深海ノ姫
「……ココハ…」
(オカシイナ…私ハ……アレ……声ガ…)
目を開けると、私は暗く狭い場所に横たわっていた。
…頭が痛い…酷く酔い潰れたようだった…
しかし体調はすこぶる良かった。別に記憶がいくつか欠けてる訳でも無さそうだ…
…どうしてこんな所にいるのかだけは分からないが…
私の名前は海野 姫鬼(うみの ひめき)
OLで1人狭いマンションに細々と暮らしていたはずだったのに…
…しかしどうしてこんな……
…だめだ…本当に思い出せない……まぁ…仕方ない、いずれ思い出すだろう。
そう思いながらふと周りを見渡すと、辺りは見えないが何かの中に乗っているようだった。
ゆらゆらと揺れており、まるで水の中に居るようだった。
そして見えないながらも、自分の体を確かめる。
……胸が大きい…今まで小さかった胸がかなり大きくなっている。
髪は長く、腰までありそう…
足は長く、かなりスレンダーだ…
そして、あまりにも自分の声とはかけ離れた声に変わっていた事に驚く。
しかし何故か聞いた事のある声だった。
ザバンッ!!
すると、辺りから波のような音がする。そしてゆらゆらと海の上を浮き輪で浮いているような感じがした。
横になっていた空間に隙間ができたと思うと、隙間から光が差し込んでくる。
まるで二枚貝が口を開くようにゆっくりと天井が開いていき、光に照らされながら目を開くとそこは……
一面海が広がっていた
そして、ハッとしたように自分の姿を確認する。
「………フフ…」
私は不思議と微笑み、小さく声を出した…
……そうだ…この声は…この体は…
そして一言呟いた。
「フフ……キタンダァ……ヘーエ……キタンダァ……」
間違いない…正真正銘、本当に防空棲姫だ。
そしてこの海は…いやこの世界は…艦隊これくしょん…艦これの世界だ。
私があの防空棲姫になっている……信じられない…まるで夢のようだ。
私は念の為に頬に引っ張った。
…痛い……凄い痛い……
どうやら夢ではないようだ。
私が初めて防空棲姫に出会ったのは、2015年の夏イベントの時だった。
美しい白銀の髪、暗く深い赤目、憧れるようなスタイル、圧倒的な強さ…
そんな魅力に溢れた彼女に…生まれ変わっていた…
さて…そろそろこの貝から降りよう……
ゆっくりと貝から顔を出し海面を見ると、揺らめく海面に防空棲姫の顔が…私の顔が…映っていた。
そして私は恐る恐る海面に足を近づける…
…立てた…海に足が沈むことなく海面に立っていた…
歩いてみても沈まない…どうやら大丈夫みたいだ。
……防空棲姫になったけど…私はこれからどうすればいいんだろうか…
そして私は目的も無く、艤装のタービンを回しながら海を駆けていった……