊の目撃情報が相次いでいる心霊スポットです」

『!』

 

後ろから人の気配を感じ3人が振り向くと大型カメラなどの撮影機材を持った人たちが1人のアナウンサーにカメラを向けていた。

おそらく何かのテレビ番組の撮影だろうと察した。

 

「果たして本当に霊はいるのか!?その真相を探るのはもちろんこの方!早速ご登場いただきましょう!」

 

アナウンサーの掛け声と共に黒子の扮装をした人たちが江戸時代に使われていた駕籠を運んで来た。

 

「混沌渦巻く闇の時代、天は彼女に二物を与えた。その美貌と霊能力で生者を癒し死者を導く…」

 

そしてナレーションの紹介と共に駕籠の中からその人は現れた。

 

 

 

「現世一美しい霊能力者!如月姫沙羅でございますわ~!!」

 

 

 

まるで浦島太郎の乙姫のような格好をした『如月姫沙羅』という女性はカメラ目線で派手に自己紹介をした。

あまりの眩しさに秋宗たちはポカンとなってしまう。

 

「はいオッケーでーす」

「先に現地入りしたヤツらは?」

「それがまだ連絡がつかなくて…」

「お疲れ様です姫沙羅様!」

 

一旦撮影が終わりスタッフたちが次の準備に取り掛かっていると雲雀と秋宗が声を上げた。

 

「わ~!如月姫沙羅だ!」

「スゲェ、本物だ…」

「2人とも知ってるのか?」

 

秋宗と雲雀の反応を見てそれほどまでに有名な人物なのかとコガラシは思った。

 

如月姫沙羅とは、今テレビで話題沸騰中の霊能力者で毎日のようにテレビ番組に出ており心霊ブームに熱を入れた人物である。

 

「へ~そんなに凄い霊能力者なのか」

『冬空くんテレビとか見なさそうやもんな~!』

「おっ、なんかこっちに来るぞ?」

 

すると向こうの方から姫沙羅とアナウンサーがこちらへ歩いてきた。

 

「こんばんは、如月姫沙羅と申しますわ」

「あ、雨野雲雀です!」

「冬空コガラシっす」

「西条秋宗です。テレビでいつも拝見してます」

 

いきなり話しかけられたため雲雀は緊張してしまうもコガラシと秋宗は落ち着いて対応した。

 

「お三方は地元の高校生ですか?」

「そうっす」

「こちらには肝試しへ?」

「いや、ここに出てくる妖怪をムグゥ!?」

 

コガラシが言おうとした時、突然秋宗が彼の口を塞いだ。

突然の秋宗の行動に雲雀も姫沙羅も少し驚いてしまう。

すると秋宗がコガラシの口を塞ぎながらこう答えた。

 

「実は俺たち地元の高校のオカルト研究部なんですよ。今日はあの有名な姫沙羅さんが来ると噂で聞きまして、是非ともその腕を近くで見たいと思って来たんですよ。そうですよね、雲雀部長」

「ぶ、部長!?」

「あ~そういうことでしたの!」

 

雲雀は秋宗から部長と言われ戸惑ってしまうも、姫沙羅は納得したかのように頷いた。

それを余所に秋宗はコガラシに小声で話した。

 

「(アホかお前は!?テレビの前で堂々と妖怪退治って言う馬鹿がどこにいる!?もし俺らが妖怪退治している光景を撮影されて放送されたら毎日ゆらぎ荘に週刊誌の記者が押し掛けて来るぞ!そんなことも考えられねぇのかこの天然ポンコツ!)」

「(す、すまねぇ…!)」

「あははは…」

 

危うくカメラの前で妖怪退治と言いそうになったコガラシを止めて誤魔化した秋宗は愚痴を入れながら説教をした。

もし妖怪退治を全国放送されたら間違いなくいつも通りの生活を送ることはできない。

そうなってしまえば自分たちはおろか幽奈たちにまで迷惑が掛かってしまう。

秋宗の行動を理解したコガラシは謝り、雲雀はその光景に苦笑いをしてしまう。

 

すると、姫沙羅が何かに気付き声を上げた。

 

「あら?あそこに霊が見えますわ!」

「ホントだ!」

「流石は姫沙羅様!私には何も見えません!」

 

姫沙羅の言うとおり、確かにそこには一体の霊がいた。

姫沙羅は臆することなく、堂々と霊に近づいていき優しく話しかけた。

 

「さまよう霊よ…満たされぬ魂よ…!」

「ラッキーですよ君たちは!生で見られるんですから!本物の霊能力というものを!」

 

アナウンサーが少し興奮しているため、今から物凄い技をするのかとコガラシが見守っていると、

 

「キェェェ!!」

『!!?』

 

姫沙羅が念じるように手を合わせ奇声を上げたのである。

突然の行動にコガラシはおろか、霊さえも驚いてしまう。

 

「ハァァァッ!ヌォォォッ!!」

 

更に奇声を続けながら奇っ怪な動きまでして、端から見たら頭がイカれてしまっている人の行動にしか見えず霊も怯えてしまっている始末である。

 

「あれは一体何を…?」

「霊との交信を可能にするために姫沙羅様の霊感を高める儀式です」

「わざわざ話すためだけに?」

「霊能力者でも普段はうっすらとしか霊を認識できないそうです。いつもそこら中に霊が見えていたら生活に支障が出るでしょう?」

 

確かにアナウンサーの言うことも理解できなくはないが、霊能力者であるコガラシには日常的に霊がはっきり見えているため納得はできなかった。

気になったコガラシは小声で雲雀と秋宗に話しかけた。

 

「(凄い霊能力者、なんだよな…?)」

「(全然、霊と会話しかできねぇんだ)」

「(でも一応本物だから凄いんだよ~)」

『メディアに出る霊能力者は殆んどインチキやからな~』

 

現世一と大袈裟に姫沙羅が言っているため他の人話すすっかり信じ込んでしまい、そのカリスマ性としては一流かもしれない。

 

「きましたわぁぁ!!」

「おぉ!ついに儀式が完了したようです!」

 

そして一通り意味のない動きを終えた姫沙羅は息切れをしながら再び霊に話しかけた。

 

「さ、さぁ…お話なさいっ…この如月姫沙羅が、聞いて…差し上げますわ…!」

「お、俺は…今回のロケのために前乗りしていたスタッフです…」

「なんですって…!?」

 

話によると、廃墟内で機材の設置をしていたところ、いつの間にか一緒にいたスタッフたちが次々に姿を消してしまい、探している内に2人の妙な女がおり追いかけたらこの世のものとは思えない化け物が現れ食べられてしまったらしい。

 

「その2人の妙な女というのはおそらく目撃情報が相次いでいるという女の霊ですわね…どんな女でしたの!?」

 

スタッフの霊の話からその2人の女が化け物の元まで誘導したのだと推理した姫沙羅は更に詳しい情報を聞き出そうとした。

 

「そ、それが…顔は見えなかったのですが、間違いなく………バニーガールと、軍服の格好でした!」

(バニーガール…!?軍服…!?)

 

スタッフの霊から女の霊の姿を聞いて姫沙羅を始め秋宗たちもポカンとなってしまう。

するとスタッフの霊を見てコガラシがあることに気がついた。

 

「霊子線が出てるな」

「ホントだ、地面から伸びてるね」

「つーことは、身体は地下ってことか」

 

スタッフの霊をよく見ると頭から白い光の線が地面へと伸びていた。

この白い線は霊子線と言い、肉体と霊気を繋ぐ霊視の線のことである。

つまりまだスタッフの身体は無事で地下にあるということを示している。

 

しばらくして、流石におかしいと気がついたスタッフたちは撮影を中断して慌ただしくなっていた。

 

「前乗りしてたヤツらが襲われた!?」

「だから反対したんだ!ここはマジでシャレになんねぇって!」

「何故バニーガールと軍服なんだ!?」

「え?え?これドッキリですか!?」

 

一向に現地入りしたスタッフたちと連絡が取れないことからこの廃墟には本当に化け物がいると信じ込んでしまい全然が動揺してしまう。

 

「姫沙羅さん!警察を呼びましたので一旦ホテルに」

「そうはいきませんわ!まだ生きている方がいるやもしれませんのよ!?大体霊相手で警察に何ができるというのです!?ここは霊能力者である私が、見事に救い出して見せますわ!」

 

囚われたスタッフたちを救うために自ら虎穴へ入ると姫沙羅は自信満々に言いきった。

その姿に他のスタッフたちは感動してしまう。

 

「き、姫沙羅さん!」

「流石は姫沙羅様だ!」

「そうですよ!救えるのは姫沙羅様だけです!」

 

スタッフの声援を受けて姫沙羅は懐中電灯を手に取り廃墟へと赴いた。

まず姫沙羅を出迎えたのはエントランス。

二度と動きそうにないエスカレーターやひび割れたガラスなどが長い時間誰も立ち入っていないことを物語っていた。

 

しばらく歩いていた姫沙羅が急に立ち止まると、

 

(カッコつけ過ぎてしまいましたわぁぁぁ!!)

 

自分で馬鹿なことをしてしまったと後悔した。

 

姫沙羅は自分で霊と会話できるだけで悪霊退治などできる訳がないと既に自覚していた。

しかし今さら引き下がることもできないため、せめて他のスタッフたちに危害が及ばないようにと自ら赴いてしまった。

 

(それにこんなちやほやされて儲かるお仕事、やめられませんものね!)

 

最終的には自己満足のためだが勇気を振り絞って危険地帯へ足を踏み入れただけでも大したものである。

 

すると姫沙羅の背後から物音が聞こえた。

 

「ひゃぁ!?」

 

突然の物音に驚いてしまうも恐る恐る振り返ると、

 

「あれ?姫沙羅さん?」

 

それには懐中電灯を持った雲雀と、秋宗とコガラシの姿があった。

3人も本来の目的である妖怪退治をするために廃墟へ入ったのであった。

 

「あ、あなた方はオカルト研究部の…!何故ここに!?」

「あ~実はですね…」

 

廃墟内にコガラシたちが立ち入ってることに驚いている姫沙羅に秋宗が本当のことを話そうとした時だった。

姫沙羅の後ろから誰かがこっそりと近づき彼女の手を掴んだ。

 

「キャァッ!?」

「誰!?」

 

その正体を確かめるべく、雲雀は姫沙羅を掴んでいる手を取り懐中電灯で照らすと、それはバニーガールの格好をした女性だった。

しかし目は開けておらず眠っているかの様子だった。

 

「気を失ったまま動いてんのかこの人…!?」

「まぁ!この方、番組のスタッフですわ!」

「もしかして前乗りした人たちの1人!?」

「あの霊はこの人に着いて行って化け物に食われたってことか…!」

 

周囲を見渡したその時だった。

雲雀と姫沙羅が突如発生した煙に飲み込まれてしまい、煙が晴れると雲雀はミニスカポリス、姫沙羅はスク水水兵のコスプレをしていた。

 

「うわぁっ!?///」

「な、なんですの!?突然衣装が!?///」

 

2人は突然服装が変わったことに顔を赤くしながら戸惑っていると雲雀がコガラシの手を、姫沙羅が秋宗の手を取り引っ張ろうとし、更にその後ろからバニーガールの女性が2人の背中を押して来た。

 

「ってオイ!なんで引っ張る!?」

「アンタらどこ連れて行く気だ!?」

「えっ!?分かりませんわ!?」

「身体が勝手に…!?」

 

身体が自分たちの言うことを聞かず勝手に動いてしまう現象に雲雀と姫沙羅は戸惑いながらも何とか止まろうと抵抗した直後、再び煙が発生しそれが晴れると2人のコスプレの布面積が少なくなっていた。

 

「きゃぁぁぁ!?///」

「一体全体何がどうなっていますのー!?///」

 

更に恥ずかしい格好になってしまったため2人の顔は更に赤くなってしまう。

すると雲雀がハッとなりあることを思い出した。

 

「そっか!抵抗するほどエッチな格好になっちゃうんだ!」

「どういうことですの!?」

「この妖怪は迷い込んだ女をあられもない姿にして男を誘い込むって!」

「なっ………!?」

「しゃ、しゃーねぇ///そんじゃこのまま妖怪のところまで案内してもらうか///」

「確かに、探すよりそっちの方が手っ取り早そうだ」

 

こうして秋宗たちは雲雀たちに手を引かれながら妖怪の元へと向かって行くことにした。

一方姫沙羅は分けがわからず頭が混乱していた。

 

(な、何故妖怪のことを知っていますの!?いけませんはこの子たち!超有名霊能力者である私がいることに気が大きくなってしまっていますのね!?)

 

そうこうしている内に地下への階段を降りると、廊下の奥に何か大きな影があった。

よく見るとそれの表面には人間が何人も張り付いており透明な何かで包まれていた。

 

「あれは前乗りしていたスタッフの方たちですわ!」

「じゃあ外にいた霊はコイツに喰われたってことか!」

『せや!ソイツは丸呑みした男を体液で包んでコーティングし己の体に寄生させ、ゆっくりと時間をかけその精気を吸い取っていく。それが妖怪、夜叉鮟鱇や!』

 

そして目の前には馬鹿デカい鮟鱇がおり、今回の事件を引き起こした妖怪であった。

 

(化け物ですわぁぁぁ!!)

 

今まで妖怪など見たことがない姫沙羅にとっては夜叉鮟鱇の迫力は恐怖でしかない。

そして操られている雲雀たちがコガラシと秋宗の後ろに立つとそのまま夜叉鮟鱇の開いている口へと突き飛ばした。

 

『あ』

 

そして2人は口へと放り込まれてしまい夜叉鮟鱇はバクンッとその大きな口を閉じてしまった。

それと同時に雲雀と姫沙羅、そして気を失っていた女性スタッフの服装が元に戻るも、姫沙羅は目の前でコガラシと秋宗が食べられてしまったことに責任を感じその場に座り込んでしまう。

 

(あぁ、なんてこと…私のせいですわ!私が、もっと必死に止めていたら…!)

『気ぃつけや!夜叉鮟鱇は女は食わへん!腹満たされて用無しになった女は排除されるで!』

 

夜叉鮟鱇は役目を終えた女性たちを始末するべく自身の鋭く尖った触覚を操作し雲雀目掛けて振り下ろした。

 

しかしその直後、姫沙羅が雲雀を庇うように夜叉鮟鱇に背を向けて壁となった。

 

「姫沙羅さん!?どうして…!?」

「ふ、ふふ…霊能力者として、当然のことですわ…!」

 

霊能力者として、そして大人としてこれ以上誰も危険な目に会わせたくない姫沙羅の勇気を震い立たせた行動に雲雀は少し感動してしまう。

 

「そっか…姫沙羅さんも立派な霊能力者なんだね」

 

するとここで姫沙羅にある疑問が思い浮かんだ。

壁になったにも拘わらず後ろからまったく衝撃が来なかった。

後ろを振り返ると夜叉鮟鱇の触覚を1枚の手裏剣が盾となり防いでいた。

 

「でも、もっと修行した方がいいけどねっ!」

 

そして雲雀が言ったと同時に手裏剣が意思を持ったかのように触覚を切り刻んだ。

 

(手裏剣!?そういえば聞いたことがある、霊気の忍具を操る霊能力者集団の存在を…!確か、誅魔忍軍!)

 

姫沙羅も霊能力者の端くれのため誅魔忍軍のことは耳にしており、雲雀がその1人なのだと理解した。

 

触覚を切り刻まれた夜叉鮟鱇は激昂し口を開けて雲雀を食べようとした時だった。

夜叉鮟鱇の口が突然凍りだし氷で固定され閉じるどころか動かすことすらできなかった。

その光景に姫沙羅が唖然となっていると口の奥から秋宗が出てきた。

 

「ったくこの野郎、俺を食うなんざいい度胸だ。鮟肝取り出して食ってやる」

(あ…!そういえばこの方見たことがある!霊界新聞に載っていた西軍の超新星…!)

 

秋宗の顔を見て霊界新聞に載っていたことを思い出し姫沙羅は再び目を見開いてしまう。

 

「コガラシくんは?」

「アイツなら胃袋の方に入って行ったぞ」

「えぇ!?でしたら彼を助けませんと!」

 

秋宗の言ったことに反応し姫沙羅は危険を冒し夜叉鮟鱇の口の中へ入ろうとしたが雲雀が止めた。

 

「大丈夫だよ!だってコガラシくんは、コガラシくんだもん!」

 

その直後、夜叉鮟鱇の内側から衝撃が起こり中から拳を突き出したコガラシが現れたのだった。

こうしてコガラシたちは夜叉鮟鱇を倒し無事にスタッフたちを救うことができたのであった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

その後、用を済ませた秋宗たちは騒ぎに巻き込まれる前に裏口から出ていき、姫沙羅は囚われたスタッフたちと共に正面から出て外で待機していたアナウンサーたちと合流した。

前乗りしていたスタッフたちの安否確認を行っている時、姫沙羅は少し離れた場所で浮かない顔をしていた。

 

(世の中にあんな方々が存在していたなんて、とてもついて行けませんわ…!)

 

誅魔忍軍の雲雀、西軍の超新星の秋宗、そして妖怪を一撃で倒してしまうコガラシ。

明らかに自分のいる世界とはステージが違いすぎる。

廃墟の中には今回のロケのために隠しカメラが多数設置されていたため自分の醜態が曝されているのは間違いない筈。

もう自分はテレビではおしまいになってしまうが最早どうでもいい。

この機会に初心に返り霊能力者として一からやり直そうと覚悟が決まっていた。

 

「き、姫沙羅さん!隠しカメラの映像を確認したのですが…!」

「!」

 

スタッフに呼ばれついにバレてしまったのかと観念して一緒に映像を確認すると、

 

「流石は姫沙羅さんです!」

「少女を身を挺して護ったうえに!」

「手を振りかざした瞬間に怪物が爆発!」

「スゲェーーー!!」

「えっ………!?」

 

スタッフたちが何やら興奮しているため再び映像を確認すると、自分が雲雀の前にたち手を翳した直後、夜叉鮟鱇が爆発している瞬間だった。

カメラの角度からコガラシと秋宗の姿が見えず端から見たら姫沙羅が夜叉鮟鱇を倒したようにしたようにしか見えない。

更に爆発の衝撃でカメラが壊れてしまいそれ以降の映像も撮れておらず、つまりスタッフたちにバレていないということ。

 

「これはいい数字取れますよー!」

「私もう一生姫沙羅様について行きます~!」

 

何も知らないスタッフたちからちやほやされて調子に乗ってしまった姫沙羅は、

 

「………ふふっ、あの程度の妖怪!この如月姫沙羅の敵ではありませんわぁ~!!」

 

先程考えていたことなどとっくに吹き飛んで自分が倒したのだと言ってしまった。

 

しかし彼女は知らない。

 

この数十分後、とんでもない事件に巻き込まれてしまうということを……………

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

廃墟から少し離れた場所。

そこには一つの洞窟があり奥深くへと続いていた。

洞窟を辿って行くと広い空間が広がっており、そこには無数の何かがいた。

無数の何かは整列を成しており、その視線の先には大きな椅子に座っている大きな何かがいた。

 

「………今、なんと申した?」

 

腹の奥から出た低い声は第三者が聞いたら思わず震えてしまいそうで、その存在は持っていた青く光る水晶玉に話しかけた。

 

「だーかーらー、夜叉鮟鱇がやられちまったんだよ」

 

水晶玉からは色気のある女性の声が聞こえ、この水晶玉が連絡用の霊具なのだと理解できる。

 

「何があったというのだ?」

「さぁーね。アタイが戻って来た時には残骸しか無かったんだよ」

「………近くに霊能力者はいるのか?」

「まぁ、いるっちゃあいるけど、とても夜叉鮟鱇を倒せる程の霊力があるとは思えないけどねぇ」

「しかし、可能性はある。霊力が弱い者でも何かのきっかけで一時的に霊力が上がった前例はいくつもあるという」

「…確かに、ない話じゃないねぇ…で、どうする?お望みならソイツの首取って来るけど?」

 

大きな存在はしばらく唸り、再び口を開いた。

 

「暫し、そこで待機していろ。すぐに向かう」

「ってオイオイ!すぐに向かうって、わざわざお前さんが出向く必要はないだろう…!?」

「我の名を再び世に知らしめるための狼煙にはいい機会だ。今この夜をもって、我が野望が始まるのだ」

「………ハァ、用はウズウズしてじっとしれられないってことかい…分かったよ、このまま待っておくよ」

 

そして水晶玉の光が消えて連絡が途絶えた。

大きな存在は立ち上がり、無数にいる何かに言い放った。

 

「聞けぃ!この夜をもって、我が野望が始まる!我らにあるのはただ一つ!勝利のみ!!」

 

洞窟に響く声により無数にいる何かはその場で足踏みをして音が合わさった。

合わさったことにより、その場にいる何かの指揮が高まった。

 

「皆の者ォ!!出陣である!!」

 

そして命令を下したと同時に無数の何かは隊列を成して洞窟を出ていき目的の場所へ進軍を始めたのであった。




感想の程、よろしくお願いいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。