明石が工廠を離れ、誰も居ない事を確認すると、開いていた高所窓から中に侵入した。
そして牢屋に近づくと、港湾棲姫と離島棲鬼の姿を確認する。
二人とも服と身体がボロボロになっているが微かに呼吸はしていた。
2人の傷を癒やす為に高速修復材(バケツ)を取り出すと、テーブルにある鍵を手に取り牢屋の扉を開ける。
(酷イ傷…)
特に酷かったのは離島棲鬼の方だった。服も穴だらけになっていて、港湾棲姫以上に傷を負っていた。
(マズハ離島棲鬼カラ治サナイト…)
バケツを持ち離島棲鬼に近づくと、
「離島ニ…近ヅクナ…!」
巨大な鉤爪が空気を切り裂くように顔の横を通る。
鉤爪の正体は、離島棲鬼の反対側にいた港湾棲姫だった。
港湾棲姫も全身傷だらけになっており、立っているのもやっとで足がふらついていた。
「……安心シナサイ…アナタ達ヲ助ケニ来タノヨ…」
「何…?」
「トリアエズ……今ハアナタ達ノ傷ヲ治スノガ先ヨ…」
2人の身体に高速修復材をかけていくと、徐々に傷や痣が綺麗に消えていく。
すると、今まで微かにしかしていなかった呼吸が普通の状態に戻っていった。
「ソレハ……」
「高速修復材…艦娘達ハコレヲ使ッテ傷ヲ早ク治シテイタノヨ。」
「ナルホド…ソレデ異常ナマデノ速度デ傷ヲ治シ、コチラガ息付ク間モナク進撃シテキタノネ……艦娘…改メテ恐ロシイ敵…」
「ソレデ…助ケニ来タワケダケト、1ツチョットシタ大規模ナ作戦ヲ考エテイルノ…」
「大規模ナ作戦…?」
すると、持ってきていた通信機を出すと、泊地棲鬼に繋いだ。
「防空カ、2人ハ見ツカッタカ?」
「エエ、傷ハ酷カッタケド命ニ別状ハナイワ。後ハ2人ヲ鎮守府カラ脱出サセルダケダケド…チョットシタ作戦ヲ一ツ思イ付イテネ…」
「作戦…?」
「分カッタ、ソノ作戦デイコウ。早速準備スル。」
通信を切ると、港湾に問い掛ける。
「トイウ事デ…港湾…デキルカシラ…?」
「エエ…ソノ為ニモ…拷問ニ耐エテミセルワ…」
「ソレジャア…私ハ戻ルワネ…」
再び高所窓を通り、屋根に登ると、私は鎮守府に戻っていった。
「……ねえ……つき姉…秋月姉…起きて…朝だよ!」
「んっ……照月…」
目を覚ますと、起床時間になっていた。
「ほら!初月も起きて!」
「うぅ…照月姉さん…後5分だけ…」
「いいから早く起きて!今日はテストなんだから!」
目を擦りながら制服を用意すると、寝癖や身体を洗う為に3人揃ってドックに向かった。
「秋月姉、良かったら髪の毛洗ってくれない?」
「あら、そんなにして欲しいの?」
「昨日してもらおうと思ってたけど…忘れちゃった!」
「仕方ないわね…やってあげる♪」
「やったぁ♪」
嬉しそうにその場で跳ねると、私の前に座って来た。
「ふふ……元気ね……♪」
「…秋月姉さん…良かったら…僕も…」
「あらあら…いいわよ、やってあげる♪」
「本当…!?」
すると、普段鉢巻きを付けている部分から出ている髪がぴょこぴょこ動く。
どうやら嬉しくなると、何故か動いてしまうらしい。
(凄い分かりやすい…)
そして二人の髪を洗うと、急いで自分の髪も洗っていった。