新たなクラスを作ることを考えてから1週間ほどが過ぎた
私は武装をどうするのか、どのようにしてPAを発動させるのかなどをマイルームで考えていた
ユカミは鼻歌を歌いながら料理をしている
そのまま普通の、楽しい食事をするはずであった
しかしそれは唐突な来訪者により中断させられた
「緊急事態につき、失礼するよ」
「シャオ?いきなりどうしたのですか?」
「今言った通り緊急事態だ。このアークスシップに敵襲、アークスが対応しようとしたがアークスシップ内ではリミッターのせいで満足に戦えない」
「しかし緊急事態に於いてはそのリミッターを解除して戦うのでは」
「確かにそうだ。けど管制を乗っ取られているようでね、こちらからシステムにアクセス出来なくなってるんだ」
「…それってかなりやばいのでは?」
「その通り、そこでフォトンに頼らず戦える君に頼みたいんだ。僕はこれからなんとかしてシステムにアクセスして管制を取り戻す作業に入る。出来れば撃退して欲しいけど無理なら時間稼ぎでもいい、奴らと戦ってくれないだろうか」
「なるほど、分かりました。場所と敵の戦力を教えて貰えますか?」
「恩に着るよ。ショップエリアに2名だ、その内1人は大槌を持っている。あれにマトモに当たればタダでは済まないだろう、気を付けて」
「了解。ユカミ、留守を頼みましたよ」
「分かりました、お気をつけて!」
私はショップエリアへと急行した
するとそこにはアークスに囲まれた人物が2名
周りを取り囲んでいるアークス達は肩で息をしており、どうやら敵に傷一つ付けることは出来ていないようだ
しかし2人とも見覚えがある、特に大槌を持っている方は…過去に共に戦った覚えがあるような
まぁいい、私はやることをやるだけだ
ショップエリアは吹き抜けの3階構造をしている
私はその3階から2人を見下ろしている
そこから飛び降り、落下に合わせて身体を回転させて踵落としを放つ
「むっ!?」
直前で気付かれ、大槌で防がれてしまった
私は空中で背転して距離を離して着地する
「主は…まさか」
「お久しぶりですね、アラトロン殿」
「ほっほっほ…斯様な場所でお主と会うとは夢にも思ってなかったぞ、アウルよ。しかし懐かしいのぉ…お主と共に戦ったのは、はて何年前であったか」
「何年前でも良いでしょう、私は貴方を止めに来たのですから。今は敵同士、かつて共同戦線を張ったからといって懐かしんだり手心を加えたりすれば」
「死ぬ、と言いたいんじゃろう。全く、相変わらずおっかない奴じゃ」
「翁、この者は何者ですか。どうやらよく知っているようですが」
アラトロンの隣にいる人物が声を上げる
彼とは会ったことこそないが、知ってはいる
オフィエル=ハーバード、高名な医者だ
彼もアラトロンと同じ組織にいたのか
「オフィエルよ、この娘はアウルと言って儂の知己じゃ。かつては共に戦ったこともあるが今は敵対することになってしまったようじゃがの。」
「なればさっさと倒してしまえば良いでしょう。我らには会話を楽しんでいるような時間はないのですから」
「ほっほ、出来ればとっくにやっておるわい。しかしなオフィエルよ…この娘はあの魔人と真っ向から死合って引き分けに持ち込む実力者じゃぞ」
「…冗談でしょう?」
「紛れもない事実じゃよ、故に我ら2人が本気でかかっても勝てるかどうか分からん。正直退くのが正解じゃろうて」
「素直に退いて下されば何もしません、しかしあくまでも戦うと言うのなら…容赦はしません」
「これは困ったのぉ…はてさて、どうしたものか」
膠着状態が続く
私としてはシャオが管制を取り戻すまで時間を稼ぎ、これ以上の被害が出ないようにすれば十分だ
だからこのままお互い動かない時間をなるべく長く引き伸ばし、何もないまま撤退させられれば勝利である
しかしそれは向こうも分かっているだろう
私ではなく周囲のアークスへ攻撃をしかけて守ろうとする私に隙を作る、といった戦法を取られても面倒だ
アラトロンは正面からやり合うのが好きなためそんなことはしないだろうが、オフィエルに関してはよく知らないので警戒しておくべきだ
私は周囲にいるもの全員へ聞こえるよう大声で呼びかける
「ここは私に任せて皆さんは一般市民の避難誘導に当たって下さい!!」
私の言葉に1人、また1人と移動を開始した
これで周囲に被害が及ぶことはないだろう
「真っ向から勝負しても勝てないのなら、数で押し切りましょう」
「そんな単純な相手ではないんじゃがな…まぁ、それしかあるまいて」
2人は瞬間移動して、宙に浮いた
その足元には魔法陣のようなものがある
マザークラスタはあんな技術まで開発してたのか
そして私の周囲に…青い人型の化け物が現れた
これはエーテルによる具現術か
地球にはフォトンに良く似たエーテルというエネルギーがある
これは主に通信技術に使われているが、1番の特徴は本来この世にないものを具現することが可能なことだ
今私の周囲に出現したのもエーテルにより具現させたものだろう
召喚術紛いのことまで出来るとは思っていなかったが
観察した限りでは動きは遅く、これなら苦戦などしないだろう
しかし…数が多すぎる
この数に一気に来られてはこちらが不利だ
あちらもそのことが分かっているのだろう
こうして一対圧倒的多数の消耗戦が始まってしまった
斬撃や射撃が飛び交う中、私はその全てを避けつつ各個撃破していく
倒し続ければいつかはいなくなるが…流石に骨が折れるな、これは
「ぬあぁぁぁ!!」
上から雄叫びが聞こえると同時に闘気を感じた
私は後ろ回し蹴りで周りにいるものをなぎ倒し、出来たスペースに逃げる
次の瞬間私がいたところにアラトロンの大槌が振り下ろされていた
「お主の戦っておるところを見ておったら身体が疼いてのぉ…どうにも我慢できずに降りてきてしまったわい!」
この大軍に加えてアラトロンを相手にしなくてはいけないのか…
「遠からん者は音に聞け、近くば寄って目にも見よ!マザークラスタ土の使徒、アラトロン=トルストイ。いざお相手仕る!!」
厄介なことになった
どうしようか悩んでいたその時
「アークスの皆、管制を取り戻したよ。さぁ、侵入者を追い返すんだ!」
アークスシップ全体にシャオからの放送が入った
こうなれば皆ここに戻ってきて一斉に加勢してくれるだろう
もっと早くにアラトロンが動いていれば危なかったかもしれないが、なんにせよ耐えきることが出来た
私の勝ちだ
「馬鹿な、マザーから管制を奪い返しただと!?」
「やれやれ、ここからが良いところじゃと言うのに…今度こそ本当に退くぞ、オフィエルよ。アウルや、お主とはちゃんとした形で死合ってみたくなった。また相見えようぞ!」
そう言って彼らは消えた、エーテルによって具現された化け物共を残したまま
どうせなら消して行ってくれれば良いものを…面倒な
しかし数多のアークスが押し寄せ、一気に排除に加担したことによりすぐに全て片付けることが出来た
その後私に感謝の言葉が沢山来たのは良いのだが、フォトンを扱えない状態での戦闘も出来るようにしなければならないという考えが広まった
勿論私に教えてくれという声がとても多く、毎日のように人が来るので心休まる日がない
そんなに沢山の人に私1人で教えるのはそもそも無理がある
それに…私の持つ技術は正直あまり伝えたくはない
だからこれまで弟子を取ったこともないし、取る予定もない
私の力は犯罪組織に属していた武術家と殺し屋の両親から教わり、その後別の犯罪組織で研鑽されていったものだ
正しき心を強靭な精神力で保たなければすぐに病んでしまう
何しろ…人を壊す技しかないのだ
殺す殺さないは関係ない
身体を再生不可能なほど壊してしまえば…ソレを生かす場合かなりの金がかかる
死なせる場合は批評を買う
どちらにせよ殺す以上の成果が得られる
勿論依頼が殺害であれば殺すが
要するに私の力はそういう類のものだ
そうほいほいと教えられるものでないことは理解できると思う
ちなみに私が制御出来ているのは心が強いとか正しいとかではない
単に最初からそれしか知らなかったから平気なだけだ
もし私が弟子を取るとなればその者は武の才能が秀でてるのではなく、心の強さが尋常ではない者しか有り得ない
しかしフォトンがない状況下での戦闘技術が必要という理屈は分かるし私もアークスを利用して己の目的を達しようとしている
ただ拒否するだけで終わらすわけにもいくまい
そこでシャオからこんな提案があった
それは
私のみフォトンを扱わず三英雄と同時に戦い、戦い方、力を示す
というものだった
三英雄…守護輝士と並び伝説と言われる3人のアークス
そんな者達と生身で戦うのか
まぁいい、それで少しは私の元へ来る者が減るならばやろう
こうして新たな伝説として語り継がれることになる模擬戦が始まろうとしていた