新人アークス、アウル【完結】   作:フォルカー・シュッツェン

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激戦の始まり

翌朝、私はユカミと共に特別会議室へと赴いた

中にはレギアス、マリア、カスラ、ゼノ、クラリスクレイス、ヒューイという創世器を持つかつて六芒均衡と呼ばれていた者達に加え、シャオがいた

 

「やぁ、アウル。そこに座って少し待っていてくれ。あと3人来たら全員集まるから、そしたら話を始めるよ」

「分かりました。しかし随分と大人数なんですね」

「それだけ此度の作戦は重大だと言うことだ」

 

レギアスが答えてくれる

何があるのか気にはなるが残りの到着を待つしかあるまい

 

「おい貴様!貴様がアウルなのか。ヒューイから聞いたんだが貴様、物凄く強いらしいな。その内私とも模擬戦をしてくれ!」

「機会があれば」

「ん?なんだかやりたくなさそうだな」

「戦うのは好きではないので…可能なら戦わずに済ませたいというのが本音です」

「なるほどな、そういうことか。それなら無理強いはせん。しかし気が向いたならいつでも言ってくれ!」

 

クラリスクレイスは言葉遣いこそ乱暴だが、相手を気遣う気持ちがないわけではないようだ

むしろとても優しい心の持ち主ではないのか…と直感した

 

「皆さんお待たせしてすいません。守護輝士のお2人をお連れしました!」

 

その時扉が開いて誰かが来た

 

「待ってたよ、シエラ。それに守護輝士の2人」

 

守護輝士…あれがそうなのか

そしてシエラと呼ばれた女性は、おそらく1機目のハイキャストだろう

 

「シエラさん、お久しぶりなのです!」

「ユカミさん!お久しぶりです。元気にしてましたか?」

「はい、とっても元気なのです!」

「それは良かったです」

「再会を懐かしむのも良いけど、話を始めても良いかな?」

「あぁ、そうでした!ごめんなさい」

 

シエラが謝り、守護輝士達も席に着く

ユカミも申し訳なさそうに頭を下げた

 

「さて、揃ったことだし話をさせてもらうよ。今回集まってもらったのは他でもない、少し前に襲撃をかけてきたマザークラスタのことだ。アウル、君は確か彼らと面識があったね」

「えぇ。とは言っても1部の人だけなので内部構成までは知りません」

「なるほどね。ではそのリーダー的な存在である『マザー』と呼ばれる者については?」

「彼女ですか…えぇ、知っています」

「彼女の目的については…知っているかい?」

「いいえ。ただ酷く悲しくて苦しい、そして…とても激しい怒りを抱いているように見えました」

「それは概ね当たっているね。マザーは自らを生み出し、そして失敗作として廃棄したフォトナーへの復讐をしたがっている」

 

フォトナー…確かアークスを生み出した人種で今は絶滅していると聞いているが

話によるとフォトナーは全知全能の存在を自分達の手で作り出そうとしていたらしい

そしてその試作型がマザーだという

しかしそれはフォトナー達が夢見たものとは違ったため、別宇宙に遺棄されたようだ

その身勝手なフォトナーに復讐心を抱き、それを為すための手足としてマザークラスタという組織を作ったのだという

 

「なるほど…そういう経緯があったのですか」

「そうらしい。これは君とはまた別の地球人から得た情報なんだ」

「しかしそのフォトナーはもう絶滅していると聞いています。まさかマザーは復讐の対象を変えて…いえ、フォトナーに関するもの全てを消そうとしているのでしょうか」

「そういうことだね。マザーの怒りは当然のものだし、全面的にフォトナーが悪い。復讐されても文句は言えないだろう。でも…」

「アークスの責任ではないし、攻撃されて黙っている訳にもいかない、ですか」

「その通りだ。そして君には守護輝士の2人と件の地球人と共にマザークラスタの本拠地へ行き、対処して欲しい」

「…わざわざ本拠地に乗り込む必要があるのですか?それではまるで戦争でも始めようとしているように見えますが」

「正直なところ、単にマザーが攻撃してくるだけなら身を守るだけでも良いんだけどね…そういうわけにもいかないんだ。仲間を救出しなければいけないこと、このままマザーを放置しておくと地球が危ないことなどが主な理由だ」

「なるほど、そういうことですか。それで、具体的にはどのように?」

「いくら戦闘能力が高いと言っても君はまだ新人アークスだ。難しいことは守護輝士の2人に任せて君はただ戦ってくれれば良いよ。現場の指揮も守護輝士に一任する」

「分っかりましたぁ!お任せ下さい!」

 

とても元気の良い返事だ

ショートヘアーの蒼い髪、翠の瞳が印象的な少女

彼女は守護輝士の1人でアークス内では生ける伝説として祭り上げられている存在だ

パッと見た感じではアークスでトップクラスに強く、更に特別な力を有しているようには見えない

だが…部屋に入ってきた時から感じていたがその身に纏っている気は只者ではないし、足の運びを見ても普通の人ではないのは確かだ

 

「貴女がアウルさんだよね。私はマトイ、よろしくね」

 

白い髪に紅い瞳の少女が声をかけてくれる

とても穏やかでゆったりした印象を受ける

彼女も守護輝士で、創世器『明錫 クラリッサⅢ』の持ち主だ

アークスにとって最大の敵である深遠なる闇の宿主となりかけたこともあるらしい

 

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 

再びシャオが話し出す

 

「守護輝士とアウル、ユカミがマザークラスタ本拠地へと行っている間六坊はアークスシップに待機して襲撃に備えて欲しい。こちらの切り札の不在を狙って大襲撃をかけてくる可能性もあるし、他惑星のダーカーへの対処もあるからね」

「了解した。市民達には指一本触れさせはせん」

「なんだい、今回あたし達は留守番かい?興が削がれるねぇ」

「妥当なところでしょう。我々はやるべきことをやるだけです」

「ま、守護輝士が2人とも出撃するんだ。俺らが心配することもないだろう。それにアークスシップで待機しておけばいざというとき転送してもらって救援に行くことも出来るしな」

「私も行きたいが、仕方ない。今回は貴様らに譲ってやるから、しっかりやってくるのだぞ。無事に帰って来なければ許さないからな!」

「俺から言うことは…特にない!各々、役目をまっとうしようではないか!」

「…と言うことだ。アウルは守護輝士から君がアークスになってから地球で起きていたこと、これからすることの説明を受けてくれ。六坊は休憩の後、アークスシップ防衛の作戦会議を行う。以上だ」

 

私は守護輝士の2人に連れられ、そのうちの1人のマイルームへと通された

そこでこれまで地球で起こってきたことを簡単に説明して貰った

どうやら地球ではマザークラスタとアースガイドの衝突が本格化しているらしい

アースガイドは地球全土に渡り、一般人の保護や発展の道標となることを目的とした組織だ

かなり巨大で太古の昔より存在していたと聞く

彼等とは殺し屋として活動している時には対立していたが、護り屋として動くようになってからは協力したことも何度かある

マザークラスタと敵対する以上、アースガイドと協力することになりそうだ

殺し屋時代に彼等の仲間を何人も殺したり寝たきり、植物人間にしてきたことから私を恨んでいるメンバーも多い

果たして素直に協力を得られるだろうか…

しかしそれ以上に気になることがある

どうやら今回の地球での騒動の中心にはある地球人がいるらしい

名は八坂火継

元マザークラスタでエーテルの扱いに才があり、1連の事件に巻き込まれる内に開花したようだ

火継の兄、八坂炎雅と親友、鷲宮氷莉とも共に出撃することになる

 

かなり端折ったがこんな感じらしい

そして私達はお互いのことを知るために世間話などをした

守護輝士のもう片方の人の名前はミシャーと言うらしい

主にファイタークラスを使い、ダブルセイバーで舞うように戦う

それ以外にも全てのクラス、全ての武装を使いこなすオールラウンダーでもあるようだ

 

取り敢えず今日のところはこれでお終いだ

その後は絆を築く意味も含めて食事などを共にして、その日は寝ることにした

決戦の日は近い

刻一刻と近づくその時に備えて深い眠りにつくべきだろう

私は意識を海の中へ沈めるようにして手放した

 


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