「…渡スモノカ…コノ海域ヲ…最後ニ残サレタコノ海域ヲ……!!」
月は赤く輝き、空と海がまるで戦場で流れた血のように染まっている。
あの二人が沈んだ今、残されたのは私だけ。我々深海棲艦はまた艦娘に負けてしまうのか…
ようやく取り戻した自由を…美しい海を…私の妹を…奪われてしまうのか…
そんな事を考えていると、1人の艦娘によって放たれた魚雷は私の体に直撃した。
…アレ…動カナイ……?
海に沈んでいく中、海面にいる艦娘が私の沈んでいく姿を確認している。
急いで海面に戻ろうとするが、中に鉛を詰められたらように体が重い。
動かそうにも錆びた金属のように体がボロボロと崩れていく。
徐々に体が沈んでいくと、水温が下がり、視界が真っ暗になる。
体の体温が奪われていき、太陽すらも見えなくなっていく。
そして沈んだ体が底に着くと、周りには岩のような物が幾つも沈んでいた。
何とか首を動かし、横に振り返ると、何カゴツゴツした金属や残骸が見えた。
戦争中に沈んだ船や艦載機、仲間の深海棲艦や艤装が多く沈んでいた。
あの時聞いた戦時中の海に付けられた異名の意味がよく分かった。そんなこの海の異名……
鉛ノ海……
ああ……意識が徐々に薄れていく……私も二人の後に続こうと思う……
さようなら……私の大切な妹……
「…■■■■……■■■■……」
「…ッ!?ハァ…ハァ…」
辺りを見渡すと、見覚えの無い場所のベッドに寝ていた。
自分のマンションの部屋ではない事を確認し、体を触って見ると、やはり防空棲姫になっていた。
すると、どこからか走っている足音が聞こえてくる。
そして近くのドアが勢いよく開くと、泊地が汗を垂らしながらこちらを確認した。
「防空!!大丈夫カ!?」
そして後に続くようにタ級とル級が入ってきた。
二人から話を聞くと、どうやら疲労で倒れたらしい。そういえば防空棲姫になってから一度も食事も睡眠も摂っていなかった。
冷静に考えればあんなに激しく動いたらそれは倒れるなと思った。
気になるここは私が倒れた時に前にあった私の部屋だった。
眠った事で体の疲れが取れ、体に付いていた重りを降ろしたように軽く感じた。
看病してくれた泊地達に感謝をし、部屋を見回すと、私が人間だった頃住んでいた部屋より広く、家具もしっかり揃っていた。
もしかすると人間だった頃より良い部屋なんじゃないかと思ってしまう自分が居て、ほんのり寂しい気持ちになった。
しばらくし、泊地達が部屋から出るとベッドに横になり、さっきまで見ていた夢を思い出していた。
あれは一体何だったのか、この体である防空棲姫の記憶なのか、一体何があったのか謎が深まるばかりだった。
最初の方に言っていたあの二人……
それに大切な妹…妹と言う事は…防空棲姫が艦娘だった頃は秋月か照月だったのだろうか。
色々と考察をしていくが、何も分からないので私はそのまま考えるのを止めた。