~緋扇邸~ 午前7時
緋扇邸の一室、かるらの部屋には椅子に縛りつけられたままのコガラシの姿があった。
なぜ秋宗の部屋にいた筈のコガラシが、かるらの部屋にいるのかというと、かるらがいきなり秋宗の部屋に入って来てコガラシを自室に連れて行ったからなのである。
当の本人はどこかに行ってしまっているようだが。
コガラシはかるらの部屋を見渡していた。
コガラシ「西条の言っていた通り、本当に俺ばっかりだ・・・」
かるらの自室は秋宗から聞いていた通り、コガラシの写真でいっぱいであった。
机にはプリントされたマグカップ、挙げ句のはてには抱き枕までもがあったのだ。
コガラシは若干引いていた。
その時、
ガチャ
かるら「ふぅ~、やはり朝の湯浴みはオツなものじゃのう、そうは思わんか?八咫鋼」
バスタオル一枚の姿のかるらが入ってきた。
風呂上がりなのだろうか、体からは湯気が立っている。
コガラシ「なんでバスタオルだけなんだよ!?せめて何かしらの服着ろよ!!」
いきなりバスタオル一枚の姿で入ってきたかるらに、コガラシは思わず顔を背けてしまう。
しかし、そんなことはお構い無しに、かるらはコガラシに近づいて、
かるら「そんなことを言うておいて、妾の姿に惚れとるのか?どうじゃ?どうじゃ?」
コガラシ「やめろぉ!!離れろぉ!!」
正面から身を重ねて、自分の胸を押し当てて、コガラシを誘惑し始めた。
そんな状況にコガラシは慌てふためいてしまい、足掻こうとはするものの、鎖を一向に外すことが出来ないのであった。
かるら「無駄じゃ、お主はもう妾から逃げることは出来ぬぞ。仮にその術がかけられた鎖を破いても、すぐにマトラと秋宗がお主を捕らえるからのう。さぁ、諦めて妾と結婚をしようぞ」
コガラシ「・・・例の儀式ってやつか」
かるらの言う結婚とは、法で定められている結婚ではなく、古くから伝わる大呪術、『支離式の儀』とうものである。
男を絶対服従させる呪いの1つで、どんな命令であろうと嫁に逆らうことが出来なくなってしまう。
儀式は結婚式の形で行われて、一度結ばれてしまえば最後、術者でも解くことは不可能となる恐ろしい呪術である。
つまり、この呪術がコガラシに掛かってしまったら、二度とゆらぎ荘に戻ることが出来なくなってしまうのだ。
かるら「そうじゃ、この結婚式さえ成功すれば、もうお主は妾のものじゃ。念願のお主さえ妾のものになれば、それでよいからのう」
ガチャ
秋宗「お嬢、入るぞ」
すると突然、扉が開かれて、秋宗が入ってきた。
突然入ってきた秋宗にかるらの顔はどんどん赤くなっていった。
かるら「な、な、なななな////何勝手に入ってきとるんじゃあ!!/////秋宗!!/////」
秋宗「いつも俺の部屋に突然入ってくるお嬢には言われたくない。それよりも、コガラシもう一回俺の部屋に戻すから」(ガシッ
コガラシ「お、おい!!」(ガタガタ
秋宗は部屋に入るなり、コガラシを椅子ごと引っ張って自室に連れて行こうとした。
かるら「待たんか!何ゆえ八咫鋼を連れて行くのじゃ!まだ妾は話をだな!」
秋宗「話なら儀式終わった後でも問題ないだろ、お嬢も早く準備すましとけよ。時間は有限なんだからな」
かるら「うぅ、分かったのじゃ」
秋宗はかるらを説得して部屋を後にした。
コガラシはなんとかしなければと思い、引きずられながらも脱出する方法を練っていた。
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~緋扇邸付近の森~ 午後7時
森から緋扇邸が見える位置に6人の人影があった。
それは、コガラシ救出に赴いた幽奈、狭霧、夜々、雲雀、千紗希、こゆずの6人である。
6人は狭霧の相方の、浦方うららから結婚式の内容を聞いて、なんとしてもコガラシを救出しようとしていた。
すると、ゆらぎ荘にいるうららから連絡が入った。
うらら『ええか?式場には百人を超える妖怪たちが出席するはずや。式場に忍び込むのは、はっきり言うて至難のわざや。式の開始は今晩の0時、その時間までに冬空くんを救出するんやで。おそらくまだ、緋扇邸にいるはずや』
狭霧「分かった。助かるぞ、うらら」
6人はうららのサポートを元に、救出の作戦を立てていたのだ。
まずはコガラシを発見次第、うららの転送の霊札でコガラシをゆらぎ荘へ飛ばすというシンプルなものだった。
この方法なら、下手な戦闘を避けることが出来るベストな手段である。
幽奈「待っていて下さいね、コガラシさん。必ずお救いいたしますから」
千紗希「冬空くん助けたらさ、お誕生日会の続きしようね」
幽奈「・・・はい!」
夜々「絶対助ける」
雲雀「・・・助けるけど、少し不安かな。だって、相手は大天狗のほかにも、鵺やコガラシくんの拳が効かないオオカミ人間までいるからさ」
うらら『あぁー、そのオオカミ人間なんやけどな、ウチも少し調べみたら、冬空くんの拳が効かなかった訳が分かったんや』
こゆず「何か分かったの?」
6人がうららの言葉に耳を傾けた。
うらら『冬空くんの拳が効かなかった訳、それは毛皮や』
狭霧「毛皮、だど?」
うらら『せや。オオカミ人間は変身すると同時に毛皮が分厚くなんねん。それのせいで刃やら弾丸すら通らんらしいねん。つまり鎧を纏ってるのと同じことや』
幽奈「だからコガラシさんの拳が効かなかったんですね!」
うらら『せやけど、毛皮を纏ってない状態、つまり変身前なら攻撃が効くっちゅうわけや。っと、こんな長く話しとる場合ちゃうな、じゃあ皆!冬空くんを必ず助けるんやで!』
全員は三手に別れて、警備網を掻い潜って侵入した。
狭霧と雲雀、幽奈と夜々、千紗希とこゆずはそれぞれ別々の場所から緋扇邸へ侵入して行った。
幽奈&夜々side
二人は気配を消しながら緋扇邸の周りを歩いていた。
すると、部屋の一室が明るいことに気がついた。
幽奈「では私が中を覗いてきますね」
夜々「じゃあここで待っとくね」
幽奈が壁抜けで部屋の様子を覗くとそこには、コガラシの写真で埋め尽くされていた部屋があった。
そう、そこはかるらの自室だった。
幽奈「コガラシさんが、いっぱい!?」
かるら「・・・見たな?」
幽奈「っ!?」
かるら「見たのじゃな!?妾と八咫鋼の愛の巣を!!」
幽奈が振り向くと、頭に血がのぼっているウェディングドレス姿のかるらがいた。
外で待機していた夜々もスズツキに見つかってしまい、黒服たちに囲まれていた。
狭霧&雲雀side
二人は緋扇邸の中を探索していた。ちなみに狭霧はすでに霊装結界を纏っている。
雲雀「コガラシくん、どこにいるんだろう?」
狭霧「どこかに捕らえられていることは確かなはずだが、一体どこに?」
ガシッ
マトラ「よう、昨日ぶりだな。宵ノ坂は何処だ?」
狭霧、雲雀「「!?」」
二人の背後にいきなりマトラが現れて肩組みをした。
千紗希&こゆずside
二人も狭霧たちと同じように緋扇邸を探索していた。
こゆず「安心して千紗希ちゃん!いざというときはボクがなんとかするから!」
千紗希「うん、ありがとうこゆずちゃん」
和みながらもコガラシを探していると、話し声が少しずつ近づいてくることに気がつく。
こゆず「誰か来るよ!どうしよう!」
千紗希「とりあえずこの部屋に隠れよう!」
千紗希はこゆずの手を引いて、すぐ近くの部屋に隠れた。
千紗希「・・・ふぅ、危なかった」
こゆず「見つかるところだったね」
秋宗「あのさぁ、近頃の女子ってノックしないで勝手に部屋に入ることでも流行ってんのか?」
千紗希,こゆず『!?』
二人が振り向くとそこには、ゆらぎ荘に襲撃してきたオオカミ人間の秋宗と、椅子に縛りつけられたタキシード姿のコガラシがいた。
こゆず「オオカミ人間!?」
千紗希「あ!冬空くんもいる!」
コガラシ「宮崎!?こゆず!?なんでここに!?」
緋扇邸のそれぞれの場所で、大騒ぎが起こり始めていた。
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