会議室の中で1人、敵である艦娘に囲まれている中で冷や汗をかきながらも壁を乗り越えたと安心していると…
「失礼するぞ!」
「利根姉さん、もう少し礼儀正しく入ってください」
勢いよく扉を開けやって来たのは、砲撃テストの教官役をしていた利根型の2人だった。しかし一航戦とは違い、あまり疲れている様子ではなかった。
「利根さん達は確か交代制でしたね」
「そうじゃな、途中軽巡の艦と交代してもらい、しばらくしたらまた吾輩達と交代を繰り返していたからな」
「羨ましいですね…」
「赤城さん、ハニワ顔に戻りかけてますよ…」
と言いながらも、加賀自身も顔が戻りかけていると、扉をノックする音が響く。
「失礼するぞ」
扉を開けると、脇に資料を入れているケースを挟み、手に名簿帳を持った提督が入ってきた。
「おお提督、他の艦隊の編成は終わったのか?」
「ああ、思いの外みんなバランスが取れていてな。お陰で第一艦隊の作戦会議にたっぷり時間をかけられる」
嬉しそうに荷物を置くと、ケースから幾つもの資料を取り出した。
テーブルに資料を広げると、対戦するであろう艦娘6隻、兵装、戦績など様々な情報が記載されている資料が配られた。
資料に載っている艦娘達は、やはり提督をやっていたお陰で誰一人知らない艦娘は居なかった。
そして、対戦する事になるだろう横須賀鎮守府所属の6隻の艦娘は、ビッグ7の陸奥、高速戦艦の比叡、重巡の摩耶、世界最高水準とも言われた軽巡天龍、正規空母の飛龍と翔鶴の名前が資料に載せられていた。
「二航戦に五航戦、そしてあのビッグ7ですか…」
「これは…ガチってやつじゃな……」
横須賀鎮守府の本気度にかなり怖気付いたのか、利根と筑摩はかなり弱気になっていた。
しかし弱気になっていたのは利根だけでは無かった。
「飛龍さんに翔鶴さんですか…」
「五航戦…最近一航戦以上に力を付けているとも噂されてます……」
あの一航戦の2人も弱気な発言をしていた。加賀に至っては五航戦を貶すのかと思えば、寧ろ自分達よりも強いのではないかと不安になっていた。
「そして摩耶に天龍か……今回の試合は夜戦まで持ち込まないルールだが、あの機動性の高い2隻を入れてきたのはかなり厄介だな…」
提督も苦い顔をしながら資料を読んでいくと、思わずため息が出てしまった。
とりあえず、この悪い空気をどうにかしようと、装備について提督に話し掛ける。
「提督、武蔵の装備の徹甲弾を三式弾に変更してみるのはどうかしら?」
「武蔵には超高火力で即撃沈判定を取らせるつもりだが、火力を減らして対空に回すのには意味があるのかい?」
「もちろんです。これから長くなりますが、資料を確認させて貰いました。前回も同じような装備で演習を行った結果、1隻の軽巡洋艦を一撃で撃沈判定にした後、爆撃機による攻撃で大破し、火力が落ちてしまい、結果は1隻で終わってしまってました。確かに軽巡洋艦を一撃で撃沈判定まで持っていくのはかなり強力ですが、せっかくの超高火力を無駄にするのは勿体ないと思います。」
「というと…?」
「戦艦にとって、最も脅威なのは空からの攻撃です。いくら同じ人型とはいえ、かなりの大きさを持つ武蔵は艦載機達の格好の的です。ここは少し火力を落とし、艦載機に対する守りを上げるべきだと思います。」
「なるほど……」
私の説明に納得したのか、悩んだ顔をしながら武蔵の装備を確認する。
「了解した、秋月の考えに賛同しようじゃないか」
「ありがとうございます」
しかし、私はただ普通に改善案を出しただけではないのだ。これもとある作戦の過程の一つに過ぎなかった。
こうして、横須賀鎮守府との演習に向けての会議は順調に進んでいったのであった。