防空棲姫に転生してから二日目の午後7時、私は泊地の基地にある食堂に居た。
深海棲艦の食堂は、鎮守府や基地によって違う。
基本のタイプは料理が得意な艦が数人集まって料理を出すタイプと、部屋にあるキッチンを使って同じ部屋の艦と一緒に料理するタイプがある。
この基地では前者の方を指す。稀に給糧艦の艦娘が深海棲艦に生まれ変わる事があり、その艦に料理を出してもらう所もあるらしい。
今日は金曜日と言う事でカレーが出た。鶏肉と人参、ジャガイモに玉ねぎが入っており、ジャガイモは少し大きめに切ってあった。
一体どんな深海棲艦が作っているのかと厨房を覗いて見ると、厨房に立っていたのは、眼鏡を掛けている重巡リ級だった。
カレーを受け取り席に着くと、仕事が終わったのか、カレーを持ったリ級が私の前の席に着いた。
そして微笑みながら私に話しかけてきた。
「コンバンハ、アナタガ泊地棲鬼様ヲ助ケテクレタ艦デスネ?」
「エエ、私ハ防空棲姫。アナタハ重巡リ級ネ」
「ハイ、私ハ訳アッテ戦闘ニ参加デキナイノデ、コノ基地ノ料理担当ヲサセテモラッテイマス」
「戦闘ニ参加デキナイ…?重巡洋艦ナラ艦娘相手ニモ充分戦エルハズナノニ一体ドウシテ?」
「ウーン…詳シク説明スルト長クナリマスケド…ソレデモイイデスカ…?」
食事をしながら話を聞いていると、リ級は色々な事を教えてくれた。
リ級は元々は艦娘で、今から2年前に轟沈し、深海棲艦に改造された事で重巡リ級になった。
リ級の戦闘能力は他のリ級と比べて高性能だったが、体の艤装の損傷が激しく、深海棲艦の装備を身に付けられない等、色々問題を抱えていた為、実戦では使えないと言う事で厨房に立ち、料理を作るようになったらしい。
「ナルホド…戦闘ガデキナイ理由ハ分カッタケド、元ガ艦娘デアルアナタガ何故私達ニ敵対シナイノカシラ?」
「ソウデスネ…敵デアル私ヲ仲間ニシテクレタカラデスカネ…正直私自身モアマリ分カッテマセン」
少し苦笑いをすると、リ級はポケットから1枚の写真を取り出した。
「コレ、御守リ代ワリニ持ッテイタ写真デス。艦娘ダッタ頃ノ私ト姉サン達ト撮ッタンデス」
写真には鎮守府の前に艦娘が2人写っている。2人の内、眼鏡を掛けている艦娘がリ級だと言う。
写真自体少し古いのか、少し古ぼけていて、あまり顔等は綺麗に写っていなかった。
「アノ時ハ色々ト楽シカッタデス……姉サン…元気ニシテルデショウカ…」
リ級から写真を見せてもらい、2人の姿を見てみると、古ぼけているが、リ級ではない方の艦娘は何処かで見た事がある顔だった。
そして、2人の服装を見て確信した。
「…アナタノオ姉サンノ名前、摩耶ッテ名前デショ」
「ッ!?何故ソレヲ…!?」
やはりそうだった。写真にちらっと鎮守府の名前が写っており、摩耶から渡された電探に鎮守府名が書いてあった。服装を見てもあの時に出会った摩耶に間違いなかった。
「…摩耶ナラ元気ニシテルワヨ。リ級…イヤ…重巡洋艦鳥海」
すると、リ級の目から一粒の涙が落ちた。
「…随分久シブリニ…ソノ名前ヲ呼ンデ貰エマシタ…2年ブリデス…」
ハンカチで涙を拭き取ると、リ級は嬉しそうに感謝の言葉を出した。
「防空棲姫様…アリガトウゴザイマス、摩耶ガ無事ダト聞ケテ…トテモ安心シマシタ」
「ソウ…ソレハヨカッタワ」
話終えると、私は少し冷めたカレーを食べ始めた。