泊地棲姫を背負いながら進んで行くと、出口の光が見えて来る。
「ホラ、見エテ来ワタヨ」
トンネルのような道を進んで行くと、そこには近代的な建物が建っていた。
「ココガ私ノ作戦基地、艦娘達ノ鎮守府トハ比べ物ニナラナイ程素敵ヨ」
少し誇らしげに話す泊地に相づちを打つ。
艦娘の鎮守府は元々ある鎮守府をそのまま利用しているのが多いので、泊地の基地ように今の時代に合わせて新しく建てたりはしないだろう。
すると、何処からかエンジン音のような音が聞こえてきた。
どこかで聞いた事のある音だと思い、頭の中を整理すると、睦月達を鎮守府近くまで運ぶ時にタービンをフル回転させていた時の音だと思いだす。
すると、前方から2つの人型の影がタービンの回転音を上げながらこちらに向かってくるのが見えた。一人は黒い和服を、もう一人はセーラー服を着ていた。
そして2人が私の側に付くと、心配そうに泊地に話しかける。
「泊地棲鬼様!大丈夫デスカ!」
「今スグドックマデ連レテイキマスカラ!」
セーラー服を着ているタ級が泊地を背負うと、黒い和服を着ているル級が私に話しかける。
「泊地棲鬼様ヲ助ケテクダサリ、アリガトウゴザイマス。通信ガ途絶エテカラ何時間モ連絡ガデキナクテ心配シテイタ所デス…」
ル級が胸を撫で下ろすと、泊地が礼をしたいらしく、応接室に行くことになった。
基地の中は黒い床と壁に赤いライン状のライトが入っており、まさに未来の建物という感じになっている。
不思議な事に、基地の中には海水が無く、地上に居た時と同じように呼吸ができた。
深海棲艦は水中で呼吸が出来る種族なのに海の中で生活しないのかは、元が海に沈んだ人間だったものが生まれ変わったのが原因だと言われているらしく、少しでも人間だった頃のように暮らそう体が反応するのが原因らしい。
そんな泊地の基地の今の時間はまだ起きている艦は少なく、チラチラとしか見かけなかった。
そして、応接室に案内されると、2つのソファーを挟んでテーブルが置かれている。
壁に埋め込まれている水槽には私がまだ人間だった頃にはテレビでしか見たことなかったような鮮やかな熱帯魚が泳いでいる。
ソファーに座り込むと、水槽を眺めながら泊地の修復が終わるのを待った。
待つこと20分、泊地が応接間に入ってくる。
「ゴメンナサイ、待タセタワネ」
どうやら高速修復材を使ったお陰で早く修復が終わったらしい。
泊地がソファーに座り、咳払いをするとこちらに話しかけた。
「改メテ自己紹介サセテモラウ。私ハ泊地棲鬼、コノ基地ノ責任者及ビ主力突撃部隊旗艦ヲシテイルワ」
私と同じくらい長い白髪を、黒いロンググローブを着けた手で解くと、紅く染まった瞳で微笑んだ。
「戦艦タ級デス。普段ハコノ海域ノ警備、主力部隊及ビ主力突撃部隊デハ旗艦ノ護衛ヲシテイマス」
私と泊地と同じ白髪で艦娘と同じようなセーラー服を着ている。そして黄色く輝いている瞳は彼女がflagshipであることを示している。
「戦艦ル級デス。主力部隊ノ旗艦ト主力突撃部隊ノ護衛ヲシテイマス」
艶のある黒髪に黒い和服を着、青い炎のようなオーラはタ級のflagshipを上回る、改flagshipの証である。
3人の自己紹介を終え、話を聞いていくと、泊地達はこの島の周辺海域を艦娘達から守る為に活動している。
しかしここ最近は遠征に来る艦娘やタンカー、客船までもが周辺海域に現れ、かなり忙しくなっているらしい。
「ナルホド…泊地達モ色々ト忙シイノネ…」
こうして話し続ける事1時間、ある程度話終えキリが良くなると、泊地が話題を変えた。
「…サテ、今回ノ件デ私ニハ借リガデキタ。ソコデ防空ノ願イヲ1ツ聞コウト思ウノダガ、何カアルカ?」
唐突に願いはあるかと聞かれて少し驚いたが、今の私にとってはとても好都合だった。
人間だった頃なら礼なら別にいいわよと言っていたが、家がない今そんな余裕ぶる事は出来ない…
「…実ハ私ニハ家トナル場所ガマダナイノ、私ガ落チ着イテ暮ラセルヨウナ場所ヲ見ツケルマデココニ居サセテモラエルカシラ…?」
「ソンナ事デイイナラ喜ンデ向カイ入レヨウ、空キ部屋ナラマダアルカラナ」
そうと決まればと泊地が立ち上がると、私の手を引っぱり部屋を出ると、基地の中を案内してくれた。
「泊地棲鬼様ノアンナニ楽シソウナ顔、久シブリニ見タワネ…」
「アァ…ココシバラクハ色々ト切羽詰マッテタカラナ…」
案内が進んで行くと、1つの部屋にたどり着いた。
その時だった。
「サテ、ココガ防空ノ家トナル部屋ダ。自由ニ使ッテクレ」
「フフ…色々トアリガト…ネ…?」
お礼を言おうとするが、何故か声が出なかった。視界が急激にぼやけ、意識を保とうとするが頭が回らない。
そして足をふらつかせると、その場に倒れてしまった。
「防空棲姫様!?シッカリシテクダサイ!!」
泊地と戦艦二人が駆け寄り話しかけるが声が聞こえなかった。
そしてぼやけた3人を見ながら気を失った。