疵面 生き残った男の子   作:sca

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ホグワーツ超特急

 (こいつはどういうことだ…)

 

 組み分け帽子は今混乱の境地にいた。

 新入生の組み分けをして何人目なのか、そんなこととうの昔に忘れてしまった。

 新入生を適した寮に振り分ける、それにたいして絶対の自信を持っていた組み分け帽子である自分

 確かに多少の期待をしていたことは確かだ。

 『例のあの人』を倒した伝説の英雄。

 生き残った男の子ハリーポッター。

 しかしそれでも組み分け帽子はいつも道理に組み分けを行うつもりだった。

 平等に、贔屓などせずに彼を適した寮に。

 

 (こいつは読めない?…いや、“はかれ”ないんだ)

 

 計る・測る・量る、これのいったいどれが正しいのかもわからず思い知った。

 はかりきれないという言葉の意味を。

 心が無いわけでも閉心術などで壁を作っているわけでも無い。

 それにも関わらず心の色も大きさも自分では認識できない。

 

 目の前の新入生に驚愕する組み分け帽子。

 無理もないことだったろう。

 この雄を取り巻く様々な社会的事情。

 義理?人情?責任?約束?

 そんな様々な人間模様から発揮される理屈や常識、人智を超えたある種神懸かり的な力

 

 そんな力は今までの新入生相手達には望むべくもない。

 それを発揮するには彼等はあまりにも無知で。

 あまりにも弱すぎ。

 そしてあまりにも幼すぎた。

 すなわち彼らが持ち得ないもの「精神力」である。

 

 今だ混乱から冷めえぬ組み分け帽子を見ながらグリフィンドールにいた新入生ロン・ウィーズリーは思い出していた。

 あの生き残った男の子、いやあの雄との邂逅を。

 

 

 

 

 ホグワーツ新学期初日。

 大勢の魔法使いがキングズ・クロス駅の中に居るであろうそこにハリーはいた。

 白いスーツを着た彼はマグル、魔法使い族問わずに注目されていた。

 さらに隣にはオサレになりすぎて若干痩せたハグリットが居るのだ。

 嫌でも注目されるだろう。

 

 「ハリー、俺はこれから別のルートで学校へ向かうがお前さんはここの9と3/4番線からホグワーツへ向かってくれ」

 

 本来なら既に新入生を迎える為に学校に居るはずのハグリットだが彼はハリーを野放しにすることが出来ずに駅まで付いてきたのだ。

 実際のところそこまで問題を起こしておらず、起こす気もないハリーだが、目を放した隙に問題を起こしそうな気がしてならないハグリットは心労で既に五キロ痩せていた。

 

 「…ああ、分かった」

 

 返事一つにまで迫力が篭るハリーを不安に思いつつもハグリットはキングクロス駅を後にした。

 

 9と3/4番線それは9番線と10番線の間にある柵の向こうにある魔法使い族専用のプラットホームだ。

 ハリーは荷物を背負ったまま一切の躊躇無く柵に向かって歩き、そして次の瞬間には『9・3/4』と書かれた鉄のアーチを潜っていた。

 その先には紅色の蒸気機関車が停車しており、ホームの上には『ホグワーツ行特急11時発』と書いてある。

 

 「ここか…」

 

 そう呟いた瞬間か、それとも駅に付いた瞬間なのか、彼の近くから生物が消えた。

 

 「おい、ジョンどこへ行くんだよ」

 

 「僕の、僕のダニーが」

 

 「このマルフォイが…気分が悪いだと…」

 

 

 魔法使いのペットで在ろう猫やフクロウは野生の本能で感じたのだ。

 殺気でもなければ意識すら向けられていないというのに感じた威圧感。

 早く逃げなければ、一刻も早くここから逃げ出さねばならない。

 

 プラットホームは奇しくもハグリットの予想道理魔法使いのペットの暴走で騒然としていた。

 

 

 

 

 突然スキャバーズが暴れだしローブの中を移動する。

 いつもなら驚いて地面に転げまわるぐらいの事をするだろうにネズミの飼い主の少年はその場を一歩たりとも動こうとしない。

 彼の視線の先には一人の男がいた。

 この騒乱を起こした張本人である男、ハリーポッターである。

 しかし少年はその男の名前などは知らない。

 彼が例のあの人を倒した赤ん坊であったことなど知るはずもない。

 だというのに少年には分かっていた。

 この男だ、この男こそがこの状況を生み出したのだ。

 いまだ動物たちが暴れまわり魔法使いが悲鳴をあげるこの地獄を。

 

 少年が例えたようにその場は地獄であった。

 逃げ出そうと籠の中で暴れる梟、恐慌状態なのか飼い主に爪を立てる猫、叫ぶマルフォイ。

 その中を我関せずで進んでいく男がいる。

 彼が近くにいくと動物は先ほどの狂乱から一転、静止画のように動きを止めていた。

 いや、動きだけではない、呼吸も止めて瞬きすらも止めている

 草食動物が絶望的なタイミングで肉食動物に出会ってしまったかのように彼らはただ己を無価値にすることに終始した。

 呼吸をするな瞬きすらもするな、こちらに関心を持たせるな。

 彼らは魔法使いのペットは只管にこの男がこちらに意識を持ってこないように半ば祈っていた。

 比較的落ち着いている魔法使いですらも彼から発せられている威圧感によって半径五メートルほどの空間が出来た。

 示し合わせていた訳でも無く自然に。

 その中を悠然と歩く彼は、大型の獣のようであり王のようでもあった。

 

  

 

 その後彼はホグワーツ城に着くまでの汽車の中で大量の酒を飲みながらコンパートメントをまるまる一つ占領していた。

 いやそれどころか彼の乗っている車両には誰一人として乗客がいなかった。

 

 「…おい、あれって先生なのか?」

 

 「確かに生徒では無いだろうが杖も見えないしローブも着てないぜ」

 

 「でもマグルじゃ無いよな…」

 

 「そもそも人間なのか?」

 

 隣の車両からこちらを見ようとする生徒たち。

 それを気にも止めずたばこを吹かすハリー。

 そんな彼に近づく者が一人いた。

 周りの生徒の制止の声も聞かずに歩みを止めようともしない。

 そしてハリーのコンパートメントの前に立つ。

 

 「手前、本日よりホグワーツ魔法学校に入学するロナルド・ビリウス・ウィーズリーと申します。」

 

 そこでロンは息を止めた。

 そして数瞬かけて覚悟を決めた後に口を開いた。

 

 「あなたの名前は…」

 

 そのロンの問いに残っていたたばこを吸いきって、コンパートメントの中に紫煙を満たしてから答えた。

 

 「…ハリーポッター」

 

 

 此処に役者はそろった。

 

 生き残った男の子を中心に回る物語はここから始まる

  




 ハリーポッターを見たから書いたが、キャラが濃すぎて書きづらいことに気がついた。
 すまん、もう無理だ。
 クィレル先生の脛を握力で引きちぎるシーンが頭から離れない。
 女性キャラはたぶん近づかない。
 ハーさん「あそこだけ劇画タッチ…」

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