戦士は言った
『弱者は強者に蹂躙されるべき存在。弱者の存在価値などそれだけだ』
策士は言った
『私たちのような存在には、時間の流れが酷く退屈だ。おもちゃを2、3欲しがるのは当然だろう?』
王は何も言わなかった
ただ彼の愛する亡骸に寄り添い、枯れゆくばかりだった
ヘルヘイムの森・深部
『ディエヴオ、お前は何をしている?』
深く暗い森の中、インベス達の咆哮しか聞こえないはずの森の中で本来あり得ない『言葉』が紡がれる
森に溶け込むように佇んでいたのはインベスと同じ異形。しかし、その目、手にした檄という『道具』にはインベスとは違う知性を感じる
オーバーロードインベス・フェムシンム
現在この森を支配する種族の一人、レデュエと呼ばれている異形はどこか責めるような目線をもう一人に向ける
もう一人の黒い異形に
『言葉の意図が掴めないな、レデュエ。我々は最低限のルールさえ守れば互いのなすことに関して不干渉ではなかったかな?』
『その最低限を犯そうとしている貴様からよくその言葉が出たものだな』
手にした檄がディエヴオに向けられる。最早レデュエはその敵意をごまかす気もないらしい
『策士らしからぬ態度だな。何をそこまで苛立つ必要がある?』
『愚かにも貴様が私たちのおもちゃに余計な細工をしようとしているからだよ』
『おもちゃとはあの猿たちのことかね?』
『あぁ、そうだとも。あれらは私とデェムシュが予約済みだ。選ばれた存在ながら世迷言しかほざけない貴様が用無しと切って捨てた、あの猿どもだ』
ディエヴオは大きくため息を吐く
『………愚かなのは貴様らだ、レデュエ。選ばれながらして、我らが王ロシュオは枯れ果て、腹心の貴様らはただ力に溺れる。崇高なるフェムシンムが聞いて呆れる』
パチンっ
ディエヴオの指鳴らしに呼応して彼の背後にクラックが口を開ける
『待て‼︎貴様、我々と袂を別つのか?』
『最初から貴様らに従う気は無いよ。ではな、レデュエ。約束通り好きにさせてもらう』
悠然とした仕草で手を振るとディエヴオはクラックの中へと姿を消した
『………あの異端者めが……‼︎』
忌々しげに振るわれた檄が木々を薙ぎ倒す轟音がただただ森に反響していった
同時刻より少し前
不思議な空間で出会った少女6人に詰め寄られ、その一人東郷美森の謎の凄みに押されて言われるがままに連れていかれた絋汰は
「うんめぇ〜‼︎」
その少女たちと仲良くうどんを啜っていた
「でしょでしょ?やっぱり最高だよね、うどん‼︎」
「こんなうまいうどん食べたの初めてだ……コシもあるしダシも効いてるから何杯でもいけそうだ……」
「気に入ってくれて私も嬉しいよ‼︎」
「友奈、あんたコイツここに連れてきた理由忘れてないでしょうね?」
すっかり絋汰への警戒を解いた友奈に夏凛がツッコミを入れる
そう、6人が絋汰をうどん屋に連れ込んだのは理由がある
東郷が宣言していた通りの「事情聴取」である
「ごめん、つい……」
「全く、友奈ときたらうどんのことになると目の色変えちゃうんだから……」
「いきなり連れてこられたから何されるのかと思ったぜ…えっと、俺のこと話せばいい感じかな?」
「ええ、えっと……」
「葛葉、俺は葛葉絋汰だ」
「ありがとうございます、葛葉さん。先程の戦い、葛葉さんには私たちから見て奇妙なところがいくつもありました」
「あんたにとっては普通かもしれないけど、あたしたちから見たら異常なの。だから少しでもあんたのことを知りたいのよ」
うどんをすすりながら絋汰は東郷と夏凛の言葉に頷く
「成る程な……おし、俺が話せることならなんでも話すよ」
「ありがとうございます」
「あ!そういえば私たちの自己紹介がまだだったね!」
友奈が元気に声を上げる
「私は結城友奈っていいます!」
「改めて、東郷美森と申します」
「あたしは犬吠埼風!でこっちが」
「……妹の犬吠埼樹です…」
「三好夏凛よ」
「乃木園子だよ〜気楽に園っちって呼んでね、かずっち〜♪」
「かずっち⁉︎……ハハッ、かわいいあだ名ありがとな。改めて、俺は葛葉絋汰。よろしくな」
自己紹介を挟んだからか若干警戒していた数名も少し肩の力が抜けたようだ
「そうだな……まずは出身からか、俺は一応沢芽市ってとこから来たんだ。ちょっと前までダンスやってたけど、今は仕事探し中ってとこかな〜……」
「沢芽市……聞いたことがない街ですね……」
「あたしも……少なくともこの辺りの街じゃないわよね?」
東郷と夏凛の困惑した表情を見て絋汰も困惑する
元地方都市とはいえ、ユグドラシルコーポレーションの参入があってからは沢芽市の知名度は相当高くなっているはずである
「えっと、俺からも一ついいか?ここどこだ?日本だってのは間違いないと思うけど……」
「ここは日本です。香川県ですね」
「あー、なるほど……県外じゃあ知らないってこともあるのか…」
と何気なく呟いた絋汰の一言に和みかけていた場の空気がまた張り詰める
「……絋汰あんた…今なんて?」
「へっ?いや、沢芽市は四国じゃないから県外なら知らないかなって……」
「ありえません……‼︎」
東郷が少し食い気味に否定する
(なんだ……?なんで県外ってのにこんな否定が……?)
「失礼、相席させてもらうよ?」
「あ?あぁ、どうぞ………ってお前‼︎」
首をかしげる絋汰の隣の空席にすっと座ってきたのは絋汰の見知った顔だった
忘れたくても忘れられない顔、ビートライダーズをモルモットとのたまう時も、自分の開発を語る時も、終始貼り付けている朗らかなような、不気味なような笑顔
ユグドラシルの研究者、戦極凌馬がそこにさも当然のごとく座っていた
「やぁ、葛葉絋汰。まさかこんな所で再会するとはね」
警戒する絋汰に朗らかな挨拶を返しながら注文していたらしいおろしうどんにレモンを振りかけていく
「ん、美味しいねこのうどん。私は普段なら食事には頓着しないんだが、これは癖になりそうだ」
7人分の警戒の視線を受けながらも凌馬はどこ吹く風と呑気にうどんをすすっていく
「あの……絋汰さん、この方は?」
「あぁ、顔見知りだよ……」
「お友達……って感じじゃないね……」
「私が友と呼ぶのは一人だけだよ。無論彼ではないがね」
半分ほど食べ終えた凌馬は箸を置いて7人に向き直る
「何しにきやがった?」
「そう警戒しないでくれたまえ、今は私も君と同じような状況だからね」
「どういうことだ……?」
凌馬はおもむろに東郷に視線を向ける
「私は君たちの今の状況についての仮説が完成している」
「仮説……?」
「あぁ、限りなく核心に近い仮説だ」
「これを確実にするためには『こちら側』の情報が不可欠だ」
凌馬のにこやかな笑顔を見つめ返す東郷は何かを察して怪訝な表情をする
「……私たちの情報と取り引き、ということですか?」
「悪い話ではないだろう?」
「……わかりました」
「物分かりがいい子で助かったよ。さて、じゃあうどんでも食べながら情報交換といこうじゃないか」
はい、ようやくうどん回ができましたw
うどんもなんですがようやくオリジナルオーバーロードのディエヴオが登場して物語も進んできました
勇者側のメンバーは実はまだまだ出すつもりで、あの子やあの子も出ます‼︎(多分)
もちろん鎧武側の他面子も出ますよ‼︎メルシー‼︎←
それでは、次回もまたお楽しみにです(*´꒳`*)