リリから話を聞き終わった後、トウヤは呆然としていた。それは予想以上に重たい内容だったからか、それとも今までのうのうと生きていた自分の考えを変えれざるを得ないと思っているからか。
トウヤがリリについて知っていることなんて、精々今のファミリアから抜け出したいから金が必要程度にしか知らなかった。
だが、実際にリリから話された真実は、トウヤが処理しきれる人間の増悪の感情の
これでもトウヤは、今まで多くの人間に負の感情を浴びせられて来たと思っている。それこそ普通の人生では早々無い程に。
しかしリリが受けてきた仕打ちは、そんなものを遥かに超えていた。
そのことにトウヤの思考能力は熱を帯び、オーバーヒートした。
だからだろうか。トウヤは目の前にいる少女に何て声を掛ければ良いのか、さっぱり分からなかった。
もしもベルならばと一瞬頭を過るが、そんな思考は意味が無いと遮断する。
声を掛けることができないなら、この不運な運命を背負ってしまった少女に何かできることはないか?
そう、自問自答をし、トウヤは自分の解を得た。
可哀想と思うならば、助けてやればいい。
助けを求めることができないなら、無理矢理助け出してやればいい。
叫びたいなら、一緒に叫んでやればいい。
泣きたいならば、胸を貸してやればいい。
壊してしまった物語を、俺が作り直せばいいんだ………!
解を得たトウヤは、自分が何をすべきか考えるまでも無く、行動に移した。
「『ボックス』」
少しの時間で自然回復した粕程しかない魔力を使い、『収納魔法』によって異次元に収納されていた
「えっ…………?」
突然表情を変えて動き始めたトウヤに、流石のリリも困惑を隠せず、声を漏らす。
「『パワード』」
そんなことはつゆ知らず、トウヤは『筋力上昇魔法』をいつもよりも魔力を込めて発動し、困惑するリリを荷物を抱えるように腕で腹ばいに抱える。
「え? えっ!? ちょ、何をするつもりですか!?」
言葉だけ聞いていると、犯罪臭が凄いが、そんなことは気にせずに『探索魔法』を使い目的地への最短ルートを割り出す。
目的地を一〇〇〇M無いくらいの場所に見つけ、『飛翔魔法』を使い、今出せる最速のスピードで空を駆けた。
→→→→→
遥か上空からの襲撃に、
その様子を見て、意味が分からないと目を白黒させトウヤと同ファミリアの人間を交互に見るリリ。そいつらには用が無いと興味も示さずに、最後に現れるだろう人間を待つ、消費した魔力をポーションで回復しているトウヤ。
「お前達、何の騒ぎだ……」
そうしてやって来たのは、眼鏡をかけた細身の男のヒューマン。
『
果たして、トウヤがリリを連れてやって来たのは、リリの所属ファミリアである、ソーマ・ファミリアのホームだった。
「……アーデ、お前はそこで何をやっている」
「……ザニス様」
ピクリと肩を震わせると、リリは男の名前を呼び、怯えた様子を見せる。
その様子を見ていたトウヤでも分かる。リリのほぼトラウマになっている『
「率直に言う。リリルカ・アーデをくれ」
「…………はぇっ?」
「何を言っているんだ?」
トウヤが突然言い出したことに、リリは素っ頓狂な声を上げて、ザニスも、わけが分からないと問う。
「リリをうちのファミリアに『
「!?」
続いてられたトウヤの言葉に、リリは驚愕に表情を染める。
そして、ザニスはと言うと、
「くっはっはっ、何を言い出すかと思ったら、
「………」
全く見当違いの言葉にトウヤは思わず無言となる。こいつ何言ってんだ? と言いたげな表情をするトウヤは、さっさとしろと言わんばかりの殺気を放つ。
だが、トウヤ程度の殺気に動じるわけもなく、ザニスは落ち着けと手で制す。
「アーデに聞いているなら分かると思うが、脱退するには莫大な金が必要だぞ?」
ザニスはニヤニヤと表情を嘲笑とも取れるものにしながら、トウヤに言った。
どうせ用意できるわけがないと確信しているザニスは、以前とニヤニヤとしている。
ソーマ・ファミリアの脱退金は百万程度では済まない。それは偏に、ソーマ・ファミリアの運営方法が非人道的なもので、世間に広められては困るとザニスが決めたことだ。
そんなザニスを、だからどうしたと言う呆れ顔を浮かべるトウヤと、表情を暗くさせるリリ。
リリは理不尽に搾取されながらも、その金額までの後少しと言うところまでやって来たのだ。どんな手を使ってでも。
正史ではベルに救われただろうリリは、トウヤによって違う物語を歩き出した。その物語で、リリが救われるなんて都合の良いことが起きるかは分からない。
だから、最悪に陥る前に、自分が救ってしまおうと言う結論を出したのだ。
「なら、これで十分だな」
そう言って、異次元から取り出した二千万ヴァリスの入った袋を放り投げると、呆然としているザニスたちを放っておき、『神ソーマ』がいるだろう、神気のする三階奥の部屋へと向かう。
書いていて、何を書いているのかわからなくなっていきました。
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