海面から太陽がゆっくりと顔を出してくると、摩耶の部屋に日差しが入ってくる。
カチッ…カチッ…カチッ…カチッ…
5時50分にアラームを設定した目覚まし時計の秒針がゆっくりと動いていき、12の文字にぴたりと止まると…
ピピピピピピピピピピピピピピピ……
ガチャン!!
「…朝か…ったく…昨日早く寝て良かったぜ…」
目を擦りながら5時50分になっているのを確認すると、2段ベッドの下の段から体を上げ、布団を畳む。
顔を洗い髪をとかすと、寝巻きと下着を脱ぎ捨て、新しい下着と赤いリボンの着いた青と白の制服に着替える。
「……2年前のあたしも…こんな感じの生活ルーティンだったのかもな…」
そして、靴下を履き、下駄箱から靴を取り出すと、
鎮守府内に起床ラッパが流れ始め、靴を履き、部屋から出ると、他の部屋からも艦娘が出てきた。
「摩耶さん、おはようございます」
「およ……祥鳳さんじゃねぇか…どうしたんだ…?」
「提督が第一艦隊の艦娘は執務室に集合するようにとの連絡です」
「了解…にしても…何で夜遅くまで仕事しているのにハッキリと喋れているんだ……?」
「その話…2年前にも同じ事を聞いてきましたけど…やっぱり摩耶さんは摩耶さんですね…」
「……それは褒めてんのか…?貶してんのか…?」
祥鳳の後ろを歩き、他の艦娘達に挨拶をしながら向かうと、眠たそうな顔をした天龍が先に執務室前で待機していた。
「おう天龍……大丈夫か?」
「……眠たいのと…少しだけ…酒が残っててな…けど…仕事には支障は出ねぇよ…」
大きなあくびをしながら答えると、奥から比叡と陸奥がやって来た。
「皆さんおはようございます!」
「あらあら、私達は4着かしら?」
「いえ、既に執務室に飛龍さんと翔鶴さんが居るので6着です」
「ひえー……」
執務室の扉を開け中に入ると、提督に世間話をしている飛龍と、それを見て微笑んでいる翔鶴、そして横須賀鎮守府の提督が待っていた。
「提督、もし優勝出来たら間宮さんの羊羹、奢ってくださいね!」
「分かった分かった…後近いから…」
「相変わらずお元気そうですね…♪」
「コホン……提督、第一艦隊残りの4隻、集合しました。」
「あ…ああ、了解した。」
慌ててきっちりと提督らしく姿勢を正すと、資料を片手に持ち、今後の日程の話を始めた
「明後日の海軍大演習に参加する為、第一艦隊から第四艦隊はここから佐世保鎮守府までの海路をチャーターした民間用フェリーで移動する事とする。明日の午前2時に鎮守府を出発し、午後0時に佐世保鎮守府に到着予定だ。」
「フェリー…?深海棲艦に襲われる心配はないのか?」
「勿論襲われる可能性は0ではないが、比較的安全な海路を通るつもりだ。」
「なるほど、それなら安心だな。」
「出発時間までは各自艤装の点検や持ち物を確認し、演習に備えるように、以上だ。」
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「……第一艦隊から第四艦隊…全員居るか?」
「はい、24隻全員集合しています。」
鎮守府に停泊しているフェリーに提督と艦娘達が集まると、荷物などを確認し、船の中へ運んでいく。
フェリーと言うが、豪華客船のような船ではなく、どちらかと言えば連絡船に近い物だ。だが、フェリーというだけで艦娘達はちょっとした旅行気分になっていた。
佐世保でのお土産はどうするか、どんな料理が出るのか、まだ会ったことのない艦娘に会えるだろうか…
佐世保鎮守府を楽しみにする会話が弾んでいき、ざわめき始めていた。
「提督、そろそろ演説の時間ですよ。」
「ああ……」
「そう嫌がらないでください……私、提督の演説好きなんですから……♪」
「…わかった、あまり期待はしないでくれよ…?」
ブツブツと呟きながらも、ビシッと軍服を着込むと、艦娘達の前に立ち、海軍大演習に向けての演説を始めた。
(……本当は演説苦手なんだよな…)
「…さて、いよいよ佐世保鎮守府に向かう時がやって来た。以前の大演習では全体的に良い成績を叩き出せた。だが今回も良い成績を取れるとは限らない。決して油断することなく、どんな時でも全力で挑むように!」
「「「「うぉおおおおおおおお!!!」」」」
演説を終えると、やる気と熱気に満ちた艦娘達の声が鎮守府の敷地全体に響き渡った。
そして艦娘達も、興奮状態になりながらもしっかりとやる事をこなし、出港するまでの準備に勤しんでいった。
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艦娘達の荷物を積み終え、後数分で出港する時、提督は秘書艦である祥鳳と話をしていた。
「…祥鳳、少しの間離れるが、この鎮守府の事…頼んだぞ。」
「お任せ下さい。秘書艦として、しっかり私の鎮守府を守り通してみせます。」
「毎年悪いな…鎮守府の管理を任せっきりにして…」
「いいんですよ、こうして提督達を見送るのも秘書艦の仕事ですから…」
「あぁ……それじゃあ、行ってくる…!」
フェリーに乗り込み、祥鳳に一時的な別れの挨拶を告げると、フェリーは汽笛を響かせ、ゆっくりと鎮守府から離れていく。
そして離れていく手を振る祥鳳に対して、ゆっくりと手を振り返した。
こうして、横須賀鎮守府の艦娘達は、防空棲姫のいる佐世保鎮守府に向かったのであった。