ねえザック
アァ?
私を殺して?
そんなに殺してほしいのか?
うん。
だったらちったぁイイ顔してみろってんだ。
うん。
......................................................
「ザック」
「んぁ?……あ゛?ンだその顔」
「殺したくなった?」
「ならねえよぶっ殺すぞ!?」
「ありがとう」
「殺さねえよ!!!!」
あの日。
あのビルから脱出した後、ザックが迎えに来てくれた夜。
警察から逃げて、周りの人から怪しまれないように、遠く……遠くまでザックと一緒に逃げた。
私も聞いたことがないような、地図に乗っているのかも分からないくらい小さな村。
小さな池の畔を囲むようにある家々、そこに住む人は皆おばあさんかおじいさんだ。
少しでもバレないように長かった髪の毛は方の辺りでバッサリと切り、ザックもあのパーカーじゃなくて私がザックのために作ったパーカーを着ている。
でも、包帯ぐるぐる巻きの時点ですごく目立っちゃうかもしれないのは気にしたらいけないのかな。
そして、あの約束。
_____私を殺して_____
その約束は、未だ果たされていない。
「ねえザック」
「あン?今度はなんだよ?」
「どうして殺したくならないの?」
「そんなもん、鏡見てから言え!」
おかしい。
「ザック」
「……?っ変な顔すんな馬鹿野郎」
「…………」
私はきちんと笑えているはず、ザックと一緒にいる、それだけで嬉しくて。
それなのになんで殺してくれないの?
ザックは神様じゃない。
でもあの時、連れ出す時も、私を殺すと言っていた。
ザックは嘘が嫌いなはず。
それじゃあいつも言っているイイ顔をするっていう手順を踏まないと殺してもらえない?
「……………ムゥ」
「はァァァ……んな疑わしそうな目でこっち見んな!!」
「じゃあ、どうしたら私を殺してくれるの?もう2ヶ月以上も経ってる」
「だからお前死ぬ時ぁイイ顔しろっつってんだろ?でなきゃ」
「イイ顔って?」
「そんなもう……こう、あれだよ!殺したくなる顔に決まってンだろ!!」
「誤魔化した?」
「誤魔化してるわけねぇだろ!」
「そう」
そう言って誤魔化すザック……こんなやり取りにも、幸せを感じる。
それでも私は死にたいのには変わらない……イイ顔というものが分からないけれど、殺してもらうまでは、そのイイ顔をできるようになるまでは、こんな日々を過ごすのもいいのかもしれない。
「………………んだよ、出来んじゃねーか」
「何か言った、ザック?」
「ばーか何でもねエよ」
「できてたんだ」
「聞こえてたのかよ!?」
「殺して?」
「へっ、じゃあイイ顔してみろっての」
「ん」
「…………お前笑うのヘッタクソだな」
おかしい。
つづ……きは考えてあるけど書くかは不明。
だからここに軽く書くとすると、レイとザックのちょっとした日常です。
紅葉が見れる季節になると色とりどりの草木に囲まれた少し小さな池、その辺にある小さな家で揺り椅子にゆられながらおしゃべりするザックとレイ。
そんなゆっくりなちょっとした幸せ。この話はそのプロローグのようなものです。