真・恋姫†無双 呉史『神弓の章』   作:軍団長

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転生

血と鉛と硝煙の匂い

 

死と生が僅かコンマ数ミリで隣り合う

 

それが俺の生きてきた世界

 

ガキの頃がどうだったとかは記憶に無い

 

父の顔も母の顔も知らない

 

ひたすらに引き金を引き続け

 

他人の恨みも怖れも何も知らない

 

ただただ命を刈り取るだけの毎日

 

その行為が生み出す結果を知らず

 

ただただ命じられるがままに

 

射って

 

撃って

 

弾って

 

そして俺は・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

気が付けば、何も無い真っ白な空間に俺はいた。服は着ているが、それ以外が何も無い。確かに寸前までもっていたハズの銃も、そして『直前まで何をしていたのか』と言う記憶も。直前のことだけがスッポリと抜け落ちている。どうやって生きてきたかも、何なら引き金を引いた回数まで正確に記憶していると言うのにそこだけがだ。

 

『やぁ、青年』

 

どこか間の抜けた声に、振り返ればそこにはドラマや映画に出てくるような、うだつの上がらない私立探偵、みたいな服装と顔をした男がいた。

 

「幾つか質問がある」

『ふむ。いいよ、答えられる範囲でなら答えよう』

「アンタは何者だ?俺は何故ここにいる?」

 

俺の記憶が無い事に関しても問いたくはあった、だが俺の中の優先順位で先ずは現状を確認すべきだと思ったのだ。

 

『僕の名は『神農』、『外史』の管理者さ』

「『外史』?」

 

聞いた事の無い単語だ。

 

『そうだね・・・・分かりやすく言えばパラレルワールド、と言うヤツさ。二次創作、と言うのは知っているだろう?』

 

その問いかけに、俺は頷く。

 

『元は同じ作品であっても書き手、紡ぎ手によって物語はまるで違う結末を迎える。それが『外史』でありその管理者の一人が僕、と言う訳さ』

 

外見にそぐわない『気』を感じていた。人の姿はしているがこれは人ではない、そう俺の中の理性が告げていた。そしてそれは正しかった。俺の理解が的外れで無ければ『外史』と言うのは『可能性』の世界、俺や俺と同じ世界に生きていた人間が気づくことが出来ない、だが確かにあった別の時間の、別の歴史を歩んだ、確かな『世界』。その管理者、人がそれを単純な言葉で言い表すならば『神』と呼ぶのだ。

 

「ならば次だ、何故俺はここにいる?」

『その質問に答えるためには一つの事実を君に突きつけなければならない』

 

予感はあった。目の前にいる『神農』が『神』と呼ばれる類の存在であるならば、何故俺はそんな存在と同じ場所にいる?見当もついた、だからこの質問は答え合わせのようなものだった。

 

『君は既に死んでいる、今ここに来ているのは君の魂だ』

 

矢張りか。

 

『死因を告げてもいいがそこは詮無い事だ、それに死ぬ直前の記憶は君には無いだろう?』

「あぁ」

『ならば過ぎた事を気にするよりもこれからの事を話した方が建設的だ、そうは思わないかい?』

「あぁ・・・・その通りだ」

 

神農の言葉の通りだ。俺は死んだ、その事実は何を論じても揺るがない。であるならば、俺がここにいる意味を問うべきだ。

 

『君にはとある『外史』に行ってもらいたい、俗に言う『異世界転生』と言うヤツだね』

 

知識としては知っている。二次元趣味に傾倒していた同僚がこちらの聞く聞かないを気にせずにベラベラと熱く語っていたのを覚えている。確か「転生ハーレムものは王道」だとか「俺TUEEEEE!系主人公になりたい」だとか言っていた気がする。

 

『それに当たってだが・・・・要望はあるかい?少なくとも、その世界の住人として生まれ直してもらうから今生での記憶は失ってもらう事になる』

「『眼』を」

『『眼』?』

 

俺の短い答えに、訝しげに問い返してくる神農。

 

「俺は・・・・ロクデナシだった。職に貴賎は無いとは言うがそれは法の範囲に収まってこそ、金で人を殺すなんて商売はそれに当て嵌らない」

 

どんな理由で、切欠で始めたかなんて覚えてない。だが俺が生きてきた世界はロクデナシだらけの世界だった、俺も含めてだ。誇るわけじゃない、だが俺という存在を保っていたのは俺の『眼』だった。なんと説明したら良いのか、『死線』が見えるのだ。自分に向かって放たれた銃弾や刃物の軌道、それが致命傷なのかそうでないのか、また逆に相手のどこに当てれば死ぬか、どう動けば無傷で切り抜けられるか。その軌跡が、見えるのだ。

 

「俺が、例え記憶が無くなろうが、別人として生まれ変わろうが。魂の奥底にいる『俺』を消したくないんだ」

『承ろう、他には?』

「無いな」

 

それだけで十分だ。

 

『思っているより欲が無いんだね』

「俺が『俺』でいられる、それだけで良い」

 

神農は、ニコリと笑ってから手を振りかざす。すると、何もなかったハズのそこに、一枚の扉が現れた。

 

『その扉を潜れば君の新しい人生が始まる。これまでの事は忘れるし、当然僕の事も忘れるだろう』

「ああ、そうだな」

『記憶に残らない事を承知の上で、君に一言贈ろう』

 

話の途中で既に歩き出し、今まさに扉を開かんと伸ばした手を止める。今生で最後に交わす会話ならば、記憶に残らずとも魂に刻むつもりで聞かねばなるまい。そうしなければ、ならない気がしたのだ。

 

『君の新たな人生は数多の苦難に満ち溢れているだろう。でもね、それと同じぐらい、いや君が今生で得られなかった分まで喜びと楽しみに満ち溢れていると僕は確信している。話す事も、顔を合わせる事も最早無いだろうね。でも僕は君の織り成す物語を最後まで読むよ、だから・・・・』

「飽きさせない努力はしよう」

 

最後の一言を遮り、柄にもなく、口元を歪ませながら俺は扉を開け放つ。

 

そして意識が薄れ・・・・・・・・

 

 

SIDE 神農

 

『・・・・行ってしまったか』

 

僕ら管理者は、希にこうやって現し世で死んだ者の魂を呼び寄せ、外史の内から無作為に一ページを選びとりそこに転生させる。それは気まぐれであったり、何らかの調整のためであったりと理由は様々だ。

 

でも僕は、今ままで誰一人として転生させた事はなかった。それは『医』と『農』、人の営みを司る神であれと、そう願われ『創られた』が故の性分だったのかも知れない。一度死した魂を輪廻の輪より引き剥がす行為を、一種の『死』として捉えていたのかも知れない。

 

だが、彼の魂を見た時、私は思わず手を差し伸べていた。

 

空虚。

 

虚無。

 

空っぽだった。

 

そんな事があるはずがないと。

 

生前の彼は暗殺者だった。

 

幼少期に親に売られ、紆余曲折を経て一人の暗殺者の下で育てられる。育ての親となったその暗殺者の背を追うように、彼も10歳を過ぎた頃にその道を歩みだした。ありとあらゆる『銃』を自在に操るその様から『魔弾の射手(マックス)』なるコードネームで呼ばれるようになった。百発百中、放たれた銃弾がターゲットを外す事は生涯で一度も無く。

 

27の誕生日を迎えたその日。

 

かつて殺した男の、その娘に道端で刺され。

 

死んだ。

 

およそ17年、それだけの年月人を殺し続けたならば。空っぽであるはずがない。それが生きるためのものであれば罪悪感だったり、愉悦を求めてのものであれば快楽に染まっていたり、人の魂と言うのは何らかの『色』に染まっていて然るべきなのだ。

 

それが無かった。

 

初めての事だった。

 

その空虚の意味を知りたかった。

 

だから主義を、捻じ曲げてでも彼を転生させた。

 

『僕の信念をねじ曲げさせたんだ、僕が納得の行く答えを見せてくれよ・・・・なぁ?』




どうもはじめまして。作者の軍団長です。
かなり勢い任せで書き始めた作品で、見切り発進気味に投稿したので色々心配です。

主人公は享年27歳、現世では暗殺者。恋姫世界では・・・・どうなるんでしょうね?次話から恋姫世界に転生した主人公の物語が始まります。幼少期からやるか、ある程度成長した状態からはじめるか、早速迷ってるところなんですけどね。
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