『…やはり!』
ブティックに辿り着いたV3は自分や真司が入ってきた鏡を発見した。鏡の中からはロープとフックが飛び出ていた。
『結城、成功したんだな!!』
そう、今回の事件で必要になると、認識していた結城丈二はミラーワールドとの干渉が行える装置の開発に成功していた。
『これならば!』
すぐにV3は龍騎サバイブ達が居る場所へ戻る。
『城戸! 朗報だ。これで脱出できるぞ!』
『はい!』
V3と龍騎サバイブは気絶していた人々を抱え、駆け出した。
一方その頃、現実世界では結城丈二はライダーマンと変身し、ロープアームを改良した特別なカセットアームを装備していた。
『…ムッ! トアァァァッ!』
仕掛けたロープを引く感覚に気がついたライダーマンはロープアームを引っ張り上げた。すると、V3やライダーマンが見たことのない仮面ライダー、そして行方不明だった人々の救出に成功した。
『結城! やったな!』
『風見、無事だったようだな! それにアレは…』
ライダーマンは、もう一人の仮面ライダーを見つめていた。視線に気がついた龍騎サバイブは変身を解除する。
「あ、どうも。俺です! 城戸です!」
『結城! 話はこの後だ、まずは助け出した人々を病院へ!』
『あぁ、わかった!!』
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事件解決から数日が経過し、病院に運び込まれた人々はミラーモンスターやアマダムに襲われた事を忘れており、それぞれ回復に向かっている。
真司が一番心配していた女子高生の子も無事だった。腕にギプスを巻いた真司は、風見と結城の見送りに高知龍馬空港へ来ていた。
「ようやく退院許可がおりました。やっぱ外の空気はうまいですね!」
「あぁ、キミの回復も早くて安心したよ」
「それにしても、結城さん、OREジャーナルの読者だったとはビックリです!」
「あぁ、内容が面白くてね、熱い記事やオカルトめいた記事に最近はまっていてそれでね。今は、スマホのアプリでも、見られるのが重宝していたんだ」
「そうだったんですね。あ、ちなみにオカルトめいた、って誰の記事ですか?」
「そうだねぇ、大抵の場合はキミのだったよ」
「えぇっ、俺の記事っすか…」
ガックリとしながらも、読者を目の前にする事などあまりない真司は内心嬉しかった。
「そうだ、ミラーワールドの事まで知っているなんて、俺の記事を読んでいてくれたことよりビックリしましたよ」
「城戸、それなんだが、俺達も半信半疑だった。【風来坊のとあるヤツ】がその事を教えてくれる機会があってな。そこで知ったんだよ」
「今回、彼からの情報提供がなければ、おそらく全滅という事もありえたんだな。風見、アイツは今頃、どうしているのかな?」
風見も結城もしみじみとしている。
「さぁな、あの生意気なヤツなら元気やっていると思うぞ? またひょっこりと現れるさ」
結城もミラーワールドへ向かう方法を、その風来坊から教わったという。
一体、風来坊のとあるヤツとは誰なのか。
わからぬままだが、悪いヤツじゃないことは確かだった。
しかし、ミラーワールド自体、どうやって知りえたのだろう?
この世界では一度リセットされた事実を知っていないとわからないハズだ…。
リセットされる世界の前で自分が体験したことは、入院している間に風見達には聞いてもらっていたとはいえ、それが真司は疑問に思っていた。
「そう考え込むな。オレ達自身驚いている事があるんだから、たとえばおまえが仮面ライダーになった事とかな」
「そうですね…」
風見や結城いわく、今回の事件は、財団Xなる秘密組織が企てた実験で、擬似的なミラーワールドを発生させ、そこを継続する為に人々の命を集めていたという。
その事件を阻止すべく、風見と結城が二人でやってきた。そこに居合わせたのが自分という状況だった。
「それじゃあ、そろそろ僕達は行くよ」
「城戸、おまえ無鉄砲なところがあるから、くれぐれも気をつけろよ?」
「はい! 風見さんに言われなくてもわかってますって!」
苦笑いをしながら、真司は答える。
「それじゃあ、また! あ! 結城さん! また俺の記事見て下さいね!!」
「あぁ、楽しみにしてるよ!」
二人が見えなくなるまで、真司は手を振っていた。
飛行機の機内でまた、真司は夢を見ていた。真司は目の前に現れた鏡を見つめた。鏡の中には、夢の中で出てきた赤龍がいた。
「なんだかんだで、再会しちまったな俺達。でも、後悔はしてないんだ。この力を有効に使えるなら、それで救える命があるのなら、俺はそれで構わない。未来なんてさ、いくらでも無限に変えられるって、そう信じてる!」
その長い独白は、自分に言い聞かせるつもりでいったのか、はたまたドラグレッダーに対して言ったのかわからない。でも、それはれっきとした彼なりの決意表明だった。
「さぁ、この夢を見たって事は明日も人助けすんのかな…、ウッシャッ! 望むところだ!!」
了