新人アークス、アウル【完結】   作:フォルカー・シュッツェン

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タイトル変えました()


顔合わせ

私は樒やユカミ、守護輝士と一緒に私のマイルームで羽を伸ばしていた

突入が決まったとはいえ準備もあるしアースガイドへの接触の試みなどあるので急に行くことは出来ない

それに先の戦闘で皆少し疲れている

そんなわけで今は休んでいるのだ

 

「いや〜まさかこんなことになるとはね。流石に想像してなかったよ」

「そうだね。ある意味最強のダークファルスの力を得たアーデムさんと戦わなきゃいけないんだもんね…深遠なる闇と同じかそれ以上に強いつもりでやらなきゃ」

「しっかしマザー強すぎじゃなかった?潜在的な能力は深遠なる闇より低いはずなのに初めて闇を相手にした時より余程苦戦したんだけど」

「それは私も感じたよ。なんでだろうね?」

「おそらくは貴女達がマザーの復讐の対象であったことが原因でしょう。彼女はフォトナーを、そしてアークスに復讐心を抱いていましたから、それによって能力が最大限に発揮された。更には貴女達へ積年の怨みによるプレッシャーをも与えていたと思われます」

「なるほどね〜。流石に復讐心を向けられたことはないから慣れてないしね」

「慣れるものではありませんよ…あんなもの」

 

それより少し気になることがある

 

「しかしマザーが最強のダークファルスとはどういうことです?」

「えっとね、マザーは全てのダークファルスの力を使ってきたんだ。つまりはダークファルスの集合体と戦ってたようなものなの」

「流石に個々の力を完全に使いこなしてたわけじゃないけど…それでもかなり強かったのは確かだよ」

「なるほど、そういうことですか」

「んで今度はその力を奪った奴が神を降ろそうとしてる。最悪宇宙の創造神と戦う覚悟を決めとかないといけないのよね。あ〜厄介なのもここまでいくと感心するよ」

「とんでもないことになってるな。私がいない間にそんなに地球は変わってしまったのか」

「そう言えば樒ちゃんは地球の人なんだっけ?」

「…私にちゃん付けはやめてくれ、マトイ。むず痒くて仕方ない」

「あぁそっか、ごめんね」

「それにしてもアウルに妹がいたとは思わなかったよ。しかも妹までアークスになってるとはね〜」

「正規のアークスではないがな」

 

そう、樒は一応アークスではあるのだが普通のアークスではない

3年ほど前に謎の空間転移に巻き込まれ、オラクルにやってきたらしい

アークスの転移が影響したと思われるが真相は分かっていない

何しろ当時は地球の存在が知られていなかったのだ

勿論アークスが地球へ訪れているわけがない…少なくとも今ある情報では

帰るに帰れなくなった樒はそのままオラクルで過ごすしかなかった

そして戦うことに優れていた樒はアークスとして登録することになったのだが、元々殺し屋であった為に適性を見出され始末屋になった

それからは不安分子や規則に反した者を始末する日々を送っていたようだ

今は情報部次席のクーナの元についており、重罪を犯したアークスの断罪を担当しているらしい

ただその仕事が発生するのは極めて稀だし、これらのことは公表されていないのでその存在、実態を知る者はかなり限られている

シャオでさえ始末屋として活動していること以外はほとんど知らなかったほどに

樒がオラクルに来たのはシャオが生まれるより前のことであったし当時はルーサーという者の存在があった為仕方がないことだと聞いたがその頃のことを知らないので良くは分からなかった

 

「皆さん、お茶が出来ましたよ〜」

 

私達の為にお茶を入れてくれていたユカミがやってきた

 

「ありがと〜ユカミちゃん!…はぁ〜落ち着くなぁ」

「これ、初めて飲む味だ。何のお茶なのかな?」

「これは…日本茶か?」

「えぇ、玉露が好きなので地球に寄った時に買ってるんですよ」

「懐かしい味だ。まさかオラクルで日本茶を飲む日が来るとは思わなんだぞ」

 

ユカミも輪に入り、暫くの間なんてことはない談笑に華を咲かせていた

すると突然ミシャーが予想だにしないことを言い出した

 

「ねえねえ、樒ちゃん」

「だからちゃん付けはやめてくれと…なんだ?」

「好きな人とかいる?」

 

次の瞬間樒が咳き込んだ

お茶を吹き出さなかったのは流石というべきだろうか

 

「い、いきなり何を」

「だって樒ちゃんずっと険しい顔してるけどさ、よく見ると可愛いんだもん。それに女の子でしょ、そういうのに興味あるかな〜って」

「ない…と言いたいが正直分からん。そのような気持ちを自覚したことがないだけかもしれん」

「ふ〜ん、なるほどね…じゃあさ、付き合うとしたらどんな人が良い?」

「なぜそんなことを…そうだな、強いて言うなら姉上のような人だろうか」

「わ、私ですか?」

「アウルみたいな人?具体的にはどんな感じなのかな」

 

マトイが重ねて聞く

 

「何故そんなに知りたがるんだ…私の知る姉上は容赦のない殺戮者だが、私を守るために己より格上の相手にも果敢に戦ってくれた。そんな風に何を敵に回してでも必死になって守ってくれようとする人だろうか」

「なるほどね〜。樒ちゃんも結構乙女だね」

「…そういうわけでは」

「それより、マスターが殺戮者ってどういうことなのです?マスターは穏やかでとっても優しい方なのです!」

「そうだよね、まだ付き合いは短いけど優しいなって私も思うよ」

 

ユカミとマトイが疑問を示す

ユカミは少し怒りすら感じているようだ

それもそうだろう

何せ彼女等は落ち着いた私しか知らないのだから

 

「言っていないのか、姉上?」

「えぇ、言うほどのことでもありませんし…それどころでもなかったので」

「なるほどな。なら良い機会だし、ここで本当の姉上の姿を見せておいた方がいいんじゃないのか?」

「ふむ…それもそうかもしれませんね」

 

今度の決戦では私もこの『穏やかで物腰柔らかなアウル』の皮を被ったままでは勝てないかもしれない

その時は迷いなく皮など脱ぎ捨てて戦うが…その様子をその場で初めて見たら守護輝士達が戸惑うかもしれない

なら今ここで少しでも慣れさせておいて、いざという時に動揺させない方が良いのは確かだ

 

「驚くかもしれませんが、今から素の私を見せますね」

「素のアウルかぁ、どんな感じなのかめっちゃ気になるね」

「なんだかちょっと怖いけど」

 

私は目を閉じ、深く呼吸する

そして目を開けた

その瞬間私の纏っている空気が変わる

普段は殺気を殆ど出さないように気を付けているがそれをやめたため、辺りに殺気が漂い始めたのだ

 

「…やっぱり、ちょっと怖いね」

「うん…流石にここまでの殺気は初めてかも」

「マスター…」

「私はこの方が落ち着くがな」

 

皆それぞれ違った反応を示す

ユカミが結構なショックを受けているように見受けた

 

「大丈夫だ、ユカミ。今まで君に接してきた私が作り物であったわけではない。あれも私の1面であることに変わりはないからな」

「…そうなのですか?」

「あぁ、だから安心しろ。私は私だ」

「分かりました、マスター!」

 

ユカミが笑顔を取り戻してくれた

一安心といったところか

 

「それで、アウルは?」

「は?」

「いやさ、好きな人とかいるのかなって」

「私にも聞くのか…」

「あったりまえじゃん!アウルだって凄い美人さんなんだしさ、恋愛経験あるんじゃないの?」

「残念ながらない。地球にいた頃の私は殺し屋稼業が長かった。その後護り屋になったが特にそういうことにはならなかったからな。だが、経験してみたいとは思う」

「お、いいねいいね〜。じゃあさ、付き合うとしたらどんな人?」

「そうだな…やはり甘えさせてくれる人だろうか。私は頼られたり甘えられたりが多いからな、偶には甘えたい時もある。そういう時に何も聞かずに甘えさせてくれると良い」

「ほわぁ〜、思ってた以上に乙女だぁ…」

「べ、別に良いだろう。私とて女なのだから」

「うんうん、いいよいいよ〜」

「姉上もそう思う時があるのか、意外だな」

「まぁそうだよな…私も初めて自覚した時は自分に驚いた」

 

そうして話に夢中になっていると結構な時間が経っていたので、私達は食事を摂ることにした

定番のフランカカフェで談笑しながらの食事を楽しむ

その後帰ることになったのだが、折角姉妹が再会したのだからと皆が気を利かせて2人にしてくれた

ユカミも今日はミシャーの部屋へ泊まるようだ

 

部屋に戻ってきた私は樒に珈琲を入れて渡した

 

「ありがとう。皆には感謝しなければならないな」

「そうだな。こうして2人で過ごすのは何年振りだろうか」

「確か…15年ほどか。あの時はお互い小さな子供だった」

「そんな前になるか」

「あぁ」

 

それから暫く無言が続く

話したいことは山ほどあったのだが、何を話せば良いのか分からない

いや、話す必要はないといった方が正確か

こうして同じ時を過ごせているだけで十分なのだ

その後も時折話しながら時が過ぎていく

そろそろ寝た方が良いか

 

「樒、そろそろ寝ようか」

「ん…そうだな。もういい時間だ」

 

樒には普段ユカミが使っているベッドを使わせようとした、が

 

「なぁ姉上、再会記念ということで久し振りに一緒に寝ないか?」

「構わないぞ。甘えたがりなところは変わらないか」

「う、うるさい」

 

そう言って樒はそっぽを向いてしまった

その頬は僅かに朱に染まっている

子供の頃から変わっていないな

私は先にベッドへ入り、樒を迎えた

 

「こうして寝るのも15年振りか…変わらず姉上は私を安心させてくれるな」

「それはお互い様だ」

「そうだな」

 

私と樒は同時に目を閉じる

多くを語る必要などない

共にあれればそれで良いのだ

そうして夜は更け、明け方はやってくる

 

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