(没作品集) 異世界転生譚-1st. World Trigger   作:無狼

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(次回、"全く別世界"に飛ばされる可能性があるとか無いとか、

作者の気まぐれにより、ここから違う脚色となっていくのかもしれません。


RE第10話「Junction」【代償】

 

朝6時。

体を起こし、借りた布団を畳む。

琥珀色のガラスボトルを肩掛けカバンの中にしまい、

「ボーダーの支給服」に着替え、荷物をまとめる。

 

 

……そして、「界境防衛機関の自身の部屋」まで、

鋭空間の異空間の門を繋げて入る。

 

部屋は前と何も変わらない状態だ。

…置いた手紙と「トリガーホルダーが無い」事を除けば。

 

 

 

「…まぁ、そうなるよな。」

「誰が来たかな…?」

 

 

【部屋の過去】を光の無い右眼に映し、

誰が手紙とトリガーホルダーを持っていったか探る。

 

 

ーーーーーーーーーー

こんこんこん、と響くノックの音。

コツコツと響く、ヒールの音。

本部長補佐の沢村だ。

 

 

やはり案の定、慌てて出ていったか。

手紙を一応読んではくれたようだし、

トリガーホルダーも持っていってくれた。

…忍田本部長の所まで持っていったか、ふむ。

 

 

どうやら、ブースで深夜までコソコソとしていた、

その事や手紙の内容から不信感を抱いていること。

危険視すべきという言葉。…"前と同じ通り"だな。

 

 

忍田本部長も考えた末に、預かっておくことと、

戻ってきた時に話を聞く事にする、と決まったか。

…これも"予定通り"、ふむ。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「…つまらないなぁ。」

素直に思った。

…自分が誰なのか、まだハッキリと思い出せないが、

"同じ展開で見飽きた"、そう思った。

何故そう思ったのかは分からないが…"知っている"。

 

深く考えるだけ無駄だろう。

何度か繰り返しているのだから、

恐らく似た展開を体験しているのだ。

 

…賭けてみるか。

 

 

「…まずは風呂に入るか。」

 

 

まずは身支度を済ませる事にした。

シャワーを浴び、服を着て、「iPhoneと免許」、

あとは「朝昼分の小銭」を持っていくことにした。

 

免許には…こう書かれている。

「権守 空 24歳 昭和64年 5月14日」

「三門市東三門 ◯丁目◯番地」

「大型 中型 普通 大自二 普自二」

ーーーーーーーーーー

 

 

ここはラウンジ。

ボーダー隊員や職員がいつも食堂を利用するブースだ。

ここで策を練るグループも多いし、級を問わず様々な人がいる。

 

何故その話かと言うと…

 

 

「おい、見ろよ。あの人…誰だ?」

「さぁ…隊員じゃないとは思うから、職員の人?」

「いや、見てみろよ。…あんな丸坊主、いたか?」

「いないだろうね…でも見かけない人だし…」

「…右目、あれ眼帯付けてるぞ。ケンカでもしたのか?」

 

C級やB級の声があちこちから聞こえてくる。

昨日は"ラッド"の掃除でお疲れだと思ったが…元気なものだ。

 

 

見覚えのあるB級やA級のメンツもいるが、

今は"面識がまだ無い"、声は掛けずに通りすぎる。

 

私は気にせず、食堂のおばさんに購入した食事券を渡しに行く。

 

 

おばさん「いらっしゃい! 新しく入ったのかい?」

空「そうなんですよ。あ、竜田揚げ定食お願いします。」

おばさん「あいよ、Aの竜田揚げいっちょ!」

 

 

厨房の奥から活気のある返事が返ってくる。

受付を兼ねている中年のおばさんも、

配膳しながらご飯を盛ってくれたり、

他客のうどんを湯切りしたりと、忙しない様子だ。

 

 

そうして待っていると、

 

「…ここにいたのか、君は。」

後ろから、馴染みのある声だ。

 

 

 

「ええ、戻りました。」

返す言葉だ。振り返らず。

 

 

「何をしていた、昨日は姿も見せず。」

横に並んで食事券をすっと出して顔を見てくる。

 

 

「ツテを辿りまして。」

…忍田本部長の顔だ、怪訝そうにこちらを見ている。

 

 

「ツテだと? あの手紙はどういう意味だ。」

本部長は疑っている。…見れば分かるほど、怪訝な顔だ。

 

 

「"知人を思い出した"んですよ。訪れてみたら、もう…」

 

 

「…そうか。」

 

 

「前の世界では、よく愚痴を言いあったんですけどね。」

「他にも、巡ってみましたが…知っていた世界と、違った。」

 

 

「…そうか。心中、お察しする。」

 

 

「…すみません。言えば引き止められると思いまして。」

 

 

「君が言ったとしても、どこかへ消えたのだろう?」

馴染みの醤油ラーメンとだし巻き玉子のトレーを、

食堂の窓口から受け取る。

 

 

「ははっ、見抜かれてましたか。」

乾いた笑いと共に、竜田揚げ定食を受け取った。

 

 

"忍田本部長がよく座る"近くの席を取り、

本部長が座ってから、自分も向かい合って座る。

…そして、無言で、"あるもの"を机の上に置かれる。

 

 

「……」

これは昨日預けたトリガーホルダーだ。

それを持ってきたという事は…

 

 

「もし、君が"何か良からぬ考え"を企てているならば。」

「…その時我々は、君を拘束する。それで良いか?」

 

 

忠告か。ああ、その前置き、忍田本部長だな…

 

 

「分かった。」

 

 

 

 

それから、たわいもない話をしつつ、

前の世界での話をしていた。

 

 

もちろん、今日の11時頃に「厄介な敵」が現れる事。

「三輪隊が動いていること」、「空閉遊真と三雲修」

「雨取千佳」の未来の話も、細かに説明していく。

 

 

「…にわかに信じがたいが、三輪隊は確かに、」

「二人を…、こほん、」

「"彼ら"の動きに探りを入れているが…」

 

 

「三輪隊は負けますよ。…迅が一枚噛んでいますので。」

 

 

「…そうか。…しかし、」

「そんな大切な事を言ってしまっていいのか?」

ふと、何かに思い至り、

忍田本部長は心配を覚えたような表情を見せる。

 

 

「…【決まった未来】からは逃れないんですよ。」

「逆に、【その通り】にすれば、絶対にできるんです。」

 

 

「…"迅が聞いたら、絶対に聞きにくる"話だな、それは。」

「どうして、絶対に出来るという確信が?」

「君は記憶を失ったのではなかったのか?」

 

 

「…少しずつですが、思い出してきているんですよ。」

「この世界は新しい。"前の世界"と違って、新しい。」

「【確信】する場面や出来事が浮かんで、仕方がない。」

 

 

「…まさか。」

「本当に、同じ世界を繰り返してきた、と?」

 

 

「そういうことです。」

「この話が通じるのが迅と忍田本部長ぐらいでしたので。」

「……最も、私は"別の世界を生き来している"のかもしれませんが。」

 

 

「…そうか。とにかく、私としては、」

「君が悪事さえ働かなければ良い。」

「この街を守るための力が手に入るなら、」

「喜んで私は君を受け入れよう。」

 

 

「…私は、そうだな。」

 

 

迷う心。どうでも良いと内心もありはするし、

一宿一飯の恩義に報いるべきだ。

「古株」としてのよしみとして、動くのも良し。

どうでもいいという気持ちはあるが、借りを返そう。

 

…今の所は、「利害関係」として動こう。

 

 

「"古参"としてこの目を貸す。」

「必要とあらば、未来に生きる子らの為に。」

 

 

 

…馴染みの竜田揚げがどこか、胃に重たく感じた。

ーーーーーーーーーー

 

 

それから、今は11時になった。

今はボーダー屋上から見下ろしているところだ。

いまのところ、鋭空間時間操作の能力暴走も無し。

 

 

…ところで、私とは誰なのだろうか。

私は一体どれだけの月日を、

歳月を、年月を、悠久を、

永遠を、記憶を無くしてまで、

一体、どう過ごしてきたのだろうか。

 

百、千、万、億、一兆年までか。

宇宙が出来た頃までか。世界とは。

今は、私が生きていた世界なのだろうか。

死した後に見ている夢幻か。夢現か。分からない。

今生きている私は、今の私なのだろうか。

 

…あぁ、かの5億年ボタンの話を思い出す。

この力を得て理解したが、時間とは、伸び縮みする。

観測者と被観測者の時間的知覚点は既に異なることから、

時間とは「個人の認識に左右される」、つまり、

 

「時間とは理でもなんでもない、ただの空間なのだ。」

 

形而上学的問題の通り、

押した者が帰ってきた者と同じ状態であるのか、

記憶が無いという事はスワンプマン、

または親殺しのパラドックスのような、

あるいはシュレイディンガーの猫のような、

計り知れない数と可能性の未来分岐が起きるのでは。

 

いずれにせよ、主観的立ち位置の観測者である私では、

答えを見つける事も定める事もできず、何も分からない。

絶対客観性の観測者が見なければ、私の答えは出ない。

これは意識した時点で、答えが無い問題が作られたのだ。

 

 

…だが、一つだけ分かっている事がある。

私は、少しずつ【前の世界】を《思い出して》いるのだ。

 

 

否、「刷り込まれている」。記憶が、食い違いつつある。

記憶の侵食が始まる、この先に起こる事が少し、

【予測】できるようになってしまった。

知らないはずなのに、【この先の事を知っている。】

 

 

 

 

今の時刻は[11:10]、

何の因果か。あと1分後に「奴ら」がやってくる。

奴らとは……アフトクラトルの「ラービット」だ。

奴らが「金の雛鳥」を見つけるのは、まだ先の未来のことで、

今はまだ千佳をターゲットにしないはずなのだが…

 

本来の時間軸ならば、確か千佳がトリオン兵に襲われる、

バンダーの捕縛を受ける前に遊真が救出する。

別の誰かが、トリオン兵と相手をしていたはずだ…

 

 

今の"私"には良く分かる。

「物語がすげ替えられている。」

「観測者の座席が変わっている故に、未来が分岐した」

 

…そう、「お決まりのパターンや展開」が、目に見える。

 

 

 

 

 

「…全く、やってられん。」

「一体、【誰が、世界改竄を行なっているんだ?】」

 

 

そう呟きながら、「メビウス」の紫煙を熾す。

燻るタバコ煙と共に、アイビスのスコープを覗く。

 

 

これからゲートから出現してくる3体のラービットを、

"たった一発で全て仕留める"ために、

鋭角なワープホールを銃口の先と、"ゲート先"に複数展開する。

 

 

 

「……3、2、1。Clear.」

 

 

ドギュォォォオオン!

 

 

 

 

3体のラービットの頭部が「現れた」と同時に、

「10枚のエスクードを穿つ対物弾【アイビス】」が、

左右、上下、前後、計6回も貫通し続けて往来する。

 

そこに残されたのは、判別不可能なただの残骸だ……。

 

 

 

「……。終わっ」

「がっ、ごバァッっ!?」

 

 

唐突な吐血。

 

トリトン体にもかかわらず、

「ノーマルトリガー」にも関わらず、

「確信する、臓器と血液の不協和音」。

 

 

駆け巡る、ガラスの流れる激痛に、思わず意識を手放した。

明滅する視界と共に、全ての筋肉が萎縮し、痛みが連鎖する。

全細胞に渡る痺れはトリオン体であるのに、

「生身の身体に直接、"ダメージを与えた。"」。

 

 

…何も分からないまま、空の意識は深層心理へと沈んでゆく。


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