邂逅のセフィロト   作:karmacoma

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第16話 覚醒

--------------------第九階層 客室ロビー 午前10:00

 

「今回もヴィクティムとガルガンチュアを除く、階層守護者及びチームは前回と同じだ。ルカ隊6人・アインズ隊6人、デミウルゴスが遊撃だ。ヴィクティム、第一から第三階層の守護を頼む。皆の者よいな!!

 

 

「ハッ!!」

 

「ルカ、お前からも状況を報告してもらっても構わないか?」

 

 

「もちろん。みんな!これから行く所はこのナザリックから東の最果てにある竜王国、更にその真南へ突き進んだところにある。この大陸で最南東の場所にある巨大な山岳地帯だ!既に転移門(ゲート)の設置はダンジョン入口付近にセットしてあるから、転移門(ゲート)を抜けたらすぐに侵入するのでそのつもりで。あともう一点。このダンジョンの中に住むシャドウドラゴンというモンスターだが、よりによって即死判定の超広範囲ブレスを吐きかけてくる。ただしそのブレスを吐く前に、奴は必ず首と頭を天高く上方へと仰ぎ、空気を吸い込むような動作をする。それを見たら、何を置いてもすかさずシャドウドラゴンの懐付近に潜り込め!奴は周囲にブレスは吐きかけられても、自分の腹の下にまでは首が届かず、ブレスは届かない。これがこのダンジョンを攻略するための最低条件だ、みんな頭に叩き込んでおけ!!」

 

 

「了解!!」

 

 

「よし、各自フルバフ準備と装備の最終点検。即死回避系のアイテムがあれば、一応身につけておくように。イグニス・ユーゴ、前に渡したデス・リリースまだ持ってる?」

 

 

「もちろんですルカさん!肌身離さず装着していますよ」

 

 

「俺も同じでさぁルカ姉、風呂はいる時も肌身離さず付けてますぜ!」

 

 

「フフ、なら心配なさそうだな。しかしだからって油断するなよ!さっき私が言った通り、敵がブレスの構えを見せたら即座に竜の腹の下に飛び込む。分かったね?」

 

 

「「了解!」」

 

 

転移門(ゲート)を抜けるとそこは標高5000メートルは超えるであろう氷雪地帯の山中だった。猛烈な吹雪で一歩前すらも見えないまま、チームはルカの背中を追いかけていく。しばらくすると、目の前に巨大な氷穴が姿を現した。優に全高全幅70メートルはあるだろう。

 

 

「さささ、寒い!!ここが入り口なんですかいルカ姉?」

 

 

「もう、このくらいの寒さに耐えられなくてどうするの」

 

 

「だ、だってよ~俺は元々テンプラーですし、炎には滅法強いですが、氷結となるとさすがにきついっす...」

 

 

「しょうがないなあ。魔法最強化(マキシマイズマジック)氷結耐性の強化(プロテクションエナジーフロスト)!」

 

 

ユーゴの体が青く光り、外界の冷えた空気から遮断されて一気に温かくなっていった。周りを見渡すと、同じような青色の光が仲間の体も覆っている。

 

 

「ユーゴにだけかけるのは不公平だからね。みんなにもかけてあげた」

 

 

「いや~、面目ねえルカ姉...」

 

 

「よし、ではみんな行こうか! 私が前方を警戒するから、みんなは左右後方の警戒よろしくね!」

 

 

「了解!!」

 

 

ルカはオートマッピングスクロールをつぶさに見ながら前方の視界を確認し、新たなトラップが設置されていないかも警戒しながら、一歩一歩前進していった。

一体どれだけ歩いたのだろうか。3時間は優に歩いた先に、小さなドーム状の小部屋があった。そしてその地面には赤色の魔法陣が部屋の床いっぱいに張り巡らされていた。

 

 

「トラップですね。ルカさん俺が解除して.....」

 

 

「だめだ、手を触れるな!!ここは私とミキでやる。この魔法陣を解くには手順がいるんだ。ただ単に解除しようとすれば、大爆発を起こすよう仕組まれている」

 

 

イグニスが解除しようとしたのをルカは咄嗟に引き留めて、ミキを隣に付かせて魔法陣に手をかざした。

 

 

「ではルカ様、私から参ります。魔法最強化(マキシマイズマジック)闇の追放(バニッシュザダークネス)

 

 

魔法を唱えた途端、床に描かれた魔法陣の色が赤から黄色へと変化した。

それを受けてルカも魔法を唱える。

 

 

魔法最強化(マキシマイズマジック)死の影の追放(バニッシュデスズシャドウ)

 

 

その魔法を唱え終わり呼吸を整えると、ルカとミキは謎の術式を一斉に唱え始めた。

 

 

魔法最強抵抗難度強化(ペネトレートマキシマイズマジック)火の門の解放(オープンファイアーゲート)

 

 

魔法最強抵抗難度強化(ペネトレートマキシマイズマジック)風の門の解放(オープンエアゲート)

 

 

魔法最強抵抗難度強化(ペネトレートマキシマイズマジック)精神の門の解放(オープンスピリットゲート)

 

 

魔法最強抵抗難度強化(ペネトレートマキシマイズマジック)土の門の解放(オープンアースゲート)

 

 

魔法最強抵抗難度強化(ペネトレートマキシマイズマジック)水の門の解放(オープンウォーターゲート)

 

 

最後に二人は、全く同じ魔法を口を揃えて詠唱した。

 

 

「「魔法三重最強(トリプレットマキシマイズ)位階上昇化(ブーステッドマジック)聖なる献火台(イクリプストーチ)」」

 

 

その途端、地面に描かれた魔法陣の真上に巨大な青白い火の玉が出現し、その火の玉が地面にゆっくり落下すると同時に魔法陣が崩れ去り、完全に消滅してしまった。後に残ったのは、地面に穿たれた巨大な穴と、地下の先に続くであろう螺旋階段が姿を現した。

 

 

「よし終わり。この先はかなりの危険地帯だから、みんな気を引き締めて行くんだよ」

 

 

「そ、それよりもルカよ。今唱えた術式は一体何だったのだ?」

 

 

「あれは、常闇の竜王(ディープダークネスドラゴンロード)がかけた暗黒術式を解除する為の封印解除呪文。いわゆる多重ディスペルってやつかな」

 

 

「...そんなに厄介なトラップだったのか?」

 

 

「その通り。私達も初めてここに来た時はこの謎を解くのに苦労したよ。即死、壊死、溺死、爆死、圧死....全く、私のダークスポーンを何体犠牲にしたことか」

 

 

(...なるほど、モンスターを召喚して一つ解呪するごとに試していったわけか)

 

 

アインズは心の中で独り言ちたが、焦ることなくルカ達に返答した。

 

 

「なるほどな。こういった重複系の、しかも攻性防壁特性も持った魔法陣をトラップとして仕掛けられるとはな。お前達といると本当に勉強になるな」

 

 

「アインズもすぐに慣れるさ。大丈夫」

 

 

ルカはアインズにウインクして答えた。自分と同等にして、友人となったプレイヤーからかけられる優しい言葉とはこのようにうれしいものなのかと、アインズは実感していた。

 

 

ルカ達一行はその螺旋階段を慎重に降り、一本道を暫く歩き続けると、恐ろしく巨大な空間に出た。いやこれは空間というより、巨大な地下聖堂(クリプト)を思わせるような重厚な空気が流れている。その最奥部、暗くて先までは見通せないが、敵視感知(センスエネミー)のレッドライトがルカ達の脳裏に強く明滅していた。

敵の数は合計3体。しかも足跡(トラック)で確認すると、相当な大きさを持つ個体だと分かった。アインズとルカ達は抜刀し、ヒーラー役を後方に配置して紡錘陣形を取りつつゆっくりと前進する。やがて壁にかけられた松明の光がその”何か”を捉えた。ルカが即座に叫んで指示を飛ばす。

 

 

「状況、シャドウドラゴン3体!!弱点属性は神聖と氷結だ!いいか、こいつらは人の言葉を理解できる知能を持つ! 私が事前に教えた作戦を思い出せ!!一匹ずつ確実に仕留めるぞ、まずは向かって右のドラゴンからだ!! コキュートス、アルベド、ユーゴ、前衛に立て!! アインズ、後方から離れた位置で火力支援を頼む!! 右のドラゴンを壁際へ追い込んで押し付けろ!!シャルティア・マーレ、セバス、イグニス! 超位魔法準備!! アウラ・デミウルゴス、ミキ、ライルは私に続け、真横から遊撃に回るぞ!!」

 

 

「了解!!!」

 

 

「マズハ右翼か、コレナラ遠慮ハイラヌナ。アチャラナータ!!」

 

 

コキュートスが敵に突進しながらそう唱えると、4本の武器に青い炎が宿ったかの如く燃え盛るエフェクトが映し出された。何かの武器属性付与(エンチャント)にも似たエフェクトだったが、実際はどういう効果なのか得体が知れなかった。

 

 

しかもその内の右手上腕に持たれた武器一本は、とても武器とは思えないような外見をしていた。丈は6尺程と非常に長いが、一見すると錆びた金属の棒にしか見えなかった。唯一の救いは、その両端が鋭利に尖っている事くらいであった。しかしこの武器こそが、ガル・ガンチュアでの戦いで手に入れた、正にコキュートス専用とも呼べる強大な武器だとは、その時誰も知る由はなかった。

 

 

 

同じく右翼ドラゴンに向かい突進するアルベドの手には、怪しく黒銀に光る世界級(ワールド)アイテム、ギンヌンガガプが握られていた。その形状は長く歪で、斧のようでもあり、剣のようでもあり、槍のようでもあった。

 

 

「ウォールズ・オブ・ジェリコ!!」

 

 

アルベドは武器を前面で高速回転させ、敵の物理攻撃を全ていなした後、コキュートスの放つ大技に備えて時間を稼いでいた。

 

 

「アルベド、助カッタゾ!!コノ持チタル力、今コソ全テヲ解放セシ時!!唸レ天羽々斬(アメノハハキリ)!!!マカブルスマイトフロストバーン!!!」

 

 

全ての武器属性付与に氷属性のついた長重武器を、全身を鞭のようにしならせながら、壁に押し付けられたシャドウドラゴンの右横腹に向かい恐ろしいスピードと威力の攻撃を叩きつけていく。特にガル・ガンチュアでも滅多にドロップしないと言われていた世界級(ワールド)アイテム、天羽々斬(アメノハハキリ)の威力は凄まじく、一刀振り下ろされる度に剣のサビが落ちていき、その白銀に輝く美しい刃を露わにし、シャドウドラゴンの内臓が零れ落ちるほど鋭く深い傷を負わせていた。

 

 

そして敵の死に際に放ったアルベドの連撃により、まずシャドウドラゴン一匹を倒した。その時、中心にいたドラゴンの喉元が膨れ上がり、天を仰いで上空を見上げた。

ルカが素早く全員に伝言(メッセージ)を共有し、指示を飛ばした。

 

 

「来るぞ、即死ブレス!!!全員中央ドラゴンの懐かまたは腹の下に退避、急げ!!」

 

 

上空から突撃したデミウルゴスがまず一撃を頭部に加え、その視界を奪う。

 

 

「悪魔の諸相・触腕の翼!!」

 

 

数発が目に直撃したようで、激しく首を振りながら所かまわずのたうち回っている。

 

 

それを見て全員が中央ドラゴンの懐に逃げ込む。そしてドラゴンは黒煙のような禍々しいブレスをアインズ達にぶつけようとしたが、腹の下に入られては首が届かず、射程が完全に外れてしまっていた。

 

 

「チャンスだ、全員で攻撃を真上の腹に叩き込め!!相手はこちらに反撃できない、超位魔法以外の最大火力でこいつを片付けるんだ!!

 

 

「了解!!!!」

 

 

そういうが早し、全員が武技や魔法による連続技をここぞとばかりに叩き込み、視力を失っている事もあり身動きが取れず、中央ドラゴンの腹はズタズタに切り裂かれ、その場に崩れ落ちて消え去った。残りはあと一匹のみだ。

 

 

『シャルティア・マーレ・セバス・イグニス!準備は出来てる?』

 

 

『こちらはOKです。ただ一人を除いて....』

 

 

『あー、そういう事。こらイグニス!!ただ超位魔法撃つだけでしょう?何をそんなに動揺してるの?』

 

 

『い、いえルカさん、うれしいんです』

 

 

『...へ?』

 

 

『ついこの間までただのカッパープレートだった俺が、まさか超位魔法を撃てるなんて....ルカさん、俺感激です!!!』

 

 

『わかったわかった!その話はあとでたっぷり聴いてあげるから。それよりも、ちゃんと超位魔法のキャスティングタイムは終わってるの?』

 

 

『はい、みなさんいつでも撃てる準備は出来ております』

 

 

『よし、地上組は後方入口付近に退散!!今だイグニス、やれ!!!』

 

 

 

「超位魔法、聖人の怒り(セイント・ローンズ・アイル)!!」

 

 

急襲する天界(ヘヴンディセンド)!!」

 

 

竜王の息吹(ブレスオブドラゴンロード)!!」

 

 

持続する水霊の寒波(エンデュアウォーターズチル)!!」

 

 

 

イグニスが放った優に直系5メートルはある神聖属性の超高速連弾がシャドウドラゴンの胴体に炸裂し、青白い火柱を幾重にも上げて大ダメージを与えた。そこへ追い打ちをかけるようにシャルティア の広範囲神聖属性爆撃、セバスの強烈な氷結属性のドラゴンブレス、そしてマーレの超位魔法にしてDoTという凶悪な火力を誇る氷結属性攻撃を食らい、最後のシャドウドラゴンが消滅した。

 

 

そして消え去った死骸の中心に、何かが突き立てられている。ルカがそれを引き抜いて何かを確かめると、すぐに後ろにいるユーゴを呼び、こちらへと招いた。

 

 

「...やった!!ユーゴ、早くこっちに来て。超超レアな専用武器がドロップしたよ!!」

 

 

「おおー、マジすか!!今行きまーす!!」

 

 

その剣は、柄から刃の半分までが青色に鈍く光り、刃の中心から切っ先がグラディエーションがかかったように漆黒の色を成し、その周囲を凶悪な赤いオーラが覆っているという、重厚且つ禍々しい剣だった。

 

 

「これはカースドナイトの装備できる最強の剣だよ。鑑定して効果を確認しておいたほうがいい。はい、これはもう君の剣だ」

 

 

「こんな貴重なもんもらっちまって、ヘヘ!恩に着ますぜルカ姉!道具上位鑑定(オールアプレイザルマジックアイテム)

 

 

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アイテム名; サンダンサー

装備可能スキル制限:片手剣300%

装備可能クラス制限:カースドナイト

攻撃力:5200

効果:INT+300、CON+1000、SPI+200、闇属性付与150%、闇属性Proc発動確率10%、獄炎Proc発動確率50%、麻痺発動確率10%、攻撃速度上昇+40%、命中率+200%、エナジードレイン発動確率+10%、

 

耐性:世界級(ワールド)耐性:120%  

  神聖耐性:150%

   闇耐性:150%

   炎耐性+70%

 

アイテム概要: 地獄の獄炎を周囲に巻き散らすこの武器を持ったカースドナイトの揺らめく姿が、まるで太陽の上で剣舞を舞うが如き姿に映ることから、サンダンサーという名称がつけられたいわく付きの片手剣。この剣の真骨頂はその剣自体の攻撃力もさることながら、カースドナイト本来の火力である魔法攻撃力を一気に引き上げる点にあり、これにより遠距離からの火力殲滅力を驚異的に高める事ができる。

 

修復可能職;ルーンスミス、ヘルスミス

必要素材:サルファー20、オブシディアン10、トゥルースチール50、ダイヤモンド20

 

 

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「すっ....すごい効果じゃないっすか!さすがカースドナイト最強の専用剣!! ....って、こんな超超レアアイテム、俺がもらっちゃってもいいんですかルカ姉...?」

 

 

「もちろん。LV150のカースドナイト以外でこれをまともに使える人なんかこの中にいないよ。その世界級(ワールド)アイテムにより君は更に硬くなり、更に火力が増す。遠近両方で驚異的な火力を振るえるだろう。CONもグンと引き上げられたし、これからは気にせずガンガン前に出て戦っても大丈夫だから、よろしく頼むよユーゴ!」

 

 

「ありがてえ、合点承知でさぁルカ姉!!」

 

 

足跡(トラック)。よし、この先にもう敵はいない。次の地下2階が最下層だ。恐らく常闇の竜王(ディープダークネスドラゴンロード)もこちらの存在に気付いている。今ここでフルバフし直しておこう。それとポーションでHPとMPの回復も忘れずにね」

 

 

フルバフとフル回復が終わり、地下聖堂(クリプト)の先を進むと、地下へと降りる階段の入口が見えてきた。ルカとアインズ達は慎重にその階段を降り、地下2階へと到達した。

 

 

しかしその降りた先の目の前は奈落へと続く崖っぷちだった。前方約700メートル先の祭壇上に、常闇の竜王(ディープダークネスドラゴンロード)の眠る姿が見えているが、周囲を見渡しても橋らしきものが見当たらず、「これは集団飛行(マスフライ)で行くしかないか」と話していた時だった。崖の底を覗いていたルカの足元が崩れ落ち、バランスを崩して崖の下へ真っ逆さまに落ちようとした時だった。咄嗟にイグニスとユーゴがルカに向かって飛び出した。

 

 

アレックス(・・・・・)!!!掴まれ!!」

 

 

イグニスとユーゴが咄嗟にルカへ手を伸ばし、間一髪その両手を握って落下は食い止めた。しかしルカは脱力したまま、イグニスとユーゴを見て放心状態となっている。

 

 

「何をしているんですアレックス!!早く私達の手を掴んで!!」

 

 

「このままじゃずり落ちちまうぞ、いい加減にしろアレックス!!」

 

 

そこでルカは我に帰り、2人の掴んだ手を握り返して、2人に引っ張り上げてもらった。2人は息を切らせながら冷汗を流している。

 

 

ルカはその場にへたり込んだまま、腰が抜けたかのように動かない。

 

 

「...今、二人とも私の名を何て.....?」

 

 

「はあ....全く、今更忘れたなんて言わせませんよ、アレックス・ディセンズ」

 

 

「俺達を置いて意識を失った時にゃあ、そりゃあもう大慌てだったんだぜアレックスよぉ」

 

 

「うそ....ほんとに、あの(・・)イグニスとユーゴ...なの? でも何で今までそれを黙って....?」

 

 

「ここで話すと少し長くなるんですが...まあいいでしょう。アレックス、あなたがユグドラシルβ(ベータ)に潜ったまま長時間戻ってこなかったので、心配になった私があなたの体に共有をかけようとした所あなたのヘッドマウントインターフェースが拒絶反応を示しました。そこで詳しくスキャンしてみると、DMMO-RPGにダイブしたまま意識が戻ってこないどころか、その居所すらもトレース出来ない事に気が付いたんです。

 

 

そこで私がバイオロイドの制御システムをオーバーライドし、精密優先型のユーゴもスリープモードから解除して、次にコンソールルームへのドアをバイパスして無理やりこじ開けました。それを見て慌てた研究員が緊急警報用のボタンを押そうとしたのですが、私達は危害を加えるつもりは無く、アレックス・ディセンズが緊急事態だという事を詳しく説明すると、ようやく理解してもらえました。その後急いでアレックスの体に異常がないか地下5階の武器保管庫の扉を蹴り破り中へ突入して確認しましたが、幸いバイタルサインは良好でした。

 

 

そこで私達は、用意してあった実戦用ヘッドマウントインターフェースを被って研究者達と協力し、演算能力を強化してアレックスの向かったポイントへとトレースを開始しました。研究員達が私達のサイバースペース内に置ける現在位置をダウンロードしながらトレースするという分担作業で、あなたの行方を徹底的に探していた所、あろうことか、あなたの意識はあの危険なダークウェブを超えて、ロストウェブにまで達していた。危険を察知した我々は、アレックスが使用していたバーチャル・クラシファイド・ネットワーク(VCN)をアップデートし、より強固な防壁で外部を固めて、他人があなたの体に誰も害を及ぼせないよう処置を施しました。そこからさらに我々もVCNで武装し、サーバ内を徹底的に探索した結果、ダークウェブとロストウェブにある2つのサーバがシステムリンクしている事・アレックスはその2つのサーバ間を往来している事・そしてそのサーバの両方共が日本のゲームメーカー、エンバーミング社と軍が共同出資で購入している事が判明しました。

 

 

私達はそれをブラウディクス本社にすぐさま通報し、今すぐアレックス・ディセンズに行っている違法行為をやめさせるよう会社に申し入れました。しかし帰ってきた返答は、彼ら軍とエンバーミング社は世界政府の命令で極秘実験を行い動いているに過ぎず、よってその為に必要な被験体であるアレックス・ディセンズの肉体を軍に明け渡せという何とも理不尽な回答が帰ってきたのです。

 

 

この返答を受けた国営企業であるブラウディクス社は激怒し、軍ではなく直接世界政府へと抗議しました。すると確かに軍は世界政府の命令で、フルダイブ型インターフェースで五感を全てONにした際、長期的に見てどのような影響があるのかを調査するための実験・プロジェクトネビュラを行っている事を白状しました。私達はそのプロジェクトネビュラ被験者の中に、ブラウディクス社の中でも最重要国家機密の人間がその実験の被験者となっているアレックス・ディセンズである事を伝えると、政府はその事実を知らず大慌てで軍とエンバーミング社に居場所を捜索するよう命じました。

 

 

しかしその結果、アレックス・ディセンズの居場所は判明しましたが、彼はダークウェブ内のユグドラシルサーバ内で大変優秀な成績を残しており、軍としても政府としても、もう少し実験経過を観察させてはもらえないだろうかという嘆願書がブラウディクス社宛にメールで送られてきたのです。ブラウディクス社としても政府の意向に真っ向から反対するわけにもいかず、そこでブラウディクス社は条件を出しました。まず、軍が被験体として扱っているアレックス・ディセンズは、ブラウディクス社内に置いて最重要機密事項である為、その肉体の明け渡しには断固応じられない事。

またブラウディクス社は軍とエンバーミング社とは別のアプローチで独自にダークウェブとロストウェブを調査し、アレックス・ディセンズ本人の意思確認を取り、本人が帰還を望むのであればブラウディクス社はこれを独自に行い、それに対し軍及びエンバーミング社からの一切の苦情は受け付けない事を条件として彼らに飲ませました。

 

 

そこでようやく本格的な捜索が開始されました。ラボ内の量子コンピュータ及び私達イグニスとユーゴの生体量子コンピュータと軍用ヘッドマウントインターフェースを使用して超高速演算を可能とした状態で追跡を開始しましたが、そこはやはり匿名性の高い広範囲なダークウェブとロストウェブです。アレックス自体がVCNを使用している事もあり、おおよその場所は特定できるのですが、そこへ通信を送ろうとしてもゲーム内のフォーマットではない為、システムから拒絶されてしまうのです。

 

 

こうなれば、私達自身がこのダークウェブ版ユグドラシルに乗り込むしかないと考えた私と研究者達はその考えに同意し、可能な限り年代や場所等の差異が無いようロケーションを計算しました。するとその内部にあるカルネ村という小さな村落が、アレックス達が行動している範囲で最も近く、転移しやすいとの事でした。そこからアレックスのデータを検閲していた所、彼は現在ルカ・ブレイズと名乗っており、脳波パターンを調べてみると、驚いたことに女性のアバターを使用している事により、心までもが女性の精神・脳波パルスに変化している事に気づきました。そしてその周りには、ミキ・バーレニとライル・センチネルという、コアプログラムに接続された高性能AIが護衛として付き従っている事も確認できたのです。そこでラボの研究班と私・ユーゴはダークウェブ内を構成する回路を徹底的に精査し、現実世界への帰還用プログラムとして、ユグドラシル内のアイテムであるデータクリスタルという形を取れば、それを使う事で帰還させる事が可能であると突き止めました。

 

 

そのプログラムが完成した段階で我々はそのプログラムを複数個持ち、バイオロイドであり生体量子コンピュータを搭載する我々が、非正規のアイテムを持ち込む為、止むを得ず正規のログインルートをバイパスして直接アレックス達を救出しようという作戦を試みたのですが、ここであろうことか想定外のエラーが発生しました。

冒険者クラスの人間に意識をコピーするはずが、それをシステムが拒絶し何と全く関係のない人間の子供に我々2人は転移されてしまったのです。その時の記憶の差異によるショックのせいで、我々本来の目的であるアレックス救出の記憶が脳の奥深くに眠らされてしまい、私達は年を重ね、幸か不幸か同じ冒険者となったわけです。そして先日のフォールスによる洗礼でセフィロトになった際、フォールスが私達の記憶を呼び覚ましてくれたおかげで、本来の目的を思い出す事が出来たという訳です」

 

 

「そういう事でさぁ。俺も実はついさっき全てを思い出したってわけです、アレックス...てか、何かこの呼び方しっくりこねえなあ。ルカ姉のままでいいか!」

 

 

「そうだなユーゴ。そういうわけでルカさん、お迎えに上がりました。私達と共に、現実世界へ帰りましょう」

 

 

「うそ....ほんとにあのイグニスとユーゴ...なの?」

 

 

ルカは信じられないと言った様子で、大粒の涙を零した。

 

 

「...私と遠隔(リモート)リンク試験を何度も行った事をお忘れですか?」

 

 

「俺なんか結局生身のルカ姉に格闘戦で一度も勝てなかったんですぜ...ったく、あの時はさすがに俺もへこみましたぜルカ姉」

 

 

「ほんとに...ほんとなんだね」

 

 

ルカは泣きながら、笑顔でフラフラと2人に近づいていく。

 

 

「ルカさん、これを受け取ってください」

 

 

イグニスはウエストポーチから、赤色に輝くデータクリスタルを取り出した。

 

 

「これを使えば、元の世界に帰れ.....

 

 

「イグニスーー!!!」

 

 

彼が言葉を全て言う前に、ルカはイグニスの胸元に飛び込んで抱きしめた。

 

 

「会いたかったよイグニス、ユーゴ....まさか名前だけじゃなく、中身まで同じだなんて私、全然気づかなくて....」

 

 

「それはそうです。私自身もつい先ほど、あなたが足を滑らせて崖から落ちようとした瞬間に思い出したのですから」

 

 

「気づくのが遅くなってすまねえ、ルカ姉。でもこうして思い出せたんだ。現実世界はもう目の前だ!さあ、一緒に帰りやしょうぜ!」

 

 

そこでルカは後ろを振り返った。そこにはアインズ達がおり、ルカに向かって大きく頷いた。

 

 

「まさか、こんなに近くにお前達が現実世界に帰る答えが潜んでいたとはな。正直驚いたが、これでそのイグニスとユーゴの元来持っていた強さも納得がいくわけだ」

 

 

「アインズ.....行こう」

 

 

「....何だと?」

 

 

「行こう!常闇の竜王(ディープダークネスドラゴンロード)を倒しに!!」

 

 

ルカはアインズ達に笑顔を向けた。

 

 

「しかしこの戦い、お前にとってはもはや何の価値も...」

 

 

「そんな事はないよ!私、この世界好きだもん。この200年で無駄足は何度も踏んだけど、無価値だなんて思った事、私一度もないよ」

 

 

「....そうか。では最後の総仕上げと行くか!!」

 

 

「おおーー!!」

 

 

その場にいた皆が雄叫びを上げた。

 

 

「ミキ、頼めるかい?」

 

 

「かしこまりました。集団飛行(マスフライ)

 

 

ルカとアインズ達全員の体が浮き上がり、深さ200メートルはある谷底を通り過ぎ、向かいの崖まで皆が降り立った。その先に祭壇があり、最上部に漆黒の竜...常闇の竜王(ディープダークネスドラゴンロード)が横たわったまま、目だけをこちらに向けて睨みつけている。それを受けてルカとアインズは、背後にいるミキやライル、階層守護者達ですら恐れおののく程の凝縮された恐るべき殺気を放ち、常闇の竜王(ディープダークネスドラゴンロード)へと叩きつけ、宣戦布告した。

 

 

(ビリビリ)という空気の震える音と共に、2人のLV150プレイヤーが放つ本気の殺気を受けて、常闇の竜王(ディープダークネスドラゴンロード)もその巨体を立ち上げざるを得なかった。常闇の竜王(ディープダークネスドラゴンロード)は、アインズ達に問いかけた。

 

 

「...何だお前らは...。ここへ何をしに来た?」

 

 

アインズが嘲笑混じりに答える。

 

 

「知れた事。貴様の首を取りに来たのだよ」

 

 

「ほう。一応聞くが、私はお前達の事を知らないし、お前達に危害を加えた記憶もない。それでも私を殺すというのだな?」

 

 

「...フン、貴様が持つ二十をよこすと言うのなら、黙って引き下がらんこともないがな。どうする?常闇の竜王(ディープダークネスドラゴンロード)よ」

 

 

「.....なるほど、それが狙いか。この存在を知るという事は、貴様らユグドラシルのプレイヤーか」

 

 

触れば斬れそうなほど研ぎ澄まされた殺気を放ち続けながら、ルカが返答する。

 

 

「だったらどうする?」

 

 

「...私は過去に、貴様らのようなプレイヤーを数名、止む無く殺している。それでも私と戦うというのだな?」

 

 

「...それは何年前の話だ?」

 

 

「おおよそ250年ほど前の話だ」

 

 

「そうかい。ならば思い知れ。そのプレイヤーの無念と、人間の底すら見えない強さ・そして本当のプレイヤーの恐ろしさをな。 無限の輪転(インフィニティサークルズ)!!」

 

 

魔法最強化(マキシマイズマジック)現断(リアリティスラッシュ)!!」

 

 

 

ルカとアインズの斬撃が常闇の竜王(ディープダークネスドラゴンロード)の胴体を切り刻み、多量の出血を促した。それと同時ドラゴンは怒りの咆哮を上げ、ミキ・ライル・階層守護者・イグニス・ユーゴが左右に分かれて指示を待った。

 

 

「アルベド・コキュートス!!即死に注意しつつブロックに集中!こいつの弱点は神聖系と時空、呪詛、星幽系だ!!シャルティア、ユーゴ、アインズ、超位魔法準備!!マーレはアウラと前衛の回復及び火力支援を頼む!イグニスはダブルヒーラーだ、前衛に貼り付け!!デミウルゴス、セバスはマーレの直衛に付け、隙があれば攻撃しろ!ミキ・ライルは遊撃隊だ、いいな!」

 

 

「了解!!」

 

 

常闇の竜王(ディープダークネスドラゴンロード)はさすがに今まで通りの敵という訳には行かず、ルカやアインズ達のいる頭上に神経を尖らせていた。上空に向かって獄炎の火球を放ってくる。みな避けてはいるが、このままでは消耗戦になってしまう。それだけは何としても避けたかった。

 

 

4人が頭上に両手を掲げ、巨大な魔法陣が折り重なっていく。そこへルカが2人に指示を飛ばした。

 

 

『ライル、ミキ、今だ!!!』

 

 

呼吸の盗難(スティールブレス)!!」

 

 

影の感触(シャドウタッチ)!!」

 

 

(ビシャア!!)という音と共に常闇の竜王(ディープダークネスドラゴンロード)の動きが止まった。影の感触(シャドウタッチ)により約9秒間一切の身動きが取れなくなり、その効果が切れても呼吸の盗難(スティールブレス)の効果時間は21秒残る。移動速度-85%の移動阻害(スネア)に強烈な毒DoTのおまけつきだ。これで上空への攻撃も止められ、その後の地表への攻撃の手も緩められる。ルカ達がキャスティングタイムを消化している間、地表では怒涛の攻撃が続いていた。

 

 

弱点の捜索(ファインドウィークネス)一万の斬撃舞踏(ダンスオブテンサウザンドカッツ)!!!」

 

 

「三毒ヲ斬リ払エ倶利伽羅剣! 不動明王撃!!!」

 

 

ライルのデバフが効いているとあって、この2人のコンビネーションプレイは抜群の破壊力を誇り、この2撃で相手のHPを2/6ほどを消し飛ばす大火力だった。時間さえあれば、恐らくこの2人だけで倒す事が可能だろう。しかしルカは油断しなかった。この前のアウラとマーレのような目にだけは絶対に合わせないし、尚且つ相手は初めて戦う相手だ。何をしてくるのかをじっくり観察する必要がある。

 

 

頭上にいる4人のキャスティングタイムが終了した。ルカが伝言(メッセージ)で全員に指示を飛ばす。

 

 

「今だ、全員後ろへ引け!!」

 

 

周囲にいた者達が一斉に常闇の竜王(ディープダークネスドラゴンロード)から後ろへ飛び退いた。

 

 

4人が呼吸を合わせて、下方へ両腕を叩きつけた。

 

 

 

「超位魔法・次元の崩壊(フォールオブディメンジョン)!!」

 

 

急襲する天界(ヘヴンディセンド)!!」

 

 

致命的な苦痛(デッドリーペイン)!!!」

 

 

永遠の異次元(アナザーディメンジョン)!!!」

 

 

 

弱点属性の超位魔法4連撃を上空から食らい、常闇の竜王(ディープダークネスドラゴンロード)は無残にも地面に叩き伏せられた。しかしそれでもまだ息がある。恐るべきタフさだとルカは認識し、最後の最後まで何をしてくるか分からないという気持ちが消えなかった。ルカは素早く地面に降り立ち、前衛に攻撃を指示しようとしてきたその時だった。常闇の竜王(ディープダークネスドラゴンロード)は瀕死の状態で呪文を唱えた。

 

 

魔法最強化(マキシマイズマジック)約櫃に封印されし治....(アークヒーリ.....)

 

 

影の感触(シャドウタッチ)!!!」

 

 

ルカは刹那の瞬間で麻痺の魔法を唱え、敵のヒールを阻止した。

 

 

 

伝言(メッセージ)、各員へ!これより無敵化の魔法を使用する。魔法がかかったと同時に全員最大火力で集中攻撃だ、こいつに回復させる隙など一切与えるな!!完全に殺し切るんだ!!』

 

 

『了解!!!!』

 

 

虚数の海に舞う不屈の魂(ダンスオブディラックザドーントレス)!!』

 

 

 

無敵化が有効な10秒間の間、13人全員の意思が一つとなり、火力という火力の全てを常闇の竜王(ディープダークネスドラゴンロード)に叩きつけた。

 

 

そして敵は絶叫と共に、遂に倒れた。

 

 

「はぁ....はぁ、やったか?」

 

 

「ドウヤラソノヨウダナ...」

 

 

ライルがコキュートスの肩を借りて、祭壇から降りてきた。

 

 

「お姉ちゃあん!だだ、大丈夫?」

 

 

「...あんたねー、大丈夫だったらこんなに倒れてないわよ。ほら、さっさとヒールしなさい」

 

 

「わ、わかったよお姉ちゃん」

 

 

「...フフ、でも強かったなあ、あのドラゴン。びっくりしちゃった」

 

 

「か、火力も凄かったけど、HPが異常なくらい高かったよね」

 

 

「そうねー。何をしたらあんなHP持てるのか、不思議でしょうがないけど。まああたしらはそいつに勝ったんだし、もうどうでもいいか~」

 

 

アウラは仰向けになったまま、マーレのヒールを受けて目をつぶった。

 

 

 

「アルベド、アルベド!!しっかりしてください、大丈夫ですか?!」

 

 

「ん...あ....デミ..ウルゴスね。...よかった、その様子...だと..倒せたのね」

 

 

「ええ、もちろんですとも!あなたの防御スキルがなければ、皆が全滅の恐れすらありました。ルカ様、ルカ様!!!至急アルベドの治療をお願いできますでしょうか!!」

 

 

「わかった、すぐ行く!!」

 

 

ルカが駆け付けた時、アルベドの足に巨大な岩石がのしかかり身動きが取れずにいた。ルカとデミウルゴスでその岩を息を合わせてどかすと、そこにあるはずのアルベドの足が無かった。左足の膝から下が押しつぶされて、跡形もなくなっていたのだ。

 

 

「アルベド、バカ!!こんなに無茶して....前衛は無茶禁物だって、あれほど教えたでしょう?!」

 

 

「...で...ですがルカ...あの竜...明らかにプレイヤーを超える力を....持っていました....わた..しは、どうしても、それに勝ちたかった....」

 

 

「それが無茶しすぎだって言ってるのよ...もう、あんまり心配かけないでよね」

 

 

ルカは涙を拭い、アルベドの左足とみぞおちに手を乗せて意識を集中し、魔法を唱えた。

 

 

魔法三重最強(トリプレットマキシマイズ)位階上昇化(ブーステッドマジック)大致死(グレーターリーサル)

 

 

(ブゥン!)という音を立て、アルベドの無くなった膝から下の足が、まるで細胞が再生するかのように足の形を成し、みるみる復活していく。同時に体中に追った深手も完全に治癒された。

 

 

「....ありがとう、ルカ」

 

 

「もうお願いだから、こんな無茶やめてね?」

 

 

「ええ...」

 

 

ルカは柱に寄り掛かって座るアルベドを優しく抱き寄せた。

 

 

「デミウルゴス!君はケガしてない? セバスは?」

 

 

「私共なら大丈夫です、ご心配をおかけしました」

 

 

 

回りを見ると、少し先でミキがアインズとコキュートス、ライルの治療を行っていた。急いでルカが走り寄る。

 

 

「ミキごめん、一人でやらせちゃって」

 

 

「いいえルカ様。アインズ様は私が治療しますので、コキュートスとライルの治療をお願い致します」

 

 

「わかった、まずライルの方がひどそうだね」

 

 

ルカはライルの額と腹部に手を置いて目を閉じた。

 

 

魔法最強化(マキシマイズマジック)約櫃に封印されし治癒(アークヒーリング)

 

 

ライルがこれだけの手傷を負うとは、相当な無茶をしたに違いないとその傷口を見て思ったが、同じ武士同士、コキュートスと背中を合わせて戦ったのだろう。それを思えば、ライルにとっても良い経験だったのかもしれない。いやそもそも、戦闘に関して悪い経験などは存在しない。勝っても負けても必ず得るものはある。ルカは常々そう考えていた。

 

 

コキュートスも治療が完了し、周りを見渡せば全員の治療が完了していた。

 

 

「ルカ様!!こちらへ来て見て欲しいものがありんす」

 

 

奥を見ると、シャルティアが先程倒した常闇の竜王(ディープダークネスドラゴンロード)の居た祭壇の上からルカを呼んでいた。それを見てルカはアインズの手を引いて立たせ、一緒にシャルティアの元まで向かっていった。

 

 

「ルカ様、おんしの探していたのはこれでありんしょう?」

 

 

シャルティアが指さす先には、2匹の蛇がお互いの尻尾に食らいついて一つの輪と化しているクローム色の禍々しい指輪、二十のうちの一つ、永劫の蛇の指輪(ウロボロス)が落ちていた。

 

 

「...ああ、そうだよシャルティア。ありがとね教えてくれて」

 

 

「べ、別にあたしはそんな物には全く興味はありんせん」

 

 

全くだ、とルカは思った。これが同じプレイヤーだったら、二十を見た途端その場でバトルロイヤルが始まってもおかしくないほど貴重な品だ。ここまで来てくれたアインズと階層守護者には何度お礼を言っても言い足りない。

 

 

ルカはそれを拾い上げると、アインズに手渡した。

 

 

「なるほどな....これが永劫の蛇の指輪(ウロボロス)か。ユグドラシルでは制作会社であるエンバーミングにシステム変更を要請できるというが...」

 

 

「アインズ、それ欲しい?」

 

 

「...いいや。私より今はお前が使うべきものだ。持っていけ」

 

 

「優しいね、アインズ」

 

 

「もしこれが逆の立場なら、お前だってそうするはずだ。違うか?」

 

 

「そうだね。私は君達を絶対に裏切らない。約束したからね」

 

 

「....手を出せ」

 

 

「ん?うん、はい」

 

 

そう言ってルカは右手を出した。

 

 

「そっちじゃない!左手を出せ!!」

 

 

「な~に怒ってんのよ。はい」

 

 

ルカの差し出した左手を握ると、アインズは右手でルカの左薬指に永劫の蛇の指輪(ウロボロス)をそっとはめた。少しサイズの大きい指輪がオートフィットし、ルカの指にピタリと吸いついた。ルカの顏が真っ赤に紅潮している。

 

 

「ア、アインズこれってそのあの、そう受け取って...いいの?」

 

 

それを受けてアインズはルカから背を向け、落ち着きが無くなっていった。

 

 

「そっその指輪はだな、貴重どころの騒ぎではない超超レアアイテムなのだ!だからそのだな、絶対に忘れない場所に付けておけばその、絶対に無くさない...だろう?」

 

 

「...うん」

 

 

ルカは背中を向けたアインズの後ろから抱き着いた。アインズは緊張していたのか、カチコチに固まってしまっている。

 

 

「ありがとう、アインズ。君は最高の友人だよ」

 

 

「...礼を言うのは私の方だ。我が友、ルカ・ブレイズよ」

 

 

それを遠目から見ていた守護者達は優しく見守った。アインズを愛するアルベドとシャルティアさえも、文句の一つもつけずに2人のその姿を眺めていた。何故なら彼女らは信じていたからだ。ルカ・ブレイズという一人の女性を。

 

 

その日は全員でナザリックに帰り、大浴場で体を洗い流した後は大広間で飲めや食えやの大宴会となった。まるで温泉やスパリゾートに来ているような気分になったが、来ているメンツが強面すぎるのが滑稽でもあった。食事も和洋折衷のすばらしく美味い料理が振舞われ、ルカ達3人もイグニス・ユーゴもその料理に舌鼓を打った。

 

 

そうして楽しい時間が過ぎた。イグニスやユーゴ達からも酔い任せにいろいろな話が聞けて楽しかった。そうして自室へ戻ろうと部屋の中に入ると、アルベドが中で一人待っていた。その表情から、先程の酔いの席とは違い真剣な話なのだと察したルカは、扉の脇にあった椅子をベッドの前に置き、自分はベッドに座って向かい合うようにした。

 

 

アルベドはその椅子に座るなり、言葉を発した。

 

 

「...やはり、行ってしまわれるのですか?」

 

 

「...ああ、それが私の200年間に渡る目標だったからね」

 

 

「あなたも、他の至高の御方々のようにこの世界から去ってしまうのですか?」

 

 

「アルベド、私は君に約束した。もしここに戻ってこれる手段があれば、必ずそれを使用して戻ってくる。私はこの世界が大好きだ。飽きて去るわけではない。アルベドの事も大好きだ。君に会いに戻ってくる。誓うよ」

 

 

「.......絶対に....ですよ。ルカ、あなたはこれまで一度も嘘をつかなかった。だから今度も嘘ではないと信じて、私は待ちます。あなたの帰りを」

 

 

「ああ、待っててくれ。...今日も一緒に寝る?」

 

 

(コクン)とアルベドは頷き、一緒に寝る為に用意してあったネグリジェに着替えてベッドに入った。ルカは考えた。帰る手段はイグニス達のおかげで見つける事が出来たが、またここに戻ってこれるという保証はない。しかし一度この世界に転移させられ、そして現実に帰れるという結果が得られたのだ。またここに戻ってこれる手段もきっと見つかるはずだ。そう強く信じ、左で眠るアルベドの頭を優しく抱きしめた。

 

 

もうこの子は我が子。そうだ、フォールスにも挨拶してから帰ろう。今まで世話になったプルトンや黄金の輝き亭のマスターと女将さん、そしてカルネ村のエンリとンフィーレアにも一言お礼を述べなければ。何せ彼らがいなければ、ナザリックは発見できなかったかも知れないのだから。

 

 

テキスとメキシウムの世話はプルトンに任せる事にしよう...と様々な思いが寄せては返し、いつの間にかルカは熟睡へと眠りに落ちていた。

 

 

 

-----ナザリック第九階層 客室ロビー 午前10:00

 

 

 

今日はアインズ達をルカのギルド拠点に招待する約束になっていた。ロビーにはアインズや階層守護者達、戦闘メイド・プレアデス達も集まっている。

 

 

「じゃあみんな、準備はいいかなー?そろそろ行くよ~、転移門(ゲート)

 

 

ルカとミキ・ライルが先に入り、その後にアインズ達が続いたが、その転移門(ゲート)の先にある光景を目の前にして、皆が絶句していた。

 

 

「そ、そんな...!アインズ様、ここはもしかして...」

 

 

「....虚空...だと?」

 

 

「フフ、驚いた?」

 

 

 

周囲を宇宙空間に覆われ、道を一歩踏み外せば黒曜石の岩山が立ち並び、空には星雲と銀河が瞬く満天の星空。そこはまさしく、フォールスのいたあの虚空と同じような小惑星の上だった。唯一違うのは、転移門(ゲート)を抜けてすぐに城塞の壁があり、その壁の上沿いに無数の機関銃が設置され、こちらの動きに追従するように狙いを定めている。そしてその城塞の壁は岩盤ではなく、その全てがミスリルの合金で作られた非常に強固な城壁となっていた。

 

 

そしてその城壁の向こうには、同じく銀色に輝く巨大なピラミッドが聳え立っていた。一辺200メートル程の広大な敷地に建てられたミスリルのピラミッドは、虚空の夜空と絶妙のコントラストを見せており、さながら超古代の様相を呈していた

 

 

正面ゲートのカメラがこちらを向き、ルカが右手を上げると(バシュ!!)というロックの外れる音と共に門が開いた。

 

 

「さあみんな、遠慮せず入って」

 

 

ルカが促し、その後をついてピラミッドの入口をくぐると、その中はまるで超高級ホテルの1階ロビーを連想させるほど広く、左奥にはホテルのフロントがあり、右側にはケーキ・ビュッフェを揃えたカフェもある。ルカはそのホテルフロントへと皆を案内すると、そこに一人身長190cmを超えた男が漆黒のスーツを纏い、長髪をヘアゴムでポニーテールにまとめて体格のがっしりとした初老の男性が右腕を前にかかげ、頭を下げて皆を出迎えた。その横には、身長160cm程の小柄なメイド服を着た女性がたどたどしく頭を下げていた。

 

 

「帰ったよー、彼らが昨日連絡しておいた私の友人達ね。」

 

 

「...おかえりなさいませルカ様・ミキ様・ライル様。そしてお客様方、ようこそ我がギルド・ブリッツクリーグの拠点フラジャイルへお越しくださいました。私はここの執事兼ギルド執行代理を務めさせていただいております、フラッドと申します。ご用命の際は何なりとお申し付けくださいませ」

 

 

「わわ、私はフラッド様付きメイドのワツ・クオーと申します。御用の際は何なりとお申し付けくださいませ!」

 

 

 

「じゃあ早速で悪いけどフラッド、ワッツ、みんなを客室に案内してあげて。もちスイートでね」

 

 

「かしこまりましたルカ様。それでは皆様ご案内致します、こちらへどうぞ」

 

 

エレベーターで地上15階に着くと、それぞれの部屋へと案内した。アインズが案内された部屋はまさに豪華絢爛という言葉が相応しかった。変に飾る事なく部屋のインテリア自体が高級感を醸し出す内装、広いリビングにキッチン、寝室も2部屋あり、その内装全てが直線と流線形を巧みに組み合わせた室内となっており、まるでフランク・ロイド・ライトの設計したホテルを連想させる、実に見事な客室であった。

 

 

アインズの部屋だけではなく、他の階層守護者や戦闘メイド達が案内された部屋も同様にすばらしい部屋の作りであった。そして外観のピラミッドからはただの石の壁としか見えなかったが、全ての部屋には内側からだけ外が見える展望台のように広い窓がついており、虚空の星空をこれ以上なく堪能できる仕様となっていた。

 

 

アインズ達もこの予想外のリッチな部屋に皆が大満足であった。

 

 

このフラジャイルという建物は地上18階、地下10階の四角錐を上下に重ねた菱形の構造をしており、有事の際は地下にある戦闘指揮所より全方位に対する攻撃が行われるとの事だった。しかしこの拠点はユグドラシルβの時にはニダヴェリールにあったのだが、転移後に何故か虚空と同じようなフィールドに飛ばされてしまっていたとの事だった。よって外界と隔絶されたこのフィールドに攻め入るような敵はもちろん無く、至って平穏な日々を送っていたらしい。

 

 

娯楽施設であるカジノや大浴場、本格的なゲームセンターやブティック等を案内した後は皆でとびきり豪華な昼食を摂り、アインズと2人で最上階の展望レストランへと上がり、窓際の席へ腰かけた。

 

 

「マスター、彼には”カリカチュア”を、私にはクレメンタインをダブルで」

 

 

「かしこまりました、ルカ様」

 

 

「お、おいおいルカよ、私は酒は...」

 

 

「大丈夫だって。この前あげたアンデッドでも飲めるエーテルメインのお酒、おいしかったでしょ?あれと同じものだから」

 

 

「そ、そうか、なら良いのだが」

 

 

「お待たせいたしました」

 

 

バーのマスターが、きびきびとした動きでアインズとルカの前にグラスを音も無く置いていく。ふたりはグラスを手に取り、頭上に掲げた。

 

 

 

「はい!それじゃ我がギルド・ブリッツクリーグ拠点への初のご招待に!」

 

 

「そして常闇の竜王(ディープダークネスドラゴンロード)の撃破記念に!」

 

 

「「カンパーイ!!」」

 

 

アインズはいつになく酒も進み、上機嫌だった。きっと普段は周りに威厳を示すために無理を押して自分を作っているのだろう。私の前では、そんな事はしてほしくないと願ったが、これは飛んだ杞憂だったようだ。外界を引き立てる為に敢えて店の照明が暗めに落としてあり、眼下に広がる果てしない宇宙を眺めながらの酒は最高だった。きっとアインズもそのゴージャスな雰囲気に飲まれていたのかもしれなかったが、それはそれで良い事だとルカは思った。この時間が永遠に続けばいいのにとさえ考えたが、そういう訳にもいくまい。早い時間から飲んでいたにも関わらず、もう夜20:30を回っていた。楽しい時間が過ぎるのは本当に早いものだとルカは痛感した。

 

 

「...この世界に転移して来た時、お前はこんなにも綺麗な景色を眺めて過ごしていたのだな。うらやましい限りだ。私なんぞただの草しかない平原のど真ん中だったからな」

 

 

「そりゃー最初の内はよかったよ。でもここから転移門(ゲート)を開くと唯一行ける場所がエ・ランテルに設定されていたのもあって、そこからはこの拠点にもたまにしか帰ってこなくなってしまった。今日は本当に久しぶりなんだよ」

 

 

「部屋のセンスといい、食事といい酒といい、文句のつけようがない。お前が現実世界から帰ってきた暁には、またここへ寄らせてもらうとしよう」

 

 

「う、うん!いつでも来て。喜んでもらえて良かったよ、ここはナザリックと比べると規模も小さいからねー。何せ傭兵ギルドだったし、ヘタに規模を大きくすると後が大変だったし」

 

 

「なるほどな。規模を大きくすればそれだけ金もかかるしな」

 

 

「...ねえアインズ。もしも、の話なんだけど、」

 

 

「何だ?」

 

 

「もしも、だよ。私達の現実世界とこの世界を自由に行ったり来たり出来るようになって、アインズが私達の世界に来るための体がこちらに用意してあったら、私達の現実世界にアインズ来てくれる?」

 

 

「完全に自由に往来できるのなら、の話だがな。その時は考えてやらんでもない」

 

 

「ほんとに?!約束だからね!」

 

 

「...フフ、まるで本当にそれが実現できるような物言いだな。しかしまあ、こうやってお前とゆっくりできるのも今日までだな。明日には立つのだろう?」

 

 

「...うん。向こうの現実がどうなっているかも見てみたいし」

 

 

「お前は強いな」

 

 

「そんなことないよ。あたしこれでも結構脆いのよ?」

 

 

「まあ、泣き虫ではあるしな」

 

 

「ん~もう!!それは言わないの!」

 

 

アインズとルカはお互い顔を見合わせ、笑いあった。

 

 

その後は皆でこれまた豪華な夕食を摂り、全員フラジャイルに泊まる事となって皆喜んでいた。それぞれが思い思いの休暇を取り、そして夜が明けた。

 

 

 

--------------ナザリック第九階層 客室ロビー 午後1:30

 

 

 

今まで世話になったみんなに挨拶してから現実世界へ帰るとアインズ達に伝え、まずは客室ロビーからイグニス・ユーゴ・ミキ・ライルと共にエ・ランテルへと転移門(ゲート)で向かった。冒険者組合の扉を開き、2階への階段を上がって左手の組合長室にノックして入る。

 

 

中には相変わらず書類整理で躍起になっているプルトン・アインザックの姿があった。

 

 

「プルトン、来たよー。今忙しいの?」

 

 

「ん?おおルカか、見ての通りだ。今ちと手が離せなくてな」

 

 

「....どうしても?」

 

 

「....?なんだその含みのある言い方は」

 

 

「プルトン、見つけたんだよあたし達。ガル・ガンチュアも、カオスゲートも、そして虚空もね」

 

 

「なっ...何だと!!是非私も連れて行ってくれ!!すぐに準備するから」

 

 

「フフ、だからそれを誘いに来たんだって。慌てなくて大丈夫だよ」

 

 

そういうとプルトンは向かって左のクローゼットから白銀のフルプレートメイルを引っ張り出し、全身に装備した。そして同じくミスリル製と思われる強靭なタワーシールドと片手剣を腰に差し、準備が整った。

 

 

「イビルズ・リジェクターの復活だね。まあ戦うことはないと思うけど、念のために装備は怠らない方がいいかもね」

 

 

「うむ、お前から昔聞いた話からして、危険な場所に変わりはなさそうだからな」

 

 

「よし、じゃあ行こうか。転移門(ゲート)

 

 

 

門を抜けた先にあるのは、荒涼とした月面のように静かな世界。一面灰色の砂で覆われた土地に、幾多の星が瞬く世界。プルトンは目を丸くして周囲を見回していた。

 

 

「ここがガル・ガンチュアだよプルトン。殺風景な場所だろう?」

 

 

「ここは...本当にこの世界の一部なのか?何やら全く別種の臭いを感じるが....」

 

 

「さすがいい勘してるね。そう、詳しく話すと長くなるから端折るけど、この場所は私たちの元居た世界とは別のサーバにあるんだよ」

 

 

「サーバとは、お前の話していたユグドラシルの入っているサーバという事か」

 

 

「そうだね。あまり遠くまで行かないでよ。ここの敵はレイドボス並に強いから、私達だけじゃ相当な苦戦か撤退しか道はないからね」

 

 

「な、なるほど分かった。ガル・ガンチュアについてはもう十分だろう。次はカオスゲートを見せてくれないか」

 

 

転移門(ゲート)を再度通り、カオスゲートのある神殿前へと到着した。

門をくぐり、最奥部のモノリスをプルトンは見上げる。

 

 

「こんな地にこんなモノリスが何故....しかもエノク語で書かれているようだな」

 

 

「プルトン、まさか読めるの?」

 

 

「馬鹿者、長年神に仕えてきたウォー・クレリックでありクルセイダーでもあるこの俺が、神代の古代エノク語を読めないでどうする! えーと、なになに....

 

 

 

-------君達がここへ辿り着いた時、それが希望になるか絶望に変わるかは私にも分からない。ただ、この先にいるサーラ・ユガ・アロリキャのAIをコアプログラムに秘匿回線で接続できるようこっそり改良しておいた。彼女は昔とは異なり人種はどうあれ、君達を回復してくれる事だろう。そしてセフィロトに転生しようとしている諸君、または既にセフィロトに転生してここに来た諸君。彼女にとって全てのセフィロトは自分の子も同然だ。そしてそんな君達だけに、サーラの口からこの世界に対する真実が語られるだろう。突飛な話と思われるかもしれないが、彼女が話す言葉は全て真実であり、私自身の言葉だと思ってほしい。そしてサーラはとても傷つきやすい子だ。願わくば、彼女に優しく接し、サーラの言葉を信じて前に進む事を勧める。

 

 

そして最後に、何故このガル・ガンチュア及びカオスゲートがこのようなロストウェブに隠されたのか。それはこのロストウェブサーバのメインフレームに、ユガと共にダークウェブ上を含む全てのAIを管理するコアプログラム(メフィウス)があるためだ。この世界から脱出する為の方法は3つある。

 

 

一つは外部からプレイヤーのロケーションをトレースし、帰還用のデータクリスタルを作成して外部より持ち込んでもらう事。2つ目はサーラ・ユガ・アロリキャを倒す事。3つ目はコアプログラム(メフィウス)の機能を停止させる事だ。一つ目の方法に関してはサーバ自体が秘匿回線故にロケーションの解読に時間はかかるだろうが、一度トレースを固定できれば帰還用データクリスタルを生成するのは容易く、手堅い方法であることは間違いない。2つ目の方法は絶対にやめておいた方がいい。何故ならサーラ・ユガ・アロリキャはこの世界で最強の火力と最強のHP・MP・そして最大の世界級(ワールド)耐性を持っているからである。彼女に刃を向けた時、それは君自身の死に直結するだろう。3つ目に関してだが、メインフレームへの入口はガル・ガンチュアのどこかにあるクレーター中心部に巧妙に隠されている。ここまで来れた諸君なら、どう隠されているのかは想像に難くないだろう。

 

 

(メフィウス)を停止させればこの世界ごと崩壊し、プレイヤーを強制ログアウトさせると同時に二度とサルベージ不可能な程までにこの世界は破壊しつくされ、終焉を迎えるだろう。ただその前に、私は君たちにこの世界を堪能し、そして楽しんで欲しい。その為だけにこの謎に満ちた世界を作り、その為だけに生涯を捧げてきた。願わくばこのようなプロジェクトネビュラなどという、軍と共同の極秘プロジェクトという形ではなく、将来的には誰もが自由にこのダークウェブサーバとロストウェブサーバを往来できる日が来る事を心より望む。

 

 

 

2238年5月22日 グレン・アルフォンス

       ....ユグドラシルを愛する全てのプレイヤーへ捧ぐ

 

 

 

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「....ルカ、これは明らかにプレイヤーに当てられた謝罪文だな。このグレン・アルフォンスという人物は一体誰なんだ?」

 

 

「...ああ、西暦2126年にユグドラシルを作り上げた基礎開発者の一人さ。当時は若干15歳にして天才的な技術力をユグドラシルの為に如何なく発揮していたらしい」

 

 

「それが一転、エンバーミング社と軍との結託により、悪夢へと変わっていったわけか」

 

 

「いや、そうとは限らないぞプルトン。彼は開発の始まった2122年から、全てを承知の上でこのプロジェクトに加担していたのかもしれない」

 

 

「エンバーミング....遺体の消毒保存処理・長期保存を可能にする技術...か。ふざけた名前をつけやがって、奴ら最初からうそぶいてやがったって事だな...」

 

 

「しかしまあ、プルトンがエノク語を解読してくれたおかげでまた一つ謎が解けたじゃないか。やはり約束は守るものだな」

 

 

「フン、そもそも貴様が嘘をついたところなんぞ見たことがない。このガル・ガンチュアの話をお前が初めて俺に打ち明けてくれた時も、俺は”こいつの言っていることは本当だ”と信じざるを得なかった。否、信じざるを得ない程お前の語りには真剣さが滲み出ていた。こうやって俺がここへ来てお前に一つの謎解きを提供できたのも、何かのお導きかもしれないな」

 

 

「お導きって誰のだ。....神様か」

 

 

「敢えていうなら、フォールス様、かな?」

 

 

「なるほど。ならそのモノリスの下にある台座に刻まれた文字も呼んでみるといい。それはきっと彼女自身が刻んでいったものだ」

 

 

「....ふーむ、なるほどな。我が子とはつまり、お前達セフィロトの事か。.....ん?ルカ、この最後の一節を見てみろ。上段の文字と比べて、つい最近掘られたような感じだ。削れた部分もまだ鋭さが残っている」

 

 

ルカがプルトンの指さす部分に目を落とすと、こう記してあった。

 

 

 

(我が子に会う為、全てを投げ打ちその願いを成就せし者なり)

 

 

 

ルカは微笑し、その文字をそっと指でなぞった。彼女は私達と会った事で、満たされたのだ。

 

 

「さあ、もうここは十分だろう? フォールスに会いに行こうプルトン」

 

 

「そうだな。お前も満たされたようで何よりだ」

 

 

「...フフ、そうね。今日ばかりは認めるわ。カオスゲート・オープン」

 

 

宇宙の真っただ中に浮かぶ孤島を進み、左に曲がってストーンヘンジまで辿り着いた。そこでは変わらず、地面から1.5メートル程浮いてフォールスが佇んでいる。

 

 

「やあフォールス。また来たよ」

 

 

フォールスはゆっくりと目を開け、宙に浮いていた足が地面に着くと美しい微笑を返してきた。

 

 

「よく来ましたねルカ。それにあなたは確か...プルトン・アインザックですね?」

 

 

「なっ...どうして私の名までご存じで?!」

 

 

「いちいち驚かないのプルトン! フォールスは何でもお見通しなんだから」

 

 

「フフ...何でもではありません。ほんのちょっぴり、なだけですよ」

 

 

「ほんのどっさりの間違いじゃないの?」

 

 

ふたりで冗談を言い合いケタケタと笑っていた2人だったが、プルトンは緊張してそれどころではなかった。

 

 

「...脱線してしまい申し訳ありません。あなたが冒険者組合でルカに便宜を図ってくれていたのは存じておりますよ。ルカに代わり、感謝の意を表します」

 

 

「いえ、とんでもございません!私の方こそルカに頼りっきりでして、戦士でありながら情けない限りなのですが」

 

 

「それで、あなたもセフィロトへの道を歩みたいと望むのですか?」

 

 

「いえ、その実は、決めかねておりまして...。我が家には妻一人子一人がおりまして、果たして彼らに受け入れられるかどうかが正直心配な点もございまして」

 

 

「それは当然、受け入れられる訳がないでしょう。あなたも昔からルカを見てきたのであれば、真の孤独とはどのようなものかが少しは痛み入るはずです」

 

 

「...確かに。私には恐れ多き事でした。転生の件に関しては、身を引かせていただきたく存じます」

 

 

「それが良いでしょう。他に何か聞きたい事はありますか?」

 

 

「ハッ。実はカオスゲートの前にあったモノリスに刻まれた文章に関してなのですが、私は古来より神官として仕えてきた身。古代エノク語と判断し如何なく、解読させていただいたのですが」

 

 

「!! それは誠ですか?是非私にも内容をお教えくださいまし!」

 

 

プルトンは、メモ帳に走り書きしたモノリス全文の内容を、一言一句漏らさずフォールスに伝えた。

 

 

「何と....あの人がそのような事を。...実はそこにあるグレン・アルフォンス様は、私の創造主なのです」

 

 

ルカとプルトンが驚いた顏をフォールスに向けた。

 

 

「そ、そうだったんだ。という事はやはり、2126年からスタートしたユグドラシルのダークウェブサーバに、既に君は存在していたんだね。誰も居ないサーバにただ一人で」

 

 

「...ええ。でも問題はそこではありません。グレン様が、私を倒す事でサーバからログアウトできるという仕様についてなのですが、これは私自身も初めて知った事でしたので正直驚きました」

 

 

「そっか。でも相変わらず最強なんでしょ?」

 

 

「はい!よろしければ試してごらんになりますか?」

 

 

「いや、ユグドラシルβ(ベータ)の時に散々思い知ったから遠慮しとくよ」

 

 

「左様でございますか。フフ、残念」

 

 

「...フォールス、実は今日はお別れを言いに来たんだ」

 

 

「別れ...と仰いますと?」

 

 

「ああ。さっきプルトンが話したログアウトする方法の一つ目に、外部からデータクリスタルを持ち込んで帰還するってのがあったでしょ?実は友人2人が私を連れ戻す為に迎えにきたんだ。だから元の現実世界へ帰ろうと思う。次またここに戻ってこられるという保証がないから、こうしてお別れに来たってわけさ」

 

 

「...なるほど、そこのイグニスとユーゴという二人ですね。彼らの深層に眠る記憶を甦らせた甲斐はあったようですね」

 

 

「フォールスを含めみんなの力があったからこそ、ここまで来れたんだ。本当にありがとうフォールス」

 

 

「...我が子よ、どうかここに」

 

 

フォールスは両手を開いてルカを招いた。そのままフォールスを抱きしめ、首元に顔を埋める。

 

 

「いいですかルカ。帰る手段があるのならば、自由に往来できる時もそう遠くはないでしょう。その時はまた、必ず会いに来てくださいね、ルカ」

 

 

「...うん、約束するよ。必ずまたフォールスに会いに、そしてこの虚空の空を見に、戻ってくるから。フォールスもそれまで元気でいてね」

 

 

「ええ。ルカもどうかお元気で」

 

 

ルカは肺が一杯になるまでフォールスの香りを吸い込むと、抱きしめていた体を離した。

 

 

「じゃあねフォールス! 転移門(ゲート)!」

 

 

寂しさを振り払うようにルカは開いたゲートに飛び込み、それに続き慌ててプルトンとイグニス・ユーゴもゲートに飛び込んだ。

 

 

飛び込んだ先は黄金の輝き亭2階の客室だった。そこから階下に降りると、丁度良いところにマスターと女将さんがカウンターに立っていた。

 

 

「やあマスター、女将さん。ちょっと急なんだけど、私達これからちょっと違う...遠くの土地に旅する事になっちゃってさ。しばらく会えなくなると思うから、一言お別れを言いにきたんだ」

 

 

「何でえシケた面しやがって。そんなに遠い所なのか?しばらくすりゃまたウチに戻ってこれるんだろ?」

 

 

「..正直、戻ってこれるかどうかはフィフティーフィフティーってところなんだ。だから私達が帰ってきたら、美味い鶏肉のソテーまた頼むね!!」

 

 

「お、おうよ!!熱々の風呂も用意して待っておいてやるから、必ず帰ってこいよ!約束だからな...帰ってこなかったら俺ぁ怒るからな!!」

 

 

「ちょっとあんた!熱くなりすぎだよ。ルカちゃん、いつでも待ってるからね。またキンキンに冷えたエール酒とワイン、それに地獄酒を飲みに3人でおいで!いいね?」

 

 

「女将さん...ありがとう。それじゃあ私達もう行かないと。転移門(ゲート)

 

 

ルカ達5人は振り返らずに真っすぐゲートに飛び込んだ。

プルトンはそのまま冒険者組合に帰るとの事で、ここで別れた。

 

 

「いいかいあんた達!約束したからね、必ず戻ってくるんだよ!!」

 

 

それを聞いたルカは転移門(ゲート)をくぐる中で涙を拭っていた。

 

 

次に着いたのはカルネ村正門前だった。ゴブリン達が一斉に武器と弓を構えてきたが、ルカが右手を上げて合図すると戦闘態勢を解き、ゴブリン達がルカの周りに集まってきた。

 

 

「やあ、みんな久しぶりだね。済まないが、エンリと話したいんだけど呼んできてもらってもいいかな?」

 

 

「もちろんでさぁ!!おい、姉さんを急いでお呼びしろ!」

 

 

それを聞いてゴブリンライダーが街の奥へと疾走していった。

やがて魔獣の背中に乗ったエンリとゴブリンライダーが颯爽と姿を現した。

 

 

「ルカさん!!それにミキさん・ライルさんも。イグニスにユーゴおにいちゃんもよく来たわね、どうぞごゆっくりしていってください」

 

 

「いやすまないエンリ。実は私達はこれから遠い土地まで旅をする事になってしまって、それでお別れを言いに来たんだよ」

 

 

「まあ!そうだったんですか?それではせめて一日だけでもカルネ亭にお泊りになられてはいかがですか?」

 

 

「そうしたい所なんだが、何せ急な用事でね。ネムにもよろしく伝えておいて。あとンフィーレア・バレアレにも一言挨拶したいんだけど、ついてきてもらっていいかなエンリ?」

 

 

「ええ、もちろんです。こちらへどうぞ」

 

 

そこへイグニスとユーゴが言葉を挟んできた。

 

 

「ルカさん!私達もその、実家へ行って両親に一言言ってから行こうと思います」

 

 

「へへ、俺もだルカ姉。ここまで育ててもらった恩もあるしな。俺もちょっくら行ってくらぁ」

 

 

「ああ、もちろんだよ。ゆっくりしてくれていいからね」

 

 

ルカ達はその足でンフィーレア・バレアレの家へと向かった。

エンリがドアをノックすると、(はぁーい)と甲高い声が響いてきた。ドアを開けてエンリの後ろに立つ黒づくめの3人を見て、敵視感知(センスエネミー)が赤く瞬いている。

 

 

「そんなに警戒しないでほしいな。私達はこの土地から去り、新たなる新天地を求めて旅立つことになった。そのお別れをいいに来ただけなんだよ」

 

 

それを聞いたンフィーレアの顔色が少し晴れたのを見計らい、エンリとミキ・ライルを外に待たせて、ンフィーレアと差しで話をする事になった。

 

 

「それで、何か用事があったのではないのですか?」

 

 

「そうなんだ。これを君に託しておこうと思ってね」

 

 

 

ルカは中空に手を伸ばすと、真っ赤に輝くイヤリングを2つ取り出した。

 

 

「ンフィーレア、君にこれを授げよう。このイヤリングは通常の炎はおろか、地獄の業火にも無傷で耐えきれる力を持つ超レアアイテム、命の燐光(ライフオブフォスフォレセンス)という魔法アクセサリーだ。寝る間際以外は、常にこれを装備していてくれ。いいね?

 

 

「...わかりました。ルカ様がそこまでおっしゃるのなら、相当に強力なアイテムなのでしょう。肌身離さず身につけておきます」

 

 

「私はしばらく留守にするが、その間村をよろしく頼んだよンフィーレア」

 

 

「かしこまりましたルカ様!今までの数々のご無礼、どうかお許しください。道中、何卒お気をつけて..」

 

 

全ての関係者に挨拶がおわり、ナザリックへ続く転移門(ゲート)を開いた。

 

 

イグニスとユーゴも合流しており、5人の戦士達は次々とその中に入る。最後にルカが入り、その直前にンフィーレアに向けて寂しそうな目線を送った。

 

 

「じゃあ、またねンフィーレア」とだけ言い残して。

 

 

そしてナザリック第9階層の客室ロビーに到着すると、待ち構えていたユリ・アルファとシズ・デルタが声をかけてきた。

 

 

「お帰りなさいませ、ルカ様。随分とお時間がかかりましたね」

 

 

「悪い、ちょっと昔話に花が咲いてしまってな。つい長引いてしまった」

 

 

 

「皆さまが玉座の間でお待ちです。早速参りましょう」

 

 

ユリが速足で歩いていくのを、ルカ達とイグニス・ユーゴが後を追った。

 

 

玉座の間の扉前に付き、ユリがゆっくりとドアを押し開けると、玉座に座るアインズと、それを取り囲む階層守護者達が目に入った。

 

 

「みんな、待たせて悪かった!予想以上に時間がかかってしまった」

 

 

「何、構わんさ。皆の者、中央に整列!!」

 

 

「ハッ!!」

 

 

 

すると階層守護者とプレアデス達は、レッドカーペットの左右並列となるよう並んだ。そして道の先には、玉座から立ったアインズとアルベドが待ち構えている。

(一体何が始まるんだろう)と考えながら後ろからミキとライルも付いてくる。

アインズとアルベドの前まで来ると、左右で列を成す階層守護者達が一斉に片膝をついた。

 

 

「別れはもう済んだのか?」

 

 

「ああ、みんな察してはいたみたいだけど、気持ちよく見送ってくれたよ」

 

 

「それでどうなんだ、またこちらに戻ってこれる算段は立ったのか?」

 

 

「今の所は、正直わからない。しかし位置をトレースできたという事は、帰還もできればログインも再度可能なはずだと睨んでいる。きっとうまく行くと信じている」

 

 

「そうか。....寂しくなるな。お前達と過ごしたこの数か月間はあっという間だったよ」

 

 

「それは私も同じだ。この永劫の蛇の指輪(ウロボロス)に誓って、いつか必ずまた戻ってくると約束する。イグニス・ユーゴ。帰還用のデータクリスタルはいくつ持ってるの?

 

 

「ルカさん、ミキさん、ライルさん、私、ユーゴの分で、全部で5つです」

 

 

「私やイグニス・ユーゴはいいとして、ミキとライルの体は大丈夫なの?」

 

 

「現実世界側にミキとライルのバイオロイドをスリープモードで待機させてあります。準備に怠りはありません」

 

 

「ではそのデータクリスタルとやらを全員に配って欲しい」

 

 

「承知しました」

 

 

現実世界に戻る為の赤く輝くデータクリスタルを、イグニスは4人に手渡した。

 

 

「アインズ...もし私達が帰ってこれなくても、私の事を忘れないでね」

 

 

「当然だ。しかし私はまた会えると信じてお前達を送り出す。いいな?」

 

 

 

「アインズ...私正直、まだアインズ達と一緒に居たい...」

 

 

「無茶を言うな。今を逃せばもう二度とお前の望む現実世界に帰れないかもしれないのだぞ」

 

 

ルカはアインズの目の前まで歩み寄った。

 

 

「..もし帰ってこれたら、この二十の永劫の蛇の指輪(ウロボロス)はアインズに託すからね」

 

 

「何のためにお前の指にはめたと思っている。それはもうお前のものだ。お前と私を繋ぐものだ。それは世界級(ワールド)アイテム。転移する際にお前の身を護る役割も果たすかも知れない。絶対に肌身離すんじゃないぞ」

 

 

「.....アインズ!」

 

 

ルカはアインズの首に手を回し、抱き締めた。そしてそのまま、アインズの左頬にキスをした。

 

 

 

「ありがとう、グス。大好きだよアインズ...」

 

 

「....こうしていても、別れが惜しくなるだけだ。さあ、そのデータクリスタルを使用するのだ。そして時がきたら、またこの世界に帰ってこい、いいな?」

 

 

「...わかった。じゃあみんな、行くよ!」

 

 

「ルカさん、何も考えずにデータクリスタルをアクティブにしてください。それで帰還できるはずです」

 

 

ルカ・ミキ・ライル・イグニス・ユーゴは、赤いデータクリスタルを胸の前に掲げ、握りしめた。すると赤い光が5人を包み込み、一瞬でその場から消え去っしまった。

 

 

「...まるで夢をみているような時間だったな、アルベド」

 

 

「左様でございますね。しかし我らに起きた事は全て現実であり、真実です。彼らが残してくれたこの世界の謎を解き明かすべく、我らも今後動いていくことを進言いたします」

 

 

「無論だ。彼らの存在を無駄にはしない。これを最優先課題としつつ、ナザリックの平和のために全力を尽くすのだ、皆の者よいな!!」

 

 

「ハッ!!!」

 

 

 

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アレックス・ディセンズが目を覚ますと、そこは保存カプセルの中だった。自分の右手の平を見ると、予想していたようなミイラの如き手ではなく、張りのある若者らしい手が見えた。すると保存カプセルのキャノピーが上方に開いていく、カプセルの両隣りには、2人の男性がアレックスを見下ろしていた。イグニスとユーゴだった。彼らは笑顔で出迎えてくれた。

 

 

「おはようございますアレックス。気分はどうですか?」

 

 

「いや、特に違和感はないけど...ここは本当に現実世界なの?」

 

 

 

「そうですぜアレックス。さあ立って自分の姿を見ておくんなせえ」

 

 

イグニスとユーゴに両手を引っ張られて、カプセルから身を起こした。その後立ち上がり、カプセルの目の前にあった姿見を見て衝撃を受けた。過去男性だったアレックスではなく、そこに立っていたのは正真正銘、ユグドラシルの世界で生きたルカ・ブレイズそのものの姿だったのだ。

 

 

「ど...どうしてこの姿のまま現実に戻れたの?!」

 

 

「前にも言った通り、あなたのアバターが女性だった事により、その影響を受けて脳波パルスや精神、肉体まで完全な女性として認識されているのを研究者達が分析していたんです。そしてあなたはご存知の通り、生体量子コンピュータの移植に成功した人間の第一号となった。心身共に違和感がないよう、ユグドラシルβ(ベータ)の検閲データから採取したあなたのキャラデータを元に、特別に作らせた女性の素体です。

ですのでこれ以後はアレックスではなく、ルカさんと呼ばせていただきますね」

 

 

「俺もその恰好を見るとアレックスってのは違和感があるから、今まで通りルカ姉とよばせてもらいますぜ」

 

 

「...ちょっとまって、もしかしてこの体...バイオロイドなの?!イグニス・ユーゴ、いまは西暦何年で、この場所はどこ?! どういった経緯でこの体になったの?」

 

 

「...落ち着いて聞いてください。今は西暦2550年です。ルカさんの意識がなくなってから丁度200年後の世界です。そしてこの場所は地球ではなく、地球から4.2光年ほど離れたアルファ・ケンタウリ星系にあるプロキシマbという地球型惑星をテラフォーミングした、バイオロイド達の前哨基地となっています。あなたの肉体が年を追うにつれ脳の劣化を気がかりに思っていた研究班が、当時急速に発展を遂げていた電脳化技術を使用してルカさんの脳を電脳化し、それを現在のバイオロイドに移植して、肉体損失の危機は回避されました。しかしダークウェブのサーバに意識が閉じ込められていたルカさんは、長期間昏睡状態にあったのです。そこで機密保持も兼ねて、地球から4光年のアルファ・ケンタウリ星系の調査隊としてルカさんの体も保存カプセルに入れて同じ宇宙船に搭載され、同じバイオロイドを研究者としてルカさんの体をメンテナンスし、引き続き管理が行われていた、という訳です。」

 

 

「私の恋人は? 私の母はどうなったの?」

 

 

「....大変申し上げにくいのですが、ルカさんの母であるエレン・ディセンズは2391年に90歳でこの世を去りました。またルカさんの恋人だったヒロコ・ミーティアも2406年に85歳で亡くなっています。ヒロコさんは生涯未婚だったとの事です」

 

 

「....そうか」

 

 

「お悔み申し上げます」

 

 

 

「....そうだ、ミキとライルは? ちゃんと無事に転移できたの?!」

 

 

 

それを聞いてイグニスとユーゴは微笑し、左右両隣にあるバイオロイド保存カプセルに目をやった。左のカプセルを見ると、まるであの世界での生き写しのようなミキの姿が、白いTシャツにパンツという下着姿で横になっていた。計測器に目をやると、脳波・脈拍・臓器共に正常値を示している。ルカはパネルを操作し、祈るような気持ちでスリープモードを解除し、手を握って目覚めるのを待った。やがてミキは、ゆっくりと目を開けてルカを見た。

 

 

目を瞬かせながら周りを見て再びルカに目を戻した。

 

 

「....ここが、ルカ様が戻りたがっていた現実世界...なのですか?」

 

 

「ミキ...よかったちゃんと覚えてるんだねあたしの事...。そうだよ、ここが私達の現実世界なのよ」

 

 

ルカはミキの胸元で嗚咽を堪えながら泣き続けた。200年共に戦い抜いた仲間を自分達の現実に招待出来たことが、ただただ安心であり、ひたすらに嬉しかった。

 

 

「ルカ様、そろそろライルも起こして差し上げませんと。彼も外の空気が吸いたいはずです」

 

 

「そ、そうだねごめん、うっかりしてたよ」

 

 

ライルの保存カプセルを操作し、スリープモードを解除してゴツいライルの手を握りしめた。ゆっくりと目を開き、上体を起こして頭を描いている。

 

 

「...ぬ、おはようございますルカ様。この様子だと、無事現実世界に戻れたようですな」

 

 

「ライル...ライルー!!」

 

 

ルカは保存カプセルのベッドに飛び乗り、起こした上体に抱き着いて頬ずりした。

 

 

「よかった、ほんとにライルなんだね?体はどう、異常とか違和感はない?」

 

 

「私はライル・センチネル以外の何物でもありませぬ。体調は、特に違和感もないようですな。若干体がギクシャクするくらいで、特に痛みもございません」

 

 

その問いには、イグニスが答えた。

 

 

「何せミキさんとライルさんは保存カプセルに入ってから20年ぶりに外へ出ましたからね。少し体を動かして準備運動すれば、体の軋みも取れると思いますよ」

 

 

「...20年だと?それは一体どういう....」

 

 

 

「簡単にご説明しますと、私とユーゴがあなた達3人を救出する為にダークウェブ版ユグドラシルにダイブしたのが20年前という事になります。まあ、そこでアクシデントがあり、その時私は1歳の子供に、ユーゴは4歳の子供に記憶を上書き(オーバーライド)してしまい、結果私達は記憶を失う事となってしまったのですが、最終的には冒険者組合を通じてあなた達と運よく巡り合えたという事になります。それよりお二方、素体の外見は気に入っていただけましたか?ユグドラシルのデータから検閲したものを忠実にモデリングして改造させたバイオロイドなのですが、いかがでしょう?」

 

 

ミキとライルは大きな姿見の前に立ち、顔立ちと体のラインを確認する。

 

 

「ええ、問題ないようねイグニス」

 

 

「私の方も問題ない。よくぞここまで忠実にモデリングしたものだ」

 

 

「ありがとうございます。一流の義体士に作らせましたからね。今3人分の代えの服を持ってこさせますので、今しばらくここでお待ちください」

 

 

全身黒にホワイトラインの入った軍服のような軽量スーツを支給してもらい、前哨基地のエリア各所を案内してもらった。当然と言えば当然だが、この前哨基地には生身の人間はいないとの事だ。アルファ・ケンタウリ星系へと旅立つ前に、地球で電脳化手術とそれに伴うバイオロイドへの移植を行った技術者や研究者が多数いるらしかった。通りすがりのバイオロイド達も自分達と同じデザインの服を着ている事から、恐らくこの制服がデフォルトなのだろう。

 

 

そうこうしているうちに、前面360度ガラス張りなドーム状の部屋に着いた。照明はわざと暗めに落としてあり、このプロキシマbの美しい風景を一望する事が出来た。目視で標高1万メートルはあろうかという山脈と、地平線まで広がる茶褐色の巨大な岩棚が続き、日の出前とあって、空が美しいダークブルーに染め上げられている。ライルは見惚れるあまり、窓際のソファに膝を付き、子供のようにあちこちを見て回っている。ミキは遥か彼方の地平線を見つめながら、ルカの左手を握った。お互いに指を絡ませ、笑顔で頷き合っている。そう、ここは地球ではない。本当に見せたかったものでないのは確かだが、見せたかったもの以上のアンリアルな光景が確かにここにはあった。手を繋いだままライルの元へと行き、ライルとも手を繋いで、地平線から登ろうとしているダークブルーの明け方の空と朝日を3人で見守っていたが、そこでイグニスが言葉を挟んできた。

 

 

「みなさん、絶景をお楽しみの所誠に申し訳ないのですが、この星・プロキシマbの公転周期は11.186日となっていまして、つまりここで今日一日中待っていても日は完全には上らないのです...。というわけで、そろそろ別の箇所を回りませんか?」

 

 

「そーいう事はもっと早くいってよね。でもまあ、これでも十分きれいだけどね」

 

 

「それは良かった。それでは次の施設へご案内します」

 

 

その後は水生成・貯蔵施設に農業プラント資設、食料貯蔵施設と回り、このプロキシマbという惑星の開発は予想以上に進んでいる事が理解出来た。ミキとライルは物珍しさにイグニスの語る話を聞いていたが、何にせよルカに取って退屈な事に変わりは無かった。それを知ってか知らずか、イグニスは唯一の娯楽施設フロアへと案内した。

 

 

とは言っても、ゲームセンターのように騒音が鳴るわけでもなく、人の喧騒があるわけでもない。縦横30台程のリクライニングチェアに、軍用ヘッドマウントインターフェースが固定装備された、いわばDMMOゾーンであった。まだ時間が早いという事もあり、7.8人程がプレイしている最中ではあったが、非番の者は我先にと椅子取りゲームを行うほど人気のあるゾーンらしかった。

 

 

「やってみますか?」とイグニスに促されたが、もう200年もプレイした直後なのだ。

(今はとにかく現実を楽しみたい)と言って断り、研究棟へと戻るよう提案した。

得体の知れない場所にいるより、研究棟のあるラボにいるほうがよほど落ち着くという物だ。

 

 

そして研究棟へと戻った事でふと重要な事を思い出した。ルカはコンソールルームに座るユーゴに尋ねた。

 

 

「ユーゴ、ここから地球の情報にアクセスする事は出来るか?」

 

 

「もちろんできますよ!軌道衛星通信網によるブースト伝達機能で、ほとんどタイムラグ無くアクセス可能ですぜ」

 

 

「良かった、これから言う通りにしてくれ。まずこのプロキシマbから地球のロストウェブに存在するプロキシに五か所程接続してくれ。使用する回線は全てVCN(バーチャルクラシファイドネットワーク)だ。そこで足跡を消した後、カリフォルニア州シリコンバレー・サンタクララにあるレヴィテックの地下工場に侵入できるか?」

 

 

「シリコンバレーのサンタクララっと...ちょいとお待ちくださいねっと、OK!パスコードのクラッキングに成功、アドミン(管理者)権限奪取!これでこの施設は全部丸裸に出来ますぜルカ姉!」

 

 

「良くやった!!...って、随分と手際がいいなユーゴ。まさかその手の仕事を裏で引き受けてるわけじゃあるまいな?」

 

 

「そ、そんな訳ないじゃないですか!!企業系のセキュリティパスコードを買える専門のサイトがダークウェブにあるんでさぁ。そこから拝借して、速攻でぶち破ったまでですが、やるなら早いほうがいいですぜ。奴さんたちにアドミンでログインしてるのがバレるのはそうそう先の事じゃありませんので」

 

 

「わかった。次のワードを検索してみてくれ。プロジェクトネビュラ・2138年・被験者名:鈴木 悟 とりあえずはこのワードで検索し、肉体の居場所を探して欲しいんだ」

 

 

「了解! プロジェクトネビュラ....っとお、出てきましたぜルカ姉。鈴木悟に関してですが、地下3階のアーカイブセンターに電脳化された脳核が保存されてます。ログを見てみると2138年11月9日からずっとオンラインになってますね。行先は予想通り、ダークウェブのユグドラシルサーバですね」

 

 

「ということは、まだ生きているんだな」

 

 

「そりゃまあ、そうですけど...一体誰なんです?鈴木悟って」

 

 

「お前も何度となく会っただろう。アインズ・ウール・ゴウンだよ」

 

 

「ちょっ......マジっすか?!」

 

 

「大マジだよ! イグニス、今の話聞いてたな?お前もラボに来てくれ。アインズの脳核を奪取する計画を練りたい」

 

 

「アインズさんの?! 了解しました、すぐに向かいます」

 

 

 

イグニスにミキ・ライルも集まり、総勢5人でアインズ救出計画のための会議がスタートした。地球までは約4.2光年ある。ワームホールトンネルを使用して最速で地球に到達したとしても優に1週間はかかる。それよりも効率的な方法として、現在ブラウディクス社にあるバイオロイドを使用して遠隔(リモート)リンクし、レヴィテック社の地下工場へ潜入し、アインズの脳核を確保後、速やかに撤退・離脱。これが一番現実的だった。軍とブラウディクスのVCN軌道衛星通信網を使用すれば、地球の裏側にいたとしても遠隔(リモート)リンクは可能となる。ただ一点問題があり、バイオロイドを軍事作戦に使用する際はブラウディクス本社に許可をとる必要がある。そんなことをしている暇はないので、ここはイグニスに制御回路をオーバーライドしてもらい、5体分のバイオロイドを確保してもらう作戦で決定となった。事情は後で事後承諾させればいい。

 

 

そうして、アルファケンタウリ星系から地球への遠隔(リモート)リンクという史上類を見ない初の試みが実施された。ブラウディクスの研究棟から拝借された5人のバイオロイドは黒のライトバンに乗り、一路シリコンバレーを目指した。

全員が車内でA20K2パルスライフルのセッティングを始める。

 

 

目的地に接近し、事前にスキャンしておいた内部マップを全員が戦術データリンク上で共有する。その後ユーゴが用意した偽のIDカードを使用して地下駐車場まで着き、レヴィテック社への潜入に成功した。エレベーターに乗り、脳核があると思われる3階で止まるが、ここはアーカイブルームの為またしてもIDカードが必要だった。しかしこれもユーゴがどこからか用意してきた別のIDカードですんなりと3Fへの扉が開いた。

....ユーゴは冗談抜きに、この手のバイトを裏でやっているのかもしれない。

 

 

そして脳内のデータリンクでマップを確認し合いながら、脳核まであと一歩のところで敵の襲撃が来た。私達はサーバの詰まったラックを盾代わりにしながら応戦していたが、どうも敵の弾幕が弱い。もしかすると、このサーバ自体の被害を恐れている節があった。そこでユーゴにアインズの脳核と生命維持装置を取り付ける役目を任せ、こちらはサーバを盾にして火力を集中し撃ちまくった。やはり案の定敵からの反撃が薄い。ユーゴが生命維持装置の取り付けを終えたところで、さっさと退散する事にした。あのサーバの詰まった部屋は、敵に取っても要衝だったのだろう。追手の車が2台かかったが、しばらく逆方面へ逃げると向こうから退散してしまった。

 

 

とにかくこれで、アインズの脳核は確保した。彼はもうこれでゲーム内で死ぬ心配はない。レヴィテック社に突入した翌日、分厚いジェラルミン製のボックスにアインズの脳核を収納してロックをかけ、アルファケンタウリへの定期ワームホール便に乗せてプロキシマbへと輸送した。

 

 

その後、電脳核の生命維持を半永久的にする為、アインズ・ウール・ゴウン...鈴木 悟の精密優先型バイオロイドが試作された。

当然脳核はダークウェブにオンラインにしたまま移植手術にも成功し、

ひと先ずはこれで捕らわれの身であったアインズの体は解放された。

 

 

この事を彼に一刻も早く知らせてやりたいが、通常にログインすると万が一200年後とかにログインしてしまったらたまったものじゃないと考えていたルカだが、それをイグニスとユーゴに相談した所、以前200年前にワープしてしまったのは、サーバーダウン後もログインし続けた事と、手にしていた世界級(ワールド)アイテムが何等かに影響してランダムにワープで飛ばされてしまった結果という解析が出ており、ダミーバイオロイドを使用してのログイン実験では、一万回ログインして一万回普通の時間帯(アインズの生きる時間帯)でログインできたことは確認済みとの事らしかった。

 

 

またプレイヤーがログアウト出来ない現象は、サーバーダウンに立ち会ったLv100を超えたプレイヤーのみという事も判明した。という事は普通にログインし、帰りにユーゴの作った帰還用の赤いデータクリスタルで帰ってくれば良いのだ。そのついでに、データクリスタルを2つ持って、アインズもこの2550年の世界に来れるようバイオロイドの受け入れ態勢を確保しておけば、疑り深い彼も自由の身なのだと、きっと信じてくれるのではないか? そう考えてイグニス・ユーゴ・ミキ・ライルに相談し、彼らにも賛成してもらったことでこの計画は実行されるに至った。

 

 

あれから半年近くが経とうとしていた。彼の元気な顏を思い浮かべると、自然と顔がほころんでしまう自分を恥じたが、アインズにはアルベドという大切な子がいる。そしてアルベドは私にとっても大切な子だ。彼女を裏切り、傷つけるような真似だけは絶対にしないと誓いつつ、抱き着くのだけは譲れないというハグ魔な点は一切隠そうともしなかった。彼の脳核と体も完成し、喜んでくれるといいのだが。

 

 

そう願いながら、ルカ・ブレイズはヘッドマウントインターフェースを被り、首の後ろにあるブートボタンを押してアインズの元に向かう為、ログインした。

 

 

 

 

 

                            ----Fin----

 

 

 

 




最後までお読みいただけた皆様、本当にありがとうございました。

「自分が読みたい!自分ならこうする!」と思うオーバーロードを描いてみたつもりですが、これが少しでも皆様のお暇つぶしになれたらと願う次第です。
気が向いたら、アフターストーリー的な物も書くかもしれませんので、その時は何卒よろしくお願い申し上げます。初めて書いた2次創作という事で至らない部分も数多くありましたことをここに深くお詫び申し上げますと共に、重ね重ね、ここまでお読みいただけたことを深く感謝致します。



※続編 邂逅のセフィロト THIRD WORLD →https://syosetu.org/novel/164502/


■魔法解説

死の影の追放(バニッシュデスズシャドウ)

即死系統のトラップを除去する魔法


火の門の解放(オープンファイアーゲート)

通常は各地を旅する為のルーンゲート前で使用し、各地に点在する異なるルーンゲートまで飛ぶための呪文だが、常闇の竜王(ディープダークネスドラゴンロード)の策略により封印解除のキーとして設定されていた魔法。解呪する際には使用する順番を間違えずに、魔法最強抵抗難度強化(ペネトレートマキシマイズマジック)として使用しなければならない


風の門の解放(オープンエアゲート)

以下同文


精神の門の解放(オープンスピリットゲート)

以下同文


土の門の解放(オープンアースゲート)

以下同文


水の門の解放(オープンウォーターゲート)

以下同文


聖なる献火台(イクリプストーチ)

神官(クレリック)が使用できる祭祀用の封印解除魔法。悪魔やアンデッドを近寄らせない効果もあるが、この魔法も常闇の竜王(ディープダークネスドラゴンロード)の策略により、一種の封印解除キーとして設定されていた


超位魔法・聖人の怒り(セイント・ローンズ・アイル)

信仰系超位魔法。直系5メートル程の神聖属性光弾を両腕より連続して数十発叩き込み、着弾と同時に神聖属性の大爆発を起こす


超位魔法・持続する水霊の寒波(エンデュアウォーターズチル)


氷結系超位魔法。水の精霊王を召喚し、巨大な氷の塊を含む吹雪を起こして1分間に渡り相手に氷塊を叩きつける、超位魔法にも関わらず氷結属性DoTとしての特性を持つ


超位魔法・次元の崩壊(フォールオブディメンジョン)

失墜する天空(フォールンダウン)の時空魔法版。敵の中心で5次元崩壊を起こさせ、体組織そのものを体の中心から吹き飛ばす時空系の最強魔法


超位魔法・致命的な苦痛(デッドリーペイン)

カースドナイトが操る呪詛系最強魔法。対象者全身の血液を沸騰させ、神経系統に異常をきたし想像を絶する苦痛を加えて大ダメージを与える。尚苦痛はそのままDoTとなり、30秒間続く

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