白磁のような美しい肌。
満開の桜のような桃色の髪。
透明感のある水晶玉のような瞳。
薄く色づいた唇。
誰もが見惚れるような美貌を持った俺の幼馴染。
名前は、麻木(あさぎ)という。
「君さぁ、今日のお昼休み、Dクラスの佐伯さんのDカップおっぱいを見てたでしょ」
学校からの帰り道で、彼女はジト目でそんな事を言い出した。
「Cクラスの私のCカップじゃ満足できないってわけ?」
「それ、いちいちクラス言わなくても良くない?」
麻木は不満そうに言葉を続ける。
「あのねえ、浮気はセックスだけじゃないんだよ。あの子犯したいな、って思った時点で浮気なわけ」
「いや、そこまで思ってないよ」
「じゃあどこまで思ってたわけ?」
彼女のジト目が強くなる。
「いや、まあ、大きいなあって思って見てただけで……」
「もうそれ不貞行為じゃん。半分セックスみたいなもんじゃん」
「半分セックスってなんだよ。半分だけ挿れてるのかよ」
「半分だけ挿れたらもう完全なセックスだろう。君は馬鹿なのか?」
麻木は馬鹿にするように言って、ピンク色のツインテールを大きく揺らした。
どこか釈然としない気持ちになる。
「例えばさ、私がクラスの男子を見て、あ、あの人デカチンだぁ!って喜んで見てたら嫌でしょ」
「お前いつもそういう事ばっか言ってるじゃん」
「私が見てるのは君だけだから問題ないんだよ。君のデカチンを凝視しようと何も問題はない」
「問題しかないんだよなぁ」
「あのね、つまり、私は」
麻木が足を止める。
俺も足を止めて、彼女の言葉の続きを待った。
「……私は、不安なんだ。不安なんだよ」
最後は消え入りそうな声だった。
「わかって欲しい。不安なだけなんだ。だからさ」
彼女はそう言って、真剣な顔で俺を見る。
そっと差し出された彼女の手には、丸薬が乗っていた。
「この薬を、何も言わずに飲んで欲しい」
「なにこれ?」
「何も言わずに飲んで欲しい」
「……」
彼女の手から、ひょいと丸薬をつまみあげる。
注意深く観察するが、よくある市販薬ではないように思えた。
「何も言わずに飲んで欲しい」
壊れたスピーカーのように繰り返す彼女と、手の中の丸薬を交互に見る。
危ない予感がした。
「……麻木、前から言おうと思ってたんだけど」
俺は意図的にゆっくりと言葉を吐き出しながら、彼女の水晶玉のような瞳を見つめた。
「俺、麻木のことが好きだよ」
麻木はぱちぱちと目を瞬いて、呆けたように口を開いた。
そこに丸薬を放り込む。
「ほいっ」
「ほわっ!?」
彼女は奇妙な悲鳴をあげて、それからゴクリと喉を鳴らした。
途端、彼女の顔が青ざめていく。
「ののののの飲んじゃったじゃないかっ!」
「やっぱり変な薬なのか」
問いかけると、彼女は動揺したように視線を泳がせながら、あわわわ、と言葉にならない悲鳴をあげた。
「こ、これは感度を3000倍にする薬なんだ……」
「3000倍?」
彼女はコクコクと頷いて、あわわわ、と頭を抱える。
見ていてちょっと楽しい。
「ま、まずいぞ。く、くる」
顔色が、どんどん悪くなっていく。
流石に気の毒になって、俺は背中を擦ろうと手を伸ばした。
「お、おい、大丈夫か?」
「あああぁぁぁぁああああっ! 頭おかしくなりゅうううううううううううううう! 頭おかしくなっちゃうううううううううぅぅうううぅぅっ!」
触れた途端、彼女は身体を震わせながら叫び声をあげた。
「しゅごいのおおおおぉぉぉっ! 頭おかしくなりゅううううううう!」
「元から頭おかしいんだよなぁ」
なんだこいつ。
ドン引きして手を離すと、彼女は息も絶え絶えに俺を睨みつけた。
「ま、待ってくれ。こ、これはまずいぞ。通学路のど真ん中で淫語を連呼してしまいそうだ……」
「飲む前から既に連呼してただろ」
突然キリッと真面目な顔をする麻木にちょっとびびる。
「いつもと次元が違うんだ。いつものが勃起率80%なら、今日のそれは勃起率120%ってところかな」
「言うほど3000倍じゃないな」
ただの精力剤レベルじゃないか。
「だ、だめだ。君の近くにいるだけで興奮してオナニーしたくなっちゃうんだ」
「お前薬飲まなくてもいつもやってんじゃん」
「ああ、身体が火照る……汗がどんどん出てくる……身体中からぶしゃーって出ちゃいますうぅぅ……」
「今日38℃あるらしいしな」
「汗が止まらないんだ……た、助けてくれ」
本気で困った雰囲気を見せる麻木に、俺は息をついた。
「病院行くか。個人輸入か何かのやばい薬だろ、それ」
「びょ、病院か……そうだな……背に腹は代えられない……」
「て、点滴針しゅごいのおおおおおおおおおおっ! 死んじゃうううううううううぅぅぅぅっ!!!」