一人の老人と青年が空港に降り立った。空港の周囲は何もない荒野だった。
老人の手には見るからに頑丈なジュラルミンケースが携えられていた。
「本郷先輩達からの情報では、この国で以前、私と風見が遭遇した【石】の精製がされているという話だったが…」
青年は一人でブツブツと自問自答しながら、考え事をしているように見えた。
先に歩いていってしまい、老人は急いで後を追いかける。
「ゆ、結城君、待ってくれ。如何せん、私も歳なのだ。もう少しだけ、ゆっくり行かないか?」
老人から声をかけられ、青年は立ち止まった。
「あぁ、申し訳ありません、烏丸所長。こんな場所までご足労頂いているのに…」
「いいんだ。それに、今の私は所長ではないのさ。BOARDでの所長職は橘君に譲ったからね」
老人の名は烏丸啓。対アンデッド用にライダーシステムを開発し、剣崎達に協力してきた人物だ。話しかけている相手は結城丈二。彼は日本の四国で発生した事件で遭遇した【石】を調査するために同行していた。
「しかし、君の言いつけ通りコレを持ってきたはいいが、本当に彼はいるのかね?」
烏丸はジュラルミンケースを指さし、そう言った。
「えぇ。【風来坊】の話では剣崎一真はこの近くにある難民キャンプで発生した事件で財団Xによって捕まっているという話でした。おそらく彼と再会した後には、ソレが絶対に必要になると思いますので…。
「そうか…。そういえば、君と一緒に日本で研究していたあのアタッチメントは、なんだったかな、アンデットの力を一時的に封じるよう調整したはずだったが…」
「あぁ、先日調整をお願いしたアタッチメントですね。きっとアレも役に立つと思いますよ。あまりそういう事態にはなって欲しくは無いのですがね…」
結城は最悪の状況を想定し、普段のアタッチメント以外にもいくつか種類を多めに持ってきていた。
「しかし、よかったのですか? もしかすると、戦闘地域の真っ只中に行くことになりますが…」
「なぁに構わないさ。これぐらい剣崎達と過ごした過去の戦いに比べたらね。あの頃は死と隣り合わせではあったが、それはそれで充実した日々を過ごしていたと思うよ。剣崎も元気だといいんだが…」
烏丸はそう言いながら、曇り空を見上げ、今にも泣きそうな顔をしていた。その様子を見て、結城は告げる。
「彼の身体が不死身とはいえ、苦痛は消えないでしょうね。だから、今は一刻も早く…」
「あぁ、行こう。剣崎がいる場所へ」