雪の降り積もる山
そこを何人もの子供達が走っている
登り、降りてまた登る
何度も往復していた
それが私の1番古い記憶
私は恐らくロシアの山岳地帯で産まれた
ヨーロッパ人の父とアジア人の母と妹との4人家族であったと思う
普通の家族ではない
とあるマフィアの計画の1つに『優秀な者同士の間に産まれた子供は優秀な駒になるはず』という単純なものがあり、それによって産まれたのが私と妹だ
そう、一家全員犯罪組織の構成員だったのだ
父は武術家、母は暗殺者で、その双方の強さを併せ持った才能を持つ子供として誕生した
更に産まれた直後から両親や周囲の構成員による英才教育を受けさせられた
山を走っていたのはその一環で、共に走っていたのは妹を含めた同じ境遇の子供達だ
そうして数年も経てば一般の成人なら簡単に殺すことが可能な5歳児が出来上がる
当時の私達はそのマフィアが家で、構成員は家族だった
ナイフや銃を上手く扱えたり、技を綺麗に決めることが出来れば飴玉を貰えたりしたのでそれを良いことだと思っていた
中には傭兵やプロのスナイパーの間に産まれた子供もいて、100mの狙撃を100%成功させるような者もいた
今思い返してみるととても現実のこととは思えないが、あれは紛れもない事実だった
私がその場にいたのだから否定しようもない
しかし最も恐ろしかったのは…確か6歳になる頃だろうか
いくら才能ある子供とはいえ、無茶なことをさせられまくったので死ぬ者もいた
小学生にも満たない子供が雪山を走らされるのだ、死んで当然だろう
こうして生き残った子供達はある時1箇所に集められた
そこでとんでもない命令が下される
その場で全員に殺し合いをさせたのだ
最後に残った5人を組織の駒にするという
その命令や考え方も末恐ろしいものがあるが、それよりも異常なことが起きた
誰もその命令に疑問や抵抗を見せることも無く武器を構え、殺し合いを始めたのである
…無論、私も
私は当時から武器を扱うよりも素手の方が強かった為に武器は持っていなかった
それでも銃弾の躱し方なども教わっていたので次々と殺していった
辺りには子供の死体が転がり、地は血の海、空は血の雨が降っていた
暫くして生き残りも少なくなってきた時、私は妹と対峙した
妹は両手に小刀を握っている
彼女は子供達の中でも日本刀の扱いに長けており、扱える者が殆どいないと言われる二刀流を齢5にして扱うという天才だ
その刀身も血に濡れており、滴っている
私の手からも滴っているし人のことは言えないが…不気味だった
そして、私達は躊躇い無く殺し合いを始めた
双刃と双拳が交叉する
どれほど時間が経っただろう
お互い息も切れ切れで限界が近い
私は左腕を斬られて使えないし、妹の持つ刀の片方は私がへし折った
私達は最後の力を振り絞り、突進した
私の貫手が妹の頸動脈を狙い、妹の刀が私の頸動脈を狙う
あと1秒で互いに死ぬというその時、甲高い笛の音が鳴った
どうやら私達を含めて最後の5人になったらしい
私達は腕を降ろし、離れる
生き残ったのは私達姉妹と、銃の扱いに長けた女の子に槍を握っている男の子
そして…西洋の甲冑に身を包み、大剣を持つ男の子
彼とはこの先も長い付き合いになるのだが、この時は知る由もなかった
こうして生き残った5人の子供達は更なる教育を受け、優秀な人材として使われる…はずだった
しかしそうはならなかった
-離反者が出たのだ
先の殺し合いのあまりに凄惨な光景を見て、自分の子供を連れて組織から逃げた者が2名
それは他でもない、私達姉妹の両親であった
どうやら子育てをする中で情に目覚めていたらしい
そこに先刻のアレだ
耐えられず、私達を連れて逃げたのだ
このことはすぐに組織全体に伝わり、追っ手がかけられた
両親もかなりのやり手であるため、強者が送られた
多勢に無勢、その上私達を守りながらでは流石に不利すぎる
だから私達を単独で逃がし、追っ手を引き受けることにした
それから両親の行方は分からない
恐らくは死んだであろう
逃亡の途中、妹ともはぐれてそれ以来会ったことはない
しかし彼女の特徴を捉えた噂や情報が入ることはあるので、生きていると思う
生き別れた妹を探し、もう一度共に過ごすこと
それが私の今の目的であり、アークスになったのもその技術力を用いて妹を探すためである
その後も私は別の犯罪組織に拾われて結局は暗躍させられることになったし、それから先色々なことがあったのだが…ここで思考は止まる
何故なら眼前に原生種の爪が迫ってきたからだ
私はその腕を掴み、遠心力を利用し放り投げた
どうやら考え事をしている内に縄張りへと踏み込んでしまったらしい
こちらに危害を加える気はないとしても縄張りに入った以上そうも言ってられない
なるべく傷は付けないとして、取り敢えずここから離れなければなるまい
私は仕方なくカタナを抜き、戦闘態勢を取る
離脱に成功したらもう帰ろう
私はそう決めて原生種の集団に突進し、退路を切り開きにいく