あれから数週間が経った
PAやスキルを使えるようになってからはかなり戦いやすくなったのもあり、積極的に任務へ出ていた
とは言え未だ射撃や法撃が使えないのは変わらない
自分なりに試行錯誤はしているものの、上手くいかないのだ
それでもいくらかはマシになった…と思う
でもカタナはかなり扱えるようになった
あれから森林以外にも火山や海、砂漠といった様々な場所へ赴いている
当然アークスとしての任務の為に行っており、大型種との戦闘も何度かあったが苦戦することはなかった
まぁまだ危険度の低いエリアしか探索許可が降りていないのもあるが
しかし私には1つ腑に落ちないことがある
アークスはダーカーの殲滅を目的としている
となれば無論ダーカーもアークスを敵視し、殲滅しようとするだろう
実際私は何度もダーカーに襲われ、戦闘を行い、侵食されたものも屠ってきた
それなのにダーカーの大型種と対峙したことがないのだ
ただ単に運が良いのだろうか?
私がダーカー側であれば、これから先驚異になり得る存在は成長する前に潰しておきたい
まだフォトンを自在に扱えていない私を今のうちに確実に消すならば、強力な相手をぶつけるのが最善だろう
何故それをしてこない?
…考えていても仕方ないか
いずれ相見えることは確実だろう
ならばまだ会ってない運の良さに感謝し、来る邂逅の時に備えて鍛錬を積むのみだ
私は疑問を払い除けるように雪をかき分け、進む
私が今いるのは惑星ナベリウスの凍土だ
最初の任務で来た森林の先にある土地である
ナベリウスに凍土があることは聞いていたし、不思議には思わなかった
しかしまさか森林から急に凍土になっているとは…
私は凍土は標高の高い位置にあり、ある程度坂道を登った先にあると思っていた
だが実際には、まるでアフリカの国境のようにある所を境に突然凍土になっていたのだ
やはりオラクルでは私の常識は通じないのか
ここにはやはり寒い環境に適応した種が生息している
森林にいたのと骨格がほぼ同じの種族も多い
その為動きは大きく変わらず、対処はしやすかった
原生種が襲って来た場合はカタナを抜かず、鞘で肋の当たりを打った
どうやらオラクルの生物も地球のそれと身体の構造が似ているようで、こうすると肺に衝撃が伝わって暫く動けなくなる
彼らには何の罪もないのだから殺さずに済むならそれに越したことはない
そしてダーカーや侵食されたものにだけ刃を振るうようにしていた
それにしても静かだ
凍土と言うだけあり環境は厳しく、原生種の個体数も森林と比べると多くはない
だが静かに感じる1番の理由はユカミがいないからだろう
ユカミは一日かけてメンテナンスを行っているため、任務には私一人で来ている
いつもは彼女と話をしながら探索をするので賑やかなのだが、今日はいないので話し声はない
たったそれだけのことでこれほど静寂に包まれるとは…彼女の影響力に少し驚く
そんなことを考えていると10mほど離れた位置にダーカーが出現した
その大きな体躯も特徴的だが、何よりも目を引くのはその巨大な盾だ
正面から攻撃しても一切ダメージは通らないし、あの盾を振り回して反撃してくる
後ろに周り込めば無防備なのでそれほど驚異でもない
ただ複数で囲まれると厄介だ
今回私の前に出てきたのは3体、私の行く手を阻むように横一列に並んでいる
囲まれるほどではないがこれはこれでやりづらい
周り込むのに大周りしなければならず、その間にこちらに盾を向けられるからだ
しかも足元は積もった雪、普通の平地よりかなり動きづらい
だが逆にこの雪を利用することも可能だ
私はカタナを抜き大量のフォトンを込め、地面の雪を辺り一面に散りばめるように振るう
飛び散った雪で視界を奪い、残留したフォトンが敵の意識を惹きつける
ダーカーは目よりもフォトンでアークスを認識し、攻撃するらしい
だからこのように大量の濃いフォトンを巻き散らせばこちらが何処にいるか分かりづらくなる
更に私は自身のフォトンを枯渇させた
これによりフォトンで私を追跡するのは最早不可能だ
相手が混乱している間に私は後ろに周り込み、フォトンを再び取り込んでから3体纏めて斬り払う
不意を突くことに完璧に成功し、痛手を負わせた上に転倒させた
この隙を逃す手はない
私はカタナを鞘に納め、一瞬の内に逆袈裟と袈裟に連続で斬る
ブレイバーのPAの1つ、サクラエンドだ
威力の高いPAを無防備な状態で受けたダーカー達が無事なはずはなく、攻撃を受けた2体は消滅した
サクラエンドの範囲上3体目を巻き込むことは出来なかったが、これで充分だ
1体となった相手に抵抗する術はない
残りを始末した私は先に進む
開けた場所に出た
雪は積もっているが一帯が平らでまるで戦う為のフィールドのようだと思った
しかしそれはあながち間違いではないらしい
2体の巨大な四足歩行の原生種が見える
森林では見たことの無い種だ
地球の生物で例えるならばライオンだろうか
身体を横たえて寛いでいるのか
注意深く観察するが、侵食核は見当たらない
幸いなことにダーカーによる侵食は受けていないようだ
それならば殺すこともない
私は来た道を引き返す
一通り探索を終えた私は行く宛もなく雪道を歩く
今回の任務は凍土の探索で、ダーカーや侵食されたものは発見次第撃破するよう言われている
既に結構な範囲を歩いたし、侵食された場合の影響が大きいであろう大型種の無事も確認した
もう帰還しても良いのだが、特にやることもないしユカミのメンテナンスも終わってないだろう
目的も何も無くただ歩く
たまにはこういう時間も必要だ
それにしてもこうして雪一面で起伏の激しい場所を歩いていると故郷を思い出す
あまり良い思い出ではないが…彼女が傍にいた数少ない時間でもあるため忘れたくはない
そのまま私の思考は過去の記憶へと落ちていく