新タナ私ハ防空棲姫   作:深海提督

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南方棲戦鬼

南方棲戦鬼に会う為に南に進むこと20分、何やら大きな影が見えてきた。

 

近づいて行くと、大きな影の正体が明らかになってきた。

 

影の正体は巨大な残骸だった。どうやら輸送船などの残骸らしい。

 

すると今度は、バリッ…バリッ…と金属を引きちぎるような音が聞こえてきた。

 

まるで食事をしている時に出る、食べ物を噛みちぎるような音のようだった。

 

前進すればするほど音は大きくなり、残骸には何かが噛みついたような跡が付いている物が多くなってきた。

 

南方がいるであろうポイントに着くと、巨大な残骸の側に一つの人影があった。

 

先ほどから聞こえる音はあの人影の仕業だと分かった。

 

バリッ……バリッ……バリッ………

 

謎の金属音が止むと、残骸の側に居た人影がこちらに向かってきた。

 

そしてお互いの姿が見える位置まで移動すると、南方棲戦鬼の姿が露わになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「初メマシテ、私ハ南方棲戦鬼…コノ南方海域ヲ支配スルモノヨ」

 

「私ハ防空棲姫、今ハ泊地棲鬼ノ基地ニ滞在サセテモラッテルワ」

 

南方棲戦鬼、ツインテールになっている白髪に赤い瞳、黒いジャケットの中に水着を着ていた。

 

艤装の一部と思われるユニットの中に足を入れており、腕には鉤爪に砲が付いたアームを装備している。

 

艤装にはいくつも砲が付けられており、タ級とは比べ物にならないほどの大きさだった。

 

「ト級達カラ聞イタワ、敵偵察部隊を撃退シテクレタソウネ、感謝スルワ」

 

南方棲戦鬼が握手を求めようと手を差し出し、それに応じようと手を差し出す。

 

ズシンッ……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬何が起こったのか分からなかった。

 

南方棲戦鬼の差し出した手は、爪を突き出し、私の腹に重い一撃を入れてきた。

 

「ッ!!」

 

重い一撃によって吹き飛ばされた私は、海面に叩きつけられながらも体勢を持ち直した。

運が良かったのか、それとも装甲の高いお陰か、傷付くことはなかった。

 

「ヘェ…私ノ一撃ヲマトモニ喰ラッテモ沈マナイナンテネ…」

 

「アナタ…ナンノツモリ……私ヲ沈メルツモリカシラ……」

 

「イイエ?今カラアナタノ戦力ヲ知ル為ニ、チョットシタ運動相手ニナッテモラオウッテネ…」

 

いくつもの砲をこちらに向け、嘲笑うかのように微笑む。

 

「私ガアナタヲ追イ詰メタラ…私ノ部下ニナッテモラオウカシラネ…」

 

鋭い鉤爪でこちらを煽るかのように人差し指を動かす。

 

「ドウヤラ完全ニナメラレテルミタイネ……後悔サセテアゲルワ…」

 

私は顔を上げ、南方棲戦鬼の顔を見ると、人間だった頃に5-2を攻略中に正規空母を謎のどや顔で狙い撃ちし、毎回ドックを詰まらせていたのを思い出した。

 

その時はまだ五航戦が着任しておらず、一航戦と二航戦をローテーションで運用していたので、ボーキサイトの消費も激しかった。

 

あの時の事を思い出すと、無性に腹が立った。

 

「ワタシノホウゲキハ……ホンモノヨ……」

 

過去の思い出に浸っていると、南方棲戦鬼は16inch三連装砲をこちらに向け、何発も砲撃してきた。

 

今まで戦ってきた艦娘の砲撃と比べると、砲撃音が圧倒的に大きく、特撮作品にある爆発シーンを彷彿とさせる大きさだった。

 

砲弾は私が通るであろう位置を予測し、砲撃していく。

 

一つ、また一つと水柱を上げると、南方棲戦鬼は手の平から深海棲艦爆Mark.IIをこちらに飛ばして来た。

 

「オチナサイ!」

 

艦爆は私の姿を捉えると、機体を傾け、急降下する。

 

「アマイッ…!!」

 

4inch連装両用砲から放たれた砲弾は艦爆に命中し、砲弾の破片が別の艦爆に突き刺さり、撃墜していく。

 

「今度ハ私ノ番ヨ…」

 

私は4inch連装両用砲を南方棲戦鬼に向けて照準を合わせ、砲撃する。

 

すると初弾が艤装に、二発目は南方に命中する。

 

「ッ!!初発カラ命中サセルナンテ…ヤルジャナイ…」

 

通常、初弾は試射を兼ねていて、初弾の命中率は約10%だと言われている。初弾の位置と敵の位置を見て距離を測るので、初弾から当てるのは至難の技だ。

 

「チッ…オロカナ…」

 

防空棲姫の火力の高さもあるが、南方棲戦鬼が柔らかいせいか、既に中破状態になっていた。

 

「私ヲ甘ク見ルナッ…!!」

 

私に砲を向けると、何やら海中から何かが南方棲戦鬼に迫ってくる姿が微かに見えた。

 

いくつもの戦場を乗り越えてきた南方には、一瞬で何なのか悟った。

 

「シマ……ッ!!」

 

すると、南方の艤装から炎が上がった。

 

近づくと、南方はユニットにぐったりしており、大破状態になっていた。

 

すると、悔しげに私に問いかけてきた。

 

「…イツ…魚雷ヲ放ッタ……」

 

南方棲戦鬼が大破したのは、私が放った魚雷が命中したからだった。

 

「アナタニ二発砲撃シテカラスグヨ」 

 

私は砲撃した直後に南方棲戦鬼に向けて魚雷を放った。

 

砲撃した直後は砲弾に注意が逸れるので、魚雷が命中する確率が少しは上がる。

 

正直、砲撃が二発命中するとは思わなかったが、結果オーライだった。

 

初弾が命中し、驚いた事によって、ギリギリまで注意を逸らすことができた。

 

「…ドウシタノ…私ノ事ヲ沈メナイノ……?」

 

「沈メルワケナイデショ…アナタガ沈ンダラ、誰ガコノ海域ヲ担当スルノヨ」

 

「ソレハソウダケド…アナタニイキナリ不意打チヲ食ラワセタ挙ゲ句、沈メヨウトシタノ?」

 

「正直…驚イタケドアマリ痛クナカッタカラネ…」

 

 

「ナッ……アナタ、ヤッパリ強イノネ…」

 

 

「早ク修復シテナサイ…艦娘ガ来テモシラナイワヨ」

 

「ワ…分カッタワ…心配シテクレテルナンテネ…」

 

南方は船の残骸に近づくと、艤装に付いている口が開き、残骸を食い漁っていく。

 

すると大破していた南方棲戦鬼の傷が、少しずつ修復されていく。

 

「…南方、船ノ残骸を食ベルノハ深海棲艦デハ当タリ前ナノカシラ……?」

 

 

「エエ…戦場デ入渠ナンカデキナイケド、コレナラ少シズツダケド治セルカラネ」

 

「ナルホドネ…私ハソロソロ泊地ノ基地ニ帰投スルワネ……」

 

「分カッタワ…イツカ許シテモラッタ恩ハ、必ズ返シスルワネ……」

 

その後、私はタ級と無事合流し、南方海域を後にした。

 

 

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