クリスマス編を三ヶ日が明けてから投稿するというね( ・ω・)
アウルの過去の1部も見れるよ
番外編:クリスマス
「わあぁ…!すごい、とても綺麗ですよマスター!!」
眼前に広がる降りしきる雪を見てユカミが歓声を上げる
今は12月24日、世間でいうクリスマスだ
私は休暇を取って地球に来ていた
ユカミは初めての地球と雪景色にはしゃいでいる
オラクルでもナベリウスの雪山地帯があるので雪そのものはデータで知ってはいる
しかしこうして直に見て、触れるのはやはり違うようだ
しかも雪山とは違い、ここには街がありイルミネーション用のライトが取り付けられている
まだ明るいのでライトアップはされていないが夜になれば嘸かし綺麗なことだろう
今回休暇を取ってまで地球に来たのは遊ぶためではない
しかしユカミにせがまれたのと、前々から地球にも連れて行ってあげようと思っていたので少し連れ立って遊ぶことにしたのだ
地球人である火継達にも会う予定で、夕方頃に会って夕食を共にした後ユカミを預ける予定だ
私の用事はそれから済ます
「マスター、早く行きましょう!」
「はいはい、分かりましたから引っ張らないで下さい。慌てなくても大丈夫ですし前を見ないと危ないですよ」
私は張り切るユカミを宥め、街を散策する
今いるのは日本の大阪、心斎橋と呼ばれる場所
ここは私が日本で活動する際拠点としていた場所の1つだ
ここなら自信を持ってユカミを案内出来るだろう
私達はまず腹拵えをするために牛タンの専門店に入った
出てきた料理の美味しさにユカミは舌鼓を打っている
お気に召したようで何よりだ
それから私はユカミをゲームセンターや服屋、雑貨屋などのお店に連れて行き、ユカミはその度に目を輝かせて楽しんでくれた
見た目は年頃の少女だがハイキャストであるユカミは起動してから2年にも満たない
何もかもが新鮮で興味を唆られるものなのだろう
こうして無邪気にはしゃぐ彼女の姿を見ていると連れて来て良かったと思う
それからも私達は途中カフェでの休憩を挟みながらも商店街を周り続け、楽しんだ
火継達と合流する時間も迫ったので私はユカミに話しかける
「ユカミ、そろそろいい時間です。始めましょうか」
「そうですね、分かりましたマスター!」
私達は以前私が使っていた活動拠点へと向かった
拠点と呼ぶには見窄らしく、2部屋ほどしかないただの平屋だ
…表向きは、だが
私はウォークインクローゼットの奥にある操作盤でキーを入力し、地下へ続く隠し階段を出した
階段を降りた先には私が護衛や暗殺を行う時にしようする装備や万が一の為の脱出路等がある
それらに加え今はそこにライドロイドと呼ばれるものが置いてある
ライドロイドとは地球で幻創種と呼ばれるエネミーが発生し、アークス等が対処に当たる際に使う搭乗機だ
幻創種は高層ビルの屋上に出現したり、アークスと言えど移動に少し時間のかかる離れた位置に急に現れたりする
そういう時に個人での操縦、かなりのスピードを出すことが出来て更にその場での上昇や下降を可能にするのがライドロイドだ
これが開発されたおかげで地球での緊急事態への対処がかなり楽になったそうだ
今私達の前にあるのはそれの新型だ
アークスが地球で戦闘行為を行う場合、余程のことでもない限りは隔離領域を展開する
これで一般人に認識されなくなるし侵入も出来ないので巻き込んで被害を与えることもなくなる
当然ライドロイドを扱う際も隔離領域は展開しなくてはならない
しかし移動のためだけに一々展開するのは手間を考えればやっていられない
管制官へ申請してそれが了承されれば次に範囲を決めて展開装置を起動して…と様々な手筈をふむ必要があるのだ
更に現在それらを行うのは基本的にシエラ1人だ
他に仕事もあることを考えれば無闇に頼むのも気が引ける
そこでこの新型ライドロイドは小型の隔離領域展開装置が搭載されており、単体で領域の展開が可能だ
ライドロイド1台分ほどの範囲だけのため周囲への影響も考える必要がない
今は試作段階のため一人乗りのものしかないが、研究が進めば複数人が一度に乗れるものも出来るだろう
そしてその試作機が何故ここにあるのかと言うと、地球での起動テストを行う為だ
勿論オラクル側で十二分にテストは行われており問題なく稼働することは確認済みだ
後は実際に地球で使ってみようと言うことだ
私が休暇で地球に行くことをシャオに伝えたらついでにテストをしてきて欲しいという形で楽な移動手段を提供してくれた
大阪から東京までは距離があるしライドロイドで移動出来るとなるとかなり有難い
そして新型の地球での起動データも必要、利害の一致といったところか
半分以上は単なるシャオの心遣いの気もするが
ともかく新型ライドロイドを使って火継達のいる東京まで移動する
私達はパネルを操作して隔離領域を展開した後、ライドロイドを屋上へと持ち出した
そのまま2人ともそれぞれライドロイドに跨り、発進した
まずは上昇し、それから前進する
大阪から東京までは新幹線を用いても2時間ほどかかるが、これなら30分もあれば着く
上空を飛んでいる上にかなりのスピードが出ているのでフォトンで身体を守っていないと凍傷等になってしまう
私が先導してユカミを東京での活動拠点へと連れて行った
ここも大阪のものと同じ構造だ
屋上へと着地し、その後地下への階段を出して仕舞う
それから私達は火継達と合流するため銀座へと向かった
「あ、来たきた。お〜い、こっちこっち〜!」
火継が手を振ってこちらを呼んでいる
私達は彼女の元へと駆けた
「待たせてしまいましたか?」
「ううん、大丈夫!私達も今来たところだから」
「しっかしあれだな、目立ってるな俺達」
「それは…確かに」
炎雅がぽつりと言った言葉に氷莉が返す
先程火継が大声を上げたのもあるが、それ以前に私の容姿は日本ではかなり目立つ
紫色の髪色、身長もそうだが何よりオッドアイだ
それも紅と翠という日本では殆ど見られない色をしている
そういう意味ではユカミも目立つだろう
その綺麗な白髪と紅い眼は自然と視線を集める
それに火継達は自覚がないかもしれないが彼女らも美少女だし、炎雅も高身長イケメンと言うやつだろう
「まぁ良いじゃん、周りの目線なんか気にして楽しめなかったら損だよ」
「そいつもそうだな。よし、行くとしようぜ」
「そう言えば何処に行くんですか?食事は任せてくれと言っていましたが…」
「それは着いてからのお楽しみですよ、アウルさん」
氷莉がイタズラっ娘のような笑顔で言った
火継と炎雅もニヤニヤしている
…奇妙な所で無ければ良いのだが
私達は火継達に連れられ1つの店に入った
何の店かは良く分からないが食欲を刺激する良い香りが鼻腔を擽る
予め予約してあったようで店員の案内で席に着いた
流石にそろそろ良いだろう、私は聞いてみた
「ここは何を食べられるんですか?」
「鍋だよ、鍋の専門店なんだ」
火継が答えてくれる
「…鍋?」
「お、知らなかったのか。こりゃ成功だな」
炎雅が言葉尻を取る
日本で活動はしていたが特に日本料理に興味があったわけではないので詳しくはない
「お鍋の中に水と野菜とかお肉とかを入れて火にかけるんです。後はお出汁とかで色んな味を楽しめますよ。1つの鍋に入れたものを皆で食べるんです」
「なるほど…多量のボルシチを皆で食べるようなものですか」
「ボルシチって…なんだっけ?」
「ロシアの郷土料理だよ、バカ妹」
「バカは余計よ、バカは」
それから私達は談笑しながら鍋をつついた
それはとても美味しく、食べたことのない味だった
何より1つのものを皆で食べると言うのが今まで経験したことがなく新鮮だ
これは地球の問題が解決した後にまた皆で囲むのも良いかもしれない
…そこに妹の姿があれば尚良いのだが
食事を終えた後私の活動拠点へと皆を案内し、ユカミを彼女等に任せて1人別行動を取っていた
今日は皆そこで寝泊まりをさせる、それだけの広さは十分にある
元々この日に地球へと来たのは今からやることが目的なのだ
ユカミは着いて来たがっていたしせめて何をするのかを知りたかったようだが…このことに彼女を巻き込みたくはない
申し訳ないが1人にさせてもらった
私はライドロイドで移動した後、降りて歩く
そして木々が生い茂る樹海へと足を踏み入れた
もう夜も更けている
昼間でも薄暗く、人気のない樹海だ
こんな夜更けに入るのは私以外には自殺者や犯罪者くらいのものだろう
ここまで暗いと常人であれば伸ばした己の腕も見れないだろう
だが私にとっては歩き慣れた地だ、例え見えなかったとしても問題ない
私は目的の場所へと向かう
やがて一際大きな木が見える
その木には幾つもの切り傷があり、私の胸の辺りの高さには1つ他よりもかなり大きな傷がある
その傷は直径8cm、幅が3cmほどもあり大木を深く抉っている
私は手に持っていた菊の花束を根元に置き、その傷をゆっくりと撫でる
「今年も…来てしまったよ」
誰に言うでもない言葉が口を出る
同時に私の胸中に言い様もない悲しみが広がる
私は涙を堪え、その場で片膝をついて祈りを捧げる
ここで亡き者となった彼の鎮魂を願って
どれだけの間そうしていただろう
膝に痛みを感じた私は立ち上がり、服に着いた土を払う
再び傷を見る
そこには誰もいない
いないはず…なのだが
私の眼には大剣に貫かれて事切れる彼の姿が映る
貫かれた胸部からとめどなく血が流れている
見慣れたはずのその光景がまるで初めて見たかのような錯覚を覚えて身体が小刻みに震える
動けない、そこから目を離すことも出来ない
脚に力が入らずその場に崩れ落ちた
同時にダムが決壊するかのように涙が溢れる
それから私はずっと泣き続けた
悲痛な叫び声が辺りに谺する
近くを誰かが通っていればその慟哭を聞き、この樹海の怪談が1つ増えたかもしれない
長い時間をかけて漸く落ち着きを取り戻してきた
単に泣き疲れただけかもしれないが
私は立ち上がり三度傷を見る
それを見て私は何度したか分からない誓を立てる
「待っていろ、お前の望んだ平和の世を作る。例えそれが無理でも犯罪組織を潰し、理不尽に死ぬ者は必ず減らしてみせる。その為にこの力を使う、絶対に昔のように壊すために使いはしないと」
決意を胸にし、最後に軽く祈りを捧げてその場を後にする
彼の形見のH&K Mk.23 Mod.0を強く握りしめながら…
活動拠点へと戻ると皆は眠っていた
私はコートを脱ぎ、ハンガーに掛けるとベッドに横になる
明日からまたアークスとして地球の問題へ当たりながら妹を探す
それは同時に彼の遺志を叶えることにもなるだろう
私はやるべきことを確認し、意識を落として眠りにつく
これから起きる激戦を知る由もないまま…