三日目の朝5時、疲労で倒れた際に10時間近く寝ていたからか、いつもよりも体がすっきりした感じがする。
人間だった頃は会社に向かう為に朝風呂に入り、着替えをし、朝食を摂り、出勤していた。
そんな体内時計は深海棲艦になっても狂うことなく、時を刻んでいた。
部屋を出ると、まだ朝早いからか廊下には誰も居なかった。
誰か起きていないかと歩くと、タ級が艤装を背負って玄関ロビーを歩いていた。
「タ級、ドコカ出掛ケルノカシラ?」
「アッ防空棲姫様、オハヨウゴザイマス。コレカラ近クノ海域ノパトロールヲシニ行ク所デス」
この基地では決まった艦が交代制で周辺海域をパトロールする制度があり、朝早くからやる必要がある為、あまり進んでやる艦は居ないらしい。
「ヨカッタラ着イテイッテモイイカシラ?」
「問題ナイデスヨ、ムシロ大歓迎デス」
艤装を展開し海上に出ると、タ級はゆっくりとタービンの回転数を上げ、前進し始めた。
「フゥ…ソロソロ帰投シマスカ」
タ級の頭にはパトロールをするルートが刻まれているのか、地図を確認する事なく進み続けた。
二時間近くパトロールした所、特に目立った問題はなく、基地に帰投しようした。
その時だった。
…ガッ…敵偵察部隊ラシキ艦隊ヲ発見…増援…求ム…
タ級の持つ受信機がどこからか発せられた連絡をキャッチし、反応した。
「コノ周波数…南方棲戦鬼様ガ担当シテイル海域ノ周波数デスネ、一体何ガ…」
無線内容とタ級の話を聞くと、何やら嫌な予感がしてきた。
「…タ級、今日ハ南方棲戦鬼ガ近クノ海域デ停泊シテイルカシラ?」
「ハイ、ココ最近南方棲戦鬼様ガ南方海域ヲ奪還シタノデ、シバラクノ間滞在シテイルラシイデス」
南方棲戦鬼は泊地の基地とは違う基地に所属しており、隣同士なので情報を共有しあっている事があるそうだ。
「…タ級、全速力デ南方ガ居ル海域ニ案内シテ。最悪ノ場合、南方棲戦鬼ガ撃沈サレル可能性ガアルワ」
「ワッ…分カリマシタ!」
いったいどうしたのかと慌てながらも、速度を最大まで上げ、南に進んで行った。
「防空棲姫様、ドウシテソンナ急イデイルンデスカ!?偵察部隊グライナラソコマデ問題ナイハズデスヨ!?」
「…モシ相手ガ強力ナ兵器ヲ持ッテイルトシテ、ソノ情報ヲタ級達ガ知ッタラ、アナタハドンナ対策ヲトルカシラ?」
「ソウデスネ…ソレヨリモ強力ナ兵器ヲ用意スルカ、大量ノ戦力ヲ使ッテ相手ノ兵器ヲ破壊シマスネ」
「ソウ、ソレジャア強力ナ兵器ヲ南方棲戦鬼ダトスルワ…ソノ情報ヲ艦娘達ニ知ラレタラドウナル?」
「…強力ナ艦娘ガ大量ニ攻メテクル…!?」
「ソノ通リ、ダカラ相手ニ南方棲戦鬼ノ存在ヲ知ラレナイ為ニ逃ガス訳ニハイカナイノヨ」
そして進むこと10分、南方が停泊している海域に到着する。
辺りにはイ級eliteやト級が配備されているが、今の所はまだ艦娘には南方棲戦鬼の存在を知られていないらしい。
聞くと南方は、私の後ろ方向にある船の残骸が浮かんでいる場所にいるそうだ。
出来れば偵察機を一機でも飛ばしたい所だが、タ級は主砲を二つ、副砲と電探一つを装備している為、偵察機が無い。
ト級には偵察機が装備されているが、一機も残ってないらしい。
すると、対空電探に二つの点が現れた。味方の艦載機や偵察機は青で表示されるが、二つの点は赤で表示されていた。
「タ級、私ガアノ偵察機ヲ撃墜スル。ソノ後スグニ偵察機ガ飛ンデ来タ方向ニ威嚇デイイカラ砲撃シテ」
「分カリマシタ、イツデモイイデスヨ」
そして電探に現れた偵察機が上空に出現した。南方棲戦鬼よりも恐ろしい怪物が狙いを定めているとも知らずに。