突然、世界が闇に覆われた。
視界が奪われる。真っ暗な世界に、ただ1人。
キャロルは怯えた。なんたって突然殺し合いだとかFAIRYTAIL FIELDとか……急に連れてこられてもわけがわからない。本当に殺し合いが起こるのか? みんなはどこに?
考え出せばキリがない。
ただ唯一わかることは、これは夢ではないということ……ただそれだけ。けれどそれがわかるということは、つまりはすべて本当のことで……だって、女王様が私たちを騙すわけがないから。騙すメリットがない。
数分前、目を覚ますと街の中にいたキャロルは、その街の様子に首を傾げた。キャロルの知っている街とは様子がだいぶ違う。しかし、誰もいないと思っていたこの場所に、人がいた。
キャロルの街にもいるような青年女性や、どこかの家の侍従であろう年配の女性、馬車を引く男性、駆け回る子供……彼らはこの世界で暮らしていた。
『FAIRYTAIL FIELD』と言うくらいだから、おとぎ話のような世界なのだろう……キャロルは漠然と思っていたが、実際に人がいるのを見ると不思議な気持ちになる。元の街に戻ってきたような……しかし違う。これは、現在のリュミエールではない、それはわかる。
キャロルがさまよっていると、世界は暗くなった。
そして今に至る。暗黒の世界。街の人の話し声すら聞こえなくなる。
「貴方は敵ですの?」
不意に、暗闇の中から声がした。
聞いたような声だ。キャロルは身構えた。
「あなたからしたら敵かもしれないわ……けれど私は戦う気なんて」
「本当ですの?」
なんだっけ、あの人……?
キャロルは城でのことを思い出す。確か、最初に話した……。
「本当ですのか聞いておりますのよ」
「あーーーっ!!!! 思い出したわ! あなた、あの金髪の!」
「えぇ、そうですわ……今となっては、どうしてこんなことになってしまったのか」
「私は戦う気は無いわ。とにかく今は」
「……嘘をついている目ではない……わかりました」
再び世界が明るくなる。視界の先では先程と変わらず、街の人々が騒いでいる。
それにしてもさっきの魔法は……明らかに光属性だった。ということは、王国西のサイロン谷から?
とんとん。ルーシーがキャロルの肩を叩く。突然で驚いたキャロルは、恐る恐る振り向いた。
浮かべた笑顔には、憧れと喜びが混ざっている。
「サイロン谷からお越しなのね? 私、ずっと憧れていたのよ!」
「まぁ、それはそれは……大変光栄でございますわ。してあなたは、魔法に詳しそうとお見受けします。名前を教えてくださいません?」
「もちろん! 私はキャロル=マーフィー!」
「…………もう一度お聞きしても?」
「? キャロル=マーフィーよ」
「もしかして、貴方も魔法を……?」
「えぇ」
「まぁ! ではもしかしてもしかして、火属性ですの?」
「そうよ?」
「まぁあ! 私こそ火属性様の魔法を拝みたいと日ごろ思っておりましたの! しかもマーフィー一族といえば、名門中の名門! 私はルーシー=エメリッヒと申します! 先程は失礼致しましたわ!」
「エメリッヒ!? あなたのお家こそ名門家と噂の! 名高いエメリッヒ家の3兄妹はお美しく魔法の才も長けていると、東のほうでも伺っておりましたわ!」
「まさか!」「まさかですわよねぇ!」
「「こんなところでお会い出来るなんてっ!」」
キャロルとルーシーは仲良く手を取り合う。感極まるあまりに涙も落ちそうなほど、2人は喜ぶ。
この世界では、魔法を使える人が存在する。光、火、土、水が主で、あとは創造魔法や時間魔法などがある。
魔法を使うことが出来るのは限られた人のみであり、光は王国西のサイロン谷、火は東のユクソフ火山といったように、限られた場所に住む一族のみだ。もちろんその中にも派閥というものがあり、エメリッヒ家、マーフィー家、アドルフ家、ミラー家は主な魔法の名門家とされている。
魔法を使う者達の中にも仲があり、かつての戦争や条約などにより、その関係は大きく変化してきた。
中でもエメリッヒ家、マーフィー家は、同じ光を扱う系統の家だということもあり、昔からお互いを尊重する傾向にある。
そんなわけで、2人は今感極まっているのだ。
「とはいえこんな状況、あまり喜んでもいられませんわね……」
「そうね。ルーシーさん、あなた誰か見たのかしら?」
「ルーシーでいいですわ。私は貴方を見たのが初めてですの」
「じゃあ私もキャロルと呼んで。そうね……まず、『FAIRYTAIL FIELD』はどのくらいの広さがあるのかしら? この街だけなのか、他にも街があるのか。他の候補者たちは一体どこに……」
「そうですわよね、油断はできませんわ。私は貴方を殺す気なんて全く無いですし、いえむしろそんなことをしたらそれこそ一族の恥ですけれど」
「私もよ。そもそもまだ実感が湧いていないし、他の人達がどんな人なのかも知らない……戦えるかどうかもわからないわ」
「えぇ……ねぇキャロル? 私達、手を組みませんこと? ここでは何が待っているかわかりませんし、その方が安全だと思うんですの」
「エメリッヒ家のあなたといられるなんてそれこそ光栄よ! もちろん、その話乗るわ!」
2人は再び手を取り喜んだ。
とはいえここからどうしたらいいのかわからない。いつ、どこからやってくるかわからないヒロイン候補。彼女らが殺す気があるのかどうかわからないが、あの時……城で笑っていた彼女、あれだけはどうか会いたくない。キャロルは心の中で願った。
日が暮れかかる。
いつの間にか、時間が経っていたようだ。
「ああ、安心したらお腹がすいたわ」
「そうですわね……」
今日は寝よう。2人は街の人に話しかけて、宿を貸してもらうことにした。
【キャロル=マーフィ】
強気なお嬢様?
東のユクソフ火山で生まれ育った、火属性の魔法の使い手。父が魔法議会の火属性代表という座に就いており、名門家出身である。
【ルーシー=エメリッヒ】
西のサイロン谷で生まれ育った、光属性の魔法の使い手。一族の中では最高位の家系出身で、3兄妹の末っ子。位高き姫として育てられた。
心優しい少女。