目的地へ到着した私は早速炎雅に言った
「では、銃を取り出して下さい」
「おう」
炎雅が腕を軽く振るとその手に小振りな銃が二挺現れた
形状からするにサブマシンガンか
今度の戦いでは動き回ることになるだろうし軽量なこの銃は合っている
「まずはAIM力を見ます。あちらの的に撃ってみて下さい」
「了解」
炎雅は射撃を開始した
ふむ…悪くはない
体勢も安定しているし、狙いも大きく外すことも無い
後は動き回りながらだとどうなのか
誤射をしないよう徹底しなければならない
「悪くないですね。サブマシンガンのフルオート射撃でこれ程の精度ならまずまずです」
「あ〜…アウルさんよ、俺の具現武装は銃じゃないんだ。本体は弾なんだよ。銃はそれを撃ち出す分かりやすい外観ってとこだ」
「なるほど、そうでしたか。では銃の種類は適当に?」
「いや、そうでもねえんだ。確かに本体は弾なんだが目的に応じて弾の威力や種類を変えなきゃなんねえ。その時その弾を撃つのに最適な銃が自動的に選ばれるらしい」
「ふむ…普段は素早く撃てて取り回しの良い軽い弾を連射する、その為にサブマシンガンが選ばれているということですか」
「そういうことだ。だからアサルトライフルだとかスナイパーライフルだとかいうのも出せるぜ。そっちも見るか?」
「そうですね、今度の戦いではアサルトライフルの方が良いでしょう。弾の威力、精度共にサブマシンガンより上です。その分取り回しは劣りますが、そこは今から徹底的に叩き込んであげるので問題ありません」
「怖い女だぜ」
炎雅はアサルトライフルへ銃を変形させた
そのまま何度かAIM力を見るために射撃を続ける
悪くはない、悪くはないのだが…普通だ
普段ならそれで良いのだが、今回ばかりはそうもいかない
撃つ姿勢、銃の持ち方、何処に力を入れるのか、フルオート時の反動の抑え方などを徹底的に指導する
立った状態、座った状態、伏せた状態での射撃もやらせた
1時間程特訓を続けた結果、精度は大幅に向上した
射撃のみであれば傭兵として活躍も出来るレベルだ
後は前衛が肉弾戦を行っている後ろから撃つ練習も必要だ
動き回る敵と味方がいる中敵のみに弾を当てなければならない
「さぁ、次は誤射を無くす特訓を始めたいと思います。疲れなどはありませんか?」
「当然疲れちゃいるけどよ…休む暇も惜しい。それにあんたのつけてくれる修行は短時間で向上を実感出来る、こんな良い機会逃せるかってんだ」
「良い目です。では、始めましょうか。今から私が練習用のエネミーと白兵戦を行います。その間敢えて貴方の存在を意識することなくかなり身勝手な戦い方をします。その状況で私へは当てずにエネミーにのみ当てて下さい」
「…いきなりハードル高くねえか?」
「大丈夫です、最初は私へ当てても良いですからね。大事なのはどういう時にどこへ撃てば味方に当たり、敵に当たるのかを知ることです。その為には実際に味方へ当てることも重要なんですから」
「まったく、大した師匠だぜあんたは」
「感謝や感想は全ての修行を終えた後に聞きましょう。さ、始めますよ」
ユカミに練習用エネミーの中で最も強いものを用意してもらう
私はそのエネミーへ接近し、肉薄した状態で戦闘を続けた
後は炎雅がひたすらに何度も撃って感覚を掴むだけである
-一方その頃-
樒は火継と氷莉の2人を相手に刃を交わしていた
最初に力量を測る為にそれぞれと剣を交えようとしていたのだが時間もないし面倒なので纏めて相手することにしたのだ
いくら数で勝っていようとも、不思議な能力を発現していようとも彼女等は少し前まで日本で争いとは無縁の生活を送ってきた少女だ
生まれた時から殺し屋として育てられ、生きてきた樒には叶うはずもなく…
「なんで、この姉妹は揃いも揃ってこんなに強いのよ!」
「火継ちゃん、来るよ!」
樒は火継に狙いを定めて両手の刀をクロスさせる
そのまま鋏で切るように首を狩り取ろうとした
火継はそれを真正面から刃を当てることで止める
「その上、妹の方は一々致命傷を狙ってくるし!」
「喋る余裕があるのか、ならもっと激しくいくぞ」
「いっ!?」
「やあぁぁぁ!!」
左側から氷莉が大剣を樒に向かって振り下ろす
樒は左手の刀を返し大剣の側面に当てて剣筋を狂わせた
それと同時に右手の握る力を少しだけ緩め、左側に腕を振る
すると刃が来ないよう全力で押し返していた火継の刀は樒のそれを滑り、前のめりになって体勢を崩した
そこを左手の刀で首を斬りつけようとするが、火継が半ば無理矢理身体を捻って躱す
そのまま床を転がり距離を取ろうとするが、樒が突進してきてクロスさせた刀を今度は一気に外側へ向けて振り抜いてく
それを再び刀で防ぐ火継
しかし衝撃を緩和することは出来ずそのまま後ろへ大きく吹き飛ばされた
壁に背中を強打し、息が詰まる
その間に樒は氷莉と剣を交わしていた
刀を握る力を極限まで緩めることで剣筋を不安定にし、威力を犠牲に予測が困難な斬撃を行う
樒の得意技であり両手にそれぞれ刀を握っていること、技の練度が高くまるで幻のような刀捌きを見せることから地球では「幻惑の両刀」と呼ばれ恐れられていた
当然氷莉にその剣筋が見えるはずもなく、膾斬りにされる
殺す訳にはいかないので薄皮一枚のみを斬っているのだが、自分の身体が連続で斬られているという事実は氷莉に恐怖を与えるのに十分すぎるだろう
しかし…
「やあぁぁぁぁぁ!!」
氷莉が大剣を振り回す
なんとこの恐怖の中氷莉は防御ではなく攻撃に出た
防ごうと思っても見えないから防ぐことは出来ない、だったら思いっきり攻撃して自分から遠ざけようとしたのだ
「っ!?」
これには樒も驚いた
あの状況下、通常であれば人は正常な判断が出来なくなり、無駄な防御を続けることしかしなくなる
普通の学園生活を送ってきた少女なら思考が停止しても何らおかしくない
それなのに非常に正しい判断をし、あまつさえそれを実行に移すことが出来たのだ
素質がある…樒は思った
それは火継にも感じていたことだった
彼女の反射神経には目を見張るものがある
いくら手加減しているとはいえ、樒の動きを何とか捉えて、攻撃を防いできたのだ
しかし斬られることは防いでも衝撃は防げていない
刀同士がぶつかる際に発生する力はそのまま火継の腕に伝わり、肩まで抜けていく
跳躍からの振り下ろしを防御すれば足にまで負荷はかかるのだ
火継はもう立っているのもやっとの状態であったし、氷莉も全身を薄皮一枚とはいえ膾斬りにされている
極少量のぷっくりとした血が全身に現れているのだ、戦意は完全に失われただろう
「氷莉、その血の出ているところがお前の斬られた場所だ。これが実戦なら、その全てが深い傷となりお前を死に至らしめている」
「そう、だよね」
「だが先程の判断は見事だった。中々出来るものでは無い。私も驚かされたぞ。そして火継、お前の反射神経はとても優れている。私の動きを捉えられるのだからな」
「そっか、あたしも捨てたもんじゃないってことね」
「だが両者共に課題はある。まず氷莉は速さが足りない。そのスピードでは戦場で生き残ることは難しいだろう。そして火継、お前は逆にスピードに頼りすぎている。殆ど何も考えずに動いているだろう、戦闘中の思考力が足りていない」
「うっ…言い返せない」
「速さ…運動は苦手だよぉ」
「あんたはその胸のせいで動き辛いんじゃない?」
「もぉ、火継ちゃんってば!」
「胸の大きさは関係ない、姉上がいい証拠だ」
「「確かに…」」
「まぁ姉上を比較の対象にするのは酷な話だが…」
「それより樒、欠点が見つかったならそれを克服しないとだよね。早速修行をつけてよ」
「そのやる気は評価するが早まるな。お前は立ってるのもやっとだろう、その状態でやっても効果はない。氷莉も今の状態でスピードを鍛える特訓などやれば辺りに点々とした血が飛び散るだろう」
「うぅ…あんまり想像したくないかも」
「だから明日からだ。ひとまず姉上達の方を見に行くぞ」
「「はーい」」
そうして樒達はアウルと炎雅がいる部屋へと移動した
「入るぞ、姉上」
「もう入ってるじゃん…って、お兄ちゃん!?」
部屋へ入ると炎雅は床に仰向けになっていた
近くにはアウルが立っている
その手にはナイフが握られていた
「心配要りません、ただ疲れているだけですよ」
「それにしたって倒れてるなんて…相当なんじゃないの?」
「そのお陰で彼の戦闘能力、長所と短所は把握しました。これでどのような稽古をつければいいかも分かりましたよ」
「いっちょまえに心配なんかしてんじゃねえよ、バカ妹。んなことよりお前の方は大丈夫だったのか?」
「まったくこの兄貴は…大丈夫、樒がちゃんとやってくれたわ」
「そちらも終わったみたいですし、私達の方もこれで終わりとしましょう。後は疲れが残らないようきちんとアフターケアをしておきましょうか」
その後アウルと樒は火継達のツボを指圧することで筋肉の緊張を取ったり疲労回復に効果のある食事の用意、そしてしっかりとお風呂で身体を暖めるなどのことをした
「しっかしすげえなぁ、あれだけ疲れ切ってたのに修行する前より元気になった気がするぜ」
「ほ〜んと、なんか活力湧いて来るよね」
「それは今のところ脳の勘違いも含まれている。それを本物にするにはこの後しっかりと寝ることだ。夜更かしなぞすれば痛い目を見るぞ」
「そうなんだ〜。夜更かしはお肌にも良くないもんね、うん」
「氷莉、あんた言ってることちょっとズレてない?」
「えぇ〜、そんなことないよ火継ちゃん」
和気藹々としているようで何よりだ
さて、私も明日炎雅に課す特訓の内容を考えないと
のんびりしているように見えるが決戦の日は近い、残された時間は僅かなのだ
成果を出し、意義のあるものにしなければ
「さ、少し早いですがそろそろ寝ましょう。こういう時こそゆっくりと眠ることが大事です」
「そうだな、そうするか」
「早めに寝とかないと明日の修行で死にそうだしね」
「本当に死ぬほどやってやろうか?」
「…勘弁してください」
そうして私達はそれぞれの部屋に戻り寝ることにした
樒はこちらに部屋を持っていないので私の部屋で寝る
この決戦が終わるまではこうして同じ時間を長く過ごしていられそうだ
だが喜んでばかりもいられない、彼らにしっかりとした特訓をさせる為にも寝なければ
私は目を閉じ、意識を眠の中へと手放した