新人アークス、アウル【完結】   作:フォルカー・シュッツェン

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決戦:前編

「そもそも私はマザーを裏切ったつもりもなければアーデム卿に与したつもりもない。行き詰まった地球を導く存在を支え、新たなる世界再編(パラダイムシフト)をこの目で見届ける…私の目的はそれだけだ」

 

オフィエルがその想いを告げ始めた

なるほど…つまりは

 

「その導き手としての可能性を以前はマザーに、そして今はアーデムに感じている…ということですか」

 

「その通りだ。君達がそれ以上の可能性を見せるのならば、君達と肩を並べることもあるだろう」

 

「ふん、願い下げだな」

 

樒が吐き捨てるように言った

それを意に介した風もなくオフィエルは続ける

 

「まぁ最も、その可能性は限りなく低いとは思うが。誰もがそうだ、誰しもがそうなのだ。現状を見ず、未来を見ようとしない。今この星がどれだけ窮地に立たされているのか考えもせず、日々腐敗した権力闘争を繰り返す。それで犠牲になる者を、振り返ることなく」

 

冷静に、淡々とした口調で言っているが、その声からは溢れんばかりの絶望と怒りが滲み出ていた

 

「この手を以て、この技術を用いて人一人救おうとも、それと同等の時間で数万の命が芥と消えていく………人は同じ過ちを繰り返す。それは決して治ることの無い病巣、世界を蝕む根源の病巣だ」

 

これは…私にも責任がある

私は彼が必死に救ってきた命の少なくとも10倍、多くて100倍を超える命を奪ってきたのだ

 

「最早処置なし、手遅れだ。故にその病巣、取り除くしかあるまい」

 

腐敗した人類に絶望した彼は、この世界を善くするには更なる進化を、そしてその手段となる世界再編(パラダイムシフト)をするしかないと考えた

しかし自分には世界を作り替えるほどの力はない

そこでマザーやアーデムに協力し、その力を以て…ある意味では世界を、人類を救おうと考えたのか

オフィエルの独白が終わると少しの間を置いて炎雅が口を開いた

 

「…いい歳して自分の絶望を他人に押し付けてんじゃねえよ、おっさん」

 

「なんだと…」

 

「てめえの言い分はな、上手くいかなかったから全部なかったことにする、っていう子供の駄々となんら変わりねえんだよ」

 

そこまで言ってから銃を構える

 

「ごたくは良いからそこどけよ。俺はお前よりも子供な神様気取りをぶん殴りに行かなきゃいけねえんだよ」

 

炎雅の言っていることは間違っていない、間違ってはいないが…

 

「やれやれ…命の現場に1度だけ、それも子供の頃に立ち会っただけではやはり分からんか。アウルよ、貴殿なら私の言うことが分かるのではないか?」

 

「ええ…私は貴方の言うことには一種の正しさがあると思います」

 

「なっ!?アウル、あんた…」

 

炎雅達は驚いたようだ

 

「貴方やアーデムの目指すものの後には、平和でとても善い世界があるかもしれませんね」

 

「そうか、やはり貴殿には分かるか。ならばそんな子供とではなく私と共に来ないか?正直なところ、貴殿が味方についてくれるのであればとても心強い」

 

「お断りします」

 

「なっ、に…?」

 

今度はオフィエルが驚いた

 

「何故だ…さっきと言っていることが違うではないか!」

 

「確かに私は『貴方の言うことには一種の正しさがある』とは言いました。が、それだけです。貴方に協力するつもりはありません」

 

「…理由を聞いても?」

 

凄みのある声でオフィエルが問う

その迫力は耐性のない者が聞けば足が竦んで動けなくなるほどのものだった

しかしアウルと樒にとってはこの程度大したものではなく、火継達はここ数日間の特訓でアウル達の闘気を間近で浴びていたため耐性が出来ている

ユカミはハイキャストであるが故に恐怖を感じようともそれによって動けなくなる、なんてことにはならない

 

「単純な話です、ただ単に貴方達のやろうとしていることが気に入らない。だから止める、それだけです」

 

それに無理な進化を強いられ、存在を歪まされ、無理矢理作り替えた世界なんて…あの人は望まないだろう

そこに平和や正しさはあっても幸せがあるとは思えないからだ

だからこそ、そんな巫山戯た真似は絶対にさせない

 

「愚かな…!もういい、君に期待した私が馬鹿だったようだ」

 

オフィエルはそう言って腕を翳した

一瞬で周囲が青色の薄い膜のようなもので四角く囲まれる

一辺が約20mといったところか…そこそこの大きさの箱庭の中に捕えられてしまった

 

「領域展開……!オフィエルさんの、能力…!」

 

「その通りだ鷲宮氷莉、君は体験したことがあったな。我が領域は、我が意のままに繋がる!」

 

瞬間、氷莉の背後に中空から無数の手術用メスが現れた

それはそのまま氷莉を背後から突き刺そうと襲ってくる…が一本たりとも氷莉に刺さることはなかった

樒が両手に持った刀で全て弾いたのだ

オフィエルは一瞬悔しそうな顔を見せたがすぐに引っ込めると名乗りを上げた

 

「オフィエル=ハーバード。マザークラスタ水の使徒、そしてアースガイド北米支部長。進化の先にある未来を見るため…術式を開始する」

 

最早話をするつもりはなく、この場で私達を世界から取り除くつもりなのだろう

皆もそれが分かったのかそれぞれの武器を構えている

斯くして、オフィエルとの戦闘が始まった

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