ザビ家末弟の奮闘記   作:ボートマン

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アンケートではドムが多かったので、ドムに決まりました。
アンケートのご協力ありがとうございました。


第2話

「よし、できた。」

 

俺が書き上げた機体は、型式番号MS-09ドムである。

 

この機体は、ザクと違い熱核ホバーエンジンによるホバー走行により地表を高速で滑走し、重厚な装甲により61式戦車による砲撃では歯が立たないほどである。

 

その上武装のジャイアント・バズの威力はザクバスーカを軽く超え、ドムのホバー走行と合わせることでヒットアンドアウェイ攻撃を可能とする。

 

また、熱核ホバーエンジンを熱核ロケットエンジンに換装することで、宇宙用モビルスーツであるリック・ドムに改修することができる。

 

とはいえ設計図といっても俺が書いたことは、ドムのフォルムとドムに関する特徴や武装についてだけで、後のことはツィマッドの開発者達に任せるつもりである。

 

降下作戦までに機体が出来ればいいが、出来なければザクで出るだけだ。

 

「さて、そのためにツィマッド社に話を通すか。」

 

そう思い俺は部屋を出て、警備の兵にツィマッド社の場所を聞き向かうことにした。

 

設計図をファイルに入れツィマッド社に移動中、国民に話しかけられて俺はどうにか対応していると、顔を隠すように帽子を深く被っている人影が近づいてきた。

 

人影は俺にぶつかって何処かに行ったが、俺はその瞬間ドムの設計図を入れたファイルがないことに気づいて、俺は話しかけてくる国民から離れ、先程ぶつかった人物を見つけ急いで追いかけた。

 

ぶつかった人物も俺が追いかけてきたことに気づいて、路地裏に逃げ去ろうとしたがその前に俺がその人物の肩を掴んだ。

 

「それを返してくれるかな?」

 

「放して」

 

人物は逃げようともがいたが、俺は逃げないように腕を抑えた。

 

その時に人物が被っていた帽子が落ち、人物の素顔が見えた。

 

「女の子?」

 

俺は少女の素顔にどこかで見たことがあったかなと思い出していると、少女から痛そうな声が聞こえ俺は力強く腕を握っていることに気づき力を弱めた。

 

「すまない。さて、まず君の名前は?」

 

「・・・マリオン。マリオン・ウェルチ」

 

俺は少女の目を見ながら名前を聞き、少女は少ししてから答えてくれて、その名前を聞いて驚いていた。

 

マリオン・ウェルチは、確か連邦に亡命したクルスト・モーゼスのEXAMシステムのせいで意識不明となったニュータイプの少女であることを思い出した。

 

「そうか。マリオン、まずはそれを返してくれないかな?」

 

俺はマリオンが盗ったファイルを返してくれるように頼んだが、警戒されているのか返す素振りを見せず俺は

 

「マリオン。軍に入るつもりはないか?」

 

マリオンに軍に入隊するか聞いてみた。

 

「・・・軍?」

 

「ああ。私も自己紹介が遅れたが、私の名前はレイン・ザビだ。」

 

「え!レイン・ザビ・・・」

 

マリオンは目の前にいる軍人がザビ家の人間と思っておらず驚いていた。

 

「もしマリオンが今の生活を変えたいと思うなら、私と共に来る気があるか?」

 

俺の言葉にマリオンはどうすべきか迷っていたが、しばらく考え決めたのか俺の顔を見て聞いてきた。

 

「本当に、本当に今の生活を変えることができるの?」

 

「ああ。そのためにはたくさんの努力が必要だが、今の生活から変わるということは保障しよう。」

 

俺の言葉にマリオンは決心したのか、俺にファイルを返してくれた。

 

俺はここで優秀な部下を手に入れたことに内心喜び、この後ドムの設計図をツィマッド社の開発部に渡し、マリオンのために必要な手続きを取るのであった。

 

 

 

 

それから数日が経ち、今日は副官と部下が配属される日で、その後はツィマッド社に行きついに完成したドムの試作機の調子を確かめる予定だ。

 

しばらく待っていると、ドアをノックする音が聞こえた。

 

「入りたまえ」

 

「失礼します」

 

ドアを開けて入ってきたのは、ピンク色の髪の女性士官だった。

 

「クスコ・アル中尉、予定通り着任いたしました。」

 

入ってきた女性はクスコ・アル中尉で、ニュータイプの素養を持っておりマリオンの補助を考えて引き抜いた人物である。

 

「ご苦労、楽にして構わない。」

 

「はっ!」

 

「来てもらったところですまないが、もう少し待ってくれないか?あと少しで残りのパイロットも到着するはずだ、揃ってから話を始めたい。」

 

「構いません。」

 

そして、少し待った後再びドアをノックする音が聞こえた。

 

「入りたまえ」

 

「失礼します」

 

ドアを開けて入ってきたのは、長い白髪を後ろに束ねた男性士官だった。

 

「アナベル・ガトー中尉、予定通り着任しました。」

 

次に入ってきた男性は、今はまだ呼ばれていないがソロモン撤退戦で連邦から「ソロモンの悪夢」と呼ばれたアナベル・ガトー中尉である。

 

ガトーは、星の屑作戦の後連邦の部隊によって亡くなった男で、俺は彼ほど忠義に厚く武人気質の彼を欲しいと思い引き抜いた。

 

「ご苦労。ガトー中尉も楽にして構わない。」

 

「はっ!」

 

「さて、もう一人はいないが話を始めようと思う。」

 

そこでクスコは、もう一人のことが気になるのか聞いてきた。

 

「中佐、もう一人の隊員は今どこに?」

 

「もう一人の隊員は現在ツィマッドにいる。あとで我々も向かうからその時に顔合わせする予定だ。他に質問は?」

 

「いえ、ありません。」

 

「ガトー中尉は?」

 

「私もありません。」

 

「さて、知ってると思うが自己紹介させてもらう。私はレイン・ザビ中佐だ。我が隊は近々行われる地球降下作戦に参加することになっている。この初戦はジオンの勝利への一歩となるだろう、そのために未熟者の私に君達の力を貸して欲しい。」

 

「「はっ!」」

 

二人の返事を聞き、俺は頷くと次に移ることにした。

 

「隊の編成は全員揃ってからにして、これから我々が使用するモビルスーツを見に行くとしよう。」

 

俺は二人を連れ、ツィマッドに移動し始めた。

 

 

 

「これが私が設計し、今回の作戦で我々が使用する新型モビルスーツ『ドム』の試作機だ。」

 

「これが中佐が設計したモビルスーツ・・・」

 

そこには完成した二機のドムの試作機が並んでおり、短い時間で二機も完成さしたことに俺は凄いなと驚いていた。

 

そして、その内の一機のドムからパイロットが降りてきたこっちに近づいてきた。

 

こっちに近づいてきたパイロットはマリオンだった。

 

あの後、最初に行ったことはマリオンを軍に所属さした後、すぐに俺の部隊に配属するようにし降下作戦が始まる前に、一緒にモビルスーツの戦闘訓練を行った。

 

俺自身も戦闘に関しては素人であったためマリオンと共に戦闘訓練を行ってきたが、マリオンはニュータイプとしての素養かそれともマリオン自身の努力のおかげか、彼女の技術は着実に上がっており俺自身も少しずつ上がっていると感じた。

 

「ドムの調子はどうだった?」

 

「問題はなかったわ中佐。」

 

「そうか、ありがとう。」

 

そんな風に話している一方、クスコとガトーは最後の隊員が目の前にいる少女ということに驚いていた。

 

「紹介しよう。君達と同じ部隊の一員であるマリオン・ウェルチ少尉だ。お互い仲良くしてくれ。」

 

マリオンのことを紹介して、二人はそれでも驚いていた。

 

確かに、自分より年下の少女が同じ部隊ということに驚くなということは無理な話だと思う。

 

 

その後、作戦中はクスコとマリオン、俺とガトーというふうに分けて行動することにし、今回の作戦ではクスコにドムを預け他の二人にはザクに乗機してもらい今日は解散することにし、明日はクスコにドムに慣れてもらうため戦闘訓練をする予定のつもりだ。

 

そんなふうに部屋で考えていると、ドアがノックされた。

 

「入りたまえ」

 

「失礼します。」

 

入ってきたのはガトーだった。

 

「中佐、少しよろしいでしょうか?」

 

「構わないガトー中尉」

 

要件はおそらくマリオンについてだと思った。

 

「マリオン少尉のことです。」

 

やはりマリオンのことだった。

 

「少尉が何か。」

 

「中佐はなぜあのような少女を軍に?」

 

「確かに軍に入ることを勧めたのは私だが、それを決心したのは彼女自身だ。」

 

「ですが!」

 

「だから私は最後まで彼女の面倒を見るつもりだ、彼女をこの道に選ばせた者として。」

 

ガトーの目を見て、俺は自身の本音をハッキリと言う。

 

これは嘘とかそんなものではなく、幼い少女を軍に引き込んだことに対しての俺なりのケジメのようなもののつもりだ。

 

「・・・わかりました、失礼します。」

 

俺の意志がわかったのか、ガトーはそれだけ言って部屋を退出した。

 

ガトーが退出した後、俺は溜息を吐いた。

 

ガトーの言う通り、マリオンのような少女を軍に入れ戦争に関わらせることは俺も嫌だけど、もし俺があの時マリオンを誘わなければ彼女はモーゼスのEXAMシステムのために酷い目に遭い意識不明になってしまう。

 

だが、こうしてよかったのか思いながらも、きたる降下作戦に向けて気持ちを引き締めることにした。

 

 


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