半分赤くて、半分青い 作:ホワイトジジイ
私の体は半分くらい赤い。
メラメラと燃える炎のような美しい色ではなく、むしろ毒々しい赤。
さらに残りのもう半分くらいは青い。
美しい海や、空の色ではなく、むしろ毒々しい青。
なんで、私の体はこうも醜いのだろうか。
異形型個性への差別も無くなってきて久しい今日この頃でも、やはりあまりにも目を引く異色。
蔑んだような目か、憐れみの目か、周りの目が鬱陶しい。
ーーこれならいっそ、無個性の方が良かった。
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私の憧れる美しい青空のもと
『オエエエエエエ』
私の朝はえずくことから始まる。
毒々しい赤と青が混じり、毒々しい紫を吐き出す。
余りに強い毒であり、下水道が耐えられないため、外の庭で吐いて、それを特製の解毒薬で中和する。
ここで紹介するとしたら、私の個性は、毒を吐く個性だ。
体内にある特別な器官が毒を大量に生成する。
ただし、多くの毒を貯めることは出来ない。
そのため、毎朝それを吐き出す事が日課になっている。
私の体は、私の毒に耐えるほど強くは出来ていなかったらしい。
殴られても痛みさえ感じないほど、体の器官はボロボロになっている。
また、解毒剤で中和させているとはいえ、私が普段吐く場所の周辺は、ぺんぺん草も生えて居ない。
余りの毒に、バクテリアでさえ一瞬で死滅するのか、土もまるで栄養が感じられない。
異形型は見た目だけで、差別させられる。
口では『個性雇用機会均等法』や『個性共同参画社会基本法』がのたまわれているが、実際のところ、異形型は営業・接客の仕事はほぼさせて貰えない。
そして、内部の研究開発を始めとした職については、それに適した個性の人間で埋め尽くされる。
私の個性は毒。
それもただの毒ではない、猛毒である。
解毒剤も特注で、医療保険外のため相当な負担となっている。
もしも、私が自立した後、私ができる仕事でもらえる給料じゃ賄えない。
両親は金こそ払ってくれているが、言外に、あんたさえ居なければうちはもっと贅沢に暮らせているのよ。という視線を感じる。
実際そうだ。私の父は電気系の個性の高給取り。
けれども、家は給料に見合わない質素な生活をしている。
兄弟の視線も痛い。
そうだ、家を出よう。
そう思ったのは、毒を吐いてスッキリしたある朝。
幸い、ちまちま貯めたお小遣いと、近所の本屋さんで不定期に行なっていたバイトで20万はある。
解毒剤も2ヶ月分はあるし、それに“2ヶ月も生きる気も起きない”
ムカつきを覚えたら所構わず吐きまくって、それを解毒して、
そして、20万を使い切った後
私の大好きな海に飛び込むんで、美しい青い海に包まれるか。
私の大好きな空に一番近い所で首を吊って、美しい青空を眺めるか、
それとも私の大好きな火山の火口に飛び込んで、美しい赤いマグマに包まれるか。
まだまだ、死にたい場所が思い浮かぶ。
とにかく、死のう。
決意をした。
昨日まではフラフラと当てもなく歩いていたが、今日は目的を持って歩いていた。
家を出た3日後に行方不明者として、私の顔や容姿、名前が警察から発表され、そこから更に2日経った日の事。
目的地までの運賃を除いて、20万を使い切った。
1日あたり約4万円、どうやら相当贅沢をしていたらしい。
そして、死に場所は、もう決めた。
日本一の霊峰と名高い山だ。
その頂上に一番近い切り立った崖をさがして、飛び降りるつもりだ。
ゆらり、ロープウェイに乗って、崖を探す。
「みつけた。」
私の死に場所。
さらに、嬉しい誤算があった。
崖から飛び降りたら、下には美しい湖があったのだ。
最高じゃない?
ロープウェイで山頂駅までいった後、その崖までは歩いて10分もかからなかった。
一切の躊躇もなく、私は歩みを進めた。
でも、ちょっとだけ怖いから目を瞑ってね。
足が地面を掴む感覚がなくなり、私は落ちたと直感する。
耳には風を切る音が聞こえる。
風を切る空気の感触も感じたかったな。
こんな時にまで自分の個性を恨む
実際にはわずか数秒の事なのだろうか?
けれども、風を切る音は妙に長い間抱え続ける。
不意に風を切る音が聞こえなくなった。
いよいよ死んでしまうのか?
そう思ってから何秒が経っただろうか?
未だに意識がある。
これはおかしいと、恐る恐る目を開けてみると、そこは古びた部屋のようであった。
目の前には、薄気味悪い笑みを浮かべた大男が立っていた。
「突然ですまない。君は私の生徒になる気はないかね?」
目の前の男が、そう言葉を発した。
これが、私と、私が先生と慕うあの人との最初の出会いである。
そうそう後に、私は、二つ名をつけられる。
けれど、教えてあげないよ。
だって、私の名前を聞くだけで、大の大人でさえもチビってしまうそうじゃない?