「おう、行くぜ!抜錨だ!」
摩耶を旗艦にした偵察部隊は、南方海域にいる深海棲艦の主力部隊を偵察するのが目的だ。
横須賀鎮守府から南方海域までそう遠くはない為、南方海域を野放しにしておくと、鎮守府に攻めてくる可能性が大きくなる。
海軍司令部は最悪の事態になる前に潰そうと考えたのだ。
午前7時40分、出撃してから40分が経過した。
道中深海棲艦に遭遇するが、駆逐艦や軽巡ばかりだったので、2、3部隊を撃破した。損傷はかすり傷程度で済んでいた。
しかし、目標地点の南方向に進むにつれ、霧が出てくる。
「那智、電探に反応はあるか?」
「今の所は無い。霧が出ているが、そろそろ偵察機を出した方がいいのではないか?」
「そうだな。川内、大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫…ふあ~……こっちは飛ばせるよ」
大きなあくびをすると、小さな零式水上偵察機を2機取り出し、カタパルトから発艦した。
戦闘前に敵艦隊を発見することで、比較的戦闘がしやすくなる。
「行ってらっしゃーい」
偵察機を見送ると、川内は耳に着けてある通信機で報告を聞き逃さないように耳を澄ます。
「…………っ!?」
先程までの眠そうだった川内の目がぱっちりと見開いた。
「どうした川内?」
摩耶が川内に近づいた。その時、近くから大きな水柱が立った。
「なっ…!!」
「ちぃっ…!!那智!電探に反応は!!」
「…まずいな…イ級eliteにト級、それにタ級のflagshipだ…!」
艦娘達にとって厄介な存在は、火力が高く、命中率が高いflagship級の戦艦や空母だ。
「川内!偵察機は!?」
「2機とも撃墜された!けど四隻いるらしい!」
「四隻?タ級と他二隻以外に何かいるのか?」
若葉が煙草を咥えながら川内に質問すると、川内は脂汗を垂らしながら答えた。
「そう、タ級よりも大きいらしい!」
「くっそぉ…!!」
若葉がタ級に近づき砲撃するが、あまり効いていない。
するとタ級は近づいた若葉に右足を上げ、若葉の体を蹴り飛ばした。
「若葉っ!!マジ大丈夫!?」
漣が若葉をキャッチする。
「くっ…痛いぞ!…だが、悪くない」
「何でこんな時に変な性癖を出してんの!?」
「漣、若葉、下がってろ!!」
漣の前に那智と摩耶が出ると、タ級に向けて砲撃する。
「喰らいやがれ!!」
するとタ級は後ろに仰け反り、中破になった。いくら戦艦とはいえ、重巡洋艦二隻からの砲撃を喰られば、ダメージを受ける。
タ級は被弾すると、後退し、霧の中に隠れる。
「クッ…!!」
顔を腕で守ったお蔭か、被害は中破で済んだ。
「タ級、大丈夫カシラ?」
「ハイ、事前ニ構エタノデ中破程度デ済みマシタ」
「一旦下ガリナサイ、私ガ相手ヲスルワ」
「分カリマシタ、後方支援ニ撤シマス。」
タ級が後方に下がると、タ級の前に出る。
那智はタ級を撃沈したか確認しようと電探を確認する。
「なっ…なんだこの反応…!?」
那智は仰天した。タ級が撃沈されていなかったのだ。しかし那智が仰天したのはタ級が撃沈されていなかった事ではない。
「何だこの大きな反応は…タ級よりも遥かに大きいぞ…川内の偵察機が報告していた大型艦か…!」
戦艦や空母などの大型艦は大きな点で表示されていたが、タ級よりも大きく点が一つ表示されていたのだ。
「もしかして、ラスボスって奴!?」
「漣、若葉、気を抜かないようにね!!」
川内は今までに味わったことのない緊張感を持ちながらも、砲を構える。
那智と摩耶も戦艦以上の戦力にプレッシャーを感じ、身構える。
そして、霧の中から一つの大きな影が、ゆっくりと近づいて来た。