新人アークス、アウル【完結】   作:フォルカー・シュッツェン

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最悪の決着

アーデムの放った大技により辺りが光で包まれる

何も見えない中、アウルはキャストの駆動音と何かが展開するような音を聞いた

そして光が消えた後、そこにいたのは

 

「ユカミ!」

 

「なんとか、間に合いました…」

 

アウルの前でタワーシールドを展開しているユカミがこちらを振り返らずにそう言った

今回ユカミには新たな兵装として防御用のタワーシールドを搭載させていた

敵がどんな攻撃をしてくるか分からない以上、防備を固めるのは当然のことだった

そしてそれが役に立ったようだ

だが…

 

「うっ…」

 

呻き声を上げるとユカミはその場に倒れた

いくらシールドで防いでもあの技の威力は凄まじく、ダメージを受けてしまったようだ

アウルは急いで駆け寄り、抱き上げると樒の元へ走ってユカミを託した

 

「彼女を頼む、私はアーデムを殺る」

 

「分かった、そちらは任せたぞ」

 

アーデムに向き直ったアウルは彼が肩で息をしているのを認めた

 

「まさか…あれでも貴女を倒せないとは思いませんでしたよ」

 

「彼女が護ってくれなければ危なかったかもな…さて、死ぬ覚悟は出来たか?」

 

そう言ってアウルは構える

それに対しアーデムもレイピアを構えた

 

「正直なところこれ以上はきついのですが…そうも言っていられないようですね」

 

言い終わると同時にアーデムが一気に踏み込んで連続で突きを放つ

その速さはかなりのものでとても体力の切れそうな人間の動きとは思えない

だがアウルはそれ以上の速さでその突きを捌いていく

刃の側面に手の甲を当てて手首を回すことにより少しの力で相手の攻撃を去なす

その攻防が続くと思われたが

 

「が、は…」

 

アーデムの口から血が零れた

見れば腹からも大量の血液が出ている

当然そんな傷を受けて平気なはずはなく、アーデムに一瞬の隙が出来る

その隙を見逃すアウルではない

身体を横に倒しながらアーデムの鳩尾に膝蹴りを叩き込んだ

アーデムの身体はそのまま地面に叩き付けられる

息が詰まって悲鳴も上げられないようだ

 

「いったい、なにが…っ!」

 

アーデムはそう呟いた後に何が起こったのか理解したようだ

その視線はアウルの左手に注がれている

その手には拳銃が握られていた

 

「素手だけだと思って油断したな。これで終わりだ」

 

「ふ、ふふふ…そのようですね、だがこれで良い」

 

「…なに?」

 

腹と口から血を流しながらアーデムは不敵に笑っていた

この状態で何か出来るとも思えないが…

 

「これで良いんだ…これで神降ろしは為される!」

 

「神降ろし…っ!まさか!?」

 

神を呼び出すのではなく、降臨させるとなると…この状況だと

 

「如何に具現、想像の産物とは言え神が無償で顕現する訳がない!その降臨には、それに相応しい供物が必要。神が入るための器が必要だ」

 

「くっ…させるか!」

 

アウルが器としてすら機能しないほどに潰そうと拳を打ち下ろす

だが

 

「ぐぅっ…」

 

見えない力によってアウルは弾かれ、大きく吹き飛ばされた

 

「おい、大丈夫かよアウルさん!」

 

それまではアウルの放つ余りにも凄惨な空気によって身動き出来ていなかった炎雅も、ようやく動けるようになったのかアウルに駆け寄りその身体を起こした

 

「私の事はいい、早くアーデムを殺せ!そうしなければ…」

 

「しなくちゃ、どうなるんだよ!?」

 

「破壊と創造の神が降ろされ、地球が終わる…!」

 

「なん…だと」

 

炎雅がアーデムの方を見やると、なんとか立ち上がったアーデムが儀式の最後の仕上げを行うところだった

足元の陣が輝き出す

 

「神が降りるくらいだから器にも相応のものが求められる…生半可な器では為し得ないんだ」

 

「なんだ…何を言ってやがる、アーデム!」

 

炎雅が叫ぶが、最早こちらの言葉など耳に入ってはいないようだ

 

「例えば、人の範疇を越え、神の呪いを受け…長い長い時を生きてきたものの、身体とかね!」

 

直後、地面と中空からかなり細い木が複数絡まったようなものが現れてアーデムの両手両足を拘束した

 

「ぐ、うぅ…」

 

アーデムから呻き声が溢れる

 

「…そう、それで良い。器たるべきは、この僕の身体だ。創造の神よ、我らが父よ!これは、貴方の創った器です」

 

「はあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ユカミを火継と氷莉に預けた樒と吹き飛ばされたアウルが同時にアーデムに襲いかかる、が

やはり何かに弾かれてしまい、儀式を妨害することが出来なかった

 

「降りるに厭とは、言わせませんよ?」

 

アーデムがそう言った直後

辺りが眩い光に包まれて再び何も見えなくなった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光が収まると、そこは先程までいた場所とはかなり違った場所になっていた

立っている場所は…自然なままの木で作られた平らな場所

その周りを太い木の幹が覆っている

また枝がいくつも周囲に見える

それに何よりも…

 

「…ここ、どこ?」

 

「気持ちの良い風に、心地よい光……こんな環境、現実味がない」

 

氷莉と火継がそう言って辺りを見回した

彼女達の言う通り、ここは心地良すぎて現実のものとは思えないのだ

 

『そうであろう。ここは我が庭、人の身には過ぎたる場よ』

 

どこからともなく声が聞こえた

 

「!? だ、誰っ!」

 

火継がその声に対して叫ぶ

 

『不遜な言葉だな、人の子よ。読んでおきながら、なお我を何と問うか』

 

いつの間にか中空に光の輪が現れていた

どうやら声はあそこから聞こえるらしい

 

「…まさか、てめぇが」

 

炎雅の問いかけに応えるかのように「それ」は姿を完全に現した

形は人間のそれと同じだが、明らかに人間ではない

身体が白い鎧のようなものや木やら何なのか分からない水色の物体によって構成されているのだ

 

「いかにも。我はこの星を、宇宙を創りし存在であり、この宇宙そのものである」

 

「アーデムの身体を器に神を降ろすってのはこういうことかよ……!しかし、宇宙の創造神のご登場とはいきなりぶっ飛んできやがったな」

 

『不意不足の形ではあるが、こうして形取ったのであればこの身の役目、果たさねばなるまい。この地、この星を糧としていざ新たなる宇宙の創造を行わん』

 

「星を糧にって…地球を壊す気!?」

 

『今の人類、この星この宇宙にとっては、な。だが案ずるな、生まれ変わった宇宙は新たなる人類が引き継ぐだろう。終えた世界は、糧としての価値しかなくそれを人が望むのであれば…我はそれを為すのみだ』

 

「そんなこと…させない!」

 

そう言って火継達は各々武装を構える

 

『ふむ、刃を向けるか。創造の神に』

 

奴の目が光ったかと思うと火継達の武装が解除され、服も普通の物に戻ってしまった

 

「天叢雲が…消えた…!?どうして……!」

 

『其は我が一部を用いて具現したもの。我に通じる由もなく、我の意に従い霧散する。それが道理であろう』

 

そう言った奴の手には何処から取り出したのか剣が握られていた

しかしそれも普通の剣ではなく、木を複雑に編み込んで作られたような歪な形をしていた

それを火継に向かって振り下ろそうとする

しかしそれは間に入った樒によって妨害された

奴の剣に対して樒は両手に持った刀を振り上げ、弾く

 

「樒さん!」

 

「油断をするな。武器がなくなったのなら下がっていろ」

 

「う、うん!」

 

樒の言葉に従い火継達は下がった

 

機械仕掛けの神(デウス·エクス·マキナ)…いや、エーテルによる具現ですからデウス・エスカといった所ですか」

 

アウルも前に進み出てくる

どうやら口調も普段のものに戻ったようだ

 

『…?何故、力が霧散していない?』

 

デウスはこちらを訝しむように見る

 

『…成程。貴殿等はこの宇宙の者であるが使う力は別の次元のもの、ということか。ならば我に通じるのも道理。しかしそちらの娘は別宇宙で暮らして長いようだ。最早我の宇宙の住人ではなかろう。後ろにいる機械の娘も、お帰り願おうか』

 

そう言ってデウスが手を翳すと樒とユカミの身体が光に包まれて消えた

そのまま宇宙に待機しているアークスシップの方を見ると

 

『あれも…我が世界のものにあらず。共々、お帰り願うとしよう』

 

地球に残されたアウル達には分からないが、樒とユカミはアークスシップ諸共オラクルへと転送された

座標も撹乱されており、こちらに飛び直すことが出来ないようだ

 

「…彼女達を何処へやったのです?」

 

『あるべき場所へと、オラクルへと帰って貰っただけだ』

 

「そうですか、それなら良いでしょう」

 

「おいおい、冷静にもほどがあるぞアウルさん!明らかにヤバいだろこの状況!」

 

「そ、そうよ!何か手はないの!?」

 

「先程のことを鑑みるに、フォトンは奴に通じるようです。しかしフォトンを使えるアークス達は全員オラクルへと転送されました。増援も望めないでしょう。となれば」

 

「あんたに任せるしか、ないのか…?」

 

「そうなりますね。貴方達は下がっていて下さい」

 

「ねぇ、アウルさん…落ち着きすぎじゃないですか?ほぼ詰んでるような状況なのに」

 

氷莉が聞いてくる

まぁ普通はそうだろう

こんな状況で落ち着けなどしない

だけど私は…

 

「初めてではないので」

 

「は?」

 

「こういう存在を相手に戦うのは今回が初めてではないんですよ」

 

「「「……はぁ!?」」」

 

3人が素っ頓狂な叫び声を上げた

 

『…ほう、我の他に我のようなものと相見えたと言うか。その者のことを聞いても?』

 

「…下生仏、弥勒菩薩」

 

『成程、光言宗か。得心した』

 

「さて、出来れば貴方には諦めて欲しいのですが…」

 

『戯言を』

 

「ですよね、では…」

 

アウルが構えを取る

 

「抵抗させて頂きますよ」

 




分からない人もいるかと思うので少しばかり解説を
機械仕掛けの神(デウス·エクス·マキナ)は「行き詰まった物語に神格を登場させることで前触れもなく突然解決に導いてしまう手法」のことです
PSO2のEP4に於いての行き詰まった物語は地球、神格はアーデムにより降ろされた神ですね
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