刀使ノ巫女ー邪神オロチ急襲ー   作:クワトロン大帝

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EP2 殺気

可奈美達と別行動している沙耶香、薫にエレンの三人は警護の方の任務に当たっていた。現在の状況については異常なしとのことであり、特に障害は見当たらない。そんな中沙耶香が少し不安な表情を浮かばせていた。

 

薫「どうした?やけに元気ないな」

 

薫が沙耶香の顔を覗き込みながら聞く。どうやら沙耶香は少し自信のない様子のようだった。そこへエレンが励ますように声をかけた。

 

エレン「こういう時は笑顔を作るんデスヨ」

 

沙耶香「…大丈夫、私は問題ない」

 

薫「こうやってバラバラで行動するとなれば無理はあったんじゃないか?」

 

エレン「それも一理ありマスネ。そこは私達じゃわからない部分デスケド」

 

すると沙耶香は二人を心配させまいと平常心を保っていた。任務最中にネガティブな感じを見せるのは彼女自身にとっては申し訳ないだろうが、何が不安なのかは薫とエレンにはわからなかった。

 

沙耶香「そうだ、まだクッキー残ってた(もぐもぐ)」

 

沙耶香が制服のポケットに手を入れると、舞衣から貰ったクッキーが入っていた。まだ食べ切っていなくていくつか残っていたようである。

 

薫「相変わらずクッキー好きなんだな」

 

エレン「まいまいのクッキーが余程美味しいんデスね」

 

美味しそうにクッキーを頬張る沙耶香を見て微笑む二人。そこへねねが沙耶香の肩の上に乗っかってきた。

 

ねね「ねね〜(ガバッ)」

 

沙耶香「ねね…?そっか、ねねも食べたいんだ。はい」

 

如何におねだりをするような目で恵んでほしいと動作するねねに沙耶香がクッキーを渡した。貰って嬉しがるねねを見つめて沙耶香は、

 

沙耶香「薫とエレンも食べる?」

 

薫とエレンにも分けてあげた。二人はそのまま頬張り、黙々と味わう。

 

薫「小腹空いていたから丁度いい、なかなか美味いぞ 」

 

エレン「充電完了デス、早速任務に移りまショウカ」

 

沙耶香「まずは現場の状況を念入りにチェックすることから、次に---」

 

薫「長そうだな…。オレはパスしたい」

 

薫が嘆いていると、警備を行っていた刀使達が現状報告しに来た。

 

綾小路の刀使A「こちらは異常ありません、そちらはどうですか?」

 

薫「あー特にないな、ご苦労」

 

長船の刀使A「こちらの部隊は今一度厳重体制に移行します」

 

綾小路の刀使B「すみません。私達の方は―――」

 

沙耶香「…今日の流れ通りに動けば大丈夫だから」

 

エレン「みんなはB班とD班と合流すればオッケーデス」

 

鎌府の刀使A「ありがとうございます、至急向かいます」

 

長船の刀使B「これで職務も捗れます」

 

鎌府の刀使B「では行ってまいります」

 

特別祭祀機動隊のメンバー達もやってきて一斉に状況報告が行われている。三人は同時に対応をし、小さな問題なども適格に解決していく。

 

沙耶香「これで最後…」

 

薫「こうやって対応するのって結構面倒だな…」

 

今行った対応に少し疲れを見せる薫に、ねねが慰めてくれた。

 

ねね「ねね~」

 

薫「…ねね、お前というやつは…。オレを慰めてくれるんだな」

 

薫「当然私も同じデース(ギュ)」

 

薫「おいエレン、お前も抱きつかれると苦しいぞ…」

 

沙耶香「恵まれてるね、薫って」

 

ねねに続き、沙耶香とエレンも慰めてあげる。普段荒魂の討伐ではない任務をやらない薫にとっては新鮮なことでいつも怠くて面倒な感じから一転するというのは全く表さない一面だったりする。

 

薫「そんなにくっつくなよ、照れるじゃねぇか…」

 

照れくさそうに顔を赤らめる薫に二人は軽く笑う。そこへスペクトラムファインダーが反応をした。

 

沙耶香「どこかに荒魂がいる…」

 

薫「まさかここで反応するとはな」

 

エレン「ナンセンスデスね、折角安心できるはずデシタのに」

 

近くにいた刀使達が至急迎撃に向かう。また警備班は市民達の避難誘導を行い、特別祭祀機動隊は更に現場の判断により荒魂の討伐するために行動を開始する。沙耶香達は周りの状況を把握し、自分らがやるべきことを最優先する。

 

沙耶香(舞衣…大丈夫かな…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~同時刻~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姫和「はっ!せやぁ!(ズバッ!)」

 

一方可奈美達は荒魂の討伐に向かっていた。現れたのは大型で複数人でないと太刀打ち不可能なタイプである。そこで可奈美と姫和が前衛で掃討する作戦を実行し、舞衣が後衛となって二人をサポートする役割を担うことに。正面突破する姫和に続き、可奈美も荒魂の懐に潜り込む。

 

可奈美「…たぁ!(ザッ!)」

 

姫和「相手の荒らしが覿面だったな、このまま一気に…!」

 

舞衣「気をつけて、何かを構えているみたい」

 

舞衣が荒魂の構えを見て二人に危機を知らせる。そして次の瞬間、強烈な地ならしが襲い掛かる。

 

 

 

ゴゴゴ…!!

 

 

 

姫和「態勢が崩れる…これでは近づけられない…!」

 

舞衣「落ち着いて。ここはチャンスを窺うの、そうすればきっと」

 

姫和「なるほど。ただ策もなしに突っ込むのも不向きというわけか、可奈美は後方から一気に畳みかけろ」

 

可奈美「うん、わかった」

 

まだまだ続く荒魂による地ならし。三人は動けない中次はどうするべきかをひたすら模索していた。だが彼女らは格段と学習している、度重なる荒魂との交戦は日常茶判事であり毎日の日課の一つなのだから。そんな彼女ら刀使は戦闘面だけでなく鍛錬も熟しているため無理にでも討伐任務を担っている。必要以上のスキルを向上しつつ、卓越した身体能力を生かしておくのが最も重要な心得となる。

 

可奈美(タイミングは一瞬、ここで逃したらもう……)

 

姫和(よく見てよく聞きよく感じとる…)

 

目を一瞬だけ閉じて音を聞き取る。その直後、荒魂の動きが止まった。

 

姫和「今だ、うぉおおおッ!」

 

一瞬のチャンスを逃さず、姫和の一突が荒魂に直撃した。二段階迅移を発動させ相手に余裕を与えさせる隙すら許さない。

 

舞衣「怯んだ、可奈美ちゃん!」

 

可奈美「姫和ちゃんの作ったチャンスを無駄にしない…!(バッ、ズサッ)」

 

姫和「突っ込むぞ可奈美!」

 

可奈美が構えを崩さず態勢を保ったまま敵に近づき、姫和は可奈美との息を合わせる。双方の培った連携が見事に荒魂の気を逸らしていく。

 

可奈美「やぁああっ!!」

 

姫和「はぁああっ!!」

 

同時に降り注がれる混信の一斬り。胴体へと直撃し、そのまま消滅していく。最後にノロだけが残り、早急に回収へ向かう。

 

姫和「どうやら任務は完了のようだな」

 

舞衣「二人ともお疲れ様。いい活躍だったよ、私が出るまでもなかったくらいに」

 

可奈美「そんなことないよ、舞衣ちゃんの的確な指示があったからこそだよ」

 

姫和「本当に、可奈美は逸材な奴かもな」

 

現場のノロを全て回収し、次の目的地へと移動する可奈美達。今日の予定はまだまだあるらしいため、彼女らの一日はまだ終わりを迎える様子ではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~綾小路武芸学舎~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方同じ時刻で綾小路武芸学舎の校内では数ヶ月前に起きた大荒魂による特別危険廃棄物漏出問題の件で報道陣達が駆け寄っていた。無論、学長である相楽結月によって細かく対応に応じていた。そんな中、特別危険廃棄物の対処を行っている各地から集まって来た刀使達が黙々と活動を行っていた。

 

美濃関の刀使A「すみません、ここに置けばいいんですか?」

 

葉菜「そこでいいんじゃないかな?わざわざ来てくれて悪いけど作業は中々手間がかかるからね」

 

長船の刀使C「こっちの廃棄物はまとめていいですか?」

 

葉菜「一列に並べておいて。山積みにしたら危ないから、そうそう」

 

各地から派遣された見習いの刀使達に指示しているのは綾小路武芸学舎の中等部三年の鈴本葉菜、彼女は舞草の諜報員でもあり並大抵の刀使よりも十分な実力を持つ刀使の一人である。

 

葉菜「なるべく危険物かどうかはみんなでちゃんと確認し合うこと。わからない時はもう一度マニュアルを読むなりして作業に貢献するように。いい?」

 

彼女は今この区域での特別危険廃棄物の回収作業のまとめ役を務めている。いつ如何なるミスにも応じられるように相楽学長の承認の元、彼女を選出したという。そしてこの職務を務めているのは他にいる。

 

ミルヤ「鈴本葉菜、お勤めご苦労様です。私も今現在より職務に加わります」

 

葉菜「ミルヤさんありがとうございます。正直私一人では役不足でしたので」

 

ミルヤ「大丈夫ですよ。私も先程相楽学長からレクチャーを受けましたので、規定通りやれば問題ありません」

 

銀髪でロングヘアーの彼女は綾小路武芸学舎の高等部二年の木寅ミルヤ。先程とある要件で綾小路に戻って来たばかりらしい。

 

葉菜「ところでさっきはどんな用事でしたか?」

 

ミルヤ「はい、実は少々今後に関わることについて少し鎌倉の本部に訪問しに行ったんです。私にとってはその内容はなかなか煩雑でした。ですがその要件を無碍にするつもりはありませんでした」

 

葉菜「その内容は後で聞かせてください。今は共にやるべきことをやりましょう」

 

ミルヤ「わかりました。まずは集まってくれた皆さんの指示からですね」

 

二人は刀使達に自分らの役割分担を通達する。その一方で荒魂の出現報告を得て警護任務に当たっていた特別祭祀機動隊のメンバーの何割かが状況報告に入る。

 

綾小路の刀使C「特別祭祀機動隊の皆さんお疲れ様です。荒魂が現れたというのは本当だったんですね」

 

特別祭祀機動隊のメンバーから報告を受ける綾小路出身の刀使達。中には刀剣類管理局の関係者も共に同行していた。どうやら特別祭祀機動隊と剣類管理局での一例の件についての対談を予定しているようであった。双方の事情に関しては各学長には既に伝播されており、それぞれが対応する準備は早急に取り行われている。特別祭祀機動隊のメンバー達による荒魂の被害報告や討伐任務は頻繁に行われているため全国で一斉に遠征されている。今現在綾小路に訪問しているメンバーは事前に長船、平城にも立ち寄っている。特に長船学長の真庭紗南は当学院の刀使の部隊数組を別の場所へと派遣させているが、討伐任務や特別危険廃棄物の処理に間に合う人材には至ってないという。その問題を少しでも解決する方法として事前に祈神朱音のいる研究施設での警護を加えていつ如何なる難題に対処できるよう手を打ってある。そこで務めている特別祭祀機動隊にも協力を要請させ少しでも解決させられるよう現状集まってるメンバーで編成し、大まかな組み分けを行う。いくつかに分けられた組はそれぞれで任務に挺することで手の回らないところの穴埋めとしてその枠が埋められる。

 

綾小路の刀使D「それでは皆さんにお願いしたいことがありまして―――」

 

このやりとりについては綾小路だけではなく、各伍箇伝にも知れ渡っていた。それは別の区域で荒魂の出現が報告された場所にも来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙耶香「ここから約数十メートル離れた地点にいるみたい…」

 

薫「チッ、こちとら辛抱しながらも警護してやってるってんのに。マジ面倒だなぁ…」

 

エレン「サーヤ、数はどれくらいデスか?」

 

荒魂が現れたポイントに移動する沙耶香と薫、そしてエレンの三人は駆け足で急ぎつつスペクトラムファインダーで位置を確認する。沙耶香は出現した数を見て余裕の表情を見せる。

 

沙耶香「大した数じゃないから、すぐ終わる」

 

沙耶香の言葉に安堵する薫。しかし…、

 

ねね「ね~…!!(ザザザ…ッ)」

 

薫「おいねね、どうしたってんだ?」

 

突然ねねが何かを警戒するように全身を奮い立たせて唸り声を上げた。

 

沙耶香「ねね、落ち着いて…」

 

ねね「ねね~…ッ!(ビシッ)」

 

沙耶香「っ…!」

 

興奮状態のねねに触れようとした沙耶香の手を尻尾で弾いてしまう。この様子を窺った薫は強引に止めようとする。

 

薫「今日のお前、なんか変だぞ。まさか…」

 

エレン「嫌な予感がしますね―――っ!?反応が変わっていマス!」

 

沙耶香「…ねねがこんな感じになっているってことは―――」

 

薫「あぁ。オレ達の想像を遥かに超える奴ってことだな」

 

スペクトラムファインダーからは予想以上の反応を捕らえている。このまま先に進んでいくと、

 

 

 

???「グオォオオオ…!!」

 

 

 

薫「おいおい、マジかよ…」

 

ねね「ねね~ッ!!」

 

沙耶香「ねねが恐れていたのは、あの…」

 

三人が遭遇したのは、とてつもなく禍々しい荒魂のようなシルエットだった。この恐怖感は、まさに本物だった。

 

沙耶香「荒魂…なの?」

 

目の前の敵に翻弄されそうになる殺気 、これは三人にとって思いもよらない事態を招く予兆であったのだ。


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