時は防空棲姫がカレーを食べていた頃に遡る。
横須賀鎮守府では、深海棲艦に奪われた南方海域を取り戻すべく、偵察部隊を編成していた。
「…んで、どうしてこんなに知らない奴がいるのだ?」
摩耶がそう呟くと、隣にいる吹雪が答えた。
「どうやら海軍本部の偉い人が各地の鎮守府から一部隊をここに集めるように昨日命令したそうですよ」
「どうしてそんな事知ってるんだ?」
「陽炎さんが青葉さんをわらび餅で買収した時に聞いたのをうわさで聞いたからです」
「なるほどな...後で陽炎と青葉に拳骨一発入れとくか…」
そう話している内に作戦内容を説明された。
偵察部隊はいくつか南方海域に出撃し、敵の主力部隊を偵察する。その際遭遇した敵艦隊は可能なら撃破すること。
そして今回各地から集まった部隊を引き連れ敵主力部隊を撃破するのが今回の作戦だ。
偵察部隊の編成は那智、古鷹、川内、若葉、漣、そして旗艦に摩耶の編成になった。
若葉以外は摩耶と同じ横須賀組だ。
「明日は朝早いので早く寝た方がいいですよ?」
「ああ、今日はもう寝させてもらうぜ」
そして布団の中に入ると、摩耶はすぐに眠りについた。
「…もう4時かよ」
セットした目覚まし時計を止めると着替えを持ち、ドックに向かった。
朝のドックはいつも混んでいるのだが、この時間帯だと夜戦好きや遠征帰りの艦娘、酒好きの艦娘ぐらいしか居ない。
中に入ると、今日は遠征帰りの艦娘は居なく、居るのは偵察部隊に選ばれた那智と川内しかいなかった。
「むっ、摩耶か。お前も朝風呂か?」
「ああ、髪を直すついでに温まりたいからな」
シャワーで髪を洗い、体を洗い終わると、湯船に浸かっている那智の隣に座った。
「所で…何で川内がぐったりした感じになってんだ?」
「寝不足らしい。どうやら2日連続で寝ないで夜戦訓練をしていたらしいからな。」
「いくら夜戦好きだからってやり過ぎだろ…」
「お蔭様でドックで寝始めたぞ。」
「( ˘ω˘ ) スヤァ…」
「本当に寝てやがる…」
すると、少し眠そうに目を擦りながら古鷹がドックに入ってきた。
「あっ、皆さんも朝風呂ですか?」
「おう、私は少し前に入ったばかりだがな」
「所で加古は起こさなかったのか?」
「はい、今日は1日寝ているって言ってたので」
「そんなのでいいのか?重巡洋艦の良い所を見せられてないような」
「たっ…確かに!!」
慌てている古鷹を見て笑っていると、漣もドックに入ってきた。
「おっ、漣も朝風呂か」
「はいっ…って川内さん大丈夫なんですか!?」
「仮眠中らしいですよ」
「M J K(マジか)」
「しかし、そろそろ起こした方がいいんじゃないか?」
「それもそうだな。古鷹、川内を起こしてくれ」
「ええ!?私がですか!?」
「古鷹さんっていつも加古さんを起こしているくらいだから起きると思いますよ?」
「わっ、分かりました」
「それじゃあ、あたしは一足先に上がらせてもらうぜ」
「ああ、ちゃんと体拭けよ。でないと出撃した時に腹を下すからな」
「分かってるって、心配ありがとな〜」
ドックを出て着替えると、支給された朝食のおにぎりを持って外に出て、摩耶のお気に入りの場所であるバルコニーでおにぎりを頬張り始めた。
すると、隣から何か臭ってきた。
「…っ!?なんだ!?ゲホッゲホッ!!」
煙草臭だ。隣を向くと、そこには煙草を吸っている若葉の姿があった。
「おい!!何吸ってんだよ!!」
「…シンセイだが?」
「銘柄を聞いてるんじゃねぇよ!!どうして煙草を吸ってるんだ!?」
「吸いたいからだ」
「…っ!!」
どこかイラッとした返事をされたが、なんとか耐えた。
すると、若葉から摩耶に話し掛ける。
「確かあんたは私の偵察部隊の旗艦だったな…」
手持ちの煙草入れとは違う箱から煙草を一本取ると、摩耶のポケットの中に入れた。
「…ふぅ……宜しく頼むぞ。旗艦、頼りにしてるぞ」
「!?」
そういうと、若葉は煙草の火を消し、鎮守府に入っていった。
(…いけねぇ…少しかっけぇと思っちまった……)
少し恥ずかしながらも摩耶は残っているおにぎりを食べ終わると、鎮守府に戻り、出撃準備を進めた。