仮面ライダー鎧武×結城友奈は勇者である   作:リョウギ

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リアル色々多忙でほんっとうにお待たせしてしまってすみません…



第12話 それぞれの今

ディエヴオの撤退後、気絶した友奈、東郷、園子を助けた風たちと若葉を介抱した千景と高嶋が合流し、同時に樹海化は解除された

大事を取って4人は病院に連れて行かれたが、検査の結果問題はなくすぐに帰ることができた

 

「しかし、奇妙なことになったわね…」

風が頭を抱えて大きなため息を漏らす。勇者部部室にて対価の情報交換に来た戒斗も交えて先程の激戦の反省会が開かれていた

「あぁ……オーバーロードがまさかこんなとこにまで現れるとは、っていうかまさかバーテックスを引き連れるなんて…」

絋汰は神妙な面持ちで呟く。直接は目撃してはいないがラシャと呼ばれたオーバーロードとジュブリョシェンと名乗ったオーバーロードがそれぞれロックシードを使ってバーテックスを呼び出し、操作していたのを東郷たちと夏凛から聞いている

ここで二人が嘘をつく理由がない以上、オーバーロード側がなんらかの方法でバーテックスを使役していることは明白だった

「あのジュブリョシェン、ってやつ…かなり強敵だったわ。オーバーロードって連中はみんなああなら、かなりマズイ状況よね」

「こちらで戦ったディエヴオというオーバーロードもかなり強敵だったわ。下手をすると、バーテックスより厄介かもしれない…」

実際に戦った二人が渋面を作る。切り札とも言える満開を使って負けたのだ、心理的なショックも大きいのだろう

「やつらが強いのは知っている。俺が奴らを求めるのもそれが理由だからな」

部室入り口で話を聞いていた戒斗が口を開く

「何をしているか、何を企んでるかなど細かいことは知らんが、立ち塞がるならそのバーテックスとやらもまとめて叩き潰すまでだ」

「そんな、簡単に……」

戒斗の意見に眉をひそめる東郷

滅茶苦茶な意見にも思えるが、絋汰や戒斗は知っているとはいえ精々そういった存在がいるという認識程度。もう少し詳しい可能性がある凌馬は現在行方不明が続いている

乱暴な結論ではあるが、戒斗の提案が現状最適解に近いのは確かだった

「あのバナナに賛成するのもなんだけど、現状じゃそれ以外にどうしようもないわよね…」

風がやれやれと肩を竦める

「とりあえず、相手の出方を今は伺うってことで‼︎ あのオーバーロードってのが出てきたら、絋汰とバナナに任せるわ」

「おう、任せとけ!」

「バロンだ。言われずとも、アレは俺が倒す」

風がひとまずの対策会を締め切り、部室が少し騒がしくなる中、東郷は一人考えていた

(あのディエヴオと名乗っていたオーバーロード、その最後の攻撃…)

未だ少し重い頭をさする

(まるで頭の中を引っ掻き回すような……いや、覗き見られるような…)

 

 

ヘルヘイムの森 フェムシンムの遺跡

既に滅びた文明の瓦礫にはヘルヘイムの植物が生い茂り、白亜の色合いを緑に塗り潰さんとしている

その中、ポツンと存在する玉座にまるで石像のような白亜の体が静かに腰掛けていた。眠っているかの如く静かなその佇まいだが、どこか重い威圧感も感じられる

『………何用だ?蛇』

白亜の異形ーオーバーロードの王ロシュオが身じろぎもせずに正面に視線を移す

「おいおい、しらばっくれる気か?王よ」

そこに現れたのは金色の蛇。一瞬光に包まれたそれはゆったりとした民族衣装のような服を纏った男に姿を変える

ターバンとマフラーから垣間見えたその顔は、沢芽市でビートライダーズの紹介をしていた男、DJサガラであった

『なんのことだ?』

「……まさか…本当に何も知らないのか?」

『デェムシュの粗相なら捨ておけ。ヤツの傲慢はやがてヤツ自身の身を滅ぼす。レデュエもまた然りだ』

ロシュオの返答が意外だったのか、サガラがあからさまに顔をしかめる

「そんなことじゃ無い。俺が問いただしたかったのは、黄金の果実の乱用についてだ」

『……なんだと?』

ロシュオの声色が変わる

「黄金の果実を今自由にできるのはロシュオ、お前だけだ。お前に心当たりがないこと自体が俺からしてみれば驚きなんだがな…」

『それについては私から話そう』

サガラをロシュオと挟む形でサガラの背後に二人の人影が現れる

ディエヴオとジェイの二人だ

『ディエヴオ……ジェイ……』

「お前たちから?どういうことだ?」

ディエヴオたちの方を振り向きながらサガラがロシュオの側に歩み寄る

『蛇、貴様が探しているのはこれだろう』

ディエヴオが取り出したのは燻んだ金色の輝きを放つリンゴ型のロックシード

「そいつは、まさか……⁉︎」

『ディエヴオ‼︎貴様……‼︎』

サガラとロシュオが動揺と怒りを露わにする

『貴様、あの邪悪を忘れたわけではあるまい……また過ちを繰り返す気か⁉︎』

『断じて否だ、ロシュオ。むしろその逆……過ちを二度と起こさないがためにこれが必要なのだ』

ディエヴオがロックシードに力を込める。同時にその周囲に黒いインベスが何体も出現する

それに反応し立ち上がったロシュオに合わせてロシュオの周囲にも大量にインベスが出現する

超常の力を扱うモノ同士、一触即発である

「驚いたな……失敗したゴールデンロックシードとは違う…劣化とはいえ、間違いなく黄金の果実を再現してやがる」

『クククッ、ボクが作ったんだから当然だろう? 一目見れば、再現なんて難しいことじゃない』

驚くサガラを見たジェイがさも愉快そうに嗤う

『多少の無軌道は見逃すが、こればかりは許しておけん‼︎』

左手に金色に輝くリンゴに似た果実を出現させたロシュオが右手からディエヴオに衝撃波を放つ。が、ディエヴオはそれを右手で一閃し搔き消す

『なんだと⁉︎』

必殺として放った一撃を霧散させられ驚愕するロシュオ

『我々の救済は既に最終段階へ足をかけた。我らが王である貴殿にも、最早止めることは叶わんよ』

『………‼︎』

ディエヴオの涼しい応答にロシュオが拳を握りしめ、諦めたかのように玉座に力なく座る

『座して待つといい、枯れ木の王、知恵の蛇。我々の作る楽園は、貴殿らにも等しく開かれている』

出現させた黒いインベスたちを消したディエヴオはジェイを連れてロシュオらのもとから立ち去る

その背を感情の読めない目で蛇は見つめていた

 

 

「っはっはっはっはっ……‼︎」

腕の深い傷を押さえながら球子は走る

杏が危ない。急がなければ

頭の中をそんな思考だけがぐるぐると巡る

集中できない思考のために少しぬかるんだような森の地面に何度も足を取られかける

「っはっはっは……⁉︎杏‼︎」

霞みそうな視界に緑から浮く白色が見えた。間違いない、杏だ。白色は杏の勇者服の色だ

「杏‼︎もう大丈夫だ‼︎タマがき……たぞ……」

ようやくたどり着いた。だが、そこにいた杏はいつもの杏じゃなかった

その勇者服は真っ赤だったからだ

「……あ、あんず……?」

胸から腰にかけて、ぱっくりと開かれた杏からゴボゴボと赤い紅い液体が溢れている。虚ろな目をした杏はピクリとも動いてくれない

「……冗談はやめろよ、何寝てんだよ杏……?こんな汚して……」

球子の口から力無い呟きが溢れる

杏を汚す液体を塞ごうと、杏を何度も閉じようとする、閉まらない、止まらない、それでも閉じる、しまらない

「いやだ……杏、いくな、逝かないでくれ杏‼︎あんーゴボッ」

パニックになり泣き喚く球子に黒い影が重なり、背中から衝撃が貫通する

「………ぁ?」

球子の胸からは、ベッタリと赤い液体に濡れた長い何かが生えていた

いうことを聞かない首をなんとか動かし、背後を振り返る

そこに立っていたのは……若葉たちを一蹴し、球子たちを追い回したあの紅い異形

 

『死ね』

 

「うわぁあああああああああ‼︎」

バネのように跳ね起きる球子。放心状態で自分の胸をまさぐり、穴が開いてないことは理解する

「……っぐ‼︎」

同時に全身の鈍い痛みが思考を現実に引き戻す

触れた胸に着せられていたのは恐らく病院着。寝ているこの場所は簡素なベッド。包帯がぐるぐる巻かれた右手から輸血パックらしいものから伸びたチューブが刺さっている。左手に至ってはギプスで肩から固定させられて動かせない

「ここは……」

どうやら病院の個室らしいことは把握できた

だがどうやって?球子と杏はあの変な森で紅い異形に追い回されて気絶したはず。誰がここに運んできたのか

「目が覚めたか。大事なさそうでなによりだ」

困惑する球子に凛とした声がかけられる

声の方向に目を向けると背の高めのスーツの男が個室の入り口に立っていた

「……あんたは……?」

「私は呉島 貴虎。あの森で倒れていた君たちを保護したものだ。ここは私が勤めている会社の附属病院だ」

いまいちはっきりしないまま聞き流していた球子だったが、急に顔色が変わる

「タマたち……そうだ、杏、杏は⁉︎」

「君といた子なら安心するといい。頭を強く打ったのと、肋骨を少々骨折した以外に大事はない。幸い峠は越えたと医師も言っていたからな。今は別室でまだ眠っている」

「そうか……よかった……」

貴虎の説明に胸を撫で下ろす球子

「こんな中で悪いが、君たちがあの森で遭遇したもの、起こったこと、見たもの、覚えている限りで構わないから教えてはくれまいか」

優しそうな雰囲気から変わって貴虎が事務的に聞いてくる

「……あぁ、わかった」

球子は二つ返事で頷いた

 

球子は順を追って貴虎にあの時の状況を話していった

貴虎は所々メモを取りながら真剣に球子の話を聞いていく

あらかた話終わったあと、貴虎がおもむろに口を開く

「森での出来事は把握できた。だが、その……勇者、バーテックス、とはなんだ?」

「……は?」

貴虎の質問に首をかしげる球子

勇者もバーテックスも知らない人がいることが不思議なくらいは周知のことのはずである。そもそもバーテックスへのトラウマの後遺症が未だ問題になることもあるほどだ

それなのに貴虎は勇者やバーテックスを知らない、というのだ

「何って……バーテックスは世界の、人類の敵で、タマたち勇者はそいつらを倒す存在だ。知らないはずないだろう?」

「……すまない、やはり初耳だ。記憶が混乱しているんじゃないのか?」

「じゃあ証拠を見せてやるよ‼︎」

怪訝そうな貴虎に業を煮やした球子がベッドの上で勇者服だけをまとってみせる。突然の変化に貴虎も目を丸くする

「驚いた……成る程、勇者、バーテックスという存在はたしかにいるのだな……」

「あったりまえだ‼︎むしろなんで知らないんだよ……」

しばらく球子を眺めていた貴虎だったが、意を決したように球子に告げる

「落ち着いて聞いてくれ。私は冗談でもなんでもなく、君たちの言う存在を知らなかった」

「……そう……なのか?」

「あぁ、君の口ぶりからすれば誰でもどちらかは知っているだろうそれらを、私は知らなかった」

話しながら何故かカーテンの閉められた窓側に歩いて行き、カーテンに手をかける

「球子、もう一つ私から問わせてくれ。この景色に覚えはあるか?」

シャッとカーテンが開けられる

その先には球子の知らない風景が広がっていた

「な………なんだよ、これ……」

大樹のような独特な形状の巨大な塔

それよりも小さいが見たことのないくらい大きい建物たち

そこにあった景色は球子がよく知る四国の景色ではなかった。いや、四国どころか滅んだ各地でもあんな巨大な塔は見たことがない

動揺する球子の後ろで貴虎が口を開く

「まだ仮説に過ぎないが……球子、君たちはこの世界と違う世界から来た可能性がある」

 

 

沢芽市 ケーキ屋シャルモンの空き部屋(現在は鷲尾須美たちに貸し出し中)

この場所に来てから3日。店の簡単な手伝いなどをしながら須美たちはなんだかんだで沢芽市を満喫していた

凰蓮も仕事では厳しいが、普段は三人に優しく接してくれて三人としても居心地がよかった

「はぁ……今日も疲れたなぁ〜」

部屋に敷かれた布団に銀が伸びをしながら寝転ぶ

今日は城乃内と一緒に買い出しの手伝いに行ったのだが、銀の体質のようなものでいく先々で困ってる人を手伝って大層疲れたらしい

「こんなところで働いたりなんて初めてだから、私もなれないわ」

「色んな人に会えて楽しいんだけどねぇ〜♪」

須美と園子も並んで布団に横になる

こういった手伝いに加えて休み時間は勇者としての鍛錬も欠かさずやっているから疲れるのはたしかに当然ではある

「バーテックスがいないって、こんなに平和なのね……」

須美がふと呟く

三人は言われてこそないがここが自分たちの世界でないことには気づいていたのだ

「そうだな……わたしらがお役目頑張れば、こんな世界になるってことかな?」

「そうだね〜多分こんな感じだろうねぇ〜」

二人ものんびりと肩の力を抜き切った様子で呟く

そんな中須美は一人考えていた

(平和なのはいいけど、早く向こうに戻らないとバーテックスが……)

横でじゃれ合う二人を眺めながらふとあることが思われる

(でも……いつか死ぬかもしれない、そんなお役目に、また二人と帰る……)

(それが、最良の選択なのかしら……)

ふと差し込んだ影のような考えを振り払い、須美はそっと目を閉じた

 

翌日 シャルモン近くの公園

「銀‼︎もう少し速度を園子に合わせて‼︎」

「おう‼︎」

勇者服に着替えた三人は日課の陣形の練習に励んでいた

的や見てくれる先生もいないが、型だけでもと練習をしている

「ふぅ……今日はこんな感じかしらね」

「ん〜……なんか張り合いがないなぁ……」

銀がつまらなそうに返す

たしかに、ぶつける相手や評価をしてくれるだれかがいない現状、どうも鍛錬にも身が入りづらく思われてくる

「誰かバーテックスくらい強い相手とかいるといいんだけどね〜」

「だなぁ……あー‼︎なんか誰か相手いないのかー⁉︎」

「そんな辻斬りみたいな……」

銀の叫びに須美が苦笑を返す

ーその時だった

「チャレンジャーなら‼︎ここに‼︎いるわよ‼︎」

野太い乙女チックな声がどこからか響いて来たのは

「は?」

「へ?」

「ほえ?」

首を傾げる三人の頭上に大きな影がおどり出る

「トゥッ‼︎」

シュタッ‼︎

三人の前に着地したのはトゲトゲした緑の鎧の巨漢ー凰蓮が変身したアーマードライダー・ブラーボである

「凰蓮さん⁉︎」

「ウィ‼︎ 話は全部聞かせてもらったわ‼︎」

ドリノコを両手に携えながらブラーボが三人に向き直る

「いつも泥んこで帰ってくるの、ずっと不思議だったけど…成る程、あなた達も強くなりたかったって感じなのね」

「あ、えっと……これはその……」

「ノンノン‼︎細かいことは詮索しないわ‼︎ あなた達が本気っていうのはきちんとワテクシに伝わったわ‼︎ 見てればよくわかるからね‼︎」

ブラーボが改めてドリノコを三人に向ける

「ボウヤを鍛え直した凰蓮式スパルタ訓練、特別にやってあげるわ」

と今までの話し方から少し凄みが増した様子でブラーボが構える

「ワテクシを倒すつもりでかかってらっしゃい」

しばらく呆然としていた三人だったが、ブラーボの気迫を感じ、頷く

「ありがとうございます、凰蓮さん。お相手よろしくお願いします‼︎」

「ウィ‼︎ きなさいな‼︎」

須美のあいさつが早いか、銀が先陣を切りブラーボのドリノコに斧を叩きつけた

 

 

目覚めてから半日。球子はどうもフワフワしていた

いきなり別世界と言われて実感が湧くはずがない

「もうわけわかんねぇ………体もまだいてぇし……」

片腕が塞がってる上、勝手がわからない別世界であるため何をしようかも思いつかない

「杏が起きてくれたらなぁ……」

落ち着いてきて真っ先に浮かんだのは杏の顔だった。貴虎曰く大事はないらしいが、それでもやはり心配だった

そんな風に考えながら天井を見上げていると一旦退室していた貴虎が戻ってきた

「度々すまない。君と共にいた子が今意識を取り戻したらしい」

「ほんとか⁉︎」

 

いきなりの朗報に気持ちははやるが体がやはり言うことを聞いてくれないので貴虎に支えてもらう形で杏の個室に向かう

ちょうど球子の隣の部屋だったようですぐに着いた

「杏‼︎」

声に反応したのか、ベッドから半身を起こしていた杏がこちらを向く

球子と比べて目に見えた包帯やら治療痕は少ない。頭に巻いてある包帯くらいだ

「心配したんだぞ杏‼︎ とにかくなんともなくてよかった……‼︎」

と歩み寄る球子だが、ある違和感に気づく

ベッドの上の杏は布団を引き上げ半分顔を隠しながらどこかおどおどしたようにこちらを見ていた

まるで球子に怯えているかのように

「杏……?」

再び球子が呼びかける

おずおずと杏が口を開く

「あの……す、すみません……」

 

「あなたは、誰、ですか……?」

 




生存報告
前書きにも書きましたが色々あって続編投稿が遅れてしまってすみませんでした……リアルも多忙だったのですが、12話での展開に脳内会議で待ったが入り、色々推敲してたら遅くなってしまいました…

さて、いよいよロシュオやサガラにまで宣戦布告したディエヴオたち
沢芽市の方も色々動きがあって盛り上がってきました‼︎

続きも現在推敲が長引いているので間が開くかもですが、次回もお楽しみに‼︎

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