(没作品集) 異世界転生譚-1st. World Trigger   作:無狼

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ご無沙汰しております。

作者の無狼です。

多忙な業務と下準備、そして疲労などの心の疲れから、
執筆がどんどん遅れてしまい、申しわけありません。

今後も不定期な業務に追われ、執筆が遅れてしまいます。
それでも、ご愛読いただき、本当にありがとうございます。


話は変わりますが、時守 暦様の「狩りゲー世界転生論 異伝」
の第3話を描かせていただけました!
同作者の「狩りゲー世界転生論」をご観覧くださいませ!



RE第4話「仮想戦闘」

「・・・・・・。」

 

 

ここは"見慣れた"仮想訓練場。その中でも開発部の仮想室は、

最大級のデータ容量と設定範囲の自由度を誇る。

 

 

「・・・よろしく願う、寺島さん」

 

 

無骨で何も無い仮想現実内で、エンジニアチーフの声が頭に響く。

 

 

 

寺島「はーい。んじゃ、起動そこでやってみて?」

 

 

「・・・・・・」

 

 

静かに"思い起こす"。

私の黒トリガーは、「イメージ」「ビジョン」に近い。

生き物としての性質が強く、有機的な発想が必要だ。

 

 

「・・・(悠久より芽生え、生命活動を続ける者)」

「・・・(生命の連鎖に、進化と適応を続ける者)」

「・・・(やがて母なる海を泳ぎ、卵を胚の核とし)」

「・・・(地を這いずり、卵に殻を付け、肺で呼吸し)」

「・・・(光合成を行い、また芽生え、枯れては蘇り)」

「・・・(時に散り、腐敗させ、増殖しては、子実体を起こし)」

「・・・(陸を闊歩し、そして直立し、草を食み肉を食らう)」

「・・・。(やがて知恵を得るは、我ら、人の子ら)」

 

「星は巡り、海は響き、空は遠退いてゆく。」

「母なる大地に生まれ落ちし我ら、共に歩まん。」

 

 

 

寺島「うわ、なんだこれ・・・カンストぉ!?」

 

 

モニター越しでずっと見つめていた寺島が瞬きした瞬間、

目の前の男が何かつぶやくと、紅い悪魔に変化した。

左側だけ目と腰まで垂れる白の長髪で、

右側は黒の丸刈りに、黒の眼帯。

 

18世紀の貴族を彷彿とさせる白ロングブーツと、

黒のインナーと黒のネクタイ以外は・・・・・・

全て「紅系」のカラーに彩られた、格好だった。

 

どこか、強者の風格を漂わせる貴品さと、破壊的な色彩に・・・

思わず、悪魔を連想させてしまう、そんなデザインだった。

 

 

寺島「まずいまずい、オーバーヒートするって!」

 

 

だが、それ以上に寺島を驚かせたのは、「トリオンの出力数値」だ。

 

 

この男のトリオン能力を後で計測しようと考えていたが、

これは桁違いすぎる。これは、ボーダーの範疇を超えるレベルだ・・・

 

 

とっさに寺島は、「出力1/2%化」「処理能力を集中させる」

ことで、なんとかサーバーダウンを防ぐことができた。

 

 

鬼怒田「なんだ、何があった雷蔵?」

寺島 「鬼怒田開発室長、観てください、これ・・・」

鬼怒田「なんじゃ、このトリオンのバカ数値はぁ!?」

 

鬼怒田「雷蔵、このまま続けろ!人を集めてくるわい!」

寺島 「なっ、鬼怒田開発室長!ちょ、ええっ!?」

 

 

 

 

「・・・・・・。」

握る感触を確かめる。

変わらない感覚。痛覚。触覚。

光を失った右眼。全てを見渡す左目。

 

 

例え光を失おうとも、彼の障害にはならなかった。

建悟の左目には「違う世界」が、

同じく右眼には「映像情報」が見えている。

 

「千里眼」「暗視」「霊視」「過去視」「透視」「寿命視」「体感視」の7能力と、

膨大な並行世界を経た代償の「曲線時間と対になる鋭角時間への干渉能力」、

バグだらけの「ブラック・トリガー」と「壊れた記憶」。

 

この狂戦士の致命点は、邪神に魅入られた悪運と、哀れな時の悪戯だろう。

 

 

 

 

「・・・・・・Sever,Summon」

"トリオン戦闘体の『血』"を代償に、焔状の両手大剣を1本、召喚した。

仮想空間内でも、吸収していくトリオンが、

身体の中心にどんどん集まっているのがわかる。

 

手の中で集っていく熱が、力が、大剣の柄にこもっていく。

まずは力のまま、上からまっすぐと下に振るい落とす。

 

 

「・・・・・・!」

長さ3メートル、厚み1メートルになるこの両手大剣の心地も、変わらない。

振るう度に「ぶぉおん」と鈍く重い風切り音が辺りを響かせ、

振るわれた高々密度のトリオン大剣が仮想床を、幾つもヒビを穿つ。

 

 

「Summon;Unichain "Knife"」

1本の血鎖刃を、鋭角の異次元空間から、前方に向けて放つ。

適当な長さになったところで、ひっつかみ、鞭のように振るう。

 

縄よりも伝達しやすいこの鎖刃は、念じればどうやら、

血鎖を「最高硬度」の槍として扱うこともできるようだ。

試しに頭の中で【槍のイメージ】を作ると、手元から「血鑓」が作れた。

 

 

どうやら、ある一定の「単純な形状」の武器であれば作れそうだ。

「戦闘トリオン体自体、血で出来ている」ことから、形態も変えられる上、

「気化させた血霧」や「血塊の物体」も作ることができた。

これらは自身のトリオンとして吸収できることが、無意識的に分かる。

 

「・・・。はっ!」

 

 

両手大剣を床の上に刺し、血鑓を虚空に突いて払う。

これも悪くない。これを大剣に向けて投げれば、

どちらもカランと石膏が割れるような音を立てて崩れる。

どちらも硬度・威力は同じだからこそ、戦闘の選択幅がより広がりそうだ。

 

―――――

古寺 「うわ、なんなんですかこのトリオン体!?」

三輪 「見れば分かる。アレが黒トリガーだ。」

奈良坂「・・・だが、様子がおかしくないか?」

米屋 「んー、なんつーか暴力的?いかにも攻撃しますよーな。」

 

三輪 「・・・もしこいつがネイバーだったら、脅威になる。」

   「今のうちに対策を立てにいくぞ。」

米屋 「・・・お。槍か、ありゃ? お~、動きはまぁ・・・悪くねぇか。」

古寺 「またサシでなんて言わないでくださいよ?」

米屋 「わぁーってるって。」

 

奈良坂「・・・(いや、もしやこれは・・・まずいな、先手を打った方がいいか)」

―――――

 

 

「・・・・・・。」

 

 

寺島「ウォーミングアップは済んだかい?」

 

 

「あぁ、済んだ。」

 

 

寺島「おー、それはよかった。」

  「ついでにと言ったらあれだけど、試して欲しいことがあるんだ。」

  「ちょっと試してみたりしてくれる?」

 

 

「わかった。・・・。」

 

 

寺島「お、それじゃさっそく・・・」

 

 

 

 

目の前の殺風景な立体仮想空間から、なじみ深い「街」へと転換される。

 

「ここは・・・弓手町?」

 

 

寺島「お、分かる?ちょっとこの辺りは高低差が多くてね。」

寺島「そこで自由に動いてみてよ。もちろん、戦闘も用意してあるから。」

 

 

「・・・・・・。」

辺りを見渡す。

白く垂れた髪に隠れる左瞠で、「全ての遮蔽物を透かして見渡す。」

 

 

・・・さっそくバンダー、モールモッド、バムスターがいた。

黒眼帯の右眼窩に透視の映像を映し、左目は通常の光の目に戻す。

 

レッドワインのバトルドレスに身を包んだ彼の左目は充血して血涙が伝い。

からっぽの右眼窩には、黒眼帯ごしに水色の燐光が宿る。

 

 

 

 

「!」

 

高くそびえるビルにめがけて、「血刃鎖」を投げ打つ。

ピィンと張らせ、その引っ張った反動で蹴り上げ、身体を宙に浮かす。

 

鎖で移動しながら、召喚した血鑓でその3体のトリオン兵にめがけて、

天空から紅き槍を堕とす。3体ともレーダー反応する前に無力化されてしまった。

 

 

 

 

「・・・・・・。」

近くの住宅街の屋根に着地して一息つく。・・・今は何もいない。

 

 

 

 

寺島「おー、慣れてるね。」

 

「・・・それで、次は?」

 

寺島「お、んじゃ次はそうだなぁ・・・次は敵を探してみて。」

 

 

「敵?」

 

 

寺島「そそ。さっきのトリオン兵を見つけられたのなら、簡単でしょ?」

 

 

「・・・・・・(ん、見えた。)」

 

 

4人か。・・・おそらく、二人は三輪と米屋だろう。

もう二人は・・・姿を「見せなかった」のだろうが、

たぶん奈良坂と古寺だろう。4人全員がまとまって転送されたか。

 

だが、様子をみてやろう。今はどれほどの練度か。

4年ほど前の三輪と、2年ほど前の米屋の練度がいかほどか。

―――――

三輪 「作戦の通りだ。奈良坂、古寺、おまえ達は二人で行動しろ。」

 

奈良坂「了解した。」

古寺 「分かりました!」

 

二人はすぐに行動に移った。狙撃手として有利な位置にある・・・高ビルの上へ。

 

米屋 「・・・で、俺たちは古寺たちのやりやすい場所に動くってか。」

三輪 「ああ。一斉攻撃で奴を仕留めるぞ。」

 

米屋 「あいよ。・・・いつもの戦法でいくか?」

三輪 「それでいこう。」

―――――

 

 

ふむ、二人は・・・あぁ、やはり古寺と奈良坂か。

遠くを見据える目で視ている。・・・古寺はアイビスか、かなり攻めてきたな。

 

 

今の能力なら・・・鋭角時間から「遠隔攻撃」も移動も出来無くないが・・・

それではつまらない。ここから2、300mほど離れているが、縮地も野暮。

・・・よし、「歩いてやろう。」

 

 

―――――

奈良坂「こちら到着した。」

古寺 「古寺も同じくです。どうですか?」

 

トリオン体に備え付けられた標準機能等トリガーの通信に、送受信の音。

 

三輪 「分かった。そっちのポイントはどうだ?」

奈良坂「そのまま十字路の民家まで進んでください。」

古寺 「家屋を利用しながら、大通りまで誘導できるとありがたいです。」

米屋 「オッケー」

 

 

米屋 「・・・おい、アイツ、歩いてない?」

三輪 「いったい何を考えている?」

古寺 「・・・彼の眼帯ですが、わずかに光っている気がします。」

   「それに、左目から・・・血?何かいやな予感が・・・気をつけて。」

奈良坂「・・・。」

―――――

 

まぁ、迂回して迫ってきたか。位置が分かってる時点でハンデとはいえないが・・・

あえて「普通に」やるか。

 

両目のSE視覚情報とSE映像を無効化した。

 

目の前には、左目の視神経情報だけが入る。

 

 

 

米屋「よ!」

右手から不意打ちの"幻踊孤月"。もちろん、「普通なら柄を掴んで」威力を削ぐ。

・・・"知っていた通り"、穂先の刀身が「うねり、変形」する。

 

三輪「・・・!」

左手からは、三輪の拳銃。・・・「黒い光の光跡」から、レッドバレットだろう。

もちろん知っていたが、死角を狙っての攻撃だ。それも米屋が当たらない射線。

自然に行えるほど連携のとれたチームプレイに、「できる奴ならガードする。」

 

 

だが、私は敢えて受ける。・・・命中を重視してか、胴体に「鉛」が発生し、

米屋の変形槍が首を「抉る」。一発でトリオン伝達部位を仕留めた。

同じ頃、「高ビルの上から2つの斜光線」が輝いた。

一つは心臓を「貫き」、・・・遅れてもう一つは、頭を「吹き飛ばした」。

 

 

 

 

―かに思えた。目の前の男は、全くの無傷で、鉛が「体の中」に沈んでいき・・・

 

 

「・・・・・・。動きは悪くない、今の時代にしては、上々。」

 

 

三輪 「なに!?」

古寺 「えっ、アイビスが・・・利いていない!?」

奈良坂「・・・(やはりか。)」

 

米屋「うっそだろ、お前・・・」

 

 

 

「米屋はもう少し、もっと速く突けるように技を磨くことだな。」

米屋の槍柄を軽く押しのけて、鉛の生えていた腹をぽんぽんと。

首は亀裂すら生えず、胸も頭も、一切傷つかず。

 

 

米屋「へえ・・・。ますます愉しくなってきたじゃんか。」

三輪「・・・貴様、何をした?」

 

 

「何をしたって・・・あぁ、なるほど。」

「ここで気がついた事だが、他人のトリオンを吸収できるみたいでだな。」

 

 

三輪「トリオンを吸収できるだと?」

 

 

「ああ。相手が悪かっただけだな。・・・三輪は、相変わらず射撃上手いな。」

 

 

三輪「・・・。(トリオンを吸収できる・・・そんな反則があってたまるか。)」

 

 

 

 

「それじゃ、そろそろ本気でいってもいいかな?」

 

 

三輪 「ッ。」

米屋 「お?」

古寺 「本気・・・?まさか!」

奈良坂「・・・。(何をする気だ)」

 

 

共有通信で反応をそれぞれ示す4人の通信に、オペレーターの月見からの一報が。

オペレータールームのモニターに、古寺と奈良坂の居る高ビルの地点に・・・

『高高度トリオン反応』を示す警告音が現れる。

 

月見「古寺、奈良坂!気をつ―」

 

 

「相手が悪いだけじゃない。私は、何度もこの世界を繰り返している。」

 

 

 

 

古寺 「うわっ、なんだこ」

奈良坂「チッ、避けられな」

二人の通信が途切れたと同時に、ベイルアウトを告げる曲線光が立ち上る。

 

 

 

 

三輪 「古寺、奈良坂!・・・なっ!」

三輪が二人のいた場所を見ると・・・・・・「紅く細長いもの」が埋め尽くしている。

 

そのうちの一本が、彼の手元まで伸びてきた。・・・血色の鎖に、ナイフ状?

 

 

米屋「いつみても目に悪い色だな、そりゃ。」

 

 

「そうだな。だが、これが私の能力だ。後でタネを明かそう。」

高ビルまで約300mから伸びてきた血鎖刃を・・・より細く、よりしなやかに。

 

剣「ウルミ」を真似た、複数本の薄刃の血薄刃を手元で、作り替える。

 

 

三輪「!?」

米屋「はぁ!?」

形状が変わったと思った瞬間には、もう目の前に薄刃が迫っていた。

二人とも、シールドや武器でガードするも意味が無く、スライスされていく。

 

 

スライスされた二人の目には、血涙を流す赤い左目と、眼帯越しに燐光を宿す左目。

そして、彼の周囲には禍々しい・・・・・・違う、別のオーラのような何かが見えただろう。

 

 

遅れて、男はこの場を後にする。

―――――

「・・・寺島、ありがとう。」

 

寺島 「どーも。にしてもどうなってるんだ、あれ?」

   「あれも黒トリガーの性質といえばそうなんだろうけど・・・」

鬼怒田「まったく黒トリガー様々だ、おかげで忙しいわい!」

 

米屋「それそれ。あと『世界を繰り返してる』って、どういう意味だ?」

三輪「俺も気になっていた。・・・どういう意味なんだ。」

 

 

 

「あー、そのことか。」

 

 

 

 

「初めも言ったが、私は何度もこの世界を繰り返して生きてきてる。」

 

 

 

「今はあまりよく憶えていないが・・・先のことや、知ってる事があった。」

 

 

 

「ただ、それだけの話だよ。」

 

――――――――――

 

一通りの検査や「三輪隊との仮想戦闘」を終えて、種明かしも終えた。

 

寺島のおごりでカツカレーをいただいて、お昼を過ぎたころ。

戸籍も身分証も、名前すら無い彼をどうするか、上の会議が終わるまで待つ事になった。

 

今は誰も使っていない本部生活区域の個人部屋で、待たされている。

三輪隊は別件で動くことになり、別れることになった。

 

 

ベットと簡単な机椅子以外はまだ何もおかれていない、

無個性な部屋の中で、今は完全に一人だ。とりあえず、待つしかないだろう。

 

 

「・・・・・・。」

 

 

前の世界。確か、灰色の焼け野原にした記憶が、ある。

そこで自分が何をしたのか、よく憶えてはいない。

 

・・・黒トリガー。

本来であれば、「他人が遺した特別なトリガー」。

それをどういうわけか、「心臓に宿している」事が分かる。

もちろん検査してもらったところ、心臓に高濃度トリオン結晶体があることが、

判明した。トリオンが結晶化しただけのものではなく、トリオン体換装時に、

強いトリオン反応とその動きが判明したことも分かっている。

 

 

他にも、この世界で過ごした「ような」記憶も残っている。

だからか、誰かの顔を見たり名前を聞けば、ふっと記憶が甦ってくる。

 

 

 

「・・・・・・でも、誰かを忘れている気がする。」

「忘れてはいけない、大事な事を、誰かを、」

「なぜ私は同じ世界を生きる?なぜ、生きている?」

 

 

 

分からない。だから、私は生きてみようと、また動いている。

 

 

 

(こんこん)、(ちょっといいかい?)

 

 

 

ドアをノックする音だ。聞き覚えのある声、これは・・・

 

 

 

迅「やぁ。」

迅だ。未来を視る事ができるサイドエフェクトを持つ者。

過去を視る私とは対になる、希望と光の道を歩める男だ。

 

 

迅「君が例の名無しさんかな?」

 

「あぁ。名無しとは私の事だろう。」

 

迅「よろしく。俺は迅」 「悠一だろ。」

 

迅「相変わらずだね。前の記憶かな?」

 

「まぁ、そうだろうな。・・・未来を変えにきたか?」

 

 

迅「はは、そんなことまで分かっちゃうの?」

 「これは手厳しいなー。」

 

 

「固くならなくていい。・・・前の世界では世話になった。」

 

 

迅「前の世界ね・・・何があったんだい?」

 

 

「・・・・・・。」

答えられない。憶えていないのだから、語るものがない。

 

 

思い出す為の思考の海に、私はまた、内なる心の中に沈みこんだ。


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