アウルはデウスエスカに対して抵抗はしてみせるものの、苦戦を強いられていた
いくらアウルが強かろうとも相手は神
存在としての次元が違うのだ
アウルが抵抗出来ているのは単にこの神がエーテルによる具現の賜物であり、本物の神ではないからである
デウスエスカの振るう剣をナイフで弾き、反撃をしようとするものの地面から茨が飛び出て来て阻害される
後ろに回避しながら銃を撃っても剣で弾かれる
肉弾戦なら通じるかもしれないが茨が地面から生えたり雷が落ちてくるせいでそもそも近寄れない
言うなれば詰みである
せめて複数人で戦えれば勝機はあるかもしれないが、アウル以外の者は戦う力を奪われてしまっているためどうすることも出来ない
『貴殿は確かに強いが、我の前では無意味だ。大人しく降伏するが良い』
「お断りですよ…ここで諦めるなんて選択肢はありませんのでね」
『ならば致し方ない、死ぬが良い』
より一層激しさを増す攻撃にアウルは防戦一方となる
火継達はそんなアウルの姿に驚きつつ何も出来ない自分が歯痒くて仕方がなかった
「あの人があんなに頑張ってるのに、苦しんでるのに…私は何も出来ないの?」
「諦めるな!アウルさんだって諦めちゃいねえんだ、俺達が諦めてどうする。何か、何かあるはずだ…このクソッタレな状況をどうにかする何かが…」
「でも…具現武装は使えないし、どうすれば…」
その時だった
突然デウスエスカの動きが止まった
身体の中心から青い光が漏れ出ている
これを好機と捉えたアウルが攻勢に転じようとするが、それは青い光から発せられる声によって阻まれた
⦅待つのだ、アウル!…聞こえているだろうか、地球の子らよ⦆
『我の中に、異物…?いつの間に』
⦅貴様の具現には私より生じたエーテルが用いられている。私は貴様だ、創造の神が自己否定は出来まい?貴様がどれほど願おうと私は消せぬよ、地球意思⦆
『砕けた星の欠片か…まぁ良い、この身体の主導権は我にある。雑音などゆくゆく取り除けば良い。まずは些事より片付ける』
⦅させんよ。私の大切な子らを傷付けることなど⦆
この声、話し方、内容は…まさか
「マザー、なの…?」
火継の問いかけに声は答える
⦅その通りだ、八坂火継。私がこやつを縛れる時間も残り少ない、説明は省くぞ⦆
マザーがそう言うと青い光が火継、氷莉、炎雅の元へと分かれて放たれた
すると次の瞬間には彼女等の手にそれぞれの具現武装が現れる
「これは、天叢雲?どうして、消されたはずなのに」
「俺の具現武装まで…どういうことだ?」
⦅エーテルは私より生じたもの、その扱いは私に一日の長があるだけのこと。それよりもだ⦆
そこで一呼吸置くとマザーはアウルに向けて話し始めた
⦅君に頼みがある…彼女等と協力して我が子らを、この星を護ってくれないだろうか⦆
「…言われるまでもありません。後は任せて、安心していきなさい」
⦅あぁ…感謝するぞ⦆
そう言い残すと青い光は消え、デウスエスカが再び動けるようになった
『想定外のことだが、まぁ良い。貴殿らを消して新たなる創造を行うことに変わりはない』
「させるかってんだよ!」
炎雅はそう言うと同時に発砲
剣で防がれるがその剣を狙って氷莉が大剣を振り下ろす
そのまま片手を塞いでいる間に火継が刀をデウスエスカの顔目がけて突き込んだ
「やあぁぁぁぁ!!」
だがこの決死の攻撃すらもデウスエスカは空いている手で刀を掴んで防いで見せた
だがまだ終わりではない
下から炎雅が無防備な腹部にフルオートで弾をばら撒く
『無駄なことを』
そう言うと抑え込んでいた氷莉ごと剣を振り回し、3人を弾き飛ばす
「きゃあっ!」
『終わりだ』
デウスエスカが剣を振り上げて斬り下ろそうとした
だが
「ぐっ…今だ!」
『…ぐっ!?』
炎雅の声に答えるようにして空から降ってきたアウルが踵落としをデウスエスカの脳天に決めた
全身のフォトンを踵に集め、当たる瞬間に大爆発を起こしたアウルの全力の蹴りだ
流石に効いたようである
先程の火継達の攻撃は陽動、本命のアウルから意識を逸らし、必殺の一撃を叩き込むのが目的であったのだ
『ぐっ、う…この程度では倒れん』
そうは言うがさっきまでより明らかに動きが鈍っている
やるなら今しかない
皆同じことを考えているのは顔を見れば分かった
まずは炎雅の射撃で視界を奪いつつ動きを牽制する
そして生まれた隙に氷莉が大剣を振るって強力な一撃を叩き込む
姿勢の崩れたデウスエスカにアウルは己の全てを振り絞って連撃を放った
飛び膝蹴りで接敵と同時に蹴り、そのまま落下を利用して右肘鉄、着地したら脚を踏ん張り左掌打、最後に右回し蹴りを放つ
両膝を付き、致命的な隙が生まれたデウスエスカにトドメを刺すべく火継が動いた
刀を大上段に構えて跳躍する
「はあぁぁぁ!!」
デウスエスカが抵抗しようとするがアウルと炎雅と氷莉に抑えつけられる
そして火継の刀がデウスエスカの脳天に当たり、そのまま下まで斬り裂いた
『ぐ、おおおおぉぉぉぉぉ!馬鹿な、創造神たる我が、人の子にぃ……!』
斬り裂かれたデウスエスカは光を放ちながら苦しみもがいている
その光は段々と大きくなり、そして辺りを包んで何も見えなくなった
光が晴れるとそこはアーデムと戦った場所だった
どうやらあの空間も具現されただけのものらしく、デウスエスカが消滅したことで同時に消えたらしい
「戻って、これた…?」
「んなことより、あいつはどうなった!それにアーデムは!?」
「え、炎雅さん、あれ!」
氷莉が指し示した先には空中にアーデムが横たわった姿勢で浮いており、ゆっくりと下降してきている
地面に降りてきたアーデムに炎雅が近寄って片膝を着きながら話しかけた
「アーデム、お前にしか見えない世界も確かにあったんだろう。だけどな…そう簡単に滅んだりしねえよ、地球は。俺達は確かに愚かかもしれねえけど、度が過ぎるとは思ってない」
一息付き、微笑みながら続きを言う
「まぁ、取り敢えず俺らに任せとけ。なんとかなるんだよ、こういうのは」
炎雅の言葉に何を思ったのか、アーデムは目を閉じ静かに口を開いた
「…僕の残したエーテルの残滓は神を型取り、迫り来るだろう。それと幾度戦うことになるか……それこそ、想像もつかない」
目を開き、炎雅の方を見て続ける
「…いや、それだけではない。僕の数万年に及ぶ絶望を受け取りより強く、より凶悪に具現するはずだ。創造よりも、破壊の意志を具現した強力で無慈悲な神の……」
アーデムの言葉を炎雅は止めるように言葉を紡いだ
「気にすんな。そのぐらい織り込み済みだ。お前を打ち破った俺らを信じろ」
その言葉にアーデムは軽く笑みを浮かべると
「そうさせてもらうよ。手間をかけるね、炎雅」
満足したようにそう言った
「全くたぜ、アーデム」
そしてアーデムはアウルを呼ぶ
「アウルさん…義務も義理もないでしょうが、一つ頼まれてはくれませんか?」
「…聞くだけ聞きましょう」
「原初のヒトである僕を倒した貴女の力を見込んで…地球の未来を、託したいのです。アースガイド筆頭として、導いて行ってはくれませんか」
「…過去の事とはいえ、アースガイドの人達を何十人と殺して来た私がトップに立つことは出来ません。それに私がすべき事は導くことではなく護ることです。この先地球に何が起ころうとも私の全力を以て護ります。それだけは約束しましょう」
「それで十分です…よろしく、頼みましたよ」
言い終えると同時にアーデムの身体が光に包まれ、消えていく
光が晴れる頃にはアーデムの姿はどこにもなかった
そのまま皆が立ち尽くした
これで全てが終わったのだ
マザーを倒し、その力を奪ったアーデムが成った神をも砕いて…これからも脅威は訪れるが、一旦はこれで終わりだ
長くて、短い戦いだった
暫くした後アウルが皆を促すように言った
「さて…帰りましょうか。流石に疲れました」
「…そうだな、そうするか」
アウル達はデウスエスカを消したことで来れるようになったアークスシップへと戻り、休息を取った
こうして地球の騒動は終わった
(残るは彼女との決戦だけですか…)