刀使ノ巫女ー邪神オロチ急襲ー   作:クワトロン大帝

1 / 3
予兆編1:齷齪
EP1 謎のノロと不信感


各地で荒魂の被害に遭遇する中、それを根絶する者達がいた。彼女らは御刀を使い、荒魂に対抗する。荒魂は個体によるが殆どが人間よりも大きい個体である。だがどんな荒魂でも彼女らは卓越した身体能力で一気に駆逐する。連携、咄嗟の判断力、仲間の救援などを怠らず常に周りの状況を把握できるかが市民達を安全にするための鬼門となる。また警察達も市民達の避難誘導を最優先させるため、全てが楽なことではない。しかしそれでもより被害を負わせないように早急に荒魂を斬り裂く。やがて荒魂は徐々に全身消滅していき、消滅した荒魂からノロを回収する。この一連の流れを熟してようやく彼女らの任務が完遂される。人々を荒魂から救う者を人は彼女らを、刀使と呼ぶ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は祈神紫からタギツヒメが引き離された出来事から約数ヶ月に及ぶ。鎌倉の本部にて二人の刀使が模擬戦を行っていた。

 

可奈美「はぁああ!(キン!)」

 

姫和「ふん…!(ガキン…!)」

 

真剣な表情で互いに譲れない攻防戦を繰り広げているのは美濃関学院の衛藤可奈美と平城学館の十条姫和である。二人は数ヶ月前の御前試合の決勝戦で試合を行う予定だったが、複雑な理由によりそのまま逃走を余儀なくされた。以来、二人の関係は他人からでは言い表せない程の実力者と謳われたのだ。

 

可奈美「ふぅ…。今日はこのくらいしよう、ね?」

 

姫和「お前は相変わらず威勢のいいやつだな。どうすればここまで余裕を見せられる」

 

可奈美「そんなの私にとって朝飯前だよ、はいお水」

 

模擬戦を終え、姫和がタオルで顔を拭いて可奈美が姫和に水の入ったペットボトルを渡す。疲れ果てた姫和とは正反対に可奈美はまだまだ余裕の表情を見せている。

 

姫和「今日は大事な話があると聞いてみんなで行動することになったが、こんなことしてる場合か」

 

可奈美「姫和ちゃん、もしものことがあればの模擬戦なんだよ?ここで体力つけないと勿体ないよ」

 

姫和「お前が楽しみたいだけだろ」

 

姫和の言う大事な話というのは祈神紫の妹である祈神朱音からの大事な内容を聞くことである。今回彼女の重要な内容について可奈美ら刀使六人が直接感得するということ、それを今日一日中付き添うのだという。そして極め付けには警護に当たる役割も今日担われているので、事実上一日中スケジュールがビッチリということになる。

 

可奈美「それに御当主様とタギツヒメの件の細かいことは刀剣類管理局、しかもメディアにも内密にされているみたい。詳しい詳細は朱音様ならわかると思う」

 

姫和「とんだ災難だったな。あの時のことを深く考え込むのも後味悪いからな」

 

彼女が口にする災難、それこそ数ヶ月前のタギツヒメの件がとても頭から離れないのだろう。姫和自身が決着をつけたあの日から心が和らいだが、当のタギツヒメ本体は未だに自らの居場所を彷徨っているに違いはないはずだと姫和は悟った。しかし何より自分自身の役目を終えたことが一番安心感を抱いているのだから、彼女にとって心も癒えるに違いない。

 

可奈美「まぁ細かいことはまた今度にして、そろそろ行こうよ」

 

姫和「わかった。すぐ用意する」

 

可奈美(肝心の朱音様の話って、なんだろう…?)

 

二人は一旦本部を離れ、全員で集合するとある場所へ移動する。今日の予定だとそれぞれが行う任務もあるという。二人はスペクトラムファインダーを起動し、荒魂が出現していないかを移動しながらこまめに確認する。状況は良好で被害もない、二人は移動も兼ねて街周辺の遠征を開始する。

 

姫和「どうだ?何か異変はないか?」

 

可奈美「うん、今のところはね」

 

集合場所に向かうのに歩いて行ける距離であるため、然程時間かけずに到着した。すると姫和は可奈美を凝視するか否か一つ質問をしてきた。

 

姫和「そういえばみんなは既に来ているんだな?ならなぜ私達は後から来ることになった?」

 

妙にしっくりこない表情で問いかける姫和に可奈美はこう答えた。

 

可奈美「実はね〜、姫和ちゃんにある物を見せたくて先にみんな集まっているみたい。内容はまだ秘密」

 

姫和「すごく大雑把な理由だが…ともかく、私を落胆させるなよ」

 

二人は黙々と先に進むと、

 

薫「おーやっと来たかー」

 

エレン「かなみんにひよよん、待ってマシタよ」

 

二人の出迎えとして長船女学院の益子薫、同じく長船の古波蔵エレンが待機していた。どうやら二人は少しSっ気な表情で姫和のことをじっと見つめているらしい、無論彼女は何かの嫌がらせにしか思えていないのだろうが…。

 

姫和 「人の顔を見るなりどういうつもりだ?」

 

薫「あ〜そうだなー、相変わらずないよなーひよよんーーー」

 

姫和「斬るぞ貴様」

 

可奈美「ちょっと落ち着こうよ⁉︎」

 

薫「冗談だ、半分」

 

姫和「半分とはなんだ⁉︎」

 

エレン「みんなでひよよんに見せたい物があるんデスケド、ちょっと厄介な品物なんデスよ」

 

エレンの言葉に耳を傾ける姫和、そして可奈美も同じく反応を取る。

 

可奈美「姫和ちゃんに見せる物って危ないの? 」

 

薫「聞かれてなかったのか。まぁそんなところだろう」

 

エレン「もうそろそろ来マスヨ」

 

可奈美「本当だ…って舞衣ちゃんと沙耶香ちゃんなんでS装備つけているの?」

 

例の品物を可奈美と同じ美濃関学院の柳瀬舞衣と鎌府女学院の糸見沙耶香が厳重な状態で運んできた。

 

姫和「随分と大きい箱みたいだが、この中に…?」

 

かなり大きい鋼鉄の箱に収めているようで、特殊な加工で施されていて結構頑丈に作られている。とはいえこれはただの気休め程度でしかないので何が起きても不思議ではない。

 

姫和「触れてもいいんだな…?」

 

沙耶香「…いいけど、気をつけてね」

 

一言了解を得て姫和はゆっくりと触れる。

 

姫和(大人しいし、特に異常はなさそうか…。でも、この中身は一体…)

 

そっと手を伸ばして軽く触れると微かに鼓動が伝わる。紛い物かもしれないが、彼女にとっては結構重要となるだろう。

 

可奈美「姫和ちゃん…?」

 

舞衣「おそらく、姫和ちゃんは何かを感じているの。あんな真剣な表情なら尚更かもね」

 

その後姫和はゆっくりと手を放し深呼吸をする。そこへ可奈美が姫和に一言尋ねた。

 

可奈美「何かわかった?」

 

姫和「…なんとなく、な。でも本当は何なのかよくわからない」

 

沙耶香「みんな、そろそろ朱音様の通信入る」

 

可奈美「え?どういうこと?」

 

舞衣「理由は直接説明してくださるって」

 

沙耶香は大きめのタブレットを取り出し、通信の準備を始める。回線状態を確認しつつ地道に調整し、ようやく繋がる。

 

可奈美「あ、繋がったみたい」

 

朱音『みなさん、お集りですね?』

 

姫和「なぜ直接向かわなかったのです?」

 

朱音『申し訳ございません、このような形でみなさんと会話をする状態になってしまい』

 

エレン「今特別祭祀機動隊や刀剣類管理局などの事情徴収で立て籠もり状態なんデスヨネ?」

 

映像でのやりとりとなり、折神朱音本人から謝罪をする。向こうの状況がどうやら厳しいという。

 

朱音『そうなります。それに要件は他でもありません。姫和さん、例の物はもう拝見済みですか?』

 

姫和「はい、一体あれは何ですか?」

 

朱音『あの中は…私の姉から分離したタギツヒメの細胞…つまりノロです』

 

一同「「「…ッ!?」」」

 

この一言で一同は一斉に鳥肌を立たせる。しかし可奈美と姫和はすぐに鳥肌を抑えた。

 

姫和(本当にあの中にノロが…?だとすればすぐに…いや、まだ中身を確認していない以上どうしようもできない)

 

疑うような目つきでもう一度箱に触れる姫和。だが先程と感覚は変わらない、暴れるような感じはゼロである。そこに姫和の様子を見た沙耶香がある言葉を発言した。

 

沙耶香「箱の中身、見れるようにできる。今セキリュティを解除する」

 

姫和「今なんて…?」

 

舞衣「待ってて、これから姿わかるから」

 

セキリュティを解除するため、パスワードを入力する沙耶香。すると表面が徐々に透明になっていき、その正体が判明される。

 

可奈美「……これって」

 

姫和「無数の目玉が蠢いてるようだな…」

 

一同が目撃する中、そのノロの正体は極めて危険を伴う姿だった。大きさはとても小さく人間が両手で持つくらいのサイズである。見た目に関しては無数の目玉があり、スライムのような姿をしている。だとしてもまだ着目する点は他にもあった。

 

朱音『これについてはどうも該当する荒魂の種類と一致しません。だとすれば完全なる固有個体となるでしょう』

 

可奈美「じゃあ迂闊に外に出せませんよね?」

 

朱音『いつ本性を現にするかわからない以上は解放しかねます。でも各研究機関での精密検査を行う場合は一時的に解除します。これからそのノロを詳しく調べる必要がありますので合流時に明け渡してもよろしいでしょうか?』

 

姫和「とんだ副産物のようですね、まさか私を嗤うのですか?」

 

朱音『ふふ、姫和さんも正直になったみたいですね。見分ける力が更に備わったとか?』

 

姫和はノロのことを聞いて鼻で笑う。彼女も存外物を一概に区別をつけられたのかもしれない、それも可奈美と出会ったということもあったのだろう。とはいえ成し遂げた使命を改めて思い返すのも姫和の情念でもあるのだ。

 

沙耶香「あれから時間進んだけど、大丈夫かな…?」

 

薫「恐らくは 、だろう。オレ達も相当苦労したもんだ、あの折神紫に取りついたタギツヒメとやらも懲りてるはず」

 

薫はノロを凝視しながら淡々と答える。すると薫の肩に乗っているねねがノロが入っている箱にまとわりついた。

 

エレン「Wow、いきなりどうしたんデスか?」

 

ねね「ね〜…!」

 

沙耶香「興奮、してる」

 

可奈美「ちょっとねねちゃん、離れて」

 

威嚇をしていて離れようとしないが、可奈美が尻尾を掴んで強引に引き離した。

 

薫「ナイスだ可奈美」

 

ねね「ねね〜…」

 

可奈美「もうダメじゃない、いきなりしがみついて」

 

姫和「いや、ねねも荒魂である以上興奮するのも無理はないと思うぞ。あんなに敏感なんだからな」

 

非常に荒ぶっていた様子のねねもここらで大人しくなった。その後、薫の元へと戻っていく。

 

薫「お前の気持ちはわかる。でも今のところは悪者ではないぞ」

 

朱音『同じ荒魂として闘争本能が芽生えたのでしょうね。ではそろそろこれからについて単刀直入に申し上げます』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姫和「どういう風の吹き回しだか知らんが、お馴染みのお仕事と言ったところか」

 

可奈美「どうやら朱音様はそれぞれに適した役割を与えてくださったんだよ」

 

可奈美達は朱音の要件の元、二組に分かれて行動することになった。警護等の役目は沙耶香と薫、そしてエレンが担当。荒魂の討伐には可奈美と姫和と舞衣が遠征することになっている。

 

姫和「なぁ舞衣、さっきのノロのことだか…少し私に刺さる気がする。可奈美も例外ではないはずだろうし」

 

自分の御刀、小烏丸を綺麗に磨きながら舞衣に尋ねる姫和。彼女の言う刺さるとは以前戦ったタギツヒメを彷彿させるという意味であり、使命を終えてまた違う形で宿命を背負う身だからこそ言える言葉である。

 

舞衣「私はそういう話よくわからないけど、姫和ちゃんの言葉に少し共感できるかも。やり遂げたことに安心したけどまた複雑な気持ちを抱くってところが」

 

舞衣も頷きながら答える。そこに姫和の本心が更に続く。

 

姫和「これはほんの少し表に出た感情だ。可奈美は違うと思うが私は素直じゃない」

 

舞衣「姫和ちゃんは真面目で判断力も優れているよ、素直じゃないことなんてないから」

 

ちょっとだけほっこりとした表情で舞衣が姫和の長所を言う。謙遜する姫和もそこそこ笑う様子が浮かんできて舞衣は胸を撫で下ろしてホッとする。

 

可奈美「二人で何を話してるの~?」

 

姫和「大したことではない、特に―――」

 

可奈美「もしかして、私に内緒の話とか」

 

姫和「なぜそうなる!?全く、お前というやつは…(はぁ…)」

 

舞衣「内緒にするような話じゃないよ、気にしないで」

 

可奈美の唐突な言葉に姫和がため息をつく。すると姫和の頬をつねりながら可奈美がしかめっ面で尋ねる。

 

可奈美「全然楽しい表情じゃない…さっきのことまだ気にしているんでしょ?」

 

姫和「人の頬をつねりながら聞くな。まぁ、そんなところだ」

 

可奈美「そんなんだろうと思ったよ、意外にすんなりだったね」

 

姫和「あのな……」

 

舞衣「二人とも、ちょっと来て。荒魂の反応があるみたい―――え?何この反応…?」

 

ここでスペクトラムファインダーが荒魂を察知し、徐々に反応が大きくなっていく。それも数秒毎にどんどん大きな反応となる。

 

姫和「どうやら只者ではなさそうだな、このまま作戦を敢行するか?」

 

舞衣「私達三人だけだけど、どうにかこの場を乗り切るしかないね」

 

姫和「ともかくまずは目算を狂わせることからだ。私と可奈美で専行する」

 

可奈美「うん。上手く隙を突くから舞衣ちゃんもフォローお願い」

 

舞衣「気をつけてね、いくら慣れてるとはいえ、今まで感じたことのない強さだと思うから」

 

可奈美と姫和はすぐさま行動に移る。そこへ舞衣のバックアップで敵を一気に仕留めるという作戦を決行させる。目標ポイントは現在位置から東寄りの方向に約数百メートルの場所にある。やがて荒魂討伐という刀使としての任務が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「千鳥と小鴉丸を使う者……一体どこに…そして、邪神の器も探さねば……」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。