ヒロインバトルロワイヤル!   作:ささみ紗々

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ウィルチェとパオラ

「どうせヒロイン候補に選ばれても、わしは死ぬんじゃからなあ……」

 

 薄い紫色のまっすぐ伸びたストレートヘアーを風になびかせて、彼女は言う。

 

「……どうしてそう言えるんだな?」

 

 マッシュルームカットの少女が、体を縮めたままで尋ねる。

 

「予知できるんじゃわ、未来をな」

 

「ほう……予知」

 

「そうじゃ。わしはどうせヒロインにはなれぬし、誰に殺されるかもわかっとる。お主を殺すこともない」

 

「予知でそうわかったんだな? んじゃあ信じられるんだな……」

 

 うむ。頷いて、立ち上がる。遠い目をしているのは、死ぬ時をわかっているからだろうか。彼女──ウィルチェ=マーキュリーは、ひらりとその身を翻した。

 未だ縮こまっているパオラ=ウィアレは、ウィルチェの背中を目で追う。……どこへ行くのだろうか。

 

 

『FAIRYTAIL FIELD』についたものの、2人が降り立った場所は街の中心の時計塔の上。たまたま近くに降り立ったから話していただけである。

 時計塔からは、街が広く見渡せる。遠くまで見えるほどの目さえあれば、それはどこでも可能だ。

 

 流石に標高が高く、パオラは降り立った当初びびって動けなかった。そんな時にウィルチェがそばにいて──黙ったままであったが──心の支えになった。そんな彼女が敵だというのだから皮肉なものだ。

 

 

「私、ヒロインなんて望んでないんだな……」

 

 平穏な生活、ただそれだけが望み。パオラはため息をついて、立ち上がった。

 

「早いうちにここから移動しなきゃ、なんだな」

 

 服についた埃を払う。時折ヒュウと吹き去る風に身を固めながらも、急いで移動しようとする。ウィルチェのいないここは怖い。

 

 

 彼女が時計塔の中に入った時、不意に砂嵐のような音が聞こえだした。

 

 ザザ……ザ……

 

 インカム?

 パオラは耳元に手を当てる。

 

『ひやぁ~なかなか白熱のバトルを見せていただきました! まさか開始数分でバトルが始まるなんて、異例ですよ、今回は! 面白くなりそうですねえ……』

 

 メイベルは1人で喋っている。近くに誰かいるのか、それより……どういうことだろう。まさかもうバトルが?

 

『おぅ、そういえば報告がまだでしたね。ンン、残念な──候補生達には幸運なのかもしれないけれど──お知らせがあります。アプリコット=フランさんが亡くなりました!』

 

 ……誰だろう。

 思ったのはそれだった。誰かもわからない人が、同じ状況下で……自分もいつ死ぬかわからない状況の中で、もう命を絶っている。残酷な運命。

 何より怖いのが、自分なんかよりずっとヒロインの『座』を欲しいと思っている人がいて、彼女達は戦う気なんだってこと。こっちがどう思ってるかなんて、きっと彼女達には関係ない。それが何より怖い。問答無用で殺されるかもしれないんだから。

 

「はぁ……」

 

 時計塔を降りる。広がる世界は普通に平和。だけどこの中でいつ争いが起こっても不思議じゃない。

 

 どうしてここに来たんだろうか……。

 

 

 

 一方のウィルチェは、一足先に街の人々の中に溶け込んでいた。市場を珍しそうに眺め、気に入ったものを手に取っていく。お金は無いが、ウィンドウショッピング的なアレだ。

 

 ウィルチェの身につけているのは、まるで魔女を彷彿とさせるようなものばかり。濃い紫のローブを纏い、フードを深くかぶっている。その下には、丈の長い黒の古びたワンピース。手首にはブレスレット、足首にはアンクレットと、じゃらじゃら装飾品をつけている。

 近寄り難い雰囲気の彼女は、催眠術師なのだ。

 彼女の能力では人の心や行動を操ることが出来る。また、先程のように未来予知なども可能。神職と言われる仕事に近い存在である。

 

「ふむ……もう1人亡くなったのかの。やはりか」

 

 相手はリム=カールソン。城で眠そうに目をこすっていた彼女だ。人間観察をしていたが、彼女においては特に気になる点はなかったのに……人とは不思議なものだ。となると、残りの人達も争い合うのかもしれない。

 

「平和な日々など望めぬのじゃな」

 

 ウィルチェは静かに笑って、フードを深くかぶった。




【ウィルチェ=マーキュリー】
語尾が「~じゃわ」
ミステリアス少女。
催眠術や予知などの力を使うことが出来、自分の死を悟っている。

【パオラ=ウィアレ】
語尾が「~なんだな」
ビビり。透明化できる。あるものを持つと人格が変わる。
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